日本の心からオペレッタまで~メゾソプラノ歌手・林美智子が届ける“人生のスパイス”

2016.11.20
レポート
クラシック

林美智子(メゾソプラノ)

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メゾソプラノ歌手・林美智子「音楽は喜び」“サンデー・ブランチ・クラシック”2016.11.13 ライブレポート

メゾソプラノ歌手として、日本のオペラ界で抜群の存在感を放つ林美智子。昨年11月に初めて『サンデー・ブランチ・クラシック』に登場してくれた林は、eplus LIVING ROOM CAFE & DININGのようなカフェで歌うのは初めてとのことで、出演を非常に楽しみにしてくれていた様子。それはきっと、カフェに訪れたファンも同じ気持ちだったであろう。そんな貴重な機会となったリサイタルの様子をレポートする。

挨拶する林

拍手の中、笑顔で登場した林は、まず「本日はお休みのところ、足をお運び頂き本当にありがとうございます。しばしの間、生の歌声を近しいところで楽しんで、明日の活力にして持ち帰って頂けたらと思いますので、よろしくお願いいたします」と挨拶。

そして、最初に紹介したのは、武満徹の楽曲。武満の楽曲が大好きだと言う林は「武満徹さんは、とっても素敵なメロディをたくさん作られた方で、日本を代表する貴重な作曲家です。今年は武満さんの没後20年ということで、偲ぶ気持ちも込めて、皆さんに知って頂けるよう歌いたいと思います」と語った。

石野真穂(ピアノ)、林美智子(メゾソプラノ)

この日、林が選んだのは「小さな空」「小さな部屋」「うたうだけ」「翼」の4曲。武満徹は、戦後にデビューした作曲家で、ストラヴィンスキーに見いだされ評価を高めたという。ポップ・ソングとして残されているものが多いが、林はクラシック歌手として、これらの楽曲を豊かな歌唱力で、真っすぐに歌い聴かせてくれた。

林は、自身の2ndアルバム『地球はマルイぜ 武満徹:SONGS』でも武満徹の曲を歌っており、こちらには21曲が収められている。日本語の優しい響きとどこか懐かしさを感じるメロディが溶け合い、日本人ならではの音楽的感覚を存分に楽しめる内容となっている。

視覚でも楽しめるパフォーマンスを

「続いては、本業のオペラから……」と2曲続けて歌ってくれたのは、ビゼー作曲の歌劇『カルメン』より「ハバネラ」と、ドリーヴ作曲の「カディスの娘たち」。林は、まずカルメンの登場曲でもある「ハバネラ」について、「カルメンは、恋なんてものは追いかければ逃げちゃうし、知らんぷりすれば逆に追ってくる、でも私が目をつけた人はご注意ください、逃れられませんよ……と情熱的に歌っています」、続いて「カディスの娘たち」については「娘たちが、お金持ちの貴族に『金をあげるから私のものにならないか?』と声をかけられるんですけど、私たちはそんな誘いには乗りません、といった内容になっています」と解説。

この2曲は、どちらもスペイン女性を描いた歌。一方は心も身体も成熟した大人の女性、もう一方は踊り歌い奔放に笑う娘と、林は曲ごとに表情を変え、豊かな歌声で演じ分けて見せた。

『カルメン』楽曲を情熱的に

歌い終えると「私のおうちに皆さんをお招きしているようで、、とっても楽しいです。なのに、もう最後の曲になってしまいました……」と呟く林。共演のピアニスト石野真穂にも声をかけると、石野は「こちらも緊張しないで弾ける感じがして楽しいです。さっき二人で、また機会があったら、やらせてもらいたいね、なんて話していたんですよ」と答え、二人は頷き合っていた。

最後は、レハール作曲の喜歌劇『メリー・ウィドー』より「ヴィリアの歌」で、主人公ハンナの故郷の歌で、森の妖精に恋をした青年が叶わぬ恋に思い悩む歌になっています。今日はありがとうございました! またどこかでお目にかかれるのを楽しみにしております」と、圧巻のアリアで会場を包み、林は笑顔でステージを後にした。

