【SPICE対談】ラジオの中の人[関西編] FM802・DJ竹内琢也×飯室大吾【前編】

インタビュー
音楽
2017.4.25
左から、飯室大吾、竹内琢也

左から、飯室大吾、竹内琢也

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少々ご無沙汰している企画『ラジオの中の人』。DJとディレクターの対談という企画も3回目を終え、企画を通して色んな角度やパターン、そしてパーソナルな部分も含めて構成されているFM802の企画力や発想力に興味を持ち始めた。そこで企画第4弾は、今まではDJとディレクターという関係性を含めた対談から切り口を変えて、構成から曲のセレクトまで基本ワンマンスタイルという、DIYな番組『DASH FIVE!』(毎週木曜日、金曜日5:00~7:00)のDJ、竹内琢也氏(以下、TT)へインタビューを敢行した。インタビュアーはお馴染みFM802・飯室大吾氏です。

――この世界に入ったキッカケを聞かせてください。

ラジオ DJになりたいなと思った時、ちょうど学生で広島に居たんです。DJになるにはどうすれば良いのか分からなくて。広島FMがSUNMALLというショッピングセンターで公開放送をやっていたんです。そこに直接行って「DJになりたいんですけど、仕事ないですか?」と生放送中のDJさんに声をかけると、ちょっと痛いリスナーと思われて断られたんです(笑)。で、また別の人に声をかけて断られてしまって。心折れそうになって、あと1人に声をかけてダメなら帰ろうと思って、最後に声をかけた人が「君、面白いね。最近そうやってDJになる人が少ない」と言ってくれて、公開放送終了後に話すことになったです。そこで“DJの仕事はないけど、番組の見学においでよ”と言ってもらって、広島FMの番組『9ジラジ』という番組を見学しにいきました。

――ちなみに3人目に声掛けて「君、面白いね」と言ってくれた人というのはディレクターさん?

そうですね。『9ジラジ』という番組のディレクターさんです。週4回ある放送の週1回行ったり週2回行ったりするうちに、僕がちょっと見学だけだと物足りなくなって……。週に1回だけ番組が終わった後に、ラジオの基本でもあるオープニングトークの練習をやってみようと言われて、3分くらい喋って1曲かけるというのを半年弱やり続けたんですね。そうすると、上手くなったと言われるようになって。ただ、ここで練習でやっているのと電波になるのは全く違うからと言われて、コミュニティの枠をディレクターさんが知り合いの人に言って紹介してくれたんです。それがFMちゅーピーという、広島中国新聞がやっているコミュティなんですけど、そこの夕方の番組で週に1回、番組内のひと枠10分をいただいて、最初は自由に何をしても良いというコーナーだったんですけど、半年後にアメリカ・ヨーロッパ以外のアジアとかアフリカのポップスを紹介するという企画を持ち込んだのがOKになったんです。そこから自分でいろいろ調べてワールドミュージックのトライブ系というよりはポップスで「南アフリカのチャートでは今これが……」みたいなことをシュールにやっていたんですよ。そういうこともあって、広島に住んでいたので広島でDJになりたいなと思ってたんです。でも、なかなか難しくて……僕を拾ってくれたディレクターさんも辞めちゃって。それで居づらくなって他のオーディションも受け受けてみたら?と、そのディレクターさんに言われて、FM802のオーディションがたまたま一次募集してて応募したのがキッカケですね。

――あ、そうなんだ。 決まってから大阪にきたの?

はい。そのオーディションで1発目に受かって、大阪にきました。オーディションを受けたのが大学4年の時で、5月くらいに1次審査のテープを出して夏頃に決まりました。学生ということもあり翌年の1月から、最初の1ヶ月は広島と大阪の往復で2月に大学卒業と同時に大阪に引越してきました。

――そもそも1番最初に“DJになりたい”と思ったキッカケは?

特にこれと言ってないんですよ。

――ないにしては、かなり突き動かされて行動してる気がするね。

気持ちの中で、やりたい仕事をしたいなとか、仕事とプライベートが曖昧な仕事に就きたいなというのがあって。

――で、音楽は好きだったと?

そうですね。

――音楽好きで仕事とプライベートがあまりないような仕事ってラジオDJ以外にもいっぱいある気がする。

そうなんですけど、何か大きな出来事があったわけじゃなくてDJが良いんじゃないか?と思って。わりとピンときたというか……自分なりにいろいろ考えてDJを選びました。でも、実はそんなに人前で喋ったりするタイプではないんです。一度、学生時代に司会を友達に頼まれて、やってみると楽しかったというのはあったんですけど、人前に立つということは苦手で司会とか無理やなと。それに比べてラジオは顔も見えへんし1人で話してるだけだから、良いんじゃないかなと思ったという感じです。あとは運も良くてオーディションを受けて合格して番組を持てるまで早かったですね。

――もうめちゃめちゃトントン拍子ですよね。最初のオーディションの時、一次審査が5分間のデモテープを作るという審査なんですけど、どんなテープ作ったか覚えてる?

