高橋大輔が思う、アートとフィギュアスケートの共通点とは? ヨコハマトリエンナーレの「みらいチケット」記念セレモニーをレポート

2017.10.31
レポート
アート
スポーツ

高橋大輔 写真:加藤健 写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

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2010年のバンクーバーオリンピックで日本人初の銅メダルを獲得し、現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する高橋大輔が10月28日(土)、横浜市の横浜美術館前で行われた「ヨコハマトリエンナーレ2020 みらい」の記念セレモニーに登場した。

本企画は11月5日(日)まで開催している『ヨコハマトリエンナーレ2017』に来場した子供たちに「みらい」を発行し、3年後に控えた『ヨコハマトリエンナーレ2020』に、特別に招待するというもの。この日会場にはイベントを楽しみにしていた子どもたちをはじめ、多くのファンが駆けつけた。

写真:加藤健 写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

2020年、子どもたちに託す「みらい

オープニングではまずヨコハマトリエンナーレ2017 コ・ディレクターである横浜美術館館長の逢坂恵理子氏が登場し、ヨコハマトリエンナーレについて「今を生きるアーティストが、豊かな発想力と思いがけない想像力を使ってさまざまな魅力ある展示をしています」とコメント。その上で「次回のトリエンナーレは2020年で、東京オリンピック・パラリンピックが開催される年。ぜひ高橋選手にはスポーツとアートの世界をつなげていただきたいと思います」と、未来にかける思いを語った。

その後高橋は、「アートというのはその人の感性であったり年齢などによっても、受け止め方が変わってくるものだと思います」とアートに対する自身の考えを述べた後、「家族でアートを観に行った後に感じたことを話す機会はあまりないと思うので、そういう意味でもヨコハマトリエンナーレはすごく良いチャンス。僕はこれまで現代アートにとっつきにくいイメージがありましたが、今回はさまざまなアートに触れられたことで、自分の中に新たな感性を発見することができました。ぜひ皆さんもこの機会にみらいを手にして、2020年のトリエンナーレにぜひお越しいただきたいと思います」と、参加者へのメッセージを贈った。

写真:加藤健 写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

印象的だった作品は、繊細な刺繍が美しいコスチューム

続いて行われた高橋大輔と逢坂恵理子館長のミニトークショーでは、高橋本人の美意識に触れられるような発言をはじめ、フィギュアスケートとアートの関連性について語られた。

逢坂:今回のヨコハマトリエンナーレ2017をご覧いただいて、とくにおもしろいと思った作品はありますか?

高橋:入口にあった巨大なしめ縄のあの迫力は、すごいと思いました。あとは2Fに展示されていた刺繍アートもとても印象的でしたね。

逢坂:刺繍はザオ・ザオさんという中国の若手アーティストの作品で、高級ブランドのスーツと、それとそっくりのものを作家のお母さんが作っています。

高橋:2つ並んでいるんですけど、遠くから見ても全く遜色ないくらい本当にそっくりで。そういうところで見せるっていうアートの発想もすごいと思いましたし、僕たちも衣装を着るので、ここまで高いものを使わなくても表現できるんだ!と、今回驚かされました。

高橋大輔の思う、アートとフィギュアの共通点

逢坂:実際に高橋さんが現代アートをご覧になって、「スケートとつながっているな」と感じられたことは何かありますか?

高橋:僕たちは一年を通してショートプログラム・フリープログラムと2つの作品を皆さんにお見せしていますが、僕たちが思い描く世界とやはり見てくださる方の受け止め方って、感性の違いによっても全く変わってくると思うんです。だからそういうところはアートにも通じる部分があると思いますね。それから、ファーストインプレッションで感じたものを、さらにそこから深く知って探っていくことによって、「このアートにはこんな意図があったんだな」と知ることができる。それは僕たちがやっているスポーツでも同じだと思うんです。フィギュアスケートってスポーツなんですけど、スポーツではないところもあるので、そういうところもすごく合うなと感じました。

写真:加藤健 写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

逢坂:フィギュアスケートは表現ですからね。

高橋:はい。それから現代アートって、わからない人が見ると「全然わかってない」みたいなことを言われるのかなと思ってましたけど、そういうことは関係ないなと。アートを鑑賞する時には頭でっかちにならなくてもいい。やっぱり僕にとっては、その時に自分が思ったこと、感じたことが全てであり、それが「正解」なので。そういう意味では、自分の価値観にも通じる部分があると思いました。

逢坂:高橋さんはやはりスケートを極めた方ではあると思いますがやはり柔軟で、アートの世界で私たちが来館者に期待しているものの見方を、高橋さんはすぐにキャッチしてくださいました。それから、フィギュアスケートというスポーツ自体が、美しさを表現しているものですよね。先ほどザオ・ザオさんのスーツに反応していただいたように、やはり美意識がすごくおありなんじゃないかと思いました。

高橋:そうなんですかね。美意識は頑張っている方だと思います(笑)。僕の場合は少し大人になってからアートに触れる機会が多くなりましたが、今思えば子どもの頃からもっと触れておけば良かったなと思います。小さい頃ってやっぱりいろいろなものを吸収しやすい時期でもあるので、その頃からもっと美術に触れていたら、もっとよく美意識が育っていたのかもしれないですよね。

写真:加藤健 写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

逢坂:高橋さんが今すごく大切なことを言ってくださったと思います。どうぞ今日いらっしゃるお子さまも、小さいうちからアートに触れる機会をたくさん作っていただきたいと思います。ところで高橋さん今日のスーツ、初めて着られたということでしたが。

高橋:はい。このスーツは一年前くらいに一目惚れして買ったものなんですけど、実はあまり出番がなくて……。でも今日はバッチリだと思って着てきました(笑)。

逢坂:この会場にぴったりですよね。本当にありがとうございました!

トークセッション終了後には、高橋大輔による「みらいケット」贈呈式が行われ、今回選ばれた先着20名の子どもたちへ、本人よりサイン入りのが贈られた。またセレモニー中は、当日駆けつけた多くのファンからの大きな拍手と歓声が上がり、終始会場を沸かせていた。

終了後の囲み取材にて、今年とくに印象的だったことを尋ねられた高橋は「歌舞伎とスケートがコラボレーションした公演が素晴らしかった。あの貴重な経験を通して、フィギュアスケートにもまだまだ可能性があると感じた」と語った。プロフィギュアスケーターとして、表現の幅を今後さらに広げていくであろう彼の今後の活躍に、ますます目が離せない。

 

高橋大輔の「高」は正式にははしご高

イベント情報
ヨコハマトリエンナーレ2017「島と星座とガラパゴス」​

日時:2017年8月4日(金)〜11月5日(日)まで
会場:横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館 地下ほか
主催:横浜市、横浜市芸術文化振興財団、NHK、朝日新聞社
横浜トリエンナーレ組織委員会
お問い合わせ:ハローダイヤル 03-5777-8600(8:00〜22:00)
http://www.yokohamatriennale.jp/

 

 

情報
ヨコハマトリエンナーレ2020みらい

対象:保護者同伴の中学生以下で、当日、横浜美術館会場を鑑賞した方
同伴者は、みらい受付当日に横浜美術館に入館できる(鑑賞券もしくはセット券)が必要。
配布枚数:2020枚 ※なくなり次第終了
配布期間:10月28日(土)から。10:00〜18:00 ただし11月2〜4日は20:30まで
配布会場:横浜美術館