OORerの皆さまにリンキン・パークのご案内とプレゼンをしたい

2017.5.31
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リンキン・パーク

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今秋・11月、リンキン・パークが4年ぶりの来日を果たし、ONE OK ROCKと“対バン”する――というニュースは、このサイトでも大きく取り扱っているし、既に目にした方も多いはずだ。洋楽のラウドよりなジャンルが好きな人、特にアラサー~フォー世代にとっては「お!リンキン来るのか、行かなくちゃ」という極シンプルな動機で幕張メッセへと足を向けたくなる報せなのだが、果たして10代や20代が多く含まれるであろうONE OK ROCKのファン――OORerにとっては、どうなんだろう。
「リンキンって名前は知ってるけど……」「ワンオク観るならワンマンで良いし……」そんなOORer諸氏も少なくないのではないか。

いきなり結論から言ってしまうと、そんな方々にこそ今回の来日公演をお勧めしたい
ここから書き進めるのは、今年アラサーからアラフォーにジョブチェンジした“リンキン直撃世代”な筆者による、“リンキンはよく知らないけどワンオクは大好き”というあなたへのプレゼンテーションだ。リンキン好きの方にとっての読みごたえや新たな発見は、多分ない。その点は予めご容赦ください。

本題に入る前に、まずここ10年ほどの音楽シーンで叫ばれている事象に触れておきたい。それは「若いリスナーの洋楽離れ」。散々色々な考察がされてきたネタだし、このページでそれ自体に問題提起をするつもりはないのだが、すごくザックリいうと、あまり洋楽を聴かない≒洋楽に興味がない層が増えた要因は、次の二つだと思う。

①邦楽のクオリティが上がった
②歌詞がわからない

はい。すごく当たり前のことを言いました。

①については、90年代以前からみれば歴然。もちろん当時も洋楽に勝るとも劣らないクオリティを誇る作品や別ベクトルの傑作は存在していたが、それらはメインストリームではなく一部のコアな音楽好きにのみ愛でられていた傾向が強く、「邦楽=ダサい」「洋楽=イケてる」という図式は確実にリスナー心理の中に潜んでいた。それが2000年頃から洋楽エッセンスを自然と邦楽に取り込んだアーティストがどんどん現れ、それらを聴いて育った世代、そしてインターネットなどで国籍やジャンルを超えてあらゆる音を聴いてきた世代が台頭しているのが、現在である。つまり、洋楽の背中を追いかけていた先輩の背中を追いかけた結果、日本の音楽のクオリティは大きく上がり、ダサくなくなったのだ。
言い換えれば、わざわざ洋楽を聴く理由が無くなったともいえる。
現にTakaの歌唱力なんて完全に日本人離れしている。あれだけのハイトーンをシャウト交じりで発声できる凄まじさ。試しにカラオケで歌ってみて玉砕したのは僕だけではあるまい。ジャンルは違うが、D.A.N.とかyahyelなんて、出会い頭に聴かされたら邦楽とは気づかないもんな。イケてる。

問題は②だ。
日本人は歌を聴く、外国人は音でノる、とよく言われる。これは民族性や歴史にも深くかかわる話なので、1世代2世代では如何ともしがたい文化の違いだろう。90年代にハウスが流行ったときも、少し前にEDMが世界中を席捲したときも、日本ではそうでもなかった。音でノって踊る、という文化がDNAに無いからだ。代わりにそれらを絶妙に“歌もの”へと変換、料理した小室哲哉や中田ヤスタカがヒットメーカーになった。
さらに、日本でヒットする曲には、「歌詞がいいよね」という評価が欠かせない。前述の中田ヤスタカあたりは歌詞の意味よりも語感や中毒性を重視している傾向があるものの(「にんじゃりばんばん」とか「チョコレイト・ディスコ」とかですね)、歌詞が強く印象に残るという点では同様だし、ヒットチャート全体を見渡せばやはり、歌われる言葉に共感しやすい恋愛ソングや応援ソングの多さが目に付く。英詞の場合、そうはいかない。ネイティヴなボーカルから放たれる英語をストレスなくヒアリングできるほどの英語力は、日本の学校教育ではなかなか養われないので、そうなると洋楽はやはり不利なのだろう。

とはいえ、これは一般的な話。英詞をなんなく聴きこなし涙できるリスナーもいるだろうし、邦楽を聴く場合にも歌詞はあまり重視しないという人はいる。かくいう僕もそのタイプで、仕事柄インタビュー前には歌詞カードとにらめっこするものの、プライベートで音楽を聴く際はあまり歌詞に気を配っていない。これは高校時代にコピバンをしていたとあるバンドのせいだと思っている。ちょっとこれを読んでみてほしい。

とにかくここで座ってるのは カーテンくいつくす 赤アリのせいだ
(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT「カーテン」より)


これで「わかるー」となったら逆に心配になるレベルだが、高校時代のミッシェル体験以降、ワケわからんがなんとなくカッケ―! それでOKだろう!という信念のもと、僕は音楽を聴いている。


