集大成にして新たな出発点 ベスト盤をリリースしたONE☆DRAFTがデビュー当時から現在までの10年を振り返る
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ONE☆DRAFT 撮影=kazuyatanaka
帝京高校野球部出身の同級生3人組で結成したONE☆DRAFTが、2007年3月21日のメジャーデビューから今年で10周年を迎えることを記念してベストアルバム『俺タチのまとめ盤』を1月25日(水)にリリースした。これまでにリリースしたシングル全12作品に加えて、これまで7作品リリースしたアルバムの人気曲、最新アルバム『スタートライン』から4曲、そしてライブではテッパンとなっているブチ上げチューン「まだ止まれない」が初CD化されての全33曲を収録。まさにこれまでド直球のストレートで想いを歌とライブにぶつけてきた彼らの10年を凝縮した集大成であり、あらたな未来へと駆け出す出発点である1枚に。“ファンの想いがあってこそ”リリースできたと語る今作に至るまでの10年を振り返ってもらいながら、アルバムについてはもちろん5月27日(土)に服部緑地野外音楽堂での開催を控えるワンマンライブに向けての意気込みを、LANCE(MC&VO)、RYO(VO)、MAKKI(DJ)に聞いた。
――先ずは、デビューからこれまでの10年を振り返ってみていかがですか? デビュー当時の心境とかって鮮明に記憶されていますか?
LANCE:それぞれ3人が個々で活動にしていた音楽が、今のスタイルと全く違っていたので、結成した当初は曲を作りながら周りの意見を聞くようにしていましたね。それも今まで関わってきていたクラブの人間とかではなくて、家族だったり兄弟に最初は聴いてもらっていました。当時で言うと“売れ線”とか“セルアウト”という言葉がはっきりしていた時代だから、多くの人に聴いてもらえるような楽曲を作りはじめた頃は、いろいろな人に聴いてもらうにはまだ恥ずかしさがありましたね。
MAKKI:アンダーグラウンドと邦楽ナンバーの境目がくっきりしていた時代だったんですよね。今はほとんど無くなってきているとは思うんですけど。
LANCE:先ずは1曲作ってみてというのを続けていて、結成から1年して周りの反応にも手ごたえがあるなと思った頃に、そのままメジャーに聴いてもらって映画のタイアップが決まってデビュー。と、あっという間に進んで行っちゃったので、正直なところ下準備がなさすぎる段階だったので、心の準備をしながら活動していたところはありました。ライブにしてもそうなんですけど、初めてステージに立った時は驚きましたね。これまで活動してきたクラブとかとは違って、みんながステージを観ている状況で横に手を振ってくれたりするライブをしたことも無ければ観たこともなかったので、すごい新鮮というか不思議でした。いつかドッキリだと知らされるんじゃないかと疑っていたぐらいですから(笑)。
――最初は環境に慣れるところから始まったと。
RYO:そうですね。戸惑いしかなかったです。
MAKKI:何も分からないままだったから、最初の1年がすごく長く感じたんです。
RYO:僕はそもそも野球部から出てきた体育会系でしかなかったので、そういうある意味真逆の音楽業界という世界に慣れることができず、胃に穴が開いて入院をしたりもして。
――どれぐらいのタイミングで慣れてきたり、自分のパフォーマンスをコントロールできるようになってきたんですか?
RYO:それも体育会系の精神なのかわからないですけど、とにかく数を重ねて身体を慣れさせるしかないんですよね。
RYO 撮影=kazuyatanaka
LANCE:時期的にはいつか分からないですが、ある日のインストアライブがひとつのきっかけだったと思います。お店の中なので、出せる音にも制限があって、ギリギリの音を出してもそれほど出るわけではないし、テンションだけマックスだとバランスが悪いんじゃないかなと考えているうちにライブでは遠慮してしまっていたんです。そういう力の強弱を加減していることがダメだなと思うようになって、そこからMCでさらけ出すというか、普段以上にテンション高く笑いに徹しようと決めた気がします。感動する話とか曲の内容を説明したりとかいろいろあるんですけど、メインはお客さんと同じ地に足をつけて物を見たときに笑えることを話すようになりました。
――例えば、どういった話を?
