Soanプロジェクトwith 手鞠 ゴシックロリータ姿で届けた妖艶で幻影的な一夜

2017.9.5
レポート
音楽

Soanプロジェクト with 手鞠 2017.8.22 撮影=遠藤真樹

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ドラマー、ピアニスト、作曲家としてマルチな才能を発揮するSoanを発起人とし、with手鞠、with芥、2つの表現を用い、シーン屈指のプレイヤーをメンバーに迎え活動を展開する音楽への挑戦と提示の形。そしてその思想の根底にあるのは“ヴィジュアル系への誇りと深い愛”である。

自らの信じるヴィジュアル系というカルチャーの理想と矜持の為に、当然誰よりも“それ”を理解している事が重要である。その課題として今回Soanが提示したテーマ、それは“ヴィジュアル系たる者、どんな姿も絵にならなくてはならない!”。「Angelic pretty」の全面協力を得て、Soanプロデュースのwith手鞠メンバー、真のヴィジュアル系への真夏の強化計画。導き出される回答は次元を超越した完全世界かはたまた混沌の完全事故か?

Soanプロジェクト with 手鞠 2017.8.22 撮影=遠藤真樹

最新アルバム『旋律、静かな願いと』をリリース。その作品を手にSoanプロジェクトwith 手鞠が、8月22日(火)渋谷REXを舞台に、『Soanプロジェクトwith手鞠 Oneman Live「真夏の夜の夢 偶像女装-ドーリィオブロリイタ-」』と題した一夜限りの夢の物語を描き出した。

確かに、最新アルバムの楽曲を軸に据えた演目ではあった。でも、今宵は「真夏の夜の夢」。しかも、“ドール”や“ロリータ”という謎のキーワードも…。彼らは現実では目にすることも、体感することも希有な"夢"を、今宵の舞台上に描き出した。その物語、気になりますか? ではこれから、夏に現れた一夜の夢の宴の模様をお届けしようではないか…。 

Soanプロジェクト with 手鞠 2017.8.22 撮影=遠藤真樹

Soanプロジェクト with 手鞠 2017.8.22 撮影=遠藤真樹


「月から滴る嗜好のひとときを、今宵はご堪能ください」。手鞠の言葉を合図に、今宵は生音の調べを場内へ優しく響かせるように幕を開けた。まさかの嬉しい宴の始まりだ。冒頭を飾ったのが、アニメ『ベルサイユの薔薇』のテーマ曲「薔薇は美しく散る」。優雅さを抱いたアコギとヴァイオリンの調べの上で、ドレスに身を包んだ手鞠が伸びやかに<薔薇は薔薇は気高く咲いて 美しく散る>と歌いかけた。間奏では、演奏陣のセッションも登場。情熱的な楽曲が、こんなにも優雅で気高い音楽として今宵の宴へ手招いてゆくとは。早くも心はうっとりと、その調べに想いを寄せていた。

「今日はあえてソアージュとでも名乗りましょうか」、舞台上のメンバーはみな、「Angelic pretty」のロリータ服を身にまとっていた。「みなお気づきの通り、すでに悪夢が始まっております」という手鞠の言葉通り!?の、ここでしか見られないメンバーたちの姿は、とても美しくも新鮮に瞼へ飛び込んできた。

Soanプロジェクト with 手鞠 2017.8.22 撮影=遠藤真樹

Soanプロジェクト with 手鞠 2017.8.22 撮影=遠藤真樹

そこは、装い鮮やかな衣装と音色の醸す香りが寄り添う空間。ノスタルジックな景色の中へ導くように、「そして君は希望の光の中に消えた」が哀愁と優雅さを重ねあわせ流れだした。その楽団は、会場の人たちの心を異国の舞台へ誘っていた。そこは夕陽が欠ける黄昏時の風景!? それとも、明日に想いを馳せる宵闇の空間?! その歌は、明日へ希望を募らせながらも、触れた人たちを漆黒な闇の底へゆっくりと導いていった。

前の演奏の余韻を繋ぐように響くシンバルの音、その余韻を膨らませるように優雅な演奏が場内へ広がりだした。一見優雅に思えるが、「sign…-resonance-」が僕らに見せたのは陰りを持った幻惑な世界。それは夢魔の舞台!? それとも…。失くした君を追いかけた心が迷い込んだのは、君が求めるもう一つの理想!? それとも、見たい現実の物語!? 想いの満ち欠けが、触れた人たちの心をキュッとつかんでいた。

