今度のコンドルズは尾崎豊? 主宰・近藤良平が語る新作 『17’s MAP』&稽古場レポート
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20周年というアニバーサリーイヤーを、主宰・近藤良平の芸術選奨文部科学大臣賞受賞というこれ以上ないビッグサプライズとともに締め括ったコンドルズ。新しい歴史の第一歩を飾るのが、おなじみ彩の国さいたま芸術劇場での新作公演だ。
今回のタイトルは『17’s MAP』(セブンティーンズ・マップ)。尾崎豊の名作『十七歳の地図』を彷彿とさせる題名だが、そこはコンドルズ。きっと一筋縄ではいかないに違いない。今度はどんな仕掛けで、見る人を楽しませてくれるのか。近藤良平の頭の中をほんの少しだけ覗かせてもらった。
「地図」という言葉を聞いて浮かんでくるものを、どんどん広げていきたい
――芸術選奨文部科学大臣賞受賞おめでとうございます! 改めてですが、まずは受賞時のお気持ちを聞かせていただければ。
受賞の発表があったときは、みんなからお祝いのメールをたくさんいただいて。まだ電報がこんなに世の中で使われているのかとビックリしました(笑)。本当にいろんな人たちが自分の事のように受賞を喜んでくれて。それがいちばん嬉しかったですね。
ーー20周年という節目にぴったりの受賞でした。
本当ですよね。去年は20周年ということで、NHKホールで感謝公演をやらせていただいたり、とにかくいろんなことをして。その最後を締め括ったのが、今回の受賞でした。ちょうど知らせをいただいたのが今年の1月。発表になったのが3月だったので、すごくキレイに1年を終われたというか、判子を押してもらったような感じがありました。
――受賞を経て、稽古場での佇まいもちょっと変わったり…?
いやあ、変わらないです(笑)。それは僕も望まないしね。
――「文部科学大臣賞受賞者だ!」ってオーラを出したりは…?
ないですないです(笑)。これまでのまんまです(笑)。
――さて、では今回の『17’s MAP』についてのお話を。タイトルはまさしく尾崎豊という感じですが、近藤さんは尾崎豊に何か思い入れが?
世代的には尾崎が僕の3つ上でドンピシャなんですけどね。実は僕も、僕の友達にも尾崎を聴いている人がいなくて。よく売れていたし、それこそカラオケで誰かが歌ったりするのを聴いたことはあるんですけど、何か特別な思い入れがあるかと言われたら、そういうわけではないんですよ。
『17’s MAP』の発案は、プロデューサーの勝山(康晴)で。「2017年になったら『17’s MAP』をやりたい」というのは前々からずっと言ってたんですよ。思い入れはないと言ったけれど、自分の中で尾崎豊は「世代の代弁者」だという感覚はあって。去年の埼玉公演が『LOVE ME TenDER』でエルビスでしょ? で、その前の『ストロベリーフィールズ』がビートルズ。そういう意味では、憧れというか、尾崎も題材としてはビートルズやエルビスと同じところにいるのかもしれないです。
あとは、今回出演するのは14人だけど、今、コンドルズのメンバーは17人だから、それも何かいいなと思ったし。マップというモチーフを今までのコンドルズの公演で使ったことがないので、そこも面白いなと思いました。今でこそマップと言えばみんなスマホで見るのをイメージするかもしれないけど、僕なんかは今でも折り目のついた紙の地図が頭の中に浮かんでくる。あの紙の地図に対する憧れもちょっとありますね。なんだかワクワクするというか。きっとお客さんもマップと聞くと、世代ごとにいろんな感じ方がある気がするんです。そういう不思議な力がありますよね、『17’s MAP』という言葉には。
――ちなみに『十七歳の地図』という楽曲自体は出てきますか?
それはね、まだ現段階ではどちらとも言えないです(笑)。稽古で広げてから、というところですね。
――僕はタイトルを聞いたときに、すごいしっくり来る感じはありました。コンドルズのオッちゃんなんですけど、いい意味で子どものまんまという感じが、17歳というフレーズにピッタリだな、と。
そこも面白いですよね。17歳という年齢をどちらでとるかで印象もだいぶ変わってくる。ギリギリ子どもでいられる最後の年代なのか、あるいは大人になるための最初のステップなのかで、見え方もずいぶん違いますよね。
――近藤さんが17歳だった頃は?
真面目なふりをしていましたね。大学になると真面目なふりをすること自体がアホらしくなってくるんですけど、17歳ってまだ高2なので、親には自分がさも頑張っているように見せながら、頭の中では全然違うことばかり考えていました。僕にとって、17歳は「表と裏が違う」時期かなあ。表と違うっていうだけでも、いろいろ創作のヒントになりそうですね。
――確かに外に見せてるものと、自分の内側にあるものとは全然違っていた感覚があります。
好きでもない相手とすごく仲良くしているふりをするとかね。絶対面倒臭い時期だと思いますよ。
――17歳の頃から今も変わっていないことは?
整理整頓ができないところ。当時からどうやっても部屋がキレイにならないところとか(笑)。身の回りのものをすごく乱雑に置いてしまうくせは全然変わらないですね。
――逆に大人になったなと感じることは?