身体全体で表現する林

終演後も、石野と共に終始「楽しかった」と笑顔を見せていた林は「お客様とこんなに近い距離で歌える機会はなかなかないことなので。サロンみたいなイメージで、歌いながら皆様のお顔がよく見えました」とこの日のリサイタルを振り返る。

学生の頃から一緒に演奏しているという林と石野。石野は、林の歌声の魅力について「どんな曲でも、彼女のそのものの表現なんですよね。みっちゃんが歌うと、その曲がより魅力的に感じられます。学生時代からずっとキラキラして見えます(笑)」と評すると、石野の言葉に林は照れて笑いが止まらず。

仲良しの二人

親しいからこそ、あまり口にしないかもしれないが、林も「真穂ちゃんは私にとって、なくてはならない存在です。どんな苦しい時も、共にひとつの釜の飯を食べてきたかのような(笑)。ピアニストに恵まれないといい演奏できませんし、いつも感謝してます」と答えていた。

MCでも、また出演したいと語ってくれていたが、林は改めて「人生のスパイスの一つとして求めて頂いけるような、音楽は喜びであってほしいです。演奏会もいろいろな種類があるので、ぶらりとまた、どこかに足を運んでいただけたら」とメッセージをくれた。

石野真穂(ピアノ)、林美智子(メゾソプラノ)

サンデー・ブランチ・クラシック』では、毎週、様々な音楽をお届けしている。新しい扉を開きに、ぜひ日曜日の午後のカフェへ。


取材・文=友成礼子 撮影=原地達浩

プロフィール
林美智子(メゾ・ソプラノ)
東京音楽大学卒業。桐朋学園大学研究科、二期会オペラスタジオ、新国立劇場オペラ研修所第1期修了。文化庁派遣芸術家在外研修員としてミュンヘンへ留学。アテネで開催された「国際ミトロプーロス声楽コンクール2003」で最高位入賞。第5回ホテルオークラ音楽賞受賞。2002年、新国立劇場「ヘンゼルとグレーテル」ヘンゼルでオペラ・デビュー。以降、二期会、新国立劇場を中心に多数のオペラ公演に出演、最近では2009年の佐渡裕プロデュースオペラ「カルメン」タイトル・ロールで新たなカルメン像を創り絶賛を浴び、さらに2012年の日生劇場開場50周年・読売日響創立50周年・二期会創立60周年ライマン作曲「メデア」日本初演のクレオサ、2013年は2月に二期会「こうもり」オルロフスキー、7月に兵庫県立芸術文化センターでの佐渡裕指揮「セヴィリアの理髪師」ロジーナ役で好評を博した。2015年には紀尾井ホールにて「オリンピーアデ」のアルジェーネ、日生劇場にて「ドン・ジョヴァンニ」エルヴィーラ役と、初役に挑み卓越した歌唱と抜群の存在感を示した。これまでにチョン・ミョンフン、パーヴォ・ヤルヴィなど国内外の指揮者と主要オーケストラに共演を重ねる。リサイタル活動においても求心力あるプログラムや、自ら作詞し野平一郎氏に作曲を委嘱した「夜~La Nuit~」の演奏、R.シュトラウスやプーランクの歌曲など、常に意欲的な取り組みを行っている。CDは「赤と黒」「地球はマルイぜ~武満徹:SONGS~」(レコード芸術特選盤)「ベル・エクサントリック~林美智子ベル・エポック歌曲集」をリリース。

石野真穂(ピアノ)
桐朋学園大学音楽学部ピアノ専攻卒業。同大学アンサンブル・ディプロマ修了。その後、パリ市立シャトレ劇場に於いてサビーヌ・ヴァタンのもと、コレペティトゥーアの研鑽を積む。在仏中、劇場主催コンサート「les midi musicaux」を始め、数々の演奏会に出演。帰国後はコレペティトゥーアとして活動し、二期会、新国立劇場、びわ湖ホール、日生劇場などのオペラ公演に関わる。また声楽を中心とする共演ピアニストとしての演奏の機会も多く、多くの声楽家から信頼を得ている。近年ではオペラのチェンバロ奏者としても演奏する他、静岡国際オペラコンクール公式伴奏者として、また東京NHK児童合唱団の初演ピアニストとして、積極的な活動を行う。二期会オペラ研修所ピアニスト。新国立劇場オペラ研修所ピアニスト。
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