FAKE? 結成当時のメンバーINORANをゲストに迎えるアニバーサリーライブを前に、KEN LLOYDに訊くバンドのヴィジョン
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FAKE? / KEN LLOYD 撮影=樋口隆宏
結成15周年を迎えたFAKE?が2月25日に「Mad Hatz’ Merry Go Round」を全世界同時配信リリース。同日にFAKE?の結成当時のメンバーであるLUNA SEAのINORANをゲストに迎え、恵比寿リキッドルームでアニバーサリーライブを開催する。そもそもFAKE?はどんないきさつで結成されたのか? KEN LLOYDが「このバンドがなくなったら音楽をやる意味がない」と言い切るFAKE?のヴィジョンとは? 今年、デビュー20周年を迎えるOBLIVION DUSTとのスタンスの違いについても触れたロングインビューをお届けする。
何をやってもニセモノだって言われるなら、自分たちでFAKE?って名乗っちゃおうって。そうして始めたから、何をやってもいい自由なバンドなんです。
――FAKE?は結成15周年を迎えましたが、今までの月日を長く感じますか? それともアッという間?
どっちも当てはまりますね。オブリ(OBLIVION DUST)も今年デビュー20周年なので、気づいたら両方とも“こんなにやってるんだ”と思うんですけど、細かく振り返ると“いろいろなことがあったな”って。表に見えていること以外でもね。
――表立って発表されていないことという意味ですか?
そう。例えばライブをつねにやっていたかというと、そういうわけでもないし、アルバムとアルバムの間にブランクがあった時期もあったし。でも、自分自身は複数のバンドを並行してやっていたので、コンスタントに動いていたから、いいことも悪いことも乗り超えつつ、やってきた気がしますね。もう引退してもいいんじゃないかなって(笑)。
――(笑)またまた。じゃあ、よく続けてきたなという想いも?
そうですね。
――あらためて聞きたいんですが、FAKE?はそもそも、どんなふうに始まったんですか? 最初からコンセプトがあったのですか?
コンセプトはないけど、FAKE?っていうシニカルな名前にしたのは理由があります。最初はLUNA SEAのINORANと結成したわけだけど、当時、INORANはLUNA SEAとはまた別なイメージや方向性を求めていたし、僕もOBLIVION DUSTがそこそこ売れていたから、同じように思っていた。お互いに終幕、解散を経て組んだから、前のバンドのイメージを覆すようなバンドにしようって。“LUNA SEAのINORANとオブリのKENが合体したら、こんな感じの音楽になるよね”って想像できるようなものじゃなくて、“こういう感じになるんだ?”とか“こういうこともするんだ”って思うようなことをしようっていう考えのもとに始まったんです。でも、何をやってもニセモノだと言われるだろうから、FAKE?っていう名前にして。
――というと?
ファンに対してだけではなく、対音楽シーンで考えても洋楽っぽいことをやると“やってるの日本人じゃん”って言われたりするから、そういうのを笑い飛ばそうぜっていうところもあったかな。眉間に皺寄せて怒ってたわけじゃなくて、ニセモノだって言われるなら最初から自分たちでFAKE?って名乗っちゃおうって。そういうスタンスで始めたから、何をやってもいい自由なバンドなんですね。途中でINORANが脱退(2005年)してからは俺1人でやっているんだけど、今でもバンドだと思っているし、参加メンバーみんなと一緒にやっている意識がある。
――結成当初はKENさんとINORANさんの2人だったけれど、最初からユニットではなくバンドだという意識があったんですか?
そうですね。INORANは「2人でいいんじゃない?」って言ってたけど、俺は最初からバンドにしたかったんですよ。
――そういう意識の違いもあって、脱退に繋がったんですか?
それが原因ではなくて大きな理由はなかったんだけど、やりたいことが違ってきたり、だんだん離れていった感じ。3rdアルバム(『THE ART OF LOSING TOUCH』)ぐらいから僕がやりたいことと彼がやりたいことが違ってきて4thアルバム(『MADE WITH AIR』)の頃には完全に分かれていたから、脱退したという流れですね。
FAKE? / KEN LLOYD 撮影=樋口隆宏
――INORANさんが脱けて1人になってもFAKE?の活動を続けたのは自由なスタンスのバンドだと考えていたから?
