flumpoolの“3度目の正直” 日本武道館で鳴らした、過去への決着と未来への挑戦

2017.6.14
レポート
音楽

flumpool

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flumpool 8th tour 2017 Beginning Special「Re:image」at NIPPON BUDOKAN ~ラストコール~
2017.5.20  日本武道館

開演を迎えるまでの間ずっとビートルズが流れていたのは、この会場への敬意と、ロックバンドとしての矜持を表すためだろうか。オープニングムービーを経て、360°オーディエンスが囲むステージに山村隆太(Vo)、阪井一生(Gt)、尼川元気(Ba)、小倉誠司(Dr)、さらにサポートメンバーの磯貝サイモン(Key)、吉田翔平(Vn)が現れたのは、定刻を少し過ぎた頃のことだった。山村が唄い出した瞬間、眩いばかりの光が場内を一気に照らす。1曲目は「Touch」。歌詞に合わせてオーディエンスがステージ目掛けて腕を伸ばし、手のひらの海が瞬く間に広がっていった。レーザー光線が行き交う中で演奏された「覚醒アイデンティティ」に続けて、ライブ定番曲でもあり、長いことこのバンドと共に歩んできた曲でもある「labo」が披露されると、一際大きな歓声が。ファンクラブ限定公演を除けば、オーディエンスに全方位を囲まれた状況でライブをするのは初めてだというflumpool。演奏を重ねながらも、嬉しそうな表情で客席を見渡す4人である。

2009年10月、2013年10月に引き続き、三度目となるflumpoolの武道館ワンマン(いずれも2デイズ)。昨年リリースしたアルバム『EGG』とそのリリースツアーでバンドとしての団結感を強め、その後はEDM調の「FREE YOUR MIND」や山村の俳優デビューなど新たなトライをする一方で、今の彼らを駆り立てる想いをそのまま落とし込んだシングル「ラストコール」をリリース――という近年のflumpoolの活動を見て、今が最もバンド内の風通しがいい時期なのでは?と感じていたため、三度目の武道館に挑戦することが発表された時は何だか合点がいった。なぜなら、今のflumpoolならば、過去の悔しさをも背負ったうえで、未来への道筋を描いていくようなライブを見せてくれるはずだと確信していたからだ。

メンバーもMCで触れていた通り、過去2回の武道館は彼らにとって納得のいかない内容だった。そのため、この日のライブには過去へのリベンジ的な意味合いも含まれていたようで、山村も早い段階から「一度目、二度目は悔しい思いをしたこの武道館です。二度あることは三度あるとも言いますが(笑)、三度目の正直ということで、燃え尽きて、燃え尽きていきましょう!」と客席に語りかける。多少の自虐が見え隠れするところが何とも彼らしいが、音楽の中で赤裸々な感情を吐き出すようになったこのバンドには、今さら苦い記憶を隠す必要などない。「夜は眠れるかい?」はポジティブとはいえない感情すら結実させられるようになったバンドの進化の証として響き、<時に“過ち”に打ち拉がれたりしたんだ/でもそれがなけりゃ君に逢えないままでいた>と唄う「強く儚く」は、2013年のリリース当時以上の意味を持って鳴らされていく。

リベンジ的な意味合いを持つ曲はセットリストの前半に固められていたが、そんな前半戦でのハイライトは、これまでの武道館でのライブ映像がスクリーンに映される演出ののち、4人が向き合うようなフォーメーションで鳴らされた「花になれ」だった。デビューから1年という異例の早さで武道館のステージに立った彼らには、右も左も分からない状態で華やかな舞台に立ち続け、その裏側で自分たちが本当にやりたいことを求め、足掻き、迷い、次第にその葛藤がソングライティングに反映されるようになった――という経緯がある。つまり誤解を恐れずに言うと、デビュー曲である同曲は拭えない悔しさの象徴のような存在でもあるわけだが、だからこそ、このような演出とともに演奏することに決めたのだろう。自らの道程をしっかり踏みしめるように鳴らされる、デビュー9周年のバンドサウンド。<十年後僕に この歌を捧げよう>と唄うこの曲は1年後、どのように響くことになるのだろうか。

今年でデビューから9年、つまり来年にはデビュー10周年を控えたタイミングにあるflumpool。この「9」を可能性や希望を象徴する数字としながら、山村は、この日に駆ける意気込みについて「“あと1年しかない”ではなく“まだ1年ある”。自分たちの可能性を無限大に膨らませられるような一日にできたら」と語っていたが、彼の言葉通り、この武道館2デイズはflumpoolの“これから”を明るく照らすためのライブだった。未来のために“今のflumpoolがやるべきこと”を考えていった時に、“これまで”に決着をつけることが不可欠だったからこそ「花になれ」まではリベンジの色を濃くしたのだと思うが、この曲をクライマックスに持ってこなかったのは、“それよりももっと未来の話がしたい”という気持ちがバンド側にあったからこそだろう。

以降の展開は、二つの側面において、未来へのイントロダクション的な意味合いが強かった。まずは、表現における挑戦。「FREE YOUR MIND」以降の数曲は、筒状のLEDパネルがメンバーを覆い、そこに曲の持つイメージを増幅させるような映像が映し出されるなかでライブが進んでいった。LEDパネルは少し透けていて客席からもその内側をわずかながら確認することができるのだが、メンバーを乗せた円形状のステージは、速度や向きを変えながら回転したり、せり上がったりしていて、その度に客席からはどよめきに近い声が上がる。実験的かつ斬新な演出だが、このように新たな表現に挑戦できるのも、“バンド”という地盤がしっかりと固まっているからこそ。特に、最新曲「ナミダリセット」「ラストコール」が浮き彫りにさせる4人の覚悟はドラマティックな視覚効果に押し潰されないほど逞しく、聴き手の胸を強く打つような説得力が宿っていた。