何をもって大人と言うかだけれど、新聞を読めるようになったとかかなあ(笑)。絶対読まないもん、高校生の頃は。
あとは時間を守るようになったくらいかな。今、大学で講師の仕事もさせてもらってるんですけど、いつの間にかちゃんとした先生みたいになってるから不思議だよね。たとえば構内に土足禁止のところがあって、そこに学生が土足で入ってきたりするんですよ。それ見たら確実に叱るもんね、「おい!」って。そう注意しながら、頭の中で「大人になったなあ。先生っぽくなったなあ」って思います(笑)。
――それこそ尾崎が歌っていたような、若さゆえの「暴走」みたいなものが舞台上に立ち上がってくるのかなあと想像していましたが。
そのあたりがどうなるかはもう少し稽古が深まってからかな? 今はまだ題材出しの段階なんです。コンドルズのつくり方でもあるんですけど、出てくるモチーフをどんどんためる期間があって。アイデアをいっぱいためながら、少しずつかたちにしていくんですよ。
たとえば「暴走」というテーマがあったとしても、最初から「暴走」というテーマありきでつくるわけではなくて。誰かが走っているのを見て、何かの拍子にそれが「暴走」に見えたら「よし、これは暴走だな」って意味づけをしていくような感じかな。そこから、じゃあ「暴走」にするために、たとえば走っている人間を大きな紙に突っこませようというふうに、アイデアを広げていくんです。コンドルズの作品には、そういう「匂う」ものをいっぱい用意する時間が必要で。今は、その真っ最中という感じです。
――本作は、20周年を経て、次なる一歩のための最初のステージでもありますね。
そういう意味でもすごく新鮮です。メンバーは同じなのに、とても新鮮な気持ちでつくっている感じがします。完全新作という意味では、去年の『LOVE ME TenDER』から1年ぶり。今はみんなでものをつくることを、目いっぱい楽しんでいます。
なぜコンドルズを見るとワクワクするのか。その解は、稽古場にあった
充実感のにじむインタビューを終え、取材は稽古場見学へ。
有り体に言うと、コンドルズの作品には「飛び出す絵本」のような面白さがある。ページを開くごとに、いろんな仕掛けが飛び出すあのワクワク感に、子どもの頃、多くの人が夢中になったはずだ。
そんなページを繰る楽しさを、大人になった今も味わえるのが、コンドルズの魅力だと思う。次は何がはじまるんだろうという高揚。そして、予想の斜め上を行く遊び心たっぷりのギミック。だからコンドルズのステージは、ダンスがまったくわからないという人でもシンプルに楽しめるし、見終わった後にとてもハッピーな気持ちになって帰路に着くことができるのだ。
その多幸感たっぷりの仕掛けがどのようにつくられているのか。期待をしながら稽古場を覗くと、主宰の近藤さんが何やら新しいアイデアを思いついたよう。
手にしているのは、紙状の筒。はたしてこれを何に使うのか。
両手に筒を持って十字に構えてみる。
こちらは、筒を平行線状に。
何やら見覚えのある図かと思ったら、そう、計算式だ! 最近、10~20代の間で、こうした計算式の間に人を立たせて写真を撮るのが大流行しているが、コンドルズの計算式はまたひと味もふた味も違う。
何の変哲もない紙筒が、コンドルズの手にかかると、秘密の道具になるから不思議。3Dメガネのように、世界をまったく別のものに変えてしまう。まるでコンドルズ流の手品のようだ。
コンドルズの素敵なところは、これが主宰・近藤良平のワンマンプレイで出来上がっているわけではないというところ。どのメンバーも思いついたことを躊躇なく提案する。それを受けて、まずは何でも試してみる。しっくり来なかったら、何を足せば(あるいは引けば)面白くなるのか、みんなで一緒になって考える(もっとも、このシーンが実際に舞台に乗るかどうかはわからないのだが……)。
その様子は、初めて絵の具を手にした子どものよう。赤、青、黄色と、チューブから思い思いの色を絞り出して、パレットの上で手当たり次第にかき混ぜて、見たことのない色をつくり出す。ほっぺたに、Tシャツに、絵の具が飛んでも気にしない。キャンバスに何を描くのかまだ誰もわからない。ただその工程を楽しんでいる。そんな空気感が稽古場いっぱいに溢れていた。
どうしてコンドルズのステージを見ると、こんなにワクワクするのか。それは、コンドルズ自身が作品をつくるということを誰よりも楽しんでいるから。笑い声あふれる稽古場に、コンドルズの面白さの原点を見た気がした。
これからどんな地図を広げていくのか。それは見てのお楽しみ。
コンドルズは、もう今年で21歳。僕たちの感覚からすれば、もう立派な大人だ。だけど、いつまで経っても、どれだけオッサンになっても、この人たちはきっと変わらず子どものまま。永遠のティーンエイジャーが送る『17’s MAP』、その完成を楽しみに待ちたいと思う。
■日程:5月20日(土) 14:00/19:00開演、5月21日(日) 15:00開演
■会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
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<前売>一般S席5,000円 A席3,500円 U-25*S席3,000円 A席2,000円
※当日券は各席種ともに+500円。
※U-25:公演時25歳以下対象、入場時要身分証明書。に身分証明書をご提示ください。
※A席(サイドバルコニー)は舞台の一部が見えづらいお席となります。予めご了承ください。
※未就学児のご入場はご遠慮ください。(有料託児サービスあり。要事前予約。)
※車椅子でご来場の方は、公演当日のスムーズなご案内のため、前日までに劇場へご連絡ください。
■構成・映像・振付:近藤良平
■出演:
青田潤一(映像出演)、石渕聡、オクダサトシ、勝山康晴、香取直登、鎌倉道彦、ぎたろー(新人)、
古賀剛、小林顕作(声の出演)、スズキ拓朗、田中たつろう、橋爪利博、平原慎太郎(映像出演)、藤田善宏
安田有吾、山本光二郎、近藤良平
■主催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
■企画制作:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団 / ROCKSTAR有限会社
コンドルズホームページ:http://www.condors.jp/
http://blog.livedoor.jp/condors_saitama/