宮城県加美町の古民家にてスズキタカユキ、森山開次、渡辺敬之による1日限りのパフォーマンス『Cocoon circus』

2017.9.28
インタビュー
舞台


 宮城県の県北にある小さな町「加美町」。ここには、さまざまな楽器や演奏曲目に最適化された素晴らしい音響設備を持つ、”田んぼの中のコンサートホール”として注目された「中新田バッハホール」がある。音楽専門ホールの先駆けとして、地方からの文化発信の象徴的存在として有名だ。人口23,000人あまりの加美町で、国内外で活躍しているファッションデザイナーを招き、彼らのさまざまなパフォーマンスを通して、その仕事やデザインを紹介する「衣・次元シアター デザインの宇宙」という企画が行われている。スタートは一昨年、小さな、けれど濃厚な公演の仕掛け人は加美町で染織工房と工藝ギャラリーを主宰している笠原博司氏。

 加美町には、古くから盛んだった稲作や養蚕という東北の基幹農業を発祥とする、農村文化の中で育まれてきた手織りのサブカルチャーがあるのだそう。笠原氏は町の委託を受けて、県内外から訪れる受講者を対象に、近世以来の伝統的な手法による植物染めや手織りの技術を伝える活動を行っている。一方で笠原氏と、このサイトでも紹介したことがある「仕立て屋のサーカス」という即興パフォーマンスを展開しているスズキタカユキが「新旧の日本のファッション」というキーワードを通じて共鳴し合い「衣・次元シアター デザインの宇宙」が始まった。笠原氏は言う。

 「私の教室では開講以来20年ものあいだ、毎年3月の修了式に茶会を開き、来場されたお客様に受講生自らが染めて織り上げた紬の着物姿でお茶を振る舞うというイベントを行ってきました。このご時世に和の極みです(笑)。しかし、これでは真の意味で日本の伝統や文化は伝わらないのではないかと考え、日本の服飾史における、これまでの“衣”の流れのようなもの、いわゆる和服や洋服と呼ばれるものの対極で、私たち日本人のファッションやモードにかかわる実験を秋の教室実習として始めました。
 今から10年前くらいに、私の友人で東京在住のキュレーターが、ぜひ紹介したいデザイナーがいるからということで、都内で行われたスズキさんのコレクション会場でお会いしたのが初めてでした。その友人に言わせるとわれわれにアジア的で共通する空気感のようなものを感じたのだそうです。その後、私が東京銀座で詩人の谷川俊太郎さんとキモノと現代詩の二人展を開催したときに、オープニングイベントで谷川さんの息子の賢作さんがピアノを弾いてくれたのですが、彼のステージシャツを私のキモノ地でスズキさんが作ってくださいました。今考えるとそれがもうすでに私たちのコラボレーションの始まりのようなものでした。このたびの企画は、日本の伝統的なキモノと現代に至る服飾史の先端にあるスズキさんたちのハイファッションが、わが国に“工藝”という手仕事の延長、地続きで同軸上にあるにあるものだ、ということを皆で考えるという発想から生まれたものです」

「衣・次元シアター」ひびのこづえ×引間文佳。背景の建物は「駒庄 農家屋敷館」

 この「衣・次元シアター デザインの宇宙」は加美町が支援をし、地元農業高校の生活技術科で被服や園芸を学んでいる生徒たちもスタッフとして公演の裏方にかかわりながら、現場で大人たちと一緒に社会参加して、学校の授業では学べない経験を積みながら運営されている。

 第1回はスズキタカユキ、コンテンポラリーダンサーの皆川まゆむ、照明作家の渡辺敬之、第2回はコスチュームデザイナーのひびのこづえ、コンテンポラリーダンサーの引間文佳、音楽の川瀬浩一という顔ぶれによる作品を上演した。ちなみに2016年のひびのこづえの公演は、開催中の石川県珠洲市で開催中の奥能登国際芸術祭2017の出品作品のきっかけにもなったとのこと。そして今回はスズキ、渡辺にコンテンポラリーダンサーの森山開次が加わったトリオで『Cocoon circus』を上演する。

 「これまでの彼らの打ち合わせの流れを見る限り、おそらく即興的な作品となる可能性は高いと思います。そして、それがこのシリーズを皆さんが“ラボ(実験室)と話題にしてくださる所以なのではないかとも考えています。小さな里山の限界集落にある古民家を舞台に、これからも内容の濃い日本の“衣”文化を発信していければと思います。おそらくまだまだ新しい試みではありますが、前述の茶会同様、加美町発のユニークなカルチャームーブメントに育つことを願っています」(笠原氏)

取材・文=いまいこういち

イベント情報
衣・次元シアター デザインの宇宙(コスモス)vol.3
『Cocoon circus』
■日時:2017年10月1日(日)13:00開演
会場:加美町 滝庭の関 駒庄 農家屋敷館
出演:スズキタカユキ 森山開次 渡辺敬之
料金:一般3,000円/当日3,500円、学生2,000円(前売・当日とも)
問合せ:加美町はた織り伝習館 Tel.0229-67-3169(9:00〜17:00)
■公式サイト:http://rangakusha.info.co.jp/kohgei/index.html
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