LANCE:本当にたわいもない、「今日この会場に来てる途中で、新幹線にこういう人がいたわ」とか(笑)。そうやって自分たちの距離感というか、温度差みたいなものを縮めていこうと。それである時にはライブで、誰に頼まれたわけでもないんですけど裸にふんどし姿になってみようと思ったんです。それぐらいなんでもやって振り切ろうと想えるようになりました。俺たちって、別にすごく本格派の歌を歌っているわけでもないと思うんです。元野球部の男たちが、今度は歌に全力で想いをぶつけていこうぜというわけだから、その気持ちを伝えるためには歌を練習するべきなのか、歌詞を煮詰めるべきなのかと考えたときに、一番分かりやすいのは目の前に来てくれたお客さんに、「CDではこういうイメージだったけど、ライブでは意外なギャップを感じた!」という方が、ギャップが広がるというよりも逆に身近に感じてもらえるんじゃないかなと。そういうライブをできたらなと、思うようになったのが戸惑いだったり探りながらだった状況も全部とっぱらえた時かもしれないですね。
――それは、みなさんも同じタイミングなんですか?
RYO:たぶん個人個人であるんじゃないですかね。僕は本当にライブだけで慣れていくしかなかったので、そういうことを考えることもなく数を重ねていく感じでしたね。むしろよくわかってきたのは最近だと言っていいかもしれないです。ずっとがむしゃらでしかなかったものが、こういう見せ方もあるとか。3人の立ち位置じゃないですけど、ステージ上でもそれぞれのやるべきことみたいなものが見えるようになってきたのはほんと最近ですね。
MAKKI:僕は、最初の頃はゴリゴリのアンダーグラウンドから出てきたヒップホップDJでしたから、ずっと斜に構えていたというか(笑)。
LANCE:いまやアイドルヲタクを公言してるからね。
MAKKI:そこのチャクラを開いた時から変わったかもしれないね(笑)。昔はアイドルが好きでも、アイドルが好きということがカッコ悪いと思っていたんです。だけど今ではこういうアイドルが好きでって公言できるようになって、そこからは自然体というか自分らしいパフォーマンスができるようになりましたね。
――きっかけはあったんですか?
MAKKI:ラジオ番組で面白い企画とかをやらせてもらえるようになった時に、アイドルからのコメントをいただいたりすることもあって、そうすると自然と言えるようになって尖がっていたものがだんだん丸くなってきました(笑)。DJブースよりも前に出るようになったり、サイリウムを持ってヲタ芸みたいなことをやったりね(笑)。“アンダーグランド”か“セルアウト”かと言われる時代に生きていたのが、今ではそういうのもない時代になって、音楽が好きな人間として良いものになるんだったらやればいいという考え方に変わりました。
MAKKI 撮影=kazuyatanaka
LANCE:さぐりながらと言いつつも、デビューから1年後には甲子園でライブするつもりでいたんですよ。それは現実になってもならなくても、それぐらいのアーティストになっていたら翌年はどういうステージを目指すんだろうなと向こう1年レベルで先を見て想像はしていました。それが次第に想像の奥行きがなくなってきて、5年ぐらい経ったころには自分たちの活動の流れがゆっくりになってきているのを感じるようになったんです。
――そこでまたひとつターニングポイントになったんですね。
LANCE:それからはライブに力を入れるようになりましたね。リリースとかプロモーションよりも3人で発揮できる力をどれだけ養っていけるのかを、これからはやるべきかなと思ったのがそれぐらいです。そこからはぶっちゃけ、売れ行きとかランキングとかよりもライブのことしか考えていなかった。比重をライブに傾けていこうと、リハのやり方とかも変わってきました。RYOが言った、それぞれのポジションからライブを見た時、俺は一番お客さんを見ていないとダメで、隣にいるRYOが俺を見てコントロールしている感じですね。俺はお客さんをコントロールしながら、実はその横でRYOが俺をコントロールしていて、その後ろでMAKKIが俺たちのバランスをとっているみたいなポジションが出来てきたのは、それからしばらくして……本当にここ最近というか。
――隣でコントロールというのは、意識的にできるようになってきたのでしょうか?
RYO:ここ最近になってから視野が大きくなってきたとは感じるんですけど、正直コントロールしているとかまでは感じてはいないんです。やっぱりそれもずっと積み重ねてきて覚えたものが、こう動くんだったらこう動いた方がいいんだろうなということを考えずにできるようになってきたので、やっと身体に出てきたんだろうなと。
――後ろからバランスを見ているということばを受けて、MAKKIさんはいかがですか?
