MERRY 未来への期待にあふれたメモリアルなステージ、日比谷野音に響いた羊達の主張
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MERRY『Tokyo Spring 日比谷デモクラティック ~羊達の主張~』撮影=中村卓
Tokyo Spring 日比谷デモクラティック ~羊達の主張~
2017.5.5(FRI)日比谷野外大音楽堂
さまざまな伝説が生まれたロックの聖地――日比谷野外大音楽堂。しかし学生運動が全盛だった1960年代末、ここでは数多くの学生集会が行なわれていた。若者たちは大学に、社会に反旗を翻して、やり場のない怒りと情熱を権力との闘争に注いでいたのである。それから約50年の時が流れ、4年ぶりにこの地に立ったMERRYが掲げた公演タイトルは『Tokyo Spring 日比谷デモクラティック ~羊達の主張~』。社会に対する疑問や鬱憤を音楽へと落とし込み、特に昨今、痛烈なメッセージを発してきた彼らには似合いすぎのネーミングにシチュエーションである。おまけにステージにはバリケードを模した金網が張り巡らされ、BGMに流れるのは昭和の懐メロやフォークソングという徹底ぶり。その時代錯誤感が逆にオーディエンスの期待を高めるなか、ピアノ音がアナーキーにかき鳴らされると、立ち込めるスモークの中にメンバーが登場して、警報音と共に現れたガラ(Vo)の手には拡声器が! そして金網の向こうから「演説~羊達の主張~」をがなり立てるシュールな景色に、続いて雪崩込む「[human farm]」でアグレッシヴに暴れ回るメンバー5人に、オーディエンスは手拍子で熱狂するほかない。
MERRY『Tokyo Spring 日比谷デモクラティック ~羊達の主張~』撮影=中村卓
「アルバム『NOnsenSe MARkeT』で「千代田線デモクラシー」を歌った2年前から俺には野音が見えていたんです」と、最新シングル「傘と雨」のインタビューでガラも語っていた通り、この日のライブはMERRYにとって大きな意味を持つもの。当然メンバーの気合も半端なく、一打目から重量級の音を響かせるネロ(Dr)に、攻撃的なボーカルでも曲を締める結生(G)、そんな彼とテンション高くギターをハモらせる健一(G)と、ヒリヒリとするようなパッションがステージからあふれ出す。途中、覆面をした学生運動家風のスタッフが金網を撤去して以降も、フォークとパンクを行き来する「Screams of the Dark」を手始めに、よりアナーキーな表情を押し出していくが、中でも度肝を抜かれたのが「絶望」だ。ベーススタンドを持ち上げてステージ前方へと進み出で、ベースソロをプレイするテツ(B)の堂々たる姿に目を奪われていると、なんと突如、客席の後方からガラが走り込んできて座席を裸足で駆け上がり、客席のド真ん中に設置されたセンターステージにスライディング! 床にのたうち回りながら「MERRYを愛してくれ……声をくれ!」と訴えかける、こんな奇天烈なパフォーマンスは間違いなく彼だけのものだろう。
かと思いきや、その直後には「真っ赤な青い春」に「平日の女 -A面-」と、切ないラブソングをアコースティック編成で届けてゆくという柔軟さもMERRYならでは。エキセントリックなパフォーマンスとウェットな歌を実に自然に両立させられるのは、彼らの大きな武器であり、実らぬ恋に身を焦がす女の切なさを学習机に凭れて歌うという冷静に考えれば奇妙な光景も、MERRYだからこそキマるのだ。
ガラ/MERRY『Tokyo Spring 日比谷デモクラティック ~羊達の主張~』撮影=中村卓