3枚目のアルバムを作った時にINORANに「これはもうKENのアルバムだよ。KENの魂がこもってる」みたいなことを言われたんですよ。その時点で自分がFAKE?を守っていかないといけないっていう気持ちが強くなっていたんだと思う。当時はソロ名義でやったとしても、FAKE?と変わらないものになることはわかっていたし、今も方向性とか流行りの音楽とかよけいなことを考えずに純粋に作っているので、守りたい場所なんですよね。もちろんオブリも自分のバンドなんだけど、それ以上に自分を表現できる場所。FAKE?を誇りに思わなかったり、やりたいと思わなくなったら、音楽をやる意味がないんですよね。お金のためにやってるわけじゃないし、有名人になりたいわけでもない。今も写真撮られるの嫌いだしね(笑)。結成当初からそういうスタンスだから、1人になったから違うことやろうとは思わなかったですね。
――OBLIVION DUST以上にKEN LLOYDのやりたいことが強く反映されているのがFAKE?なんですね?
OBLIVION DUSTはみんなで意見を出し合いながら3人で一緒に作っていて、それはそれですごく大事。一緒にやることによって自分も新しい世界が見えるし、刺激にもなるし、ギブ&テイクの関係。3人ともバラバラだから“なんでこのバンドがうまくいくんだ?”とも思うけど(笑)、今はバンドがいちばん良い状態にあるし、ステージに立つと一つのカタマリになっている感じがあってパワーを感じるんですよね。FAKE?は自分の色をそのまま出せて、アーティストとして実験を繰り返して、いろいろな面を提示して、作った曲が喜ばれるかな? とか。
――次はこんな曲が生まれたけど“どう?”みたいな。
そう。かといってリアクションを見て“じゃあ、こうしようか”ともあまり思わないけど。要するに自己中なバンドなんですよ(笑)。
――簡単に言うとFAKE?はワンマンバンドということですか?
いや、みんなとやっている意識はあるからバンドだと思ってます。自分たちが好きなことができる遊び場。
――そういうスタンスだからこそ、続けていくのが大変だったんじゃないですか?
もちろん! でも、純粋に自分が好きなことをやっているから続けられる。誰かのためにやっていたら続けてないです。自分のためだから、ここまで情熱を持ち続けられたし、乗り超えてきたし。
――なるほど。2016年は“歪んだファンタジーとロック的仮想空間”をテーマに『不思議の国のアリス』をモチーフにしたライブを6ヶ月連続でやってきましたよね。KEN さんが4年以上あたためてきた構想を具現化した楽曲であり、ライブだということですが。
何でもできるという意味で僕がもともとFAKE?に描いていたイメージに近づいていますね。ライブにチェシャ猫が出てきてもフツーにロックとして成立させてしまうっていう。
――照明も映像も凝りまくっていますよね。キャラクターも凝視してしまうほどかわいいし、面白い。
面白いことをやりたいんですよ。たぶん、ちょっと変わってると思うんですよね。変なモノに興味を持つし。
――変なモノって?
ストレートにカッコいいものやキレイなものにあまり目がいかないんですよ。例えば電車に乗った時に目の前にすごい美人が座っていたとして、その横にヤクルト飲んでるおじいちゃんがいたら、僕、絶対におじいちゃんのほうを見てるんですよ。
――(笑)ヤクルトとおじいちゃんの組み合わせに興味が?
どうやって飲むんだろう? って観察する。カッコいい男の人の隣にひとりごと言ってるおばあちゃんが座ってたら、“何しゃべってるんだろう? この人と会話してみたいな”って(笑)。
――ふーむ。映画も奇妙な映像やストーリーに惹かれたりするんですか?
映画は何でも見ますけど、普通の恋愛ものや派手なアクションものはあまり好きじゃないかもしれない。途中で物語が意味不明な方向に行っちゃうようなものに惹かれますね、何でもそうなんですよ。今、自分が住んでいる家も形からして変わっているし。
――ライブに出てくるキャラクターもかわいいだけじゃなく、表情がにくたらしかったりとか。
かわいいんだけど闇があったり、傷ついていたり。人間も“明るいけど、家に帰ったら超暗いでしょ?”と思うような人に惹かれるし、そういう人の話を聞きたくなる。
――ではKEN LLOYDの頭の中の想像の産物を表現したのがマンスリーライブの演出だったんですか?