……完全に話がそれたが、何を言いたいかというと、OORerのみなさんも同様に、音楽を聴く、好きになる理由の中で、歌詞のウエイトがあまり多くないタイプなのではないか?と思うのだ。ワンオクは元々英詞の割合も多く、近作ではよりその傾向が顕著。本人たちも海外志向を公言し海外へ打って出ているし、自身の国内ライブにも何度も海外アーティストを招いていたりするため、他のバンドのファンよりもずっと“洋楽アレルギー”が無い――つまり、洋楽を聴くことに対する心と耳のハードルが低いリスナーと思うのだ。
「いやいや、私はOORの英詞もちゃんと聴けてるし、そこが好きで聴いてるんだけど!」というバイリンガルはここが引き返す最後のチャンス。まぁ、そこまでヒアリング力が高いなら洋楽、普通に聴けるんですが。

 

ものすごく長い前置きになったが、要するにOORerにリンキンを紹介することは、他のバンドのリスナーにそれをするよりも、ずっと興味をもってもらえるのではないか? これを機に興味をもってほしい! しかも対バンが控えているワケだし――そう思ってのこのコラムなのである。きっと、アラサーの、耳が柔軟さを失いつつあるリンキンファンにワンオクのプレゼンをするよりは、よほどスムーズに受け入れてもらえるものと信じている。ここまで読んでいただいた方は、是非もう少しお付き合いいただきたい。リンキン・パーク、とても偉大で魅力的なバンドである。


■リンキンとはどんなバンド?

リンキン・パーク

端的にいうと、リンキンはアメリカのミクスチャーバンドだ。ただしミクスチャー・ロックというのは和製英語であり、本来別のジャンルの音楽の要素を掛け合わせたサウンド全般を指す。HIP-HOPの要素が強いビースティ・ボーイズや、ファンク色の濃いレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、重低音を聴かせたメタリックなコーンやスリップノットなど、日本ではミクスチャーに括られたバンドの中にも実に多種多彩なタイプが存在する、カオスなジャンルなのである。
その中で、リンキン・パークの立ち位置はといえば、どちらかといえばラップ・メタル寄り、だが音はさほど重くなく、メロディが強い――といったあたりが特色といえるだろう。作品によっては大胆にエレクトロに接近したり、ダンスミュージックのエッセンスを取り入れたりしていることも特徴である。無理にカテゴライズするならば、ラウドロックと普通のロックの微妙なラインをついた、どっちのリスナーからも支持される、歌メロと歌唱力の際立つバンド。
……勘のいい方はお気づきかもしれないが、この特色、日本におけるワンオクのそれと近いのだ。

下積み時代を経て、2000年に『Hybrid Theory』でデビューしたリンキン。チェスター・ベニントンの強烈なヴォーカルとマイク・シノダのラップ、DJを含む6人組はたちまち大きな反響を得ることとなる。が、既に世に出ていた“ミクスチャー”のバンドたちは、コーンやスリップノットに代表されるとにかくヘヴィでメタラー向けなものだったり、もっとHIP-HOP色が強くアメリカのワルっぽいリンプ・ビズキット系、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのように思いっきり政治的でバカテクだったり……というあたりが当時のスタンダードであった。そんな背景もあって、筆者は最初にリンキンを聴いたとき、ミクスチャーにしてはな~んかパンチが足りないな、でもメロディはいいなぁと感じたことを覚えている。その当時の音がこれ。

この原稿を書くために久々に聴きかえしてみても、今でもあまり古臭くないし、この少し後に隆盛となるエモ/スクリーモの先駆けにも聴こえて、ちょっと驚いた。当時もこのサウンドは一気に受け入れられ、全米で2位となったそう。まだCDが売れていた時代の話とはいえ、アメリカだけで1100万枚を売り上げたというから恐ろしい。あと、他のMVでもいえるのだが、SF風味だったりアニメ―ションを取り入れたりと、リンキンってちょっと日本的感性が見え隠れするのもポイントが高い。

そして、リンキンの名をそれまで以上に押し上げたのが傑作2ndアルバムが『Meteora』だ。

1曲に絞ろうかと思ったが、無理だった。どちらもマスト。スケール感、メロディ、細部の完成度、どれをとっても一つの到達点に達した印象で、個人的にはこの『Meteora』がフェイバリットだ。

そこからより壮大なアレンジへと舵を取った感のある3rd『Minutes To Midnight』では、欧米諸国で軒並み1位、日本でも1位を獲得するなど、リンキンは名実ともにワールドクラスのモンスター・バンドの座を確実なものとした。これが10年前。ワンオクがメジャーデビューを果たした年である。