見事な五月晴れの心地よい風に吹かれて後半戦ではさらに一歩踏み込み、よりディープな“羊達の主張”を訴えてゆくことに。「世の中では良いことも悪いこともたくさん起きてますけど、この場所が素晴らしいものになれば、それだけでいいです」とネロが語り、前に踏み出して一礼したテツが「帰ってきたよ、野音。俺たちの主張、届いてますか?」と告げての「NOnsenSe MARkeT」では、バックドロップが落ちた向こうからガラが出現! そのシニカルな歌声には妙な説得力があり、続く「【collector】」で淫猥に魅せた最後に“愛してる”と囁くのも意味深過ぎる。「暗闇にピンク」でも絡み合う弦楽器にへヴィなドラムがタイトル通りの闇を生み出し、楽曲の世界観と演奏が見事にシンクロしてゆくのは見応え満点だ。
結生/MERRY『Tokyo Spring 日比谷デモクラティック ~羊達の主張~』撮影=中村卓
そうして結成15年で培ってきた表現力を堪能させたぶん、終盤では「今日は野外のせいか風があるんで、声、3倍にしてもらわないと!」と煽って狂乱の宴へ。気づけば空はすっかり暗くなり、いつの間にかガラは上半身裸になって、「ジャパニーズモダニスト」で赤ライトに染まったステージの壇上でギター隊が見合えば、テツは高々とベースを掲げる。そうして高まるダイナミックなステージングの頂点で贈られたのは「千代田線デモクラシー」。健一のカッティングギターが鳴れば一瞬にして手拍子と合唱が湧き上がり、自虐に満ちたナンバーでオーディエンスが一斉に左右に腕を振る情景は一種異様でありながらも、だからこそ途方もない高揚感を生み出してゆく。これが無類の個性を得たバンドの力なのだ。
健一/MERRY『Tokyo Spring 日比谷デモクラティック ~羊達の主張~』撮影=中村卓
そして、この日を記念すべきステージとして刻みつけた理由がもう一つ。アンコールではなんとテツが首のコルセットを外して登場し、ベースを肩から掛けてプレイしたのだ! 2013年秋の負傷以来、昨年2月の復活公演の後もコルセットにベーススタンドが欠かせなかった彼にとって、それらナシでステージに立つのは実に3年半ぶり。そうして残酷な現実との闘いを歌う「梟」から、シンプルな幸せを尊ぶ「Happy life」を披露する流れも、幾多の試練に見舞われてきた彼らだけに心に沁みて、ガラに寄り添うテツの姿を見るだけで喜びがあふれてくる。そんな当たり前のことが幸せに思えるのも、「Happy life」の歌詞を借りるならば“悪い日もあれば良い日もある”からこそ。4年前、ヘルニアを患ったガラの復活公演を行なったこの会場で、また一歩バンドが歩みを進められたことには大きな意味がある。
テツ/MERRY『Tokyo Spring 日比谷デモクラティック ~羊達の主張~』撮影=中村卓
ここでニューアルバム『エムオロギー』を夏の終わりにリリースすることと、9月3日から2度目となる47都道府県ツアーを行なうことも発表。その名も『システム エムオロギー』と題し、ガラも「久々にMERRYなりの定義をブチかましたいので期待しててください」と誇らしげに語った。そのアルバムから一足早く届けられた新曲も、世代とジャンルが錯綜するMERRY色満点の手強い楽曲で、対する定番曲の「バイオレットハレンチ」ではなんとテツも前屈みでコーラス! 「野音でこの曲をみんなでキ×ガイみたいに歌うのをずっと想像してきたんで、その想像を軽く超えてください!」と最後に再び「千代田線デモクラシー」を放てば本編以上の大合唱が轟いて、ガラは机上の三点倒立でオーディエンスに感謝を表した。
ネロ/MERRY『Tokyo Spring 日比谷デモクラティック ~羊達の主張~』撮影=中村卓
「アルバムツアー、毎回違うライブになると思うので、そのための銭っ子貯めておいてください」(ガラ)
「この景色を忘れずに、次に繋げていきたいと思います」(ネロ)
「MERRYの野音は、いろんな意味で灼熱でした」(結生)
「天気予報では雨が降ると言っていたので、晴れてよかったです」(健一)
「なんかさぁ、身体が軽いんだよね。すごく良かったんで、これをちょっとでも長くできるように俺も頑張るから、MERRYをよろしくね。また、ツアーで会いましょう!」(テツ)