MAKKI:長くやっているので、空気感とか阿吽でタイミングをとるようにはなっていますね。話ではこうしようと決めていたけど、けどライブでここを変えた方がいいなと思ったら変えたり。それは阿吽でできるようになりました。
――そこまでたどり着くまでのタイム感っていうのは、あっという間でしたか?
LANCE:7作出しているアルバム曲をたどっていくと長いなと思うときはありますね。リハーサルで久々にこの曲をやろうと思っても歌えない曲があったりしますから。だけど、感覚的にはすごく一瞬です。例えば、高校生の時だったら修学旅行とか体育祭とか、思い出になる節目みたいなポイントがあるじゃないですか。それがデビューしてからはずっと制作とライブの繰り返しだから、これをずっとやり続けられた10年での思い出をひとつだけあげてくださいと言われてもピンとこなくて。だからまだ高校1年生の1学期みたいな感覚です。運動会も学園祭もまだ来ていないしずっと毎日授業があって、週に3回体育があってそこがすごく楽しいみたいな。そういう感覚でライブを楽しみながらやってきたから本当に一瞬ですね。
LANCE:最近、本当に思うようになったのが、みんなと同じ10年が流れて歳をとっているんですけど、一瞬一瞬を思っているから老いていることを忘れているんですよ。
MAKKI:たまに自分はまだ若いと思っている感覚はありますね(笑)。
LANCE:そう! 逆に、自分はもう若くないんじゃない?と思うこともあって。それも疲れやすいとか体力的に出てきているわけでもなくて、なんだか同級生が老けてきたとか(笑)。制服で観に来てくれていたお客さんが子供を抱いていたりとかするのを見ると、すごく時間の流れを感じます。家にひとりでいたり、制作とかがないとふと我に返って自分一人の35歳はどうでもいいけど、世の中の35歳はこうだぞと考えるようになった。それからですね、ふんどしにならなくなったのは(笑)。それぐらい一瞬です、この10年は。
LANCE 撮影=kazuyatanaka
――RYOさんもメンタリティ的な老いは感じますか?
RYO:積み重ねてきた分、どんどんメンタリティは強くなってはいますね。ただ、体力が高校時代にくらべるとやっぱり落ちてるし、子供の成長を見ていると調子外れなことしちゃうと迷惑かかっちゃうなとか考えちゃう部分はあります。
――そういうところは歌詞を書いたり作曲に影響は?
RYO:そうですね。僕が書く歌詞は自分のことは書かずに、子供のことを考えながら書いています。
LANCE:日常生活自体が変わっていないので、そこまでの変化はないけれど、俺の場合はなんでもハマりやすいんですよ。分かりやすく言うと、ブルース・リーの映画を観て劇場を出たら熱くなってるみたいな、そういうハマりやすさがあって。流行りにハマるのではなく、自分が好きと思って入り口を開いた場所には一気にハマるんです。だから曲を作る時も、ONE☆DRAFTとして作る範囲が癒されるような曲から元気をもらえる曲までって決まっているとするなら、『マトリックス』を観てハマったら、この幅が広がるどころか別世界の枠で作っちゃう。そうなっちゃうと僕たちの曲じゃなくなったりするんですけど、それをブラッシュアップして作った曲が「LA LA LA ラビリンス」という曲だったり。基本、こういうぶっとんだことをやらなければ、自然とONE☆DRAFTらしい曲になるので大丈夫だという制作の向き合い方で作っています。だから、そこまで年齢のことは影響していない気はします。
――なるほど。ちなみに、今回のベスト盤でいうと「LA LA LA ラビリンス」は入っていませんね。選曲はどのようにして決まったのですか?
MAKKI:シングル曲をすべて入れるのは決まっていて。あとはバランスよく、昔に偏らないのと今に偏らないようにという感じですね。
RYO:まぁ、ドラフト会議みたいな感じなんだよね。
MAKKI:最終的に曲順は選べないということになって、最後の曲だけ決めてあとは付箋に曲を書いてクジにして引いたんです。
――クジで決めたんですか! 「アイヲクダサイ」、「TRAIN」、「TIME」のじっくり聴かせる流れとかかなりグッときたのですが、あれも……?
MAKKI:クジ運です!
