After the Rain(そらる×まふまふ) 支え合い実現した振替公演で届けられた感謝の気持ち ツアーファイナルを詳細レポート

2017.3.7
レポート
音楽

After the Rain(そらる×まふまふ)  撮影=岡本麻衣

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After the Rain TOUR 2016-WINTER GARDEN-
2017.2.23(thu) TOKYO DOME CITY HALL

立春もとうに過ぎ、まだまだ寒い日が続いているとはいえ、梅や寒桜が日々開花している東京には、もう春がやって来ている。だが、この夜のTOKYO DOME CITY HALLの中だけに限っては、奇しくもAfter the Rainによる時の魔法が発動されることにより、なんと“あの日に本来なら起こるべきだったことたち”が実現するに至った。

題して、『TOUR 2016 -WINTER GARDEN-』。もともとこの公演が行われるはずだった2016年12月31日、東京ドームシティ・ホールに詰めかけた満員御礼の観客たちに対し、まふまふと主催責任者から不意に告げられたのは、そらるの体調不良とそれによる公演延期の報せにほかならない。このとき、実は楽屋にいながらにして急性声帯炎と高熱で意識までが朦朧としていたというそらるに代わり、まふまふは我々に対して確かにこう言ったのである。

「この日を楽しみに来てくれた皆さん、本当にごめんなさい。まだ、今の時点では次はいつやりますと断言出来ませんが、必ずそらるさんと一緒に振り替え公演をしますので、それまでどうか待っていてください」

After the Rain(そらる×まふまふ)  撮影=岡本麻衣

あれから、約2ヵ月。現実世界の季節そのものは冬から春へと巡ってしまったが、After the Rainの描く異世界の冬物語は、この2月23日という日にこそ、あらためてその幕を明けることとなったのだ。

そらるをイメージする青、まふまふをイメージする白。オーディエンスがそれぞれに手にしたLEDライトバーの発する光が場内をいっぱいに埋め尽くす中、大歓声に迎えられたAfter the Rainが最初に歌い出したのは、昨夏に行われた両国・国技館でのワンマン公演『~モーニンググロウ アフターグロウ~』を最後に締めくくっていた、「セカイシックに少年少女」。
まさにこの瞬間、東京ドームシティ・ホールの中に流れていた時間が、ぐるりと2016年12月31日と巻き戻されたように感じた人も、きっと多かったことだろう。いよいよ、『TOUR 2016 -WINTER GARDEN-』のファイナルがここに始まったのだから。

そらるがハンドマイクを手にしながらステージ上をアクティブに動き回る一方、まふまふがギターを駆りつつ歌った「ベルセルク」。ツインボーカルのならではのダイナミズムが楽曲の中でハジけた「脱法ロック」と曲が続いたあと、まずはここで一旦の小休止が入れられた。そう、なんといってもこのライブでは最初に演者と観客の間で大事な挨拶を交わす必要がある。

After the Rainそらる×まふまふ)  撮影=岡本麻衣

そらるさん、おかえり」「そらるさん、待ってたよ!」といった観客たちからの温かい声が飛び交う中、ここで少しためらいがちな表情をみせがらも、勇気を振り絞るように口を最初に開いたのはそらるだ。
そらる「こんばんは。えーと、紆余曲折はありましたが…」
まふまふ「復活おめでとうございます!」
ゆっくりと落ち着いて話を進めようとするそらると、間髪を入れずにすかさず合いの手を入れるまふまふとのこうしたやりとりは、もはやAfter the Rainの定番的流れ(笑)。

そらる「いやー、なんとかここに立てて、僕はほっとしていますけれども(苦笑)。皆さん、今日は来てくれて本当にありがとうございます。最後まで心を込めて歌っていくので、どうぞ楽しんでいってください。それでは、ここからは少しソロで歌わせてもらいます」

彼らのライブにおいては、ふたりそれぞれの歌が単独で楽しめる、ソロコーナーが設けられているのも特徴のひとつだ。今回そらるはアコースティック・ギターの音をバックにした優しく美しい「ビー玉の中の宇宙」と、叙情的なノスタルジーに彩られた「わすれもの」を、しっとりとした歌で聴かせてくれた。

かと思うと、まふまふのソロコーナーではパワフルなハイトーンが秀逸なほどに映えた「ECHO」、巧妙なR&B的コード進行と切ない歌詞世界が繊細な歌声と共鳴する「愛のサンプル」が披露され、結果的に我々は“ひとりで歌ってもこれだけ聴き応えのあるボーカリストが、ご丁寧にふたりも揃っているAfter the Rainの贅沢ユニットぶり”を、今さらながらに思い知らされることになったような気がする。