親戚のおじさんの話をしました(笑)。何故かと言うと、親戚のおじさんが奈良に住んでいて、広島に居て情報が入ってこない僕に802のオーディションの話を教えてくれたのが奈良のおじさんなんです。だから、おじさんの話をしようと思って。62歳なんですけどイーグルスが好きだったので1曲目はイーグルスにしました。イントロに乗っておじさんが好きなイーグルスみたいな紹介をして、何故802のDJを目指したかという話をして、最後に僕の好きなthe pillowsの「ストレンジカメレオン」をかけたんです。

竹内琢也

竹内琢也

――あーそうなんや。面白いなぁ。TTからthe pillowsが出てきたのも今となっては意外な一面。

すごい好きですね。

――じゃあデモテープとか作ったりするのは、その広島FMでオープニングトークの練習させてもらってたり、コミュニティをやってたことが活かされたのでは?

完全にそうですね。

――トークとか曲のタイミングとか、構成も全部自分で考えながらというのは、今のTTがやってることと通じる部分が大いにあるよね。全部自分で考えるDIY DJみたいな。

みんなそうなんじゃないんですかね、オーディションって。中には養成所やある程度キャリアがあって応募される方もいるんですけど、僕の場合は何のツテもないし、右も左もわからないまま自分で作って応募して合格して入ってくるみたいな。

――そこからTTのラジオDJとしての活動が始まって、最初は深夜番組をやって、今のTTのDJとしてのスタイルが確立してる朝の番組『DASH FIVE!』がワンマンスタイルでスタートして。ちょっとワンマンスタイルというのを改めて紹介してくれませんか?

実情はわからないですけど、アメリカでは主流だと聞きます。要は喋りながら自分で選曲して、ミキサーも触って自分で音を出しながらオンエアするというのがワンマンスタイル。802の普段の番組とかは基本的にはDJさんが居て、ガラス1枚挟んでディレクターさんとミキサーさんがいるんです。だけど『DASH FIVE!』では僕がミキサー卓に座って全部1人でやっています。

――これがいわゆるワンマンスタイルというスタイルで、古くはアメリカのFMラジオというのは、そういうワンマンスタイルから始まっていると。

よく映画とかで観るような感じです。

――ワンマンスタイルでやってるおじさんが出てくるアメリカの映画って何か覚えてる?

覚えてますよ。ウルフマンジャックの『アメリカングラフィティ』とかもそうですよね。あと『バニシングポイント』も面白かったですね。

――なるほど。俺は『ドゥ・ザ・ライトシング』という黒人映画が面白かったかな。普通の街角でガラス1枚挟んだところでサムエルL・ジャクソンがDJで、マイク持ってガラス越しの通行人に喋りかけながら、タバコ吸いながら次はコレ!とか言って針落として喋るという映画。ちなみに802ではヒロ寺平さん(以下、ヒロさん)がずっとそのスタイルで、ヒロさんの代名詞ともなっているけど、TTは何故そのワンマンスタイルをやろうと思ったの?

僕もやりたかったというのはあるんですけど、やろうと思ったというよりかは、深夜の番組から『DASH FIVE!』に変わるときに、そういうワンマンスタイル枠として『DASH FIVE!』が出来たんです。ヒロさんの番組の前の1時間番組でヒロさんに学びながらワンマンスタイルをするという……。これは多分いろんな理由が重なり合って、その枠が出来た、っていうことだと思うんです。その当時、“選曲はDJがした方が良い”と自分から言ったりもしていたので、結果的に僕がやらせてもらえることになったという感じだと思うんですけどね。

――なるほどね。ワンマンが出来るDJを新たに802的に育てていこうっていうことだよね。

はい。で、“ヒロさんを見ながらヒロさんから学べ”みたいな枠が『DASH FIVE!』で。それが当時、FM COCOLOですけどヒロさんが6時からされていたので、始まる前の5時から6時の1時間をヒロさんからいろんなことを吸収しながらスタートしたという感じですね。

――普通、ラジオの番組はDJとディレクターのキャッチボールで作られるものがほとんどで、TTも802に入って深夜の枠では、ずっとそれでやってきた中、急にワンマンスタイルDJに不安はなかった?