そうですね。もともと『不思議の国のアリス』というテーマに沿った楽曲はあって、その世界観を更に広げる為に映像を使いたかったんです。そういう事がどうできるかと考えてる時に、あるきっかけでCGアーティスト、プロダクトデザイナー、プログラマー、Webデザイナーなど、それぞれの専門性が高い連中との出会いがあり、そのクリエイター集団と“WHITE RABBIT Inc.”を組む事になったんです。 彼らも頭がおかしいので(笑)。FAKE?の音楽をカッコいいって言ってくれて、アリスのコンセプトを伝えたら「一緒にやろう!」って、“WHITE RABBIT Inc.”では、僕もクリエイターとして、自分の視点を出してる。みんながみんな別の視点をぶつけて、いつも新しいものをつくっている。彼らもある意味、FAKE?のメンバーですね。
――ちなみにどういうふうにライブのコンセプトを伝えたんですか?
難しい質問ですね。まず曲を聴いてもらって、曲によってのキャラクターを性格、イメージ、色や質感で伝えていったんです。
――一連のライブ『FAKE? Live wonderland』は毎回、メインキャラクターが変わっていきましたよね。1回目はThe Twins(双子)のDEEとDUMで2回目がWhite Rabbit(白ウサギ)、3回目がCheshire Cat(チェシャ猫)、4回目がThe Caterpillar(イモ虫)というふうに。
そう。例えばThe Twinsだったら、「背がちっちゃくて小太りで1人はやんちゃで1人はちょっと真面目で」っていうふうにすごく細かく伝えたんですよ。イモ虫はちっちゃくてブヨブヨしてるとか。それでキャラクターのデザインを一緒にしていったから、映画を作っているような感覚ですね。僕が絵コンテを書いたこともあったし。で、キャラクターが出来上がったら曲のストーリーを説明して、また話し合ってライブを構成していく。
――音楽と映画を合体した新しくてエンターテインメントなライブをやりたかったんですか?
やりたかったというか、やり始めて“ここまでできるんだ?”と思って、だったら、とことんやりましょうって。通常はアリーナクラスの会場でやるようなことを渋谷のclubasiaのようなスペースでやることに意味があった。こういう発想は今のFAKE?にしかできないと思うし、エンターテインメントとして僕が理想とする方向に向かっていると思います。
FAKE? / KEN LLOYD 撮影=樋口隆宏
――そんな活動をしてきた中、2月25日に全世界同時配信される「Mad Hatz’ Merry Go Round」はライブ会場で限定販売された曲であり、テーマの中から生まれたキャラクターが主人公の曲ですね。
The Mad Hatter(帽子屋)ですね。映画『アリス・イン・ワンダーランド』でいうとジョニー・デップが演じた役柄です。
――開放感、躍動感があるKEN LLOYD節とも言えるメロディの曲になっていて、サウンドが遊園地とかサーカスを思い起こさせる。
これは僕が彼を描いた曲ですね。ハリウッド版の映画ではちょっと頭がおかしい帽子屋がお茶会を開いてるんだけど、この曲ではメリーゴーラウンドがお茶会に当たる場所で、メリーゴーラウンドのまわりをぐるぐる回っているおかしなヤツ、みたいなイメージが湧いたので、そのスピード感を表現して、帽子屋のマッドなところも入れたかったから途中で曲の展開をガラッと変えたりしたんです。後半ではメリーゴーラウンドの激しさ、スリルを出したかったから“これ酔っちゃう”っていうギリギリのところまで持っていったり。
――そういうクレイジーさもありつつ、踊れるナンバーでもあり。
この曲、今まで作った曲の中でいちばんキャッチーなんですよ。
――なぜ、キャッチーな曲になったんでしょうか?
実験を乗り超えたから。試すだけ試して全部味わって、シンプルイズベストに戻ったんですよね。いろいろやった結果、最終的にここに来たなって。でも昔のキャッチーな曲と同じではなく、知識が増えて技術が向上した上でのシンプル。
――そうですね。曲の展開のみならず、ボイスの使い方や効果音が凝っていて、ポップなのにどこか奇妙な世界を作り出している。
そうですね。自然に出てきたものにさらにスパイスを加えたりしながら、曲自体がボヤけないように。FAKE?の過去を振り返ると、さじ加減がわからなくてマニアックになりすぎた時代もあるんですよ。その当時は240BPMのドラムだけの曲が70分入ってるCDとか声だけのCDとか実験的な音楽ばかり聴いていて、それをFAKE?にフィードバックさせたりしていたんです。だから、実は勉強しているんですよ。楽しみながらですけど、いつも変なモノを探しに行っていた。
――ハマったらとことん突き詰めたくなるタイプですね。
俺、裏でいろいろやってるんですよ。みんなは“何もしてないだろ?”と思ってるけど(笑)。
――ははは。そう思われているんですか?
