奇想の画家『アルチンボルド展』が6月より開催 だまし絵で終わらない「知略の芸術」を公開

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国立西洋美術館「アルチンボルド展」報道発表会より

国立西洋美術館「アルチンボルド展」報道発表会より

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少し風変わりな肖像画に近づいて見ると、実は野菜や果物で描かれている――。一度見たら忘れられないこれらの絵画で知られるジュゼッペ・アルチンボルドの、日本初となる本格的な展覧会が今年6月に開催される。2月13日に行われた『アルチンボルド展』(2017年6月20日~9月24日)の報道発表会より、その見どころをご紹介しよう。

ジュゼッペ・アルチンボルド《春》 1563年 油彩/板 マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館蔵  © Museo de la Real Academia de Bellas Artes de San Fernando. Madrid

ジュゼッペ・アルチンボルド《春》 1563年 油彩/板 マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館蔵  © Museo de la Real Academia de Bellas Artes de San Fernando. Madrid

 

代表作《春》《夏》《秋》《冬》が一堂に

イタリア・ミラノ出身のアルチンボルドは、16世紀後半にハプスブルク家に仕える宮廷画家として、ウィーンやプラハで活躍した画家。彼が描くのは緻密な静物画でありながら、寓意的な肖像画でもある、まさに「謎解き」に満ちた作品ばかりだ。

ジュゼッペ・アルチンボルド《自画像(紙の男)》 1587年 鉛筆、ペン/紙 ジェノヴァ、ストラーダ・ヌオーヴァ美術館ロッソ宮蔵  Genova, Musei di Strada Nuova - Palazzo Rosso

ジュゼッペ・アルチンボルド《自画像(紙の男)》 1587年 鉛筆、ペン/紙 ジェノヴァ、ストラーダ・ヌオーヴァ美術館ロッソ宮蔵  Genova, Musei di Strada Nuova - Palazzo Rosso

アルチンボルドの芸術は、20世紀のシュルレアリストによって「発見」された。あのダリをも驚かせたという奇想天外な作品群は、以後のアーティストたちに多大なインスピレーションを与え続けている。

本展では、世界各地の主要美術館が所蔵するアルチンボルドの油彩画約10点を中心に、アルチンボルド芸術を生み出したレオナルド派の素描を含むおよそ100点の作品が並ぶ。中でも、日本で初めて一挙公開される代表作《春》《夏》《秋》《冬》は見逃せない。自然科学に深い関心を示した神聖ローマ皇帝・マクシミリアン2世を称揚する連作だ。

ジュゼッペ・アルチンボルド《夏》 1572年 油彩/カンヴァス デンバー美術館蔵  ©Denver Art Museum Collection: Funds from Helen Dill bequest, 1961.56 Photo courtesy of the Denver Art Museum

ジュゼッペ・アルチンボルド《夏》 1572年 油彩/カンヴァス デンバー美術館蔵  ©Denver Art Museum Collection: Funds from Helen Dill bequest, 1961.56 Photo courtesy of the Denver Art Museum

そのほか、魚類が複雑に描きこまれた《水》や、上下逆さまにすると肖像画と静物画の全く違うイメージが現れる“上下絵”の《コック/肉》《庭師/野菜》など、惹き込まれるような作品世界に出会える。

ジュゼッペ・アルチンボルド《水》 1566年 油彩/板 ウィーン美術史美術館蔵  ©Kunsthistorisches Museum, Wien

ジュゼッペ・アルチンボルド《水》 1566年 油彩/板 ウィーン美術史美術館蔵  ©Kunsthistorisches Museum, Wien

ジュゼッペ・アルチンボルド《コック/肉》 1570年頃 油彩/板 ストックホルム国立美術館蔵  ©Photo: Bodil Karlsson/Nationalmuseum

ジュゼッペ・アルチンボルド《コック/肉》 1570年頃 油彩/板 ストックホルム国立美術館蔵  ©Photo: Bodil Karlsson/Nationalmuseum

 

単なるだまし絵で終わらない「知略の芸術」

近年、パリ、ウィーン、ワシントン、ミラノでは相次いでアルチンボルドの個展が開催されている。それらはいずれも、アルチンボルドの作品を単なる「だまし絵」としてではなく、奇想と知、驚異と論理が共存する「知略の芸術」として捉え直すものである。

従来のアルチンボルドに関する展覧会が、現代の目で見て彼の作品がどう面白いのかを示したのに対し、本展では16世紀美術の文脈の中にアルチンボルドを置き直す。直接・間接的に影響を受けたレオナルド派の緻密な自然観察や、人間の内面を捉えるカリカチュア、当時の知のネットワークであった博物学的素描などを通して、アルチンボルドが果たした美術史上の役割を紐解いていく。

レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく《男女の頭部のカリカチュア》 ペン、褐色インク/紙 大英博物館蔵  ©The Trustees of the British Museum

レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく《男女の頭部のカリカチュア》 ペン、褐色インク/紙 大英博物館蔵  ©The Trustees of the British Museum

 

実は宮廷のアートディレクター!?

ハプスブルク家の皇帝から3代にわたって寵愛されたアルチンボルドの才能は、画業だけにとどまらない。宮廷の祝祭行事の企画や衣装デザイン、演出などを手がけるアートディレクターとしても活躍していたのだ。皇帝が催した騎馬試合のための素描などからも、その優れた発想力を伺うことができる。

本展担当学芸員の国立西洋美術館主任研究員・渡辺晋輔氏は、次のように本展の魅力を語った。「“誰もが見たことがあるけれど実は知らない画家”アルチンボルドの全貌を紹介する、日本初・世界でも稀な機会となります。最新の知見と様々な切り口でご紹介し、アルチンボルドを通して当時の芸術の在りようを知ることができます。国立西洋美術館としても非常に得難い珍しい展覧会となるでしょう」

本展担当学芸員の国立西洋美術館主任研究員・渡辺晋輔氏

本展担当学芸員の国立西洋美術館主任研究員・渡辺晋輔氏

これまでの「奇想の画家」という見方を超え、日本に新たなアルチンボルド旋風が起こることを期待し、6月の開催を楽しみに待ちたい。

イベント情報
アルチンボルド展

会期:2017年6月20日(火)~2017年9月24日(日)
会場:国立西洋美術館
開館時間:午前9時30分~午後5時30分 毎週金・土曜日:午前9時30分~午後8時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし、7月17日、8月14日、9月18日は開館)、7月18日(火)
主催:国立西洋美術館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
協賛:損保ジャパン日本興亜、大日本印刷、ブレンボ
協力:西洋美術振興財団
特設サイト:http://arcimboldo2017.jp/
 
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