架空の街からリアルな東京へ、次章への旅立ちを見せたAwesome City Club
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Awesome City Club 2017.12.6 撮影=古渓一道
Awesome Talks -One Man Show 2017 Autumn/Winter-
2017.12.6 Zepp DiverCity TOKYO
8月にリリースしたベストアルバム『Awesome City Club BEST』に伴うツアーとしては、リリース直後ではなかった分、バンドはフィジカルな演奏力やステージパフォーマンス、メンタル面での成長をこの間、育んできたんじゃないだろうか。そして、ベストアルバム所収の新曲「ASAYAKE」のみならず、その先のAwesome City Club(以下、ACC)も見せるという意味で、2017年の終わりにこのツアーが行なわれた意味は大きかったと感じる。
10ヶ所をめぐる全国ツアーのファイナルは、自己最大キャパのZepp DiverCity。ACCいつものお楽しみであるエントランスのしつらえも、今回はベストにちなんで過去のグッズTシャツ全てが展示販売されていたり、思わずインスタにアップしたくなるようなキュートなオブジェクトも多数。そのお楽しみに対して、ステージ上はごくシンプルなのが一つ今回、象徴的だった。何かステージが進行するうちにデコレーションが出現するかな? と想像したが、彼らは演奏とパフォーマンス、印象的なライティングだけで今のバンドの存在感を表現したのだった。
Awesome City Club 2017.12.6 撮影=古渓一道
会場が暗転してステージに登場した5人は、atagi(Vo,Gt)とPORIN(Vo,Syn)がレッド系、モリシー(Gt,Syn)、マツザカタクミ(Ba,Syn,Rap)、ユキエ(Dr)がグリーン系のお揃いのボウリングシャツを着用。グッズとしても販売されているKEISUKEYOSHIDAとのコラボアイテムなのだが、それを各々の着こなしで見せてくれるのも、いかにもACCらしい。きらびやかなライティングの中atagiの「踊るぞトーキョー!」の第一声から、歌詞表現でグッとリアリティのある男女の心情やシーンを描くようになった記念すべき「Don’t Think, Feel」が、モリシーのシャープなカッティングを軸にフロアをいきなり揺らしていく。そのままベストアルバムのみならず、バンドのターニングポイントとなった「アウトサイダー」のタイトルコールをPORINが行なうと、大きな歓声が上がる。シンプルだがタフなユキエのシュアショット、フロント二人の存在感の大きさにも驚く。そしてデビュー曲「4月のマーチ」。今でも若い彼らだけど、この曲でのPORINの少女性を今の彼女は曲の主人公として、普遍的なものとして届ける覚悟ができているように映った。シティポップを牽引する“東京のイケてる男の子・女の子”の集団としてのバンドという、斜に構えたところは今の彼らにはもう感じられない。ACC第1期の中でも今後も残っていきそうな重要な曲を連投したこのオープニングには心を揺さぶられた。
Awesome City Club 2017.12.6 撮影=古渓一道
Awesome City Club 2017.12.6 撮影=古渓一道
モリシーがシンセを弾いた「Lesson」でのインディR&B感は、atagiのファルセットを駆使する繊細なエモーションの表現が際立っていたし、甘やかで舌足らずな部分を残しつつ、一人でフロントを張るPORINメインの「Vampire」と、二人の個性が各々見える曲順の流れもいい。エレピのフレーズもどこかクリスマスというか、冬に似合う質感に聴こえるという、ポップスの持つリスナーの日常や生活に寄り添うといったレベルにACCの楽曲が、ライブでも成長を見せたことを実感する場面でもあった。
クリスマスといえば、モリシーがピアノを弾き始め、次の曲のイントロ程度で終わるのか?と思いきや、「Have Yourself A Merry Christmas」をワンコーラス弾いて、そこから「Lullaby for TOKYO CITY」にすべるように入っていった流れはACCにとってソウル=核心の部分だったんじゃないかと思えた。USインディ的なメロディと、ホームタウンである東京への思い。そう言えばマツザカは、長いツアーをしてみて改めて東京が大好きで、ちょっと空気が悪いことすら心地いいと明言していた。架空の都市どころかやっぱりAwesome Cityは東京であり、そこから生まれたリアルな歌が、特に今回のツアーでは網羅されている。
Awesome City Club 2017.12.6 撮影=古渓一道
Awesome City Club 2017.12.6 撮影=古渓一道
Awesome City Club 2017.12.6 撮影=古渓一道
そして後半に差し掛かる前にワンマンならではのサプライズとして、キリンジの「エイリアンズ」をオリジナルに比べるとジャズ寄りのアレンジ、サビをatagiとPORINのハーモニーワークで聴かせるという、レアな演奏でも楽しませてくれた。この選曲も“ACCの東京のバンド感”を明確にしていたように思う。
ロングMCではモリシーの公式な結婚報告に始まり、PORINが「1曲目からみんなのクラップにちょっとグッときて(泣きそうになった)、すいません」といった直近すぎる感想から、親子で来てくれている人も多いツアーだったことを喜ぶユキエ、と5人それぞれの感慨を思い思いに話してくれた。
Awesome City Club 2017.12.6 撮影=古渓一道
Awesome City Club 2017.12.6 撮影=古渓一道
終盤は2017年からこの先を表明したトライバルで力強い「ASAYAKE」が、歌い出しの<夜明けまだか>のシンガロングの大きさに、すでにファンにとって大きな曲になっていることを知り、その共鳴にバンドがさらにエネルギーを得て、スリリングなデュエットナンバー「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」で、きらびやかにフロアを照らすミラーボールが歌詞の世界観をそのまま会場に投影しているよう。それにしてもPORINの「うそつき」というセリフの破壊力たるや。この日最も男子の歓声が大きくなった瞬間だったのでは? そして本編ラストはライブでは久々の披露となる「涙の上海ナイト」で、ダンスを加速させ、<トンナンシャーペー>のコール&レスポンスを含め、肩の力が抜けタフになったACCを堪能させてくれた。
アンコールではatagiが「新曲をやります! 今までで僕たちが一番ガチガチに踊ってる曲です。どんなバンドでも新曲って黙って聴いてしまうじゃないですか? でもこの曲は聴かなくていいから体を揺らしてください」と、「Magnet」を披露。確かに自然と体が揺れるグルーヴだ。続く、「青春の胸騒ぎ」でこの日は幕を閉じたのだが、まさに青春期の模索を経て、さらにポップミュージックとしてここからジャンプアップする新しいACCの背中を見ているようなエンディングだった。
なお、「Magnet」はすでにアナウンスされているように、映画『レオン』のエンディングテーマであり、同曲を含むニューEPが2018年3月14日にリリース決定。このEPのリリースに伴う全国ツアーも発表された。
取材・文=石角友香 撮影=古渓一道
Awesome City Club 2017.12.6 撮影=古渓一道
Awesome City Club 2017.12.6 撮影=古渓一道
2017.12.6 東京Zepp Divercity
01. Don’t Think, Feel
02. アウトサイダー
03. 4月のマーチ
04. GOLD
05. Lesson
06. Vampire
07. pray
08. Lullaby for TOKYO CITY
09. エイリアンズ
10. Children
11. ASAYAKE
12. 今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる
13. 涙の上海ナイト
<Encore>
14. Magnet(新曲)
15. 青春の胸騒ぎ