自由人と思われがちですけど、裏ではコツコツやってますよ〜(笑)。
――水面下でバタバタしている白鳥のようにね(笑)。「Mad Hatz’ Merry Go Round」のMVがまた凝りまくったものになるんですよね。
ちょうど今、制作してます。フルCGの360度VRの世界を作っているのでただのミュージックビデオではないですね。
――楽しみです。最後に2月25日に恵比寿リキッドルームで開催される15周年のアニバーサリーライブ『The QUEEN’S BANQUET』について教えてください。INORANさんも5年ぶりにゲスト出演しますが、マンスリーライブとの繋がりもあるんですか?
15周年ライブになるので、チョロっとそういうテイストも入れつつ、基本的には15年間のFAKE?を見せようというライブですね。
――集大成的な内容?
そうですね。かなり攻めてるセットリストになると思います。INORANに「何の曲やりたい?」って聞いた曲も組み込んでいるし、彼が脱けてからの時代の僕が気に入ってる曲もやるし、FAKE?を初めて見る人がキャッチアップする場合でもわかりやすいライブかなって。もっと簡単に言ったらヒストリーがわかるグレイテストヒッツですよね。今までの15年をテイスティングできるライブになります。
――リキッドルームという会場にも思い入れがあるんですよね。
FAKE?が初めてライブをやった会場が当時、新宿にあったリキッドルームなんですよ。味見ができるライブという意味でもタイトルが『The QUEEN’S BANQUET』なんですけどね。
――そういうことなんだ?
今、考えたんですけどね(笑)。あとはグッズもお勧めです。いつもはかわいいグッズが多いけど、今回はカッコいい。僕からしたら音楽も映像もグッズも全部、重要なんです。ライブにグッズ買いに来てるって言われても全然イヤじゃないし。
――凝り性ですからね。
何でこんな性格になっちゃったんでしょうね(笑)。お母さんの育て方が悪かったのか(笑)。
――(笑)お母さんのせいにしてるし。アニバーサリーイヤーだし、2017年にやってみたいことは?
やってみたいこと? 旅行行きたいですね(笑)。あと、スカイダイビングにもチャレンジしてみたい。ちょっとオフが欲しいですね。
――それぐらい忙しいということですね。
まぁ……。FAKE?のほうでは『不思議の国のアリス』をテーマにした世界をもっと全面的に打ち出したいですね。2016年が種を蒔いた時期なら、2017年は花を咲かせたい。あとはまだ2曲しかリリースしていないので、ライブで披露しているほかの曲たちもリリースしつつ、アルバムもその後、出したいし、ライブも去年とは違う見せ方でやりたいですね。オブリは3月に東名阪ツアーをやりますが、気持ち的にはOBLIVION DUST VS FAKE?でやりたいですね。OBLIVION DUSTをやっている時は“FAKE?を超えるぞ”って思って、FAKE?をやっている時は“OBLIVION DUSTを超えるぞ”って。その相乗効果で、どっちもアゲていきたいし、VAMPS VS OBLIVION DUSTじゃないけど、K.A.ZもRIKIJIも同じような気持ちでやっていたら嬉しいなって。
取材・文=山本弘子 撮影=樋口隆宏
FAKE? / KEN LLOYD 撮影=樋口隆宏
2017.2.25 (sat) 恵比寿 LIQUID ROOM
OPEN/18:00 START/19:00
<メンバー>
Vocal : KEN LLOYD (OBLIVION DUST/ATOM ON SPHERE)
Guitar : 峰正典 (the MARCY BAND/ OLD CODEX他サポート)
Guitar : PABLO (Pay money To my Pain)
Bass : JOE(Fuzzy Control)
Drums : ZAX (Pay money To my Pain / The BONEZ)
Turntable :DJ BASS(ZINGI)
Manipulator : d-kiku (LUNA SEA / ONE OK ROCK他サポート)
Guitar : INORAN (from LUNA SEA/ ex FAKE?)
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¥5,500(税込、ドリンク代別)
2017年2月25日配信
FAKE?「Had Hatz’ Merry Go Round」