1,000馬力のモンスターマシンが富士に降臨! FIA世界耐久レースはトヨタとポルシェの壮絶バトル必至
6時間、300キロオーバーで走り続ける世界耐久レースは最も面白いモータースポーツレースの一つだ。ポルシェvsトヨタの一騎打ちも見逃せない Copyright © 2012 - 2017 Fuji International Speedway Co.,Ltd.
モータースポーツ界の世界3大レースというのをご存じだろうか。1つ目はF1の中で最も華やかなレース「モナコグランプリ」。2つ目はとインディカーレースの頂点に位置する「インディ500」。そして3つ目が24時間走り続ける耐久レース「ル・マン24時間レース」のことを言う。
このル・マン24時間レースを含む、世界の全9サーキットで行われるのがWEC(世界耐久選手権)だ。第1戦がシルバーストーン(イギリス)から始まり、ル・マン24時間は第3戦に位置づけられている。ル・マン24時間と言えば忘れられないのは1991年、日本車として初優勝を遂げたマツダ787Bの快挙だ。レギュレーション変更でロータリーエンジンの使用が1990年までとなり、マツダの参戦も絶望しされていた中、1991年のレギュレーション変更に各社が対応できず、奇跡的ともいえる最後のチャレンジの機会が到来。そのラストチャンスにマツダは前車767を大幅に進化させた787(B)で参戦、下馬評ではメルセデス有利と言われたレースを制し、マツダというより日本に大きな自信と興奮をもたらした。
そのル・マン24時間レースで悲願の優勝を目指しているのがトヨタだ。昨年のマシンを熟成したTOYOTA TS050 HYBRIDを駈る8号車(中嶋一貴、セバスチャン・ブエミ、アンソニー・デビットソン組)が第1戦のシルバーストーン、第2戦のスパ・フランコルシャン(スペイン)で2連勝と幸先のいいスタートを切り、3戦目のル・マン24時間レースには勝利に一番近いところにいた。予選でもその調子を維持し、7号車のマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ステファン・サラザン組がポールポジションをゲット。チャンピオンポイントでトップを走る8号車も2位とフロントローを独占した。ポルシェ勢とほぼ同じタイムの9号車(ステファン・サラザン、国本雄資、ニコラス・ラピエール組)も5位につけ、仮に7、8号車の上位2台がアクシデントにあった時にも対応できる万全の3台態勢で本戦を迎えた。
しかし深夜1時ごろ、魔の30分が訪れた。思わぬクラッチトラブルで7号車がリタイヤすると、9号車も後続に追突され、よもやの駆動系トラブルでリタイヤを余儀なくされた。8号車もモーターとバッテリー異常のため、約2時間もピットイン作業に追われ、54位にまで順位を落としたが最後は意地の8位入賞を果たした。いずれにしても、悲願のル・マン制覇は来年以降のお預けとなった。
その第3戦、ル・マンの借りは富士で返したいトヨタ。第7戦「2017 FIA 世界耐久選手権 富士6時間耐久」(10月13~15日)はシリーズの行方を左右するレースで、お膝元(トヨタのモータースポーツの拠点が東富士にある)のトヨタはある意味背水の陣で挑むシリアスなレースになるのは必至。それだけに日独のメーカー同士の意地もぶつかり合う緊張感も味わえ、モータースポーツファンならずとも興奮するレースとなるのは間違いない。
WECは時速300キロ以上で6時間(または24時間)走り続ける世界で一番過酷なモーターレースで、マシンも例えばTOYOTA TS050 HYBRIDは2.4リッターV6ツインターボ過給ガソリンエンジンに8MJ(メガジュール)対応のハイブリッド・システムを組み合わせ、1,000馬力を超える4輪駆動(LM P1-H)のモンスターマシンとなっている。4輪でトラクションできるため、コーナリングスピードはあのスーパーフォーミュラをも凌ぐ速さだ。富士スピードウェイのコースレコードもスーパーフォーミュラの1'22.572(アンドレ・ロッテラー/PETRONAS TOM'S SF14/2014年)に対し、WECは1'22.639(マーク・ウェーバー/Porsche 919 Hybrid/2015年)とほぼ互角。クローズドカ―でこの記録だが、今年はもしかするとスーパーフォーミュラのコースレコードを抜くかもしれない。
現在のランキングのトップは、第3戦のル・マン24時間レースから4連勝中のポルシェで2号車に乗る3人(ブレンドン・ハートレー、アール・バンバー、ティモ・ベルンハルト)で159ポイントとなっている。2位にはトヨタ8号車の中嶋一貴、セバスチャン・ブエミが108ポイント、同じく同僚ドライバーのアンソニー・デビッドソンが93ポイントと続く。ポルシェカーNo.1のアンドレ・ロッテラー、ニール・ジャニ、ニック・タンディは83ポイントで厘差の4位につけている。トヨタに乗る小林可夢偉とマイク・コンウェイは60.5ポイントの6位だ。一方、マニュファクチャーズランキングはポルシェが242ポイントに対し、トヨタが168.5ポイント。トヨタにしてみれば、ホーム富士での第7戦は1、2フィニッシュが必須命題となっている。
モンスターマシンのLM P1カテゴリーは上記4台が熾烈な争いを演じているが、今回の富士第7戦にはジャッキーチェンDCレーシングなどのプライベーターチームによるLMP2カテゴリーが9台、フェラーリ 488 GTE、ポルシェ 911 RSR、アストンマーティン ヴァンテージなどが参戦するLMGTE PROカテゴリーが8台、同じく上記3台がエントリーしているLMGTE AMカテゴリーが5台と合計26台が参戦する。ポルシェワークスは2016年での撤退を表明しているので、LMP1でのポルシェの雄姿を見られるのも最後となるかもしれない。
とにかく、F1やツーリングカーレースと違い、長丁場の耐久レースなだけに、レースの合間にイベントや食事を楽しめるのも耐久レースの魅力の一つ。1日満喫できるだけでなく、メーカー、ドライバーの意地も観られるシリアスレース。ぜひ今週末には富士スピードウェイに足を運んで、その凄さを実感してほしい。