不安というよりは、すごく嬉しかったですね。ただやっぱりいきなりワンマンでやったというわけじゃないんです。最初はミキサー卓は触らないワンマンというか。とりあえず選曲、構成までを自分でしてフォーマットに起こして、事前にCDのタイムを計って、全部の時間を計って当日スタジオに持っていくという。ただ、細かく事前に準備をしていても、タイムが何分で、これくらい余ってきて、そうすると次7分くらいのトーク尺が残り1分2分とか……。

さらに曲が流れている間に次の曲を考えて、その後の構成もイメージしていかないといけないとか、そういうことが実際にやってみたら出てきたので、これは全然出来ないとなって。だから、やり始めてからの方が不安というか、出来ないなってなったんです。ヒロさんの番組のスタッフさんがワンマンスタイルのサポートをしてくれて、細かいフォローやリクエストを取りに行っていただいたりしていたんです。けどヒロさんの番組でずっとやってるスペシャリストなので、すごく早いんですね。なので、僕も瞬時に自分判断で決めていかないといけなくて、やり始めてから“マジで無理”っていう気持ちになりましたね。

 

――普通やったら、次の曲どうする?とか、次リクエストの曲はこの3つ4つの中からどれにする?っていうことをディレクターに言われて、DJが様々な理由で選ぶ。そして、その曲を選ぶことによって、曲が何分何十秒の曲で、それをかけることによって番組の残り時間がこうなるみたいなことは、こっちは全く計算しなくて。それも含めてディレクターさんが全部調整をしてくれるから、DJはその調整に完全に乗っかって曲を選ぶけど、ワンマンスタイルの場合、それにプラス時間の計算もしないといけない。

そのノリで選んだ結果、トーク尺が多くなったりとか、後々苦しむ事が出てきたので、まずはタイム計算。だけどタイム計算とかわからなくて、その時に他のディレクターさんに相談したら、タイムは雰囲気で分かるようになると言われまして。だいたいこの長さの曲をかけたら、これくらい残るなとか足りないなって。トークと曲どちらでも調整する。しかもどちらで調整するかは、やりながら決めていくということが1番最初の苦しみでしたね。

――ずっとやっていくとね。体感しながら感覚で覚えていくにしても、タイムのことを考えながら喋らないといけないわけでしょ?

はい。だから今までスタッフの方にこんなにもやってもらってたのかと思いました。タイム計るにしても面倒くさいなとか……。

――今は自分で曲をかけながら、タイムも計ってるの?

基本的には当日かけようと思った曲は事前にタイムを計るんですけど、リクエスト曲はDASH FIVE!スタッフさんがタイム計ってくれるんです。ただ、そのスタッフさんがリクエストを取りに行った場合、スタジオが完全に1人になるのでリクエストデーとかマジでヤバイですね(笑)。

――ほんまやな(笑)。802がやってる1日通して全曲リクエストというリクエストワンデーの時は『DASH FIVE!』も、もちろんリクエストオンリー?

リクエストオンリーなのでスタッフさんがリクエスト取りに行ってる間に全部自分でCD変えてジングルもやってというウルトラワンマンになります。

――リクエストデーの時も選曲や構成もTTが1人で考えてるの?

リクエストがきてる中から何曲か先までイメージしてはいるんですけど、かける曲もあればかけない曲もあるし、やりながら作るという感じです。リクエストは結構大変ですね。てんやわんやです(笑)。

――すごいな。僕は先のことも考えながら、曲について喋るのが無理な気がする……(笑)。

オンエアで喋っている時に、次のことを考えるというのはないですけど、残り20秒とかなら何も考えずに喋ることもありますね。ずっとミキサー卓を触るまでは、原稿を作っていたんです。だけど毎日となると原稿を作る時間がなくなって。曲がかかってる間に、パパっと書いたりとかはあるんですけど、ミキサー卓を触り始めるとやらないといけないことが増えていって。
 

後編はコチラ

インタビュー=飯室大吾 取材・撮影=K兄 文=YUMI KONO
 

■第1回『FM802・DJ飯室大吾×ディレクターたっちゃん』はコチラ
■第2回『FM802・DJ落合健太郎×番組ディレクター・スマイル』はコチラ
■第3回『FM802・DJ土井コマキ×番組ディレクター但馬康友』はコチラ

 

番組情報
『DASH FIVE!』毎週木曜日、金曜日5:00-7:00
『BEAT EXPO』毎週月曜日、火曜日19:00-20:48』
FM802 DJ AUDITION 2017https://funky802.com/djaudition/
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