『NieR:Automata』を彩ったモーションアクターの存在 川渕かおり・ヨコオタロウに制作秘話を聞く

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インタビュー
2017.8.3

――ちなみにモーションアクターをやっててしんどいこととかありますか?

川渕:自分的なことですけれど、同じ動きをするのが苦手なことですね(笑)。

ヨコオ:もう一回同じようにやってくださいってやつですね。同じポーズに戻れっていうのがあるんですよ。

――ゲームのキャラクターとしてはそういうのはあるでしょうね。

ヨコオ:ゲーム内の動きの繋がりを作るための「待機モーション」ですね。構えがあったとして、そこに繋がるモーションを撮ったりするんです。実際は後から修正をしたりするんですけど、あんまりにも違うと大変なので、なるべく近いポーズをとってほしいっていうのはあるんですね。

川渕:すごい勢いをつけて斬った後に、待機に戻りきれなかったりとか。

ヨコオ:剣先が違っていたりとか、それは後で手で直せたりするんですけど出来れば元の体勢に戻って欲しい……川渕さんは苦手みたいですが(笑)

――なかなかお芝居していると、元の形に戻るってないですものね。

川渕:汎用モーションですからね。今では慣れてきましたけど、どっちの足を出して前に戻るとか。

ヨコオ:普通にイベントを作ると、例えば何かを斬った後に、ゲーム上では全然違うポーズになってしまって、それを誤魔化す為に、普通はフェードアウトさせたりカットを変えたりして対応したりするんです。ただ、今回はちょっとそういうのをやりたくないなって思って。なるべくイベントの状態からなめらかにゲームに戻りましょうと。その繋ぎモーションに手がかかりましたね。撮るのも手がかかったし、組み込むのも手がかかって大変でした。

――ムービーからプレイできるところまでの間ってことですね。

ヨコオ:そうですね。

――確かにそう言われたらそうかもしれない。

ヨコオ:そこはやっぱりお客様に気づかれないようにするのが正解なので、すごい気をつけて作ったところです。

――やってて全然意識しませんでした。

川渕:っていうことはそれは正解なんですよね。うまくいってる。

撮影:大塚正明

撮影:大塚正明

『NieR:Automata』の世界観はどう考えて作られたのか

――ニーアの話なんですけど、そんなに広い世界じゃないですよね。結構箱庭的だなと思ったんですけど、その中でもシームレスなゲームだなと思ってて。

ヨコオ:なるべく世界が繋がっている感じにしたいとは思っていました。

――もちろんイベントとかで視点が変わったりとか、ムービーが入っているし、それを踏まえてシームレスだなっていう。

ヨコオ:地形が繋がっているのもありますし、イベントとゲームが切り分けられない、もうちょっとゆるく繋がっているっていうのにしたいなというのがありました。ニーアってトップビューになったりサイドビューになったりするじゃないですか。それもゲーム途中でバキッとカメラが変わるんじゃなくって、気づくと変わっている感じにしたいなっていうのがありました。前作からそうですが、ゲームの面白さがバラバラに入っているんじゃなくて、変化しながら、体感できるのがニーアの世界で、それを踏襲しているので。

――ゲームが始まっていきなりシューティングになってびっくりしました。

川渕:あれはヨコオさんが好きな。

ヨコオ:そうなんですけれど、プロモーションであそこは出すのをやめようって言われて、やめたんです。びっくりネタとして仕組んであったという感じですね。

川渕:実際あれで何回か死にました。

ヨコオ:難しくてすみません(笑)。

――僕はやった瞬間にトレジャーの制作した『斑鳩』に似てるなって思いました。

ヨコオ:『斑鳩』が好きなんで、リスペクトをしている所はありますね。

――ヨコオさんの作るゲームの世界観はかなり独特というか、独自の世界観を持っている印象があります。それがゲームの作り方にも反映されてたりするんでしょうか?

ヨコオ:どうなんでしょう。僕は自分がやりたいなと思っているのをやらせてもらっているので。他の方がどういう作り方をしているのかわからないですけど、自分が作ってて飽きちゃうので、すぐに変な方向に転がっていくところがあるのかもしれません。要は、飽きっぽい。

川渕:そうなんですね。

ヨコオ:おんなじゲームの骨格で20分プレイすると、これが20時間以上続くのかと思ってげっそりする(笑)。イベントがちょっと違うだけっていうのが、好きじゃないなっていうのがありました。

――最初から退廃的な世界観だったり、今回だと廃墟の中でアンドロイドの戦いっていう、ちょっとディストピア感がある世界を描かれているようなイメージがあるんですけど、そういうイメージがあるんですかね。

ヨコオ:よくわからないですね(笑)。

川渕:私は好きですね。ヨコオワールドが。

ヨコオ:大学生の時に、ぜんぜんモテなくて、夏の海に遊びに行って、水着のお姉ちゃんと男の人を見て死んでしまえばいいのにって呪いのように睨んでいて。その怨念みたいななのが作品に出てるのかな(笑)。

川渕:それは呪いがセットされてるわけですか(笑)。

ヨコオ:まともに幸せな世界を描けないのが、そういうところから来ているような気がします。

撮影:大塚正明

撮影:大塚正明

――2Bの初期武器は刀を持っているんですが、なぜ日本刀なんでしょう?

