モノブライト・桃野陽介 meets Spotify Vol.1「梅雨にまみれた音楽で濡れよう」
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無類の音楽好きであるモノブライト・桃野陽介が、「音楽ストリーミングサービス 『Spotify』で遊び倒すとこうなる!」を実践していく連載企画『モノブライト・桃野陽介 meets Spotify』。第1回目のテーマは「梅雨にまみれた音楽で濡れよう」です。
モノブライトの季節がやって来た。デビュー当時からライブの時には雨が降る。そう、僕らは雨男ならぬ雨バンドだ。過去には本当に雨バンドなのかを確認するべく、2014年に『雨季雨季ウォッチング』というツアーを全国7ヶ所で行った事がある。見事にすべて雨の日だった。とにかく僕らは雨に好かれているのだ。バンドは結成から11年経とうとしているのに、変わらず愛されている。正直嫌な噂だ。だってそうでしょ、ノリでライブ行こうと思ってる人の大半が「やっぱ行くのやめる」理由って、雨によってノリがかき消されるからだもの。そんな雨がずっと嫌な存在だったのですが、最近は雨を好きになった方が精神衛生上いいんじゃないかと思っている。それに、雨の歌って好きな曲多いし。
前置き長くなりましたが、今回がこのコラムの第1回目です。モノブライトのウルトラホームグラウンドな「雨」をテーマにお届けします。選曲してみて気づいたんですが、雨といっても一概に言えないもんだなあと。勝手なイメージだと雨って悲しいとか切ない事を連想してました。よく雨を涙に例えたりするから。でも、雨上がりの空には虹がかかって幸福を感じたり、土砂降りの中トドメのような雷が落ちたり、なんだか雨って情緒に似てます。
1.Ballet For A Rainy Day / XTC
気持ち悪くて、気持ちいい音楽
モノブライトを結成することになったきっかけが、80年代ニュー・ウェーブを代表するこのXTCというバンド。札幌で一人暮らししていた22才の時に『Black Sea』というアルバムと出会い、「自分の目指すバンドは完全にこれだ」と思った記憶がある。初めて聴いた時、こんなに気持ち悪くて、気持ちいい音楽はなんなんだろうと思った。聴けば聴く程ポップでカッコいい。本当に意味が分からなかった。あり得ない事がアリになる瞬間。出会いの印象最悪の男女が次第に惹かれ合っていくドラマのように、僕はXTCに惹かれていきました。まさに音楽のXTC(エクスタシー)。この曲は、トッド・ラングレンをプロデュースに迎え、揉めまくった末、納得いかないまま完成を迎えてしまったアルバム『Skylarking』に収録されている曲。皮肉にもXTCを代表する名盤として、高い評価受けちゃったというエピソードも好きです。この曲は、すごく人懐っこいミュージカルな感じがして気に入ってます。雨の日の街並を眺めながら聴くと尚良し。雨の日常が少しリッチに感じる事が出来ます。
2.Rainy Streets / Superchunk
土砂降りでも気にせず突っ走る
この曲のいいところは、何回聴いても雨感ゼロなところが最高。そして、そんな雨がどうとか抜きにして曲が気持ちいい。不純物一切なしに楽しい。土砂降りでも気にせず突っ走ってる感じ。初めて東京のO-Westでライブ見た時、見た目はベテランなのに中学生並みの無邪気さを持っていたことに衝撃を受けた。「ライブが楽しい! 大好き!」みたいな気持ちが音にも曲にも声にも溢れていて、とても幸せになった思い出があります。音楽聴き過ぎて頭でっかちになりそうな時、純粋な気持ちに引き戻してくれる音楽です。
3.Rainfall / The Vines
見事に雨にちょうどいい
CD屋で“ビートルズミーツニルヴァーナ!”みたいなのポップを見て「じゃあ好きじゃん!」と思って買ったのがThe Vinesとの出会いでした。90年代オルタナティブのカッコいい部分を鬼のように押さえてます。梅雨時期の気怠いテンションにしっくりくるクレイグ・ニコルズの声。ギターの歪みとアコギの混じり気も、BPMの感じも、見事に雨にちょうどいい。ちゃんと最後雨の音もあるし。何なら雷も鳴りそうな、若干後味不穏で意味深だし。すごいちゃんとしてます。
4.…And the Rain / John Maus
夜中の散歩道をノスタルジックに
『We Must Become The Pitiless Censors Of Ourselves』というアルバムを聴いたのが2011年。いつの時代の音楽か混乱してしまうようなレトロな音像にハマったのが、John Mausを知るきっかけでした。当時、淡々と雨が降るなかよく夜明け散歩をまでしていました。そんな散歩道をノスタルジックにさせてくれる曲です。たまに夜中に散歩していて、自分しか起きていないんじゃないか?ってくらい人がいない事あるんですが、そんな孤独の中でも優しい音の光を感じさせてくれます。
5.レインコート / OGRE YOU ASSHOLE
可愛さの詰まった楽曲