思い思いの言葉を告げたメンバーの表情は明るく、メモリアルなステージをやり遂げた充実感と、未来への期待にあふれていた。『エムオロギー』とは“エム=MERRY”のイデオロギーのこと。確固たる信念と共に進みゆく5人が正真正銘の“完全体”になる日は、もうすぐそこだ。
取材・文=清水素子 撮影=中村卓
MERRY『Tokyo Spring 日比谷デモクラティック ~羊達の主張~』撮影=中村卓
2017.5.5(FRI)日比谷野外大音楽堂
01. 演説 ~羊達の主張~
02. [human farm]
03. 「東京」
04. 自意識過剰型木偶人間
05. ロストジェネレーション -replay-
06. Screams of the Dark
07. ハライソ
08. T.O.P
09. 絶望
10. 真っ赤な青い春
11. 平日の女 -A面-
12. NOnsenSe MARkeT
13. 【collector】
14. 暗闇にピンク
15. Zombie Paradise ~地獄の舞踏曲~
16. 傘と雨
17. オリエンタルBLサーカス
18. Carnival
19. ジャパニーズモダニスト
20. 千代田線デモクラシー
<ENCORE>
21. 梟
22. Happy life
23. 新曲
24. バイオレットハレンチ
25. 千代田線デモクラシー
2017年晩夏発売
※詳細は後日発表。
〜AGITATE #1「妄想」
9/3(日) 熊谷HEAVEN'S ROCK KUMAGAYA (CORE Limited)
9/6(水) 千葉LOOK
9/8(金) 山形MUSIC SHOWA SESSION
9/10(日) 仙台enn 2nd
9/15(金) 岡山IMAGE
9/16(土) 山口rise SHUNAN
9/18(月・祝) 広島CAVE–BE
9/23(土・祝) 三重M’AXA
9/24(日) 静岡Sunash
9/29(金) 沖縄output
9/30(土) 沖縄output
10/6(金) 佐賀GEILS
10/7(土) 長崎DRUM Be-7
10/9(月・祝) 大分DRUM Be–0
10/12(木) 奈良NEVERLAND
10/13(金) 岐阜Yanagase ants
〜AGITATE #2「嗜好」
10/20(金) 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
10/22(日) 金沢vanvanV4
10/28(土) 甲府CONVICTION
10/29(日) 長野LIVE HOUSE J
11/3(金・祝) 北海道cube garden
11/5(日) 青森QUARTER
11/11(土) 名古屋E.L.L.
11/12(日) 和歌山SHELTER
11/14(火) 徳島club GRINDHOUSE
11/16(木) 高知X–pt.
11/18(土) 宮崎SR BOX
11/19(日) 鹿児島SR HALL
11/22(水) 福岡 DRUM Be–1
11/23(木・祝) 熊本B.9 V2
11/25(土) 米子AZTiC laughs
11/26(日) 松江AZTiC canova
〜AGITATE #3「思想」
12/1(金) 宇都宮HEAVEN'S ROCK UTSUNOMIYA
12/2(土) 郡山CLUB #9
12/10(日) 前橋DYVER
12/16(土) 富山SOUL POWER
12/17(日) 福井CHOP
12/22(金) 水戸LIGHT HOUSE
12/24(日) 横浜BAYSIS
1/7(日) 梅田シャングリラ
1/8(月・祝) 神戸VARIT.
1/13(土) 松山サロンキティ
1/14(日) 高松DIME
1/20(土) 盛岡club change
1/21(日) 秋田LIVE SPOT 2000
1/27(土) 滋賀B-FLAT
1/28(日) 京都MUSE
〜AGITATE FINAL「禁断」
2/3(土) 日本青年館
※公演の詳細は後日発表。