エマ・ワトソンの完璧なディズニープリンセス像がスゴイ! 『美女と野獣』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第二十五回

2017.4.21
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『美女と野獣』 (C)2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。

「ホラー映画しか見ないんでしょ?」と人に勘違いされがちな私だが、一番古い記憶にある映画は、ディズニーのアニメーションだ。最近では『アリス・イン・ワンダーランド』(10)や『マレフィセント』(14)など、実写版として作られるタイトルも増えてきたので、私のようにアニメ版を観て育った大人たちもまだまだディズニー作品に魅了され続けることだろう。今回紹介する『美女と野獣』も、そんな実写版の一本だ。

ちなみに本作はヒロイン・ベルと野獣の恋物語をメインとして展開するのだが、そこは各所で取り上げられていると思う。このコラムでは割愛するのでご了承いただきたい! 

森の奥深くにある城に住む美しいが傲慢な王子は、ある時魔女の呪いによって恐ろしい野獣の姿に変えられてしまう。魔女が残した一輪のバラの花びらがすべて散る前に、王子が誰かを心から愛し、愛される“真実の愛”を見つけなければ、その呪いは解けることがないという。月日は流れ、美しい村娘・ベルが行方知れずの父を探して城にたどり着く。読書が好きで聡明な彼女の存在は、孤独に暮らす王子と城の召使いたちに変化をもたらしてゆく。二人の出会いは、はたして“真実の愛”を生むのだろうか。
 

一瞬たりともブスにならないエマ・ワトソン

『美女と野獣』 (C)2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

ヒロイン・ベルを演じるのは、『ハリー・ポッター』シリーズで賢くて可愛いハーマイオニーを演じたエマ・ワトソン。その凜とした眉や瞳は、自分の意思をしっかりと持ったベルのイメージそのままだ。本作のキービジュアルを一目見たときから、エマ・ワトソンは「ベルそのものだ!」と思えるほどに役にピッタリはまっていた。何より、歌っていても怖がっていても、一瞬たりともブスにならないのがスゴイ! 最初から最後まで、ため息が出るほど美しいのだ!

そのほかのキャストも、アニメから飛び出してきたような面子ばかり。ベルを妻にしようと企む、村の性悪イケメン・ガストンを演じるのはルーク・エヴァンズ。アニメ版のガストンよりも、もっとセクシーに仕上がっている。アニメ版のガストンは足も臭いし横暴で、どうしても“村娘たちがこぞって惚れる男”には見えなかったのだが、ルーク・エヴァンスの演じるガストンになら、キュンとしちゃうのも仕方ない。足の臭いなんてどこ吹く風である。とはいえ、性格はアニメ版に輪を掛けて暴力的なダメンズになっているのが残念ではあるが。

ガストンの腰巾着ル・フゥを演じるジョシュ・ギャッドの、いかにもお調子者というビジュアルもアニメ版そのもの。本作のル・フゥは、やりすぎなガストンに辟易している節もあるが、それでも彼のそばにいる“理由”が描かれている。ビジュアルはそのままに、さらに人間味のあるキャラクターに作り込まれているのが素晴らしい。

 

完全再現+エピソード追加に感激

『美女と野獣』 (C)2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

キャラクターの心情を掘り下げるエピソードが随所に挿入されているのがとてもうれしかった。例えば、家財道具に姿を変えられてしまった召使いたちが、「また人間に戻れるのかな?」と落ち込んだり、互いに励まし合ったりする姿からは、彼らの心情が見えるのでより思い入れが強くなるのだ。私がアニメ版を観てずっと気になっていた、“召使いたちが王子のワガママな振る舞いを見逃していた理由”も明かされるので、彼らと野獣(王子)の関係性もはっきりと見えてくるはず。

そして何と言っても、歌のあるシーンが本当に、本当に、本っ当に良かった! 冒頭で、ベルは借りた本を返すために村に繰り出し、村人と「朝の風景』」を歌う。「ベルは風変わりな子だ」とこの歌、曲に合わせて飛び石をし、リズムを刻みながら歩くベルの可愛さったらない。私はこのシーンで本作の完璧さを確信した。

また、燭台の給仕頭・ルミエールたちが、ベルひとりのために開く晩餐会で「ひとりぼっちの晩餐会」を歌うシーンは格別に美しい。魔法をかけられたようなキラキラした映像に目が離せないどころか、感激しすぎて涙がこみ上げてきたほどだ。

私は正直、子どもの頃から親しんできたディズニーアニメの中でも、“ディズニープリンセス”と呼ばれる存在にはあまり惹かれなかった。「王子様が迎えにくればそれで幸せ!」という受け身なイメージが好きになれず、『ふしぎの国のアリス』(51)のような主人公が好奇心から冒険に出る作品のほうを身近に感じられたのだ。しかし、最近のディズニーアニメには、王子様の力を借りず幸せになる『アナと雪の女王』(13)、自ら戦い、道を切り開く女の子を描いた『モアナと伝説の海』(16)など、“強い女性が主人公”というイメージがある。今考えてみればその先駆けは、自らの意思をしっかりと持ったベルだったのではないか。美しくもしっかりと独り立ちしたベルのイメージを、本作とエマ・ワトソンがさらに完璧に仕上げてくれたことには感謝しかない。皆さんも劇場を出る頃には、ベルのことが大好きになっているはずだ。
 

『美女と野獣』は公開中。

作品情報
『美女と野獣』

監督:ビル・コンドン 出演:エマ・ワトソン、ダン・スティーヴンス、ルーク・エヴァンス
原題:Beauty and the Beast 
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(C)2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.