新曲やルーツ志向な楽曲の充実ぶりにも魅了された、ミスタービッグ白熱の大阪公演

2017.10.3
レポート
音楽

撮影=土居正則

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今年6月には3年ぶりとなる最新アルバム『ディファイング・グラヴィディ』を発表し、全国8都市9公演をサーキットするツアーで日本に戻ってきたミスタービッグ。札幌、金沢、名古屋、東京、仙台、そして前日にはメルパルクホール大阪での追加公演を経て行われた大阪の殿堂=フェスティバルホールにおける公演は、ツアー後半の山場にふさわしい熱気と盛り上がりに包まれたものとなった。

場内が暗転してJBことジェイムス・ブラウンのファンキー・チューンがSEとして流れると、大歓声に迎えられて4人のメンバーがステージに登場。オープニングから、彼らの人気を不動のものとした1991年発表の2ndアルバム『リーン・イントゥ・イット』の冒頭を飾った「Daddy,Brother,Lover,Little Boy」をプレイすると観客もサビの部分のシンガロングで応え、先端にギター・ピックを取り付けた電気ドリルを使っての“ドリル奏法”も交えた曲後半のソロ・パートで早くも最高潮の盛り上がりに。続いてステージ後方のスクリーンには米国らしいイメージを喚起する映像が投影されて「American Beauty」、重心の低めなギター・リフとともに疾走する「Undertow」で熱気をキープすると、ボーカルのエリック・マーティンが「いい感じかい? でも、何かが足りていないよな」とオーディエンスに呼びかけた。そして、パーキンソン病を患いながらもツアーに同行し続けるドラマーのパット・トーピーが温かい歓声に迎えられてステージに登場。サポート・ドラムを務めるマット・スターの横にパーカッション奏者として加わると、5人体制で再び「Alive & Kickin’」「Temperamental」と人気曲を連発。続くメロウな「Just Take My Heart」ではパットがドラム・セットに座って叩き、演奏を終えた後の拍手と歓声に手を合わせながら笑顔で応えた。

撮影=土居正則

曲ごとにしっかりと“見せ場”を作りながら、バンドの多様性を示すようにステージを進めていけるのも彼らならではの強みだろう。ギターのポール・ギルバートによるテクニカルなイントロから歓声が上がった「Green Tinted Sixties Mind」では、スクリーンにもアナログ・レコードのシングル盤などが映されて曲タイトル通りに60年代のカルチャーにも敬愛を示す彼らの姿勢が表現され、一転して最新アルバムに収録された「Everybody Needs A Little Trouble」では、重厚な曲調でハード・ロック/へヴィメタル界の最高峰プレイヤーが集まって結成されたスーパー・バンドである彼らならではの不変の魅力を提示。そして、続くブルース・ロック調の「Price You Gotta Pay」では、曲間でベースのビリー・シーンがハーモニカでソロを取る際にボーカルのエリックが背後に回って二人羽織スタイルでベースを弾くというトリッキーな演出も交えながら、ルーツ・ミュージックへのリスペクトも自在に表現してみせる。そうした一本調子にならない懐の広さは、キャリアを重ねてますます際立ってきており、結成から30年近くを迎えてもなおフレッシュさを失わない最大の秘訣に思えた。

撮影=土居正則

そんな起伏に富んだ前半のロング・セットで健在ぶりを豊かに示すと、中盤はギタリストのポールの超絶ソロからスタート。自ら足を踏み鳴らしてリズムを加えながらテクニカルなリフを連発して熱気を高めると、立てかけてあったもう一本の白いボディのギターに移り、衰えを知らぬ速弾きモードに突入してオーディエンスを圧倒した。そして、バンドが合流して最新作に収録された「Open Your Eyes」、シンガロングを求めながらの「Forever Back」とハードなナンバーを連打すると、エリックもギターを手にしてのアコースティック・タイムへ。ポールとスパニッシュな旋律を短く手合わせしてスタンバイを完了させると、大ヒットしたキャット・スティーヴンスの名カバー「Wild World」で場内は一気に大合唱状態に。

