ロバート メイプルソープ写真展『MEMENTO MORI』レポート 生と死が内包する「美」を感じる

2017.3.21
レポート
アート

All Mapplethorpe Works c Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.

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シックでスタイリッシュな建物の中に、豪華なショーウィンドウと宝物のような品々を閉じ込めるシャネル銀座ビルディング。まさに女性の憧れが詰まったような場所だ。そんな華やかなビルの4階、シャネル・ネクサス・ホールで、2017年3月14日(火)~4月9日(日)の期間、1970~80年代を中心にアメリカで活躍した写真家、ロバート メイプルソープの写真展『MEMENTO MORI』が開催されている。

 

全91点の選び抜かれたメイプルソープ作品

メイプルソープの写真展は、日本では2002年以来ほぼ15年ぶりとなる。近年メイプルソープ作品は人気を集めており、値段も高騰している。そんな中、今回展示されているのは91点。この機会を逃したら、これほどの数の作品を見られるチャンスは得られないかもしれない。

メイプルソープの写真はヌードの被写体も多い。それゆえにしばしば性的分脈だけで鑑賞され、「これはファインアートといえるのか?」と物議を醸してきた。しかし、メイプルソープが捉えた精神性や完全な美は、ヌードの写真のみならず静物の写真などを含めて一通り鑑賞し、作家の世界観全体に入り込んだ上で、初めて共感することができよう。

メイプルソープと同世代のアメリカの写真家はたくさん存在する。加えて、写真史という流れの中でメイプルソープの作品を見ることも意義がある。しかし、奥深く複雑な主題を持つ作家の作品は、まとめてじっくり味わいたいものだ。当展示はその願いを存分に叶えてくれる。

All Mapplethorpe Works c Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.

 

メイプルソープ自身が使ったオリジナルの額で
彼が愛した人々をみつめる

メイプルソープが人間を扱う場合、男性であれ女性であれ、しっかりとした筋肉で覆われた存在感のある身体の持ち主であることが多い。彼ら・彼女らはセクシーでありながら、カメラマンや鑑賞者に媚びずにまっすぐな眼差しでこちらを見返す。そこには、鑑賞している側がどぎまぎしてしまうほどの芯の強さが秘められている。きっと彼らはメイプルソープの愛した人で、またメイプルソープを愛した人なのだろう。そうでなければ、人体をこんなにも魅力的に撮ることはできないはずだ。

写真はシルバーや黒の額に入れられている。モダンな色味はモノクロ写真を引き立たせ、会場全体に荘厳な雰囲気を生み出している。この額は、ロバート・ミラー画廊で1970年代に使用されたもので、メイプルソープ自身が選んだオリジナルのものであるとのこと。

All Mapplethorpe Works c Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.

 

会場のビルを設計した
ピーター マリーノのコレクション

今回のメイプルソープの写真は、会場であるネクサス・ホールのみならず、このビルディングそのものを設計したピーター マリーノのコレクションだ。マリーノは建築家でありながら、アートの支援者・サポーター・コレクターでもある。中でもメイプルソープ作品のコレクションは30年にもわたって続けており、150点ほどを所持しているという。今回はそんなマリーノの珠玉の作品集から、選りすぐりのものを紹介している。

会場は、入口から二つの白い空間を通り、最後に黒い部屋へ至る構成になっている。白い空間は光に満ち、とりわけ被写体が輝いて見える。黒い部屋には人と植物の作品が多い。人の肉体や花の輝きが示す「生」と、その背後に控える「死」の匂いを強く感じさせる。この展示室では「MEMENTO MORI」というテーマを、とりわけ明確かつ濃密に感じるように思った。

All Mapplethorpe Works c Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.

マリーノにとって、偉大なアーティストは、「Timeless」「Eternal」「Great beauty」を備えているという。メイプルソープはこれら全てを満たしており、今後も更に評価が高まっていくアーティストであるといえよう。永遠と一瞬、強さと儚さ、生と死、相反する両極を満たし、緊張感と静謐さを湛えたこの展示を、どうかお見逃しなく。

 

イベント情報
MEMENTO MORI
ロバート メイプルソープ写真展 ピーター マリーノ コレクション

開催期間:2017年3月14日(火)~4月9日(日) 12:00~20:00 (入場無料・無休)
会場:シャネル・ネクサス・ホール (中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
主催:シャネル株式会社
http://chanelnexushall.jp/program/2017/rm_peter_marino/