娘を殺された母が加害者の死刑を止める理由とは 映画『HER MOTHER』

 ©『HER MOTHER』製作委員会

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映画『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』が、9月9日から東京・新宿K's cinemaで公開される。

娘を婿の孝司に殺害された母親・晴美の姿を描く同作。当初は孝司の死刑判決を当然だと考えていた晴美が、ある時から孝司への刑の執行を止めようと考え始めるというあらすじだ。

晴美役に西山諒、娘のみちよ役に岩井七世、晴美の元夫役に西山由希宏、死刑判決を受ける孝司役に荒川泰次郎がキャスティング。監督、脚本は佐藤慶紀が務めた。同作は昨年の『釜山国際映画祭』ニューカレント部門に正式出品された。

佐藤監督は同作について「本作のテーマは対話です。それも憎しむべき相手との。憎しむ相手を非難するだけではなく、憎しむ相手と向き合う可能性」とコメント。また西山は「被害者の母や加害者だけではなく、その周りの人達や加害者の母の想いもリアルに描かれていて、もし自分がいずれかの立場になったらどうするのか、、考えを巡らし、大切な人の事を『鑑賞した事でより一層大切に想って頂ける』愛もテーマの作品だと思います」と述べている。

佐藤慶紀監督のコメント

テーマについて
本作のテーマは対話です。それも憎しむべき相手との。憎しむ相手を非難するだけではなく、憎しむ相手と向き合う可能性。
人間には様々な感情があります。
きっと憎しみと赦しの間にも、言葉にならない感情があるのではないでしょうか。
そんな感情のグレーゾーンを、対話を通して描けたらと思い本作を制作しました。
また、映画の中で死刑制度について描いています。
8年前から裁判員制度が始まり、死刑などが適用される重大事件に、抽選で選ばれた市民が裁判員として参加するようになりました。
その時、あなたはどんな判決を下すのか?
その事を考えながらも、本作をご覧頂けたら幸いです。

釜山映画祭や海外映画祭での印象
釜山国際映画祭で驚いたのは、若い観客がとても多かったことです。
そして熱心な質問も頂き、私が答えた後も、さらにその答えに対する意見も述べてくれました。
私は、映画を見て頂くだけでなく、その後の会話も大切だと思っていますので、とても充実した時間を過ごせました。

西山諒のコメント

テーマについて
死刑制度を扱った映画という事で、裁判シーンが多い難しい内容に思われるかと思いますが、決してそうではないです。
被害者の母や加害者だけではなく、その周りの人達や加害者の母の想いもリアルに描かれていて、もし自分がいずれかの立場になったらどうするのか、、考えを巡らし、大切な人の事を「鑑賞した事でより一層大切に想って頂ける」愛もテーマの作品だと思います。
その中で、もし自分が母の立場だったら死刑判決に反対する考えに至るか、普段はなかなか考えない問題と向き合って頂ける映画です。

釜山映画祭や海外映画祭での印象
日本での上映では鑑賞後、娘を殺された母の気持ちを自分のことのように汲み、言葉を失うからか、死刑制度という繊細な問題に口を挟むのを拒む質があるからか、殆ど意見・感想が出ませんでした。
でも、海外の映画祭では鑑賞後、感じた事を次々に伝えて下さる方が多かったです。
「母の辛さがよく解ります。」
「西山さんなら『HER MOTHER』の母と同じ行動をしますか?」
「死刑制度をどう思いますか?」
『HER MOTHER』が感じて頂きたい事を確実に受け止めて、怒りや悲しみを伝えて下さいました。
また、佐藤監督ですら思いもしなかった点を追求する方もいらっしゃいました。日本人との根本的な考え方の違いも多いにあるのだと思います。
しかし、肉親を想う愛情はどの国も同じだという事を肌で感じました。

制作で苦労したことなどのエピソード
カメラ1台での撮影ですので、一つの(かなり長めの)シーンを5回くらい繰り返します。
佐藤監督が「繋がり・編集の事を気にせずやっていい」と仰って下さったので、その都度、その場で感じるままに集中して母として生きさせていただきました。
結果、編集は大変だったと思いますが。
撮影期間中ずっと、娘を失い、心を寄せられる相手が一人も居なくなった母の気持ちで、街の明かりが恨めしかったり、食欲がなくなったり、温かいお味噌汁を口にした途端涙が流れたり、、心臓がずっと冷たく萎縮し辛い日々ではありましたが、とにかく共演者とスタッフが私を信じて下さっていて、私もそれ以上に共演者とスタッフを信頼していて、無心・夢中な状況で挑めた二週間の撮影でしたので「苦労」と感じる事は一つもありませんでした。

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