表現における挑戦からはまだまだ涸れないバンドの可能性を読み取ることができたが、それに加えて、この日の4人は、全編を通じて“これから先、flumpoolがどのような音楽を鳴らしていくのか”、そして、“その音楽を通してどのように聴き手と向き合っていくのか”という点をオーディエンスへまっすぐ伝えようとしていた。例えば、曲に込めたメッセージを伝えるためか、ほぼ全曲においてスクリーンに歌詞を映していたこと。ライブと並行して進んでいった、涙の欠片を花びらにして一輪の花を作る少年のアニメーション。<3度目の正直さえ 絶望に終わっても/4度目をまだ 信じて叫べ>と唄う「Blue Apple & Red Banana」に描かれた不屈の精神。そしてアンコールでの、「思うようにいかないこと、逃げ出したくなるようなこともありました。だけど、それでも、自分たちの足りないところ/欠けているところを埋めてくれたのはみんなです」という山村の言葉。

デビューから9年。初めて楽器を鳴らした時と全く同じときめきを得ることは、もうできないかもしれない。あの頃描いていた青写真とは違う道を、このバンドは歩むこともあったのかもしれない。それでも、いや、だからこそ描ける希望の形がある。「みんなも、誰を信じられなくても、何を信じられなくても、自分だけは信じてほしいと思います。自分を信じて、明るい未来に向かって一緒に戦っていきましょう」(山村)と語る彼らは、誰よりも強くその実感を抱いているはずだ。

<幸せにならなきゃいけない武道館のために>と、ステージと客席を堅く結ぶように鳴らされた「星に願いを」。“約束の歌”としてオーディエンスとともに合唱した「大切なものは君以外に見当たらなくて」。そして、「flumpoolをこの曲で知ってくれた人も多いと思うんですけど、僕らにとっては誤解されるような認知のされ方であったりとか、いろいろな思い出のある曲で……でも本当に、今日来てくれた人へのまっすぐな想いです。届けさせてください」(山村)と紹介された「君に届け」。ネガとポジの両方が渦巻くこの曲をラストに選んだこと自体が、バンドが手に入れた本当の意味での強さを象徴していたように思う。「ここからどんどん化けて大きなバンドになっていくので、一緒に頑張っていきましょう! つらい時は音楽で背中を押すので頼ってください!」という山村の言葉が、どこまでも爽快に響き渡ったのだった。

過去への決着、表現面における挑戦、そして“自分を信じて戦う”というファイティングスピリットの提示。4人が“今のflumpoolがやるべきこと”としっかり向き合い、それをひとつひとつ実行していったからこそ、2017年5月の武道館2デイズは素晴らしいライブとなった。この2日間は、ここから始まるflumpoolの“次の10年”を語るうえで欠かせない出来事になることだろう――と書くと少々堅苦しく思われるかもしれないので、最後に、少しだけ補足を。

360°オーディエンスでいっぱいの景色を前に、最初のMCで「VRみたい。みなさん本物ですか? あれ、2階席はVRかな?」と客席を煽ってみせた山村のテンションをはじめ、黒のロングジャケットを着た阪井が醸し出すえも言われぬ重厚感を「何やねんそれ(笑)」「一番神様っぽい」「というか悪魔?」(※この日の4人の衣装は四神をイメージしたものだった)と容赦無くイジっていく様子といい、仕返しとばかりに客席へ「ナナリューきっかけで来た人~?」と質問しては「あれ、少ないな?」と山村をイジっていた阪井の感じといい、この日の4人は基本的に普段と同じようなテンションで臨んでいるように見えた。メンバー自身に変に背伸びをしたり肩肘を張っている様子がなかったのも、このライブが成功した大きな要因のひとつといえるだろう。

バンドとしての葛藤や悩み、20年以上の長きにわたって一緒にいるメンバー4人の絆、拭えない過去、どこか捻くれた性格、聴き手へのまっすぐな誠意。そのすべてを肯定するでも否定するでもなく、音楽にそのままぶつけているからこそ、今のflumpoolは観ていて面白いし、目が離せない。この秋から始まるツアー、そしてその後に控えたデビュー10周年のアニバーサリーを通して、この4人はどのような未来を描いていくのだろうか。それを楽しみにしていたい。


取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=古溪一道、ヤオタケシ

セットリスト
flumpool 8th tour 2017 Beginning Special「Re:image」at NIPPON BUDOKAN ~ラストコール~
2017.5.20  日本武道館
1.Touch
2.覚醒アイデンティティ
3.labo
4.Natural Venus
5.夜は眠れるかい?
6.強く儚く
7.明日キミが泣かないように
8.花になれ
9.FREE YOUR MIND
10.傘の下で君は…
11.Over the rain ~ひかりの橋~
12.ナミダリセット
13.ラストコール
14.Blue Apple & Red Banana
15.Sprechchor
16.World beats
17.星に願いを
[ENCORE]
18.大切なものは君以外に見当たらなくて
19.君に届け
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