中川晃教 インタビュー デビューから16年――“生まれた時間”である2日間に響かせる歌と思い
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中川晃教 撮影=石阪大輔
デビュー16周年を迎えたシンガーソングライター・俳優として活躍する中川晃教が、今週末・11月4日(土)~5日(日)に新国立劇場 中劇場 (東京都)にてコンサート『I Sing ~time to come~』を行なう。2013年からシリーズで続けている『I Sing』について、そして、シンガーとしての今の想いを語ってくれた。
――13年からシリーズで続けられてる『I Sing』コンサート。中川さんにとって、その位置づけはどのようなものなのでしょうか?
これまで、ミュージカルだけでなく音楽の世界でも中川晃教として活動する中で、色々な挑戦をし、自分の最大限の力を発揮できるよう努めてきました。ミュージカルの合間にコンサートをやっていると思われるのがすごく嫌で、でもミュージカルは公演期間が決まっているし、人間の時間は限られている。息をつく暇もない忙しさの中でようやく訪れるのが、コンサートの準備期間なんです。とくに『I Sing』は、歌うことと真正面から向き合い、歌を通して自分自身とも向き合ってお客様と時を紡ぐためにスタートさせた、僕にとって原点と言えるコンサート。当初は何か形にしないといけないという責任感から肩に力が入っていたけれど、次第にこのコンサートに向かって日常生活が続いているような、自然な感覚が持てるようになっていったことは、大きな自信につながっています。
中川晃教 撮影=石阪大輔
――今回の「time to come」という副題に込めた思いとは何ですか?
『time to come』というタイトルには、時を遡って未来に向かっていくという意味が込められています。僕は 2001 年にシンガーソングライターとして音楽シーンで世に出たあと、02年にミュージカルの世界に入りました。自分が歩む道の上に音楽とミュージカルの二つがあると感じ、どちらがどうなのか……と悩んだこともあったし、音楽って自分自身や時代そのものだから行き詰まりそうになって、スタジオ・アルバムが出せない時期が11年も続いたんです。でも、16 年の歳月の中で、音楽とミュージカルは切っても切り離せないものだとわかったし、自分がどういう生活をし、それがどれだけ愛おしい日々であるかということから僕の音楽は生まれるのだとも実感しました。スタジオ・アルバムが出せない期間も、ライブ盤をリリースすることは続けていて、自分の中ではコンサートこそクリエイションの場であり、そこで温めたものが最終的にスタジオ・アルバムになればという思いがあります。今回は、そうやってコンサートで発表してきた曲を集めて昨年のデビュー15周年にリリースしたアルバム『decade』を中心にしつつ、新たに書き上げた曲も織り交ぜます。
中川晃教 撮影=石阪大輔
――16年の歳月を経て今、心身ともに充実した時期を迎えていらっしゃるのですね。それは昨年の『ジャージー・ボーイズ』で読売演劇大賞最優秀男優賞と菊田一夫演劇賞を受賞されたことからもうかがえます。あの作品でフランキー・ヴァリの高音を物にされた経験は、シンガーとしても大きかったのではないですか?
そうですね。あの役を手中に収めるために、こういう技術を用いてこういう声帯のコントロールをして……というふうに声と向き合った結果、年齢を重ねる中で出づらくなったり、思うように表現ができなかったり、その理由がわからなくて無理をして喉に負担をかけて苦しい声になってしまったり、といったことまで、整理がついたんです。結果として賞をいただいたことは勿論嬉しいですし、ミュージカルでは作品世界の中に駒として自分が含まれていく感覚があるのですが、そのためには僕自身が最高のコンディションでいなければならないことにも改めて気づきました。そうした『ジャージー・ボーイズ』での経験も今回の『I Sing』に活かして、今の一番の声を届けたいです。
中川晃教 撮影=石阪大輔
――コンサートが行われる11月4日と5日は、中川さんのお誕生日前日と当日です。どのような気持ちで迎えたいですか?
すごく特別な気持ちになるでしょうし、それを皆さんにも感じていただけたらと思っています。僕の母は11月4日に陣痛が始まって病院に行き、5日の3時か4時頃に僕を生んだそうです。だから、僕が生まれるまでの時間であるこの2日間に、自分が歩んできた16 年の歳月を形にした歌を届けることには、しっかり裏付けがあります。と同時に、『I Sing』ではいつも“VS”と称して、ギター&パーカッション&僕、とか、ツインピアノ&僕、といった具合に変則的な編成を作り、その瞬間に生まれる音楽を大事にしていますし、今回はベースもドラムもギターも初めて組ませていただくメンバーなので、聞き慣れた曲もまた響きが変わってくると思う。この2日間にしか味わえない心地良いグルーヴや研ぎ澄まされた繊細な音を楽しんでいただきたいですね。
取材・文=高橋彩子 撮影=石阪大輔
中川晃教 撮影=石阪大輔
【神奈川公演】
日時:2017年12月14日(木)~12月17日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 ホール
公演日程:2018年1月20日(土)
【長野公演】
公演日程:2018年1月26日(金)・1月27日(土)
会場:サントミューゼ
会場:大阪 新歌舞伎座
【愛知県】
日時:2018年2月15日(木)~2月16日(金)
会場:刈谷市総合文化センター 大ホール
【東京公演】
日時:2018年3月2日(金)~3月12日(月)
会場:TBS赤坂ACTシアター
原案・作詞・演出:ラサール石井
脚本:倉持裕
作曲・音楽監督:玉麻尚一
振付:川崎悦子
出演者:哀川翔/相葉裕樹/橋本じゅん/青木さやか/池田純矢/今拓哉/芋洗坂係長/オレノグラフィティ/陰山泰/岡田誠/河本章宏/新良エツ子/井上珠美/外岡えりか/福永吉洋/大竹浩一/森内翔大/香月彩里/谷須美子/伊藤結花/小林佑里花/大空ゆうひ/中川晃教
ミュージシャン:中野裕子/川上鉄平/副田整歩/一本茂樹/萱谷亮一
■公演公式HP:http://m-headsup.com