【八王子天狗祭クイックレポ】BIGMAMA 地元・八王子の新たな記念日を、気高きアティチュードで祝う
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八王子天狗祭【天狗ステージ】 BIGMAMA
2017年のハチテンもあっという間に終盤。天狗ステージでトリ前を務めるのはBIGMAMAだ。金井政人(Vo/G)、リアド偉武(Dr)、柿沼広也(Gt)の3人がグドモの高校の後輩ということで、ハチテンならではの配置と言える。ベートーヴェンの第九を使った荘厳なSEが鳴り響くなか、「荒狂曲 "シンセカイ"」がコールされると、一気に人が前方へと押し寄せ、ハードなロックチューンが暗闇を切り裂いた。
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野性的なコーラスに導かれるように始まった「ファビュラ・フィビュラ」はリフ感の強い骨太なギターがスタジアム・ロック的なグルーヴを生み場内を圧倒し、東出真緒が奏でるヴァイオリンがバンドを牽引する「Swan Song」ではさらなる歓声が湧き起こる。こうなってくるともう、観客の盛り上がりはとどまるところを知らないといった様子なのだが、そんなフロアの熱とは裏腹に、ステージ上に漂う空気は至ってクール。本人はそんなつもりないのだろうが、青を中心とした照明と相まって独特な雰囲気を醸し出している。
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ドラマチックに展開していく「Sweet Dreams」では、隣同士で肩を組んで盛り上がっている観客が多く見られたのだが、それには少々違和感を覚えた。己の感情を思い切り放出するよりも、一人立ち尽くしながらグッと興奮を噛み締めたくなるような、深みのある演奏だったからだ。そうすることでステージと通じ合えるんじゃないかという不思議な感覚すら湧いてきた。それぐらいの気高さが、安易な共感を拒むかのような意志が、バンドから、特に金井から感じられたのだ。それは地元だからこそのプライドなのかどうか、こちらからうかがい知ることはできないが、ぐっと引き締まったタイトなパフォーマンスが受け手の緊張感と集中力を高めたことはたしかだ。
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4声のハーモニーが美しい「愛はハリネズミのように」でエンディングを迎えるまで、遂にまともなMCを聞くことはなかった。演奏が終わると、金井は後ろを向いたまま床にへたり込み、しばらく呆然としていた。そんな彼の姿に会場全体が飲まれ、空気の流れが一瞬止まった。柿沼による「ありがとうございました」という挨拶が観客の緊張を解き、どよめき混じりの拍手が天狗ステージに鳴り響いた。それは尊くて、美しくて、11月11日をさらに特別にする35分間だった。
取材・文=阿刀“DA”大志 撮影=佐藤 広理(@hilf_ntlo)
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