比類なきその音楽性を証明した、D.A.N.のツアーファイナル

2017.12.26
レポート
音楽

D.A.N. photo by 平林岳志 (grasshopper)

画像を全て表示(6件)

D.A.N. TOUR 4231  2017.12.22  恵比寿LIQUIDROOM

2017年、D.A.N.の音楽的な影響は、静かに確かなものになっていったように思う。5月に開催されたEP『Tempest』に伴うツアー以来となる恵比寿リキッドルームは、前回に続きSold Out。しかし、ツアーの本数自体は前回の倍以上の7本に増え、彼らの音楽を生で体験したいリスナーがいかに全国各地で増えているかを物語る結果となった。また、この間、OGRE YOU ASSHOLEとの2マン・ツアーや、掘込泰行の作品『Good Vibration』での「EYES」の共作、DAOKOのニューアルバム『THANK YOU BLUE』での「同じ夜」の共作などでも、新たなリスナーの耳目に届くことになったのは確か。特に共作において、トラックメーカーやDJとしてではなくバンドごと参加するというケースは非常に稀である。というのも、サウンドデザインやムードだけでなく、バンドが描く歌詞世界なども含めてコラボレートするというのは、よほどその音楽への信頼、平たくいうと“良い音楽だ”と思えなければ実現しないことだからだ。替えの効かない世界を持つバンドとして認知度をあげた今、この日のオーディエンスもマニアックな層から、カジュアルにナイトライフを楽しむ層まで、理想的な広がりを見せているように映る。

D.A.N. photo by 平林岳志 (grasshopper)

『朝霧JAM』やOGRE YOU ASSHOLEとの2マン以降、オープニングに配置されるようになった長尺の「Tempest」。生演奏で描くループが徐々に空気の密度を濃くしていくストイックで緊張感に満ちた演奏は、さらに研ぎ澄まされ、櫻木大悟(Vo/Gt/Syn)の歌声も明瞭。曲とともに移動するような感覚と歌詞の物語性が極まった印象を受けた。ステージは暗めのトップライトのみで、なんとなくメンバーの輪郭がつかめる程度なのも、今ここで鳴っている音像に入り込む演出として大きな役割を担っていた。また、ライブではおなじみの「Zidane」や「SSWB」はベースの低音を出しすぎることなく、ドラムはもちろん、全体のグルーヴで踊れるノリを作っているのが、今のD.A.N.の洗練ぶりやサウンドスケープの描き方の個性を感じさせる。高いスキルは曲に捧げられるものであり、プレイヤーとしてのエゴを一切ひけらかさない彼らのスタンスは、今年、数回見たライブの中でも徹底されたものになっていた。さらにギターやSEなどの上物は微妙な変化を見せ、「Zidane」ではトランペットのような管の音が効果的に挟まれたりして、徐々に徐々に変化していくアレンジにも耳が惹きつけられていく。しかもシームレスに次の曲につながっていき、そのアウトロ~エンディング~次の曲の一音に至るまで、DJが一つのタペストリーを織りあげていくような細心のつなぎが行われているところも見事だ。

D.A.N. photo by 平林岳志 (grasshopper)

中盤は深く潜るようなスロー~ミディアムチューンのライブでの深化を体感するブロックになった。ひときわ深いアンビエンスの中で際立つタイトな川上輝(Dr)のキック&スネアに全身のツボを押される感じの「Shadows」。背後に置かれたフットライトが彼の半身だけを照らす演出も、現実感が遠のくようで演奏と相まり最高に美しい。また、真冬のリキッドルームに真夏の蜃気楼を立ちのぼらせるようなメロウな「Time Machine」の眩惑。全ての楽器が細心の注意を払って、圧が取り除かれている。サポートの小林うてな(Syn、スチールパン)のスチールパンもどこか遠くでコロコロ鳴っている印象だ。そしてライブならではの体感としては、市川仁也(Ba)の、歌メロと対比を描くミュートやメロディアスなフレーズを交互に入れたベースも情景を増幅する。

D.A.N. photo by 平林岳志 (grasshopper)

ラストのブロックを前に再び感謝を述べた櫻木は、「やりきった、今日はやりきったと思う」と、ワンマンツアーのファイナルで確かに掴んだ手応えを、珍しく言葉にしていた。そこからの新曲「Chance」も、毎回印象を変えつつも「自分の焦りとは無関係に過ぎていく時間」という意味合いの歌詞がしっかり耳に入ってくるところは変わらず、これから音源としてどんな着地点を見せるのか、さらに楽しみになってきた。そして、ここまで輝度を抑えた照明効果によって感覚を研ぎ澄まされるシーンが続いてきたが、ラストの「Native Dancer」では全員で深海から浮上するようにステージが明るく照らされる。そう<Native Dancer、光を集めて、半透明で踊ろう>の歌詞そのままに、フロアはそれぞれの歓喜を浮かべて揺れていた。

小林うてな photo by 平林岳志 (grasshopper)

鳴り止まない拍手に応えてアンコールで登場した彼らは、フラットなライティングの中でどこかアフターアワーズ的というかサウダージ感のある物憂げな「Pool」を演奏。東京の夜に散っていくそれぞれのオーディエンスのサウンドトラックとして、これ以上ない粋なアウトロと言える選曲だったのではないか。

ライブのダイナミズムというものは、何も拳を突き上げて一体化することだけじゃない。緻密に組み上げた構成を生身の人間が演奏することによって生まれる確かな共通体験、そのダイナミズムに磨きをかけ続けるD.A.N.、2017年の総決算だった。


取材・文=石角友香 撮影=平林岳志 (grasshopper)

D.A.N. photo by 平林岳志 (grasshopper)

セットリスト
D.A.N. TOUR 4231  2017.12.22  恵比寿LIQUIDROOM
1. Tempest
2. Zidane
3. House
4. SSWB
5. Ghana
6. Shadow
7. Time Machine
8. Curtain
9. Navy
10. Chance
11. Dive
12. Native Dancer
[ENCORE]
13. Pool