LANCE:今回のベスト盤っていうのは、ファンの人たちがずっと想ってくれていて、求めてくれたからレーベルも動いてくれて出せたアルバムなんです。こういうリリースは10年やってきたからこそで、デビュー当時だったらできなかっただろうなとは思いますね。だから、これまで出してきたシングルとかとは違った作り方です。そうするとタイトルも『ONE FOR ALL』とか『DREAM MAKER』みたいなタイトルにはできないから、分かりやすくこれが『俺タチのまとめ盤』だと。曲順にしてもどれも想い入れがあるし決められないからクジにしてね。これを機にできるライブとか、新しいアルバムができたらいいなという、ひとつのスタートラインになったらいいなと思います。
MAKKI:このベストをリリースした意味って、きっと名前だけは聴いたことあるけど曲はあんまり知らないって人に、これからONE☆DRAFTを知ってもらういいきっかけの1枚になることだと思うんですよね。今まで周りの友達とかに、「どれ聴いたらいい?」と聴かれてもどれも一生懸命作ったし選べなくて、「最初に作ったのはこれだよ」とか、「最近のはこれだよ」って勧め方をしていて。でもこの1枚を聴いてもらえたら、間違いないかなと。今までの歴史も全て詰まっているので。
ONE☆DRAFT 撮影=kazuyatanaka
――ファンの方と向き合ってきた10年の集大成であり、新たな出発点にもなる1枚になっているのですね。最後に、5月27日(土)には服部緑地野外音楽堂にて『「蜂桜祭」~大阪服部緑地 野音SP~』の開催が決定していますが意気込みをお聞かせいただけますか?
RYO:意気込みというほど気張ってやることでもないとおもうんですけど、個人的にはやっぱり、前回ライブした時が大雨だったので今回はどうにか雨降らないでくれと思いますね。
MAKKI:雷も鳴っていていつ中止になってもおかしくない状況だったからね。今回は、快晴であってほしいなとは思います。せっかく大きい舞台でやらせてはもらうんですけど、やることはいつもどおりかな。せっかく来てくれた人が何か感化されて、帰りにCDを爆音でかけたり、よりファンに好きになってもらえたら嬉しいですね。
LANCE:僕はこのライブの翌日に死ぬんだと思うんです。
MAKKI:コメントが独特すぎるわ!(笑)
LANCE:おそらく3人でのライブとしては最後になると思うんです。
――それってつまり?
LANCE:そのままです。だから、最近ライブを観ていなかったなという人も、みんなが来てくれたら盛大な晴れ舞台になると思うんですよ。僕も最後だって、2人に伝えてライブに挑むからこの上ないライブになると思うんです。なので、今回が最後だと思って観てほしいです。それで、死ななかったらまた次があるよと嬉しくなるんじゃないかな。と、こういう“今日が最後で明日死ぬと思ってライブします!”ってスタンスのことを、10年前も言っていたなと思い出してつい(笑)。今でもそういう気持ちは変わっていないんだなと思ったので、そういう気持ちで当日を迎えたいですね。最後だと思ってやれば、過去のこと振り返りながら歌っていると思うし未来は見ていないと思うんです。そうすれば、終わった後に、楽しみにしていた日が過去に感じて、明日・明後日ぐらいのほんの少しの未来に新しい希望だったり楽しいことを感じてもらえるようならライブにしたいなと思います!
取材・文=大西健斗 撮影=kazuyatanaka
2017年1月25日(水) RELEASE
2枚組全33曲収録
TKCA-74459 3,500円+税
【Disc-1】(先攻)
2. ごめんよ
3. 会いたい夜 feat. Macheri
4. ALL FOR ONE
5. Over Drive
6. フルサト
7. この胸に直接響いてた
8. 陽炎の向こう
9. 湾怒羅不斗 〜不屈の特攻隊長〜
10. 青春の雨 (なみだ)
11. SUMMER DAYZ
12. ダイヤモンド 〜世界で一番固いイシ〜
13. 一度きりの大声で
14. 一歩一歩 〜終わりなき道しるべ〜
15. ワンダフルデイズ
16. アンコール
2. 男魂
3. キミに恋するオレの唄
4. アイヲクダサイ
5. TRAIN
6. TIME
7. 情熱
8. Paper Plane
9. スタートライン
10. 虹 〜“晴れ”ときどき“涙”〜
11. Signal
12. 夜空
13. ラヴソング
14. カレンダー〜ケンカしたり、ふざけたり、泣かせたり〜
15. 5年後...
16. まだ止まれない
17. アンコールII