【パリの公演レポート】大人計画『業音』パリ公演

レポート
舞台
2017.10.27
会場入り口コーナーの展示

会場入り口コーナーの展示


2017年10月7日(土)、パリのエッフェル塔の目と鼻の先にある日本文化会館にて、大人計画『業音』を観に行ってきました。

この舞台は、今から15年前に初演されたもののリバイバル公演。日本では8月の東京公演で幕が開け、日本各地をまわったのち、その最終公演としてパリへやってきました。実は、大人計画のパリ公演は初めてです。

日本では大人計画のはその人気ゆえに入手困難なのは有名な話ですが、その点、海外のパリでは日本では考えられないような料金(25ユーロ:約3300円)での予約ができました。なお、パリでは連日3日間の公演のうち、早々に金曜日の夜の部はが完売となったそう。

今回のパリ公演でのフランス語のタイトルは「業音 Go–ON ou le son de la déraison」。直訳すると「不条理の音」となります。大人計画独特の日本語の台詞や動きのタイミングなど、妙だけど、なんだかくすぐったくて笑ってしまうようなテイストがどんな風にパリジャンたちに受けるのでしょうか? そんな好奇心もあって、筆者の夫(フランス人)と共に観劇をし、彼の反応を見ることにしました。ちなみに彼は、大人計画も松尾スズキも知らなければ、舞台も年に一度観るかどうか、という程度のフランス人男性です。

会場に到着すると、客席はすでに満員。私たちは、会場全体が見渡せる右後方あたりの席に座りました。殆ど日本人のお客さんはいませんでした。あとは、もちろんフランス人客でした。どちらかというと年齢層は中年以上のムッシュ、マダムが多いように見えました。

冒頭は、本編にも出演している宮崎吐夢による、映像付きの解説からスタート。舞台中に登場するフランス人には分かりにくい「サザエさん」や「土下座」というものについて、事前解説が最初に行われました。

そして、いよいよ舞台がスタート。ステージの左上には小さな電子掲示板があり、俳優たちの喋るタイミングに合わせてフランス語が掲示される仕組みになっています。日本語の台詞で「新幹線」などの固有名詞が出てくると、フランス版の新幹線である「TGV」というように適切に訳されていました。

上演中の客席は、“クスクス”“ふわり”という波のような笑いが消えてはまた起きる、という感じ。さすが反応が素直なフランス人、日本ではあまり見ない光景ですが、一人また一人と席を経つお客さんも数名出現していました。

一緒に観劇した筆者の夫に感想を聞いてみると「彼(松尾スズキ)の頭の中には、色々な事があるってことはわかったよ。でも、僕にはすこし too muchだったかな」とのこと。

この『業音』は、たくさんの種類の「業」が多く詰まっているため、観ているフランス人のなかには、パンクしそうになってしまった方もいたのかも知れませんね。

会場ロビー

会場ロビー

なお、この観劇の後日、2017年のフランスのカンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した映画『ザ・スクエア』を観たのですが、この映画にもあらゆる人間の「業」がちりばめられていました。この映画は現代世界の「業」と「恐怖」を見事に捉えたものだったのですが、大人計画の『業音』ともダブる要素が多くありました。『業音』は15年前に上演された舞台ではありますが、現代の私たちにも通ずる作品であると強く実感いたしました。

大人計画『業音』 公式サイト:http://otonakeikaku.jp/2017go_on/

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