『無印良品と明和電機をくらべた展』をレポート ナンセンス(超常識)で彩られた、日常生活の道具たち

レポート
アート
2017.7.10
左:文庫楽器(明和電機)右:オタマトーン(明和電機)

左:文庫楽器(明和電機)右:オタマトーン(明和電機)

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ATELIER MUJI(無印良品 有楽町店内)にて『無印良品と明和電機をくらべた展 ナンセンス計測のこころみ』(会期:2017年6月30日〜8月27日)がはじまった。明和電機とは、アーティストの土佐信道がプロデュースし、自らが社長となって中小企業を模した芸術ユニットである。青い作業服をトレードマークに、作品は実際に使うことのできる「製品」、作品を披露する場を「製品デモンストレーション」と称して、これまで数々のナンセンスマシーンを開発し続けてきた。

本展は、日常生活で使われる道具のかたちやコンセプトに着目し、明和電機の製品と無印良品の商品を比較展示したもの。ナンセンス(超常識)とコモンセンス(常識)を行き来する展示品を見比べているうちに、日本人のものづくりに対する共通項も見えてきそうだ。明和電機の新作2点も発表された会場から、本展の見どころをお伝えしよう。

会場エントランス

会場エントランス

会場風景

会場風景

「ものと人の関係性」をみつめて、思考実験をする

この展覧会を企画するにあたり、鈴木潤子氏(良品計画 企画デザイン室ATELIER MUJIシニア・キュレーター)は「ものと人の関係性や『考えること、つくること、つかうこと』について明和電機さんと一緒に何かできたら良いな」と思ったのがきっかけだったと話す。その後、明和電機より「くらべる」というテーマの提示があり、本展を開催するに至ったという。

加えて、鈴木氏は展覧会のねらいについて「本展は、明和電機というアーティストが無印良品と向き合って、同じ機能の道具を分析、比較、展示しています。ものと人の関係をいつもと違う視点から考えてみたらどうなるのか、という思考実験のような展覧会。無印良品と明和電機の商品をくらべたら何が見えてくるのかという正解のない命題を、考えてたのしんでいただけたら」と語る。

一人一人の思考を促すため、解説表示も最小限に留まっている。まずは実際に足を運び、目にした品々を自分なりに解釈してみよう。なかには複雑で難解な比較対象も含まれているが、会場には明和電機による解説映像も流れているので、そちらも合わせて参考にしてほしい。

魚コード

魚コード

左:電卓(無印良品)右:サバオ(明和電機)

左:電卓(無印良品)右:サバオ(明和電機)

左:自動巻き時計 駅の時計・リストウォッチ(無印良品)右:ジホッチ(明和電機)

左:自動巻き時計 駅の時計・リストウォッチ(無印良品)右:ジホッチ(明和電機)

左:地球儀(無印良品)右:肺魚(明和電機)

左:地球儀(無印良品)右:肺魚(明和電機)

明和電機による製品解説ビデオ

明和電機による製品解説ビデオ

明和電機の新作『文庫楽器』と『シュポンヌキ』

『文庫楽器』は、「もし無印良品が楽器を作ったら?」という主旨のもと、明和電機が本展に向けて制作した新作の一つだ。無印良品の商品と、明和電機とのコラボレーションについて、鈴木氏は「無印良品の商品開発の基本は、生活の基本となる本当に必要なものを、本当に必要なかたちでつくること。シンプルで美しい商品としてみなさんに長く愛されている部分について、明和電機さんが解釈した上での作品を発表されています」と解説する。

オタマトーン(明和電機)

オタマトーン(明和電機)

文庫楽器(明和電機)

文庫楽器(明和電機)

『文庫楽器』はその名の通り、文庫本サイズの規定に沿った大きさをしていて、全4種類の楽器が本の題名になっている。いずれも実際に音を奏でることが可能だ。無印良品らしさと、明和電機のナンセンスな魅力が見事に融合している。もう一点の新作『シュポンヌキ』は、土佐氏が数年来あたためてきたアイディアを、この度発表したもの。こちらは、「しゅぽーん」という音が爽快な栓抜きである。

シュポンヌキ(明和電機)

シュポンヌキ(明和電機)

ものづくりに共通する「精製」と「多様化」の精神

無印良品と明和電機。二社のものづくりに対する姿勢は一見異なるようで、共通する部分も見えてくる。それを、日本の白米とおかずに例えた食品サンプルが展示されている。白米を精製する作業、あるいは、味噌汁や納豆、醤油など大豆という一つの素材を使い、バリエーションを生み出す作業から見えてくるものづくりの共通項。思わず「なるほど」と言いたくなるような明和電機の解説パネルを熟読してほしい。

食品サンプル

食品サンプル

大人気製品『オタマトーン』の見本展示や、参加型の企画も

会場の中心スペースでは、明和電機の製品にまつわる関連書籍が見られるほか、ヒット商品『オタマトーン』(おたまじゃくし型の電子楽器)を触る貴重な体験ができる。初心者にはなかなか操作が難しいといわれているが、鍵盤シールが貼られているものもあるので、気軽に触ってみよう。会期中には、同じフロアの書籍コーナーに、明和電機の特集スペースも設けられている。今後はオタマトーンと練習帳のセット販売も予定されているとのこと。(2017年7月6日現在発売未定)

触れて遊べる体験コーナー

触れて遊べる体験コーナー

関連書籍

関連書籍

さらに会場では、来場者の参加企画として「ナンセンス発想シート」が配布されている。自身のアイディアを活かした商品を描き、QRコードで読み取って指定のURL先でシェアしてみよう。おかしな発明品たちが、現在も続々投稿されている。

ナンセンス発想シート

ナンセンス発想シート

『無印良品と明和電機をくらべた展 ナンセンス計測のこころみ』は2017年8月27日まで。使い慣れた道具も、見慣れない製品も、どちらも人が考え生み出したモノたちだ。発想力も思考力も刺激されそうな展覧会に、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

イベント情報
無印良品と明和電機をくらべた展 ナンセンス計測のこころみ

会期:2017年6月30日(金)〜8月27日(日) ※店舗休館の場合は、それに準ずる。
会場:無印良品 有楽町2階 ATELIER MUJI
主催:無印良品 入場無料
https://www.muji.com/jp/events/7108/
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