ヨコオ:最初のイメージであっと思いついたのが大きいんですけれど、そこに深い理由はなくて、SFの武器だとSF感が強くなりすぎて、今回はある程度ファンタジー感がないといけないんですけど、そういう意味でファンタジー感がある日本刀を選んでみた……気がします。

――2Bのちょっとゴシックっぽいけどグラマラスという体型で日本刀というのが、日本人にも外国人にもキャッチーに受け入れられた気がするんですけど。

ヨコオ:2Bはアニメっぽいキャラクターだと思っています。というか、『NieR:Automata』に関しては、海外市場を考えなくていいと言われたんですね。世界じゃ売れないし、まず日本で売るべきだと。主人公の華奢な女の子が戦うっていうのが日本はよくあるんですけど、海外はあまりないのでやってみたんですね。そうしたら実際に海外にも受けて。それはすごい意外でしたね。

川渕:海外の行く先々で2BとかA2のコスプレをしてる方が多くて、公演に行ったチリでは事前情報で、2Bのモーションアクターをしているって知ってくれていた人もいて、わざわざ絵とか写真を届けてくれる人もいて、ニーアすごい人気でした。

――ヨコオさんの一番のメガヒットになったと思うんですけど。

ヨコオ:そうですね……コンシューマーではメガヒットですね。ゲーム作りは水商売なので、何が当たるか全然わからないつもりで作ってて、どうしてニーアがヒットしたのか、作っている僕らもよくわかってないっていう感じです。

――何か狙ってマーケティングをしたというもの特に無いんですか?

ヨコオ:まあ狙うんですけど、それで見える上限って、コンシューマーゲームでは、前作のニーア(レプリカント・ゲシュタルト)でいえば、確か全世界で50万本ぐらいだったんですよね。今作は頑張って75万本ぐらい狙えるのかなって僕は思ってたんですけど、プロデューサーは「100万本を狙えるぞ!」と。「いやいや~無いですわ!」とか言っていたら150万売れた。なんでそこまで伸びたのかわからない状況。

――もう一回ヒット出せたらと言われたら。

ヨコオ:無理ですね。売れるように作ってもあまりうまくいかないですし、好きなものを作りたいと思っていますから。

――個人的にはプレイして、ようやくヨコオワールドを表現できるプラットフォームに来たのかなって思いました。

ヨコオ:ここは書いておいて欲しいんですけど、プラチナゲームズさんの実力がすごいんです。アクションのところでストレスが無いようにしてくれたのが大きいと思いますね。

――ただ難しいゲームじゃない。

ヨコオ:これまでも努力はして来たんですけど。やはりプラチナゲームズさんはアクションに特化しているので、そこでのクオリティー、グラフィックも若い方が頑張ってくれて、キャラクターをちゃんと作ってくださった。

川渕:ヨコオさんはそれずっとおっしゃっていますね。

ヨコオ:僕はお飾りのようでした(笑)。

ゲームの表現と演劇的表現がループしつつある

――さて、川渕さんの話に戻ります。モーションアクターとして、バンド活動や総合パフォーマーとしても各国を飛び回っていますが、最近増えましたよね。海外でのお仕事が。

川渕:南米づいてますね、チリ、パラグアイ行って、ブラジル行って。

――海外の反応ってどうなんですか、剣舞パフォーマンスって。ジャパンコンベンションみたいなイベントに出られる時もあると思いますが、各国の反応とか。

川渕:そうですね。日本と比べると、タイム感がダイレクトですね。日本だと拍手のタイミングとかを大事にしてくれるんですけど。海外だとやってる最中から、音楽に一緒に乗って、手拍子して、終わって礼をする前に拍手が始まったりとか。ノリがすごくいい感じですね。あと刀に対してのリスペクトというか、興味がすごく深い。武士道についても、よく知ってるし、書物を読んでるし、日本の文化を好きでいてくれる人が結構多いイメージがありました。