Soanプロジェクト with 手鞠 2017.8.22 撮影=遠藤真樹

Soanプロジェクト with 手鞠 2017.8.22 撮影=遠藤真樹

調律…小さな泡のようにゆっくりと沸き上がり、水面に広がるアコギの音色。「幼い頃の記憶、失くしたヴィスクドール。ヒリヒリと痛む涙の痕跡。伸ばした優しい手…今の私にはその体温だけが、この心を維持する唯一の術なのです」。手鞠の言語りをきっかけに、音の雪を降り注ぐよう演奏は美しくも儚さを抱いた「焦燥の日々の帷、憔悴する白雪姫(スノーホワイト)」へ。心の揺れを手鞠はみずから発する言葉を通し、一人一人の心のカンバスへ滲む音の色として描き出した。郷愁を抱く音色の絵の具が、手鞠の声の絵筆を通し、触れた人たちの心へ想いの風景を塗り重ねてゆく。今宵は、素直にその色へ染まりたい。薄い香りを抱いた絵の具は、何時だって消すことは簡単だ。でも今は、滲んだその景色をずっと心に描いておきたかった。

儚さを持ったピアノの調べ。その旋律は、滲んだ闇の中へゆっくりと手招いた。「あなたのこの場所に今も私の存在を捜している。でもそれは…」。その演奏が僕らに見せたのは、見たいと願っていた思い出の風景? それは、闇のスクリーンへ映し出された夢幻(ゆめまぼろし)? たとえそれが、今だけ見える幻でもかまわない。「投影された在りし日の肖像と云う名の亡霊」に触れながら、映し出された思い出の亡霊(物語)に心は嬉しさを覚えていた。瞼に湛えた悲しみの涙が、あなたを滲ませていた。「ごめんね…さよなら…ありがとう…愛していたわ。。。」、その言葉の余韻が胸に痛かった。

「もしも神という存在が慈悲深く全能な存在なら…」。その問いかけは、人の心の真理へ、相反する二つの答えの審判を求めてゆく。祈りを捧げるように歌う手鞠の歌声、彼の嗚咽した叫び声を荘厳で憂いを帯びた演奏が支え、背中をそっと押してゆく。「それは呪いと同義語の魂の鎖 永遠に続く祝福と云う名のカルマ」を通しSoanプロジェクトwith 手鞠は、本当に守るべき真実とは何かを、絶望の淵から愛おしさを持って歌いかけた。その演奏は、廃墟の中から生まれた祝福のようにも響いていた。そこに希望を抱けるなら、何時だって彼らの歌は、どんな闇の断崖だろうと光や愛を授けてくれる。そう、始まりと終焉は何時だって輪廻しているのだから…。

Soanプロジェクト with 手鞠 2017.8.22 撮影=遠藤真樹

「林檎とは心臓、命の日々。強気願いや念を込め、手渡す相手の命を燃やす…語らう人の姿は見えず」。悲嘆に暮れる想いへそっと手を差し伸べるように、「林檎の花の匂いと記憶野に内在する存在。」がゆっくりと響き渡る。涙に溺れる真夜中の心をほのかな香りを持った演奏で抱きしめられたら、心は、滲んだ涙の海の底へ底へと墜ちていきそうだ。あなたの抱いた両腕の深い器の中で、微かな香りに生を覚えながら、今はゆっくりと墜ち続けていたい。 

Soanプロジェクト with 手鞠 2017.8.22 撮影=遠藤真樹

意識遠のいた身体の器へ、手鞠の歌声が共振し始めた。「相対する質量の交錯する熱量 」の演奏が、亡骸のような身体へ僅かな熱を注いでいく。サビへ向かい光を集めだした歌声と温もりを抱いた音色が、その身に、心へ、少しずつ前へ立ち上がる希望の熱を注入してゆく。その温もりと同化したくて、誰もがその場へじっと立ちながら、温かい想いの日射し降り注ぐ演奏を浴びていた。心穏やかで無垢な姿へと再生してゆく演奏が、何時しか笑顔の花を胸に、頬に咲かせていた。

調律…「何処か遠くへ…この喧騒を位置と逃れて、隔絶された場所へ。来る日も、また来る日も願うけど、変わることない日常。変えられない自分への苛立ち。でも、フとした瞬間に思い出す。その景色塗りかえてゆく存在が、きっとあなたなのだろう」。重厚なヴァイオリンの調べと繊細なピアノとアコギの旋律が半透明な糸のように絡み合う。手鞠の唱える言葉のひと言ひと言を追いかけたくなる。「夕闇に鳴動する衝動と幸福の在処」が見せたのは、茜色に染まった白日夢? 郷愁を抱かせる風景にノスタルジーを覚えるのか?! それとも、異国の町中で奏でる楽隊の演奏に切ない微睡みを覚えてゆくのか…。その夢は、今じゃない、ここ(個々,此処)へ連れてゆく。さぁ、あなたの心に響いた手のなる場所へ、想いを馳せようではないか。