続いて、スクリーンには星空が映し出されてロマンティックなムードを高めながら「Promise Her The Moon」が奏でられ、再び最新アルバムからフォーク~カントリー色の強い新境地を示した「Damn I’m In Love Again」を披露。叙情的な新旧の名曲を続けてバンドのメロディアスな魅力をたっぷりと響かせると、再びエレクトリックな編成に戻ってタイトル通りにロックンロール的な高揚感に満ちた「Rock’n’Roll Over」、「いろんな場所を回ってきたけど、今ココに集まっているみんながいつでも一番の宝物だ」とMCを挟んだ後により痛快に盛り上げる「Around The World」へ。曲後半ではポールのギターとビリーのベースによる超絶ユニゾン・プレイも交えて、鉄壁のアンサンブルでコンサートはいよいよクライマックスへと向かっていった。

撮影=土居正則

終盤戦はベースのビリーによるソロ・タイムから。リード・ギターのような速弾きからタッピングを多用した壮絶かつ超人的なプレイを炸裂させて観る者すべてのド肝を抜くと、ギターとドラムが加わってのセッションに転じ、ギターとベースがユニゾンによる超絶リフを奏でると待ってましたの大歓声とともに89年発表のデビュー作のオープニング曲でもある「Addicted To The Rush」へ。
テクニシャン揃いなバンドの魅力が凝縮された名曲で熱狂を誘うと、エリックが「大阪、素晴らしいよ。ありがとう」と感謝の言葉を伝えた後に各メンバーをコールし、続いてパットがこれまでのドラマー人生を語った音声にアニメーションで映像を付けたショート・ムーヴィーが流された。子供の頃にドラムに魅了されたきっかけ、いつでも「決してあきらめない」の精神をもって何にも屈せずドラムに打ち込んできた青年期、ミスタービッグとの出会い、そしてパーキンソン病にも屈せず活動を続ける現在に至る彼の歩みが感動的に映し出されると場内からは惜しみない拍手が起こり、そのまま心をひとつにしたオーディエンスの大合唱を伴って代表曲の「To Be With You」が奏でられた。
続いては、高速リフのユニゾンによるイントロからジャジーなウォーキング・ベースなども交えつつの起伏に富んだ曲展開で疾走する「Colorado Bulldog」へと流れ込み、本編のラストは彼らの人気が不動のものとなった年を回想して作られた原点回帰的な新曲「1992」を当時の日本におけるライブ映像や写真などをスクリーンに次々と映し出しながらプレイ。様々な歴史を経ながらも今もオリジナル・メンバーで健在ぶりを示すバンドの過去と現在を力強く繋ぐ音と演奏で、ストーリー性豊かに締めくくった。

撮影=土居正則

そして、アンコールでは恒例のパート替えでポールがドラム、エリックがベース、ビリーとマットがギターを弾き、パットがリード・ボーカルを務めるという編成で、70年代に活躍した米国ハード・ロックの先駆的バンドでもあるグランド・ファンク・レイルロードの名曲「We’re An American Band」を痛快にカバー。後方のスクリーンにも星条旗が鮮やかに映し出され、ミスタービッグがハード・ロックやヘヴィメタルを軸としながらもブルース、ロックンロール、フォークなども包括した、大きな意味でのアメリカン・ロックの系譜の上に立ったバンドであることも改めて認識させられた。続いて最後の締めとして彼らが演奏したのは、最新アルバムのタイトル曲でもある「Defying Gravity」。象のバルーンがステージ上に2体登場してフィナーレ的な雰囲気を醸しつつ、クライマックスの要所に盛り上がりが確実な過去の代表曲を持ってくるのではなく、発売されて間もないニューアルバムからの曲を持ってくるところにも彼らの強みが感じられた。実際に本編のセットの中でも、随所で取り上げられていた新曲を演奏している時の各メンバーのイキイキとしたプレイや引き締まったアンサンブルが特に印象的で、結成から30年近くを迎えたベテラン・バンドではなかなかそのような雰囲気は得難いもの。充実した新作を得て、まだまだ前進を続けるミスタービッグを実感させた好ライブだった。

レポート・文=吉本秀純 撮影=土居正則

イベント情報
ミスタービッグ JAPANツアー
10月2日(月)大阪フェスティバルホール
18:00開場 19:00開演

 

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