――具体的にこれからどうなりたいのでしょう。

川渕:刀は永久に振り続けつつ、モーションアクターも続けつつ。今回のニーアで、初めて自分がモーションで参加した作品に声でも参加させていただいたので、動きと声と、実写や生の自分っていう、三本柱は続けていきたいと思います。今回はジャッカスとボーヴォワールという役の声をやらせていただいたので。

ヨコオ:ジャッカスっていうひどいキャラがいるんですよ(笑)。

――モーションアクターとして例えばやってみたいキャラっていますか、セラみたいにアクションを求められない役もやってるわけじゃないですか。

川渕:求められるものを極限まで提供したいっていう願望はありますね。例えば、今回もそうなんですけど2B、A2をやらせてもらいながら、他のアンドロイドや機械生命体とかの役もやらせていただいて、全然かけ離れた動きなんですけどそれも楽しくて。こういう動きが欲しい、こういうキャラクターが欲しいと言われた時に、最上のものを出せるようなモーションアクターでいたいと思います。

川渕かおり 撮影:大塚正明

川渕かおり 撮影:大塚正明

――逆にヨコオさんからニーアが終わったばかりとしてあれなんですけど、川渕かおりと組むならこういうのやりたいとかありますか?

ヨコオ:川渕さんといえば、剣を振るのがお上手というか、ゲーム映えのする外連味のある動きをしてくださるので、ニーアではアクション的な動きをたくさん用意したんです。でも実際にやってみるとアクターさん達の演技のシーンが面白いなっていうのがあって。

――モーションアクターさんの演技ですか。

ヨコオ:例えばアダムというキャラが高笑いをするシーンがあるんです。そのシーン、アクターさんがすごく面白くて、メチャクチャにやっていただいたのがいいと思って、これを極限までゲームで再現しようって思ったりとか。あるシーンで某キャラが長い時間首を絞めるっていう所があるんです。あのモーションは川渕さんがやってくれたんですけど、すごい情感がある。長尺のイベントなので、僕は一回じゃ無理だと思ったんですね。変化球の演出なので、間が持たないと思ったんですけど、充分に間が持って一発OK。

川渕:そうですね。

ヨコオ:アクションの面白さもそうなんですが、人間としての面白さっていうのが、モーションの演技とかに出てくると楽しいなと思います。今回はそれが面白かったので。演劇に近いかもしれません。

――舞台演劇と3Dゲームってかけ離れたイメージがありますが、一周回ってくると表現として近い所に来るのかもしれませんね。​ヨコオさんにお伺いしたいんですけど、ニーアシリーズは以前に舞台公演として『ヨルハ』があったりしましたが、舞台役者でもある川渕さんの起用など、演劇的なものに対するアプローチがお好きなんですか?

ヨコオ:あまり意識はしていないですね。演劇的なことはやってみたかったというところでやらせてもらったんですけど、やっぱり演劇の舞台で剣を振るのとゲームで剣を振るのとでは、だいぶ意味合いも異なりますし、演出も変わるなって。舞台については、色々勉強になりましたね。

――なるほど。

ヨコオ:だいぶゲームがリアルに近づいて来たんですよね。一方で舞台は空間の狭さとかやれることに限界があるので、それを役者さんが補ったりする。実際にロボットが出てこないのに、それがいるかのように演じたり、パントマイムみたいなもので。一人で戦ったりとか、そういう演出は面白いなって思いました。

ヨコオタロウ 撮影:大塚正明

ヨコオタロウ 撮影:大塚正明

川渕:こないだ私がやった剣戟舞台も、ほぼノンバーバルで言葉が少なくて、体の動きと立ち回りとで見せるものでしたし。

ヨコオ:拝見させていただきましたが、言葉が少なくても物語になっていたんですね。ああいった良さが、モーションキャプチャーとして出てくるといいと思います。

――最後に、こういう仕事につけたらいいな、チャンスがあったらいいなと思っている人もいると思うんですが、そういう人たちにアドバイスがあれば。

川渕:モーションアクターってアクションをやる人、っていうぐらいに言われることもあるんですけど、キャラクターとしてデータ上に生きることで、役者もモーションアクターもやれる。だから演技のプロフェッショナル、アクションのプロフェッショナル、そして両方を兼ね備えた人がどんどん入って来て欲しいですね。あとは今活躍されているモーションアクターの方とかも、この舞台に出ているこの役者さんがあのキャラをやっていた!というのも探していくと結構出てくると思うんです。モーションアクターの仕事って大きなオーディションがあったりしないと新しい人が入ることが少ないので、開発側の人にも門戸を広げてもらってもいいかと、もっとオーディションなどで、モーションアクターになりたい側にもチャンスを広げてもらうのも必要だと思いますね!

撮影:大塚正明

撮影:大塚正明

インタビュー・文:加東岳史 撮影:大塚正明

製品情報
NieR:Automata​

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