ワンランク大人の演奏を目指すピアニスト藤田真央~弾き手も自由な演奏を楽しむ昼のひと時
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藤田真央 撮影=荒川潤
18歳の若手ピアニスト・藤田真央が登場 “サンデー・ブランチ・クラシック” 2017.7.16. ライブレポート
「クラシックをもっと身近に。」をコンセプトに日曜日の昼のひとときを音楽を聴きながら過ごす『サンデー・ブランチ・クラシック』。7月16日に登場したのは今注目の若手ピアニスト、18歳の藤田真央だ。数々の国内外のコンクールで1位を獲得し、14歳でCDデビューしてからは、2013年に初めてのリサイタルを開催し、以後日本国内はもとよりポーランド、ドイツ、イタリアなどで定期的に演奏を行ってもいる。
人気の若手演奏家・藤田真央の出演とあってか、この日の客席はほぼ満席。制服姿の中高生やピアノのお稽古をしていそうな子供のいる家族連れの姿も見え、若き「音楽家」たちやファンにとって、藤田は憧れの存在であることがうかがえる。
考えてみればこの『サンデー・ブランチ・クラシック』、500円のチャージ+食事代で今をときめく音楽家達のキラキラした演奏を楽しむことができるし、中高生といった若い人達が気軽に参加しやすいところがいいなと、客席を眺めながら改めて思う。
カフェはほぼ満員に 撮影=荒川潤
ショパンの名曲やジャジーなアレンジ版まで
13:00。開演時間になると藤田がステージに登場し、拍手が起こった。1曲目はショパン「スケルツォ第2番変ロ短調」。優雅でドラマチックなこの曲を、藤田は語りかけるように奏でる。ショパンはコンサートホールではなく、サロンなどで演奏活動をした作曲家だ。会場であるカフェの雰囲気は、ひょっとしたらショパンが演奏した状況に近いのではないだろうか。
藤田真央 撮影=荒川潤
2曲目はラフマニノフがピアノ演奏用に編曲したクライスラー「愛の悲しみ」だ。「ラフマニノフの気質が表れているのか、半音のモチーフが多々使われている」と藤田が解説してくれたこの曲、「有名な曲です」と言う言葉のとおり、おそらくほとんどの人は聴けば「ああ、これか」と思うに違いない。藤田が奏でる哀愁を帯びたメロディはリリカル。確かに天才ラフマニノフのテイストが加わり、なにやらとても現代風の、ジャズのようなテイストも醸しだしていた。
MC中の藤田 撮影=藤田真央
続いて演奏してくれたリチャードソン編曲によるラフマニノフの「ヴォカリーズ」は、本来声楽の曲だが、その旋律の美しさからピアノやチェロなど、様々な楽器による編曲がある。藤田の解説によると原曲に忠実にアレンジしたコチシュ版、「いろいろ工夫しすぎた」ワイルド版、さらにコチシュとワイルドの間を取ったようなリチャードソン版があり、藤田は「リチャードソン版が一番好き」なのだそう。演奏は原曲をモダンなインストゥルメンタル音楽のようにアレンジした味わいで、非常にムーディー。鍵盤が音を奏で歌いながらふわっと広がっていくような、なんとも心地よいしゃれた世界だ。
藤田真央 撮影=荒川潤
そして最後はリストの「ハンガリー狂詩曲第2番 ニ短調」で豪快に締めくくる。「この曲は弾いていて楽しい、でも難しくて辛い」と言うが、“何を仰いますか”と返したくなるようなパワーに満ちており、疾走感あふれる迫力満点の演奏を聞かせてくれた。
藤田真央 撮影=荒川潤
万雷の拍手の中、アンコールはショパンの「ポロネーズ第6番変イ長調」、通称「英雄ポロネーズ」を演奏。先のリストで興奮が最高潮に達した客席がさらに盛り上がり、高揚が手に取るように伝わってくる。サロンで弾いたショパンに始まりショパンで終わるという演出で、昼のひとときは終了した。
終演後のサイン会は長蛇の列。観客の一人ひとりと会話を交わし、写真撮影に応じる藤田の丸い笑顔が実に印象的であった。
終演後のサイン会 撮影=荒川潤
「とても自由に楽しんだひとときだった」
終演後、ミニインタビューを行い、この日の感想を伺った。
――お疲れさまでした。カフェでの演奏はいかがでしたか?
こういう場所で弾くのは初めてだったんですが、すごく楽しかったです。アットホームな雰囲気で、お客様と一体感があって反応もよく伝わってくる。とてもおもしろく、緊張せずに自然な感じで、自由に演奏できました。実は今日弾いた中では即興的な要素が結構ありました。コンサートではそういうことはできませんが、今回そういった要素を交えながら弾けたのは大きな経験です。またやりたいです。
――今日の選曲は、ショパンで始まりショパンで終わりました。ショパンはサロンを活動の場としていましたが、カフェで演奏するという雰囲気を意識してのショパンだったのでしょうか?
いえ、そういうことはないです。ただお店の雰囲気はわかっていたので、おしゃれな、スケルツォのような楽しい曲を最初にやろうと思いました。ショパンは練習に時間がかかるし、自分の感情や気持ちなどを込めないとならないので実はまだ難しく、苦手です(笑)。特徴のはっきりしているベートーヴェンは弾きやすいのですが……。でもショパンは弾くと喜んでもらえるので、がんばって弾いています。
インタビュー中の藤田 撮影=荒川潤
――リストも「難しい曲」と仰いますが、パワフルに弾かれていました。
リストは練習が大変なんですが、ある段階まで行くと形になってくるんです。それに比べてショパンやシューマンは成熟しているので、まだまだ難しい。僕はミケランジェリの演奏が好きなんです。音の響きのチョイスに間違いがなくて、「ここではこういう音」という響きをきちんと出している。そうした演奏を目指すうえでも、ショパンを弾くことは勉強になります。
――現在18歳。今後の目標は。
自分が楽しんで、さらにお客さんと一体となれるような演奏がしたいです。また今まではベートーヴェンなどにふれてきていますが、ブラームスやシューマンなど―― 現在はリストのソナタや、シューマン、モーツァルトのピアノソナタ第18番などをプログラムに入れています。1.2年後には、ブラームスの後期の作品なども勉強していきたいと思います。
――1、2年後というと、ちょうど20歳を迎える頃ですね。楽しみにしています。ありがとうございました。
藤田真央 撮影=荒川潤
取材・文=西原朋未 撮影=荒川 潤
藤田真央 ピアノ・リサイタル
会場:武蔵野市民文化会館 小ホール
出演:藤田真央(ピアノ)
青木智哉/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円
9月3日
1966カルテット
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円
9月24日
高橋洋介/バリトン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円
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