同世代のバンドの中でも群を抜いてストレンジポップでカッコいいのが、OGRE YOU ASSHOLEでした。フェスやツアー先や、海外アーティストのライブで出戸君を見かけては会いに行ってたので、当時は多分ウザイ奴だと思われていたと思うんですが、そのくらい好きなバンドです。レインコートのイメージって、どこかてるてる坊主感あってポップで可愛いですよね。その辺の可愛さがこの楽曲には詰まっていて好きです。
6.Changing The Rain / The Horrors
“雨を探す、探せる”曲
ホラーズはアルバムによってガラッと印象が変わるので面白いですよね。この曲が収録されたアルバム『Skying』は、決して音が轟音でうるさいわけではないのにシューゲイザーを感じる不思議な作品。グロッケンとかシンセベースの感じとか、随所に雨を感じる要素が沢山隠れていて、“雨を探す、探せる”曲。雨が降る直前の感じがします。
7.Everybody Thinks I’m A Raincloud / Guided By Voices
涙の雨。土砂降りです。
この曲は雨というテーマ抜きに本気で好きな1曲。この曲みたいに、ひたすら同じメロディでリフレインし続ける事がしたくて、モノブライトで「こころ」という曲を作りました。それくらい大好きな曲。今、聴きながらこの原稿を書いてますがいつ聴いても“こころ”が突き動かされるこの感じはなんなんだろう? ギターが鳴り続けてる感じと淡々としてるのに気づけばエモーショナルに激しく感じるバンドの強さのようなものが、涙を誘う。涙の雨。土砂降りです。ああカッコいい曲、たまんない。
8.Why Does It Always Rain On Me? / Travis
雨上がりのような1曲
発売された当時は美メロブームがイギリスに到来していたように感じます。僕の高校時代の思い出です。でも十代ってこういう優しい音楽をどこか否定したくて、あまり好きと人前で言ってませんでした(グランジにハマっていたのもあるけど)。ただ、このファーストアルバム『The Man Who』の優しさはとてつもない。どの本読んでも、いろんな人が「名盤だ名盤だ」と口酸っぱく言ってるし、ボーカルは当時流行りの“ソフト”モヒカンだし。悲観的な歌詞と裏腹に曲は前に進んでいきそうで、前向きになれる、雨上がりのような1曲。
9.Rain King / Sonic Youth
オルタナ最高。
さっきの話の流れに偶然なりましたが、高校時代の僕はこっち派だった訳です。グランジ最高、不協和音最高、意味不明最高、すなわちオルタナ最高。「Rain King」という言葉の意味もわからないし、雨感ないし、いろいろ考えても無駄。聴くなら土砂降りで雷の中ダッシュ。せっかくの日常をヤバい奴でありたい。そんなティーンエイジャーの願望を叶えてくれる気がする。ソニックユースはそんな存在。理解出来ないなら、理解出来るまで聞き込みたい、クールでカッコいい存在です(僕の中で)。
10.Looks Like Rain / Passion Pit
こんな「レイン」聴いた事ない
以前、ラジオでも紹介した事のある雨ソングなんですが、未だかつてこんな「レイン」の唄い方を聴いた事なかった衝撃作。れええーええええええーええええいん。文字にするとこんな感じ。遠足とかで楽しみな明日があって、でもめちゃ雨降ってるから晴れないかなぁと願う時に聞きたい曲。フジロック行く前日が雨とか、野外系の前日ですね。
11.柿の木坂 / 電気グルーヴ
電気グルーヴはカッコいい
今年リリースのニューアルバムから。中学生の時に電気グルーヴをカッコいいと思った瞬間から、自分の音楽性が友達とズレているのを感じた記憶があります。『A(エース)』というアルバムを友達と聴いて、友達は「ふざけてるよこの人達」と言っていて、その意味が全くわからないままカッコいい音楽として聴いていた。今でも、その判断は正しかったと思います。カッコいいと思える音楽が日本で生まれてなかったら、音楽やろうなんて思わないですもんね。コレ聴きながら、雨の中自転車で走ったらとても気持ち良さそう。
12.very special!! / サンボマスター
恵みの雨を感じる
この曲大好きで、以前に高松で対バンさせていただいた時、勢い良く「very special!!好きです!」って言ったら「今日やらないよ」って山口さんに言われたのを、今でも覚えてます。恵みの雨を感じます。コレ聴いてたら雨の日が幸せになります。
13.It’s Raining / Quasi
好き過ぎて、誰にも教えなかったバンド
「雨」というテーマでまず一番最初に思い浮かぶ曲がこのQuasiの「イッツ! レイニーン」という歌いだしです。雨の日にいつも頭の中で歌ってくれます。たまに口ずさみます。優しくて激しくてけだるくて、すべての雨のイメージが詰まっていてとてもお気に入りの1曲。好き過ぎてQuasiというバンドを見つけた時は、誰にも教えなかったくらい、自分だけの音楽だと思っていました。今は大人になって人に勧めたりもしますが、未だに僕の音楽としてQuasiが存在しています。なので、モノブライトもそんな誰かの為だけの音楽になれたら幸いという思いも込めて、最後にこの曲を選びました。
▼今回のプレイリスト