Soanプロジェクト with 手鞠 2017.8.22 撮影=遠藤真樹

微睡む音色が幻惑の舞台へ連れ出した。「あなたは他人との違いを恐れている。同じ存在に安堵を求めている。そのくせ過剰なまでに他との違いを主張し、それを個性と主張する。だからみんなInstagramなんか始めてしまうんだ。芸能人でもないお前の人生なんて興味はない」。力強い言葉を強調するように、Soanプロジェクトwith 手鞠は漲る情熱を調べに重ねながら「正否の相違、或いは利害の不一致」を突き付けた。何時もは震えそうな存在をねぎらう彼らが、奏でる拳へ漲る情熱を降り注いだとき、そこには魂を躍動させる高揚が生まれていた。静の中へ生まれた衝動。それは生きる熱、沸き立つ血潮。心が震えだした、昂る気持ちに嬉しく震えていた。

「野に咲く花は雨の冷たさを知っている。そして、人の死の汚れや重たさを知っている。充分な光を与えられたものには到底理解の出来ないことでしょう。たとえ愚かだとわかっていても、荒れ果てた根に深く伸ばした根に生を行き届かせ、血の花を咲かせるんだ」。タイゾの情熱的なアコギの演奏とSachiの熱を抱いた旋律との交わりを合図に、異国情緒を抱いた音色に乗せ「感情を媒介として具象化する感傷の逝く宛」が力強く響きだした。溜め込んだ熱をすべて吐き出すように、演奏陣は凛々しく、激情した鋭利な音を叩きつけてゆく。熱した演奏の上で、沸き立つ想いのままに歌をはべらせる手鞠。本編最後にSoanプロジェクトwith 手鞠は、愛憎含んだ情熱的な心模様をぶつけてきた。鈍い血の色にも似た演奏が、身体の中を浸食してゆく。その黒く濁った音の血は、いつしか意識へ野生を植えつけていた。

Soanプロジェクト with 手鞠 2017.8.22 撮影=遠藤真樹

アンコールの最初に披露したのが、新曲の「春色の音色、記憶回廊(仮)」。初春の頃のほのかな温かさを覚える楽曲だ。これはSoanプロジェクトwith 手鞠流の卒業や旅立ちソング!? こんなにも輝きに満ちた歌は、初めてではなかろうか!? この歌を通し、Soanプロジェクトwith 手鞠としての新しい始まりの表情を感じていた。

「とても楽しい悪夢でした」。その言葉を最後に、Soanプロジェクトwith 手鞠は「それを僕は普遍と呼び、君はそれを不変と詠んだ」を演奏。手鞠の大きく振る手の動きと重ねあわせ、会場中の人たちが左右に大きく手を振り、心を一つに結んでいた。すべての悲しみを浄化するように流れた「それを僕は普遍と呼び、君はそれを不変と詠んだ」を通し、今宵の夢のような宴を、忘れたくない一夜の幻を、優しい笑顔で受け止めていた。


Soanプロジェクトwith 手鞠のライブは、触れた一人一人の心へ一つ一つ物語を描き出してゆく。一人一人がそれぞれの物語の中へ、みずからが主人公となった物語を重ね合わせていく。リアルに体感してゆく生きた感涙の短編映画集を、その身でぜひ味わっていただきたい。


文=長澤智典 撮影=遠藤真樹

 

セットリスト
Soanプロジェクト with 手鞠
2017.8.22 渋谷REX

Lyric:手鞠 Music:Soan
01. 薔薇は美しく散る(Cover)

02. そして君は希望の光の中に消えた
03. sign…-resonance-
04. 焦燥の日々の帷、憔悴する白雪姫(スノーホワイト)
05. 投影された在りし日の肖像と云う名の亡霊
06. それは呪いと同義語の魂の鎖 永遠に続く祝福と云う名のカルマ
07. 林檎の花の匂いと記憶野に内在する存在。
08. 相対する質量の交錯する熱量 
09. 夕闇に鳴動する衝動と幸福の在処
10. 正否の相違、或いは利害の不一致
11. 感情を媒介として具象化する感傷の逝く宛
<ENCORE>
12. 春色の音色、記憶回廊(仮)
13. それを僕は普遍と呼び、君はそれを不変と詠んだ

【Soanプロジェクトwith手鞠 Member】
Produce・Music・Drums・Piano:Soan
Lyric・Vocal:手鞠
Acoustic Guitar:タイゾ(from Kra)
Acoustic Guitar・Chorus:祐弥
Violin:Sachi(from 黒色すみれ)

 

リリース情報
Soanプロジェクト2ndミニアルバム
『旋律、静かな願いと。調律、その脈動に問う。』
◆2017年8月9日発売 プロジェクトwith手鞠『旋律、静かな願いと』(S.D.R-317)
◆2017年9月6日発売 Soanプロジェクトwith芥『調律、その脈動に問う』(S.D.R-318)
※どちらか1枚購入者対象予定でアウトストアイベント(4shot撮影会)
収録内容など詳細はオフィシャルサイトへ https://twitter.com/soan_official