以降の作品では、マンネリを拒絶するかのようにより挑戦的、実験的なアプローチも目立つようになっていく。

とはいっても、だんだお年も召されてきたことだし、そろそろ音楽的にも落ち着いてもいいのかな?という雰囲気が無くもなかった近作だったのだが。つい先日発売された最新アルバム『One More Light』で、リンキンはこれまでで最もドラスティックな変身を遂げ、驚くべき姿を見せたのだった。
ドリーミーなアレンジ、エレポップ風味、デュエットソングまで、これまでのイメージを覆す楽曲が並び、女性シンガーのキアーラやUKグライムからストームジー、ラッパーのプシャ・Tなどゲストの顔ぶれから見ても実に多彩な作品に仕上がっていたのである。

今夏はこの最新作を携えて世界中をまわるリンキン。バンドサウンドから一線を画す楽曲たちがどのようにプレイされるのか? そして過去楽曲はどのくらいの割合で含まれてくるのか? 現時点では未知数だが、世界中で話題となることは間違いなさそうである。「“これがリンキンなの?”と言われたりするんだよ、ハハハ(笑)」と本人たちも語ったりしていたが、全然ロックじゃないじゃん!という声すら聞こえてきそうだし、実際海外でもそういうリアクションがあるようだが、なにしろリンキンは元々実験的なことが大好き。ラッパーのジェイ・Zとコラボして『Collision Course』という名盤を作り上げたり、過去作を丸ごとリミックスしてみたりと、思わず「!?」となる仕掛けを成功させた“前科”があるのだ。そもそも“ミクスチャー”って、要するに異なる音楽の合わせ技、なんでもアリなのである。

チェスター、マイク、ストームジー、プシャ・T

……と、ここまでがリンキンのこれまでと今。言葉であれこれ説明するのは野暮なので、動画をたくさん貼っておいた。興味が沸いた方は是非視聴してみてほしい。ワンオクに限らず、邦楽/洋楽の垣根を越え、数々のバンドに影響を与えていることが分かると思う。同時に彼らほどのビッグ・アーティストの来日公演は結構な大ごとだぞ、くらいには思っていただけただろうか。

しかも、Takaはリンキンの音楽が自身の根底にあることを公言しているし、アルバム『Ambitions』収録の「One Way Ticket」ではリンキンのマイク・シノダがプロデュースを務めていたりと、両者は縁も深い。つまり、一緒に対バンをすることの必然性がちゃんとあるワケだ。オトナの事情だけで決まった組み合わせでは決してなく、ワンオクも特別な想いを抱いてステージに立つであろうことは想像に難くない。

 

各所報道としては今回、ワンオクは「リンキンのワールドツアーのゲストとして」ステージに立つ、ということになっている。にもかかわらず、ここまでの文中で“対バン”と表現してきたのは、ワンオクが1時間、リンキンが1.5時間というほぼ対等なステージ時間が割り振られているからだ。これは断じてオープニングアクトにお呼ばれしてチョロっとやる、という類の話ではなく、精神的にも音楽的にも互いに理解とリスペクトをもった上で、リンキンが日本のトップバンドを自分たちの対バンに呼ぶ――そういう性質の3日間だからだ。
音楽性、嗜好の面もあってか、オズフェス、ノットフェスなど、ワンオクはこれまでも海外のラウド系大物が来日するたびにお声がかかるケースが多く、観に行った方もいるかもしれないが、実際に彼らはそこで素晴らしいパフォーマンスをやってのけていた。が、そのどれよりも、サウンド的にOORerの耳にとって違和感がない海外アーティストは、今回のリンキンだろう。音楽ライターの端くれとして、そこは自信がある。

ワンオクが憧れ挑み続ける海外のフィールドに君臨する王者であり、かつ音楽的ルーツでもある存在との真っ向勝負を、しかも日本で実現させる瞬間。OORerとしては見届けないわけにはいかないんじゃないか。特別なライブになることは請け合いだ。

結局のところ、一番書きたかったのはそこに尽きる。


文=風間大洋

イベント情報
LINKIN PARK ONE MORE LIGHT WORLD TOUR
Special Guest:ONE OK ROCK
幕張メッセ 国際展示ホール 9~11
 2017 年 11月2日(木) open 16:00 / start 19:00
 2017 年 11月4日(土) open 15:00 / start 18:00
 2017 年 11月5日(日) open 15:00 / start 18:00
 スタンディング ¥8,800 (ブロック指定)(税込)
 VIP SS ¥60,000 (税込) (アリーナ前方観覧エリア・Linkin Park との M&G・グッズ付き)
 VIP S ¥15,500 (税込) (アリーナ前方観覧エリア・グッズ付き)
 ※LINKIN PARK のパフォーマンスは全日程 90 分を予定しております
 ※ONE OK ROCK のパフォーマンスは全日程 60 分を予定しております
 ※VIP SS Linkin ParkとのM&G 詳細は後日発表いたします。
(問)H.I.P. 03-3475-9999 / www.hipjpn.co.jp
□主催・招聘・企画・制作:H.I.P.
□後援:J-WAVE / TOKYO FM / InterFM897 / MTV / SPACE SHOWER TV
□協賛:ワーナーミュージック・ジャパン