After the Rainそらる×まふまふ)  撮影=岡本麻衣

ちなみに、贅沢といえば今公演ではシアトリカルなセットや特効を用いた演出が幾つかなされていた点も特徴的。「アイネクライネ」や「天宿り」ではふたりがそれぞれにステージ上にしつらえられたブランコと戯れながら歌った一幕があった。そのほか、「ショパンと氷の白鍵」ではいかにも『WINTER GARDEN』と題されたライブらしく、場内にふわりちらりと淡雪が舞い降る光景が生み出されたりもして、After the Rainの繰り広げるステージならではの、素晴らしい異世界がそこに在ったと言っていいだろう。

そのうえ、本編後半では一世を風靡した大ヒット曲「前前前世」を惜しげもなく振る舞ったあと、幻想的な世界観と疾走感に満ちたリリカルアッパーチューン「彗星列車のベルが鳴る」で聴衆の心を完全に奪ってみせたそらるまふまふ。アルバム『クロクレストストーリー』でも重要な役割を果たしていた「アイスリープウェル」をラストに放つことで、After the Rainとしてそもそも構築すべきであった『TOUR 2016 -WINTER GARDEN-』の世界を、ひとたび完結させてみたのであった。

それでいて、アンコールでの「すーぱーぬこになりたい」ではそらるまふまふだけでなく、バンドメンバー全員にくわえ、観客たちの多くも猫耳をつけてのパーティーモードへと突入。再びまふまふがギターを肩にかけ、そらるがマイクスタンドを前に歌った「わすれられんぼ」でも、場内はより一層の盛り上がりをみせることに。

After the Rain(そらる×まふまふ)  撮影=岡本麻衣

だが……

「言いたいことはたくさんあります。去年の12月31日の件は、全て自分の体調管理の甘さから来るもので、本当に多くの人をがっかりさせてしまいました。(中略)当日、自分はステージに立つことも出来ず、まふまふと責任者の方が代わりに謝ってくれているのを、僕はただモニターで見ていることしか出来ませんでした」

興奮冷めやらぬ場内に向け、そらるはこのタイミングで話を切り出してみせた。

「その後、あれから2週間くらいはずっと寝込んでいて、皆にもあわせる顔がなかったし、一時はもう辞めてしようかな、逃げたいなと無責任にも思ってしまったことさえあったんですが、とにかく多くの人たちから心配していただきましたし、たくさんの人がそんな僕を支えてくれました。(中略)まふまふも、普段はこんなだけどさ。メチャクチャいろいろ気を遣ってくれて……(笑)。皆さんからの気持ちが、僕はとてもありがたかったです。正直、まだ体調的には万全とは言い切れないところもあるんですが、それでもなんとか今日こうしてライブが出来たことが嬉しいですし、とても楽しかったです。皆さん、本当にありがとうございました。……そして、ごめんなさい。不甲斐ないところもある僕ですが、これからも頑張って行くので、どうか皆さんおつきあいください」

深くお辞儀する、そらる。それを受けて、今度はまふまふがこう続ける。

「今思うと、僕がライブをやり始めたキッカケというのが、そらるさんに引っ張り出してもらったみたいなところがあったので、今回は逆に自分がそらるさんを引っ張っていく時だったのかなと思います。そして、あんなことがあってもこうして温かく受け容れてもらえる僕らは、とても恵まれていると感じています。長くなりましたが、最後に僕たちにとって思い出の1曲をやらせてください」

ここでふたりが歌い上げてみせたのは、冬の終わりと春の訪れを予感させる「桜花二月夜ト袖シグレ」。つまり、After the Rain独自の時間軸が、ようやくリアルタイムとシンクロしたことになるのが、この場面であったと推測することが出来る。

After the Rain(そらる×まふまふ)  撮影=岡本麻衣

かくして、彼らは来たる4月12日にシングル「解読不能」(TVアニメ『アトム・ザ・ビギニング』OP)と、シングル「アンチクロックワイズ」(TVアニメ『クロックワーク・プラネット』ED)を2作同時リリースすることが決まっているほか、8月9日・10日には遂にAfter the Rainとして初の日本武道館『-Clockwise/Anti-Clockwise-』を、2デイズにて行うことも決定している。

そらるまふまふが、After the Rainという名の異世界で織りなす夢と魔法の数々は、刻々と進んでゆく時の巡りと共に、これからもまだまだ続いていくに違いない。


取材・文=杉江由紀

セットリスト
After the Rain TOUR 2016-WINTER GARDEN-
2017.2.23(thu)  TOKYO DOME CITY HALL

1.セカイシックに少年少女
2.ベルセルク
3.脱法ロック
4.ビー玉の中の宇宙
5.わすれもの
6.ECHO
7.愛のサンプル
8.アイネクライネ
9.いかないで
10.鏡花水月
11.ショパンと氷の白鍵
12.天宿り
13.盲目少女とグリザイユ
14.生に縋りつく
15.前前前世
16.彗星列車のベルが鳴る
17.アイスリープウェル
[ENCORE]
18.すーぱーぬこになりたい
19.わすれられんぼ
20.桜花ニ月夜ト袖シグレ

 

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