【映画レビュー】『10月の奇跡』ひねくれヤミ金おじさんに訪れた人生の転機
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『10月の奇跡』 (C)Maretazo Cine
SPICE×ぷれシネ特集 第五回
SPICEをご覧のみなさま、いかがお過ごしでしょうか?秋といえば、映画。映画館にレンタルショップ、試写会など色々な方法で楽しめる季節です。そんなタイミングで皆さまにオススメしたいのが、日本初の映画試写アプリ「ぷれシネ」です。
同アプリでは、最新作やDVDの本編を新旧問わず丸々1本を無料で楽しめます。アプリ内の作品一覧から選んで応募すれば、その場で抽選結果も分かり、当選すればそのまま鑑賞可能です。この企画では、SPICE編集部の映画好きライター・フジモトが同アプリを体験し、ネタバレなしの作品レビューで皆さまにその魅力をお伝えしていきます。
○過去の記事はこちらから
第五回に取り上げる作品は、ペルーの傑作人間ドラマ『10月の奇跡』です。
(C)Maretazo Cine
■あらすじ
クレメンテは法外な利息で金を貸す、いわゆるヤミ金業者。情に流されずから金を取り立てる冷徹な男だ。ある日、クレメンテは自宅に何者かが侵入し、女の赤ん坊を放置していったことに気付く。赤ん坊が娼婦との間にできた自分の子どもと思い、クレメンテは気が進まないまま赤ん坊を育てはじめる。しかし、食事や夜泣き、おもらしなどに悩まされ、ついに隣人の女性・ソフィアを雇うことに。母親さがしをはじめたことで、彼の平穏だった生活に大きな変化が訪れる…。
■ひねくれヤミ金おじさんに訪れた、人生の転機
『10月の奇跡』 クレメンテ役のブルーノ・オダール。一度たりとも笑いません。そしてなにげにイケオヤジ。 (C)Maretazo Cine
本作の主人公・クレメンテおじさんはヤミ金業者ではありますが、悪人というわけではありません。担保さえあれば交渉にも応じますし、踏み倒されそうになっても残酷な取り立てはしません。ひたすら正確に帳簿をつけ、冷静に債務者を問いただすのみ。住民の中には、彼に金を借りて感謝するものすらいます。そんな調子だからか、クレメンテの生活は質素そのもの。
クレメンテは好きで金貸しをやっているわけではなく、生真面目だから仕事を続けられてしまうような人なんですね。しかも、結果として溜まってしまった鬱憤を毎夜のようにぽっちゃり系娼婦との肉体関係で晴らします。マンガ『闇金ウシジマくん』なら、どちらかといえば債務者側に回ってるタイプですね。ニックネームをつけるなら、ひとり社畜くんとでもいったところでしょうか。とにかく、本当にひねくれたおじさんなんですよ。自分を哀れんで他人を拒絶しているからか、劇中でクレメンテが笑ったり人にお礼を言う場面はほとんど登場しません。
そんなひねくれた人生の転機となるのが、ふって沸いたかのような赤ん坊の存在。彼女に引き寄せれられるように、子守のソフィアや、父親と旧知の仲だったホームレスおじさんがクレメンテの家に転がり込んできます。そして、クレメンテは赤ん坊の母親を探す途中にも、痛い目に遭いながら初めて人と深く関わるようになるんですね。このように、本作はひねくれたヤミ金おじさんが悪戦苦闘する姿を、淡々と…それでいてユーモラスに描いていきます。
■ひねくれおじさんvs肉食系熟女 恋の行方は?
『10月の奇跡』 恋するおばちゃん・ソフィアを演じたガブリエラ・ベラスケス (C)Maretazo Cine
男女が親密になれば、恋愛感情が生まれるのもおかしなことではありません。クレメンテは自身の生き方だけでなく、女性との関係も見直すことになります。子守のソフィアは、クレメンテと違ってコミュ力の塊で超肉食系の熟女。想いを寄せるクレメンテに、夜這いなどのアグレッシブな攻勢をかけます。また、嫌だと思えばそれをキチンと表現するのがソフィアのいいところ。クレメンテに冷たい言葉を浴びせられたあと、パンツでとんでもない嫌がらせをするシーンは必見です。ひねくれイケオヤジのクレメンテが、彼女のストレートな感情表現にどう対処し、どう影響を受けるのか?生々しくもおかしく、そして時に切ないふたりのやりとりは、本作のみどころの一つです。
クレメンテの鬱憤のはけ口となっている娼婦のおばちゃんもまた魅力的なんですよ。こちらは金だけの関係と割り切りつつ、ひねくれたクレメンテを母親のように見守り、ときに叱咤します。赤ん坊がきっかけではありますが、女性たちもクレメンテを動かす大きな動機なのです。
■一歩を踏み出せない方にこそ観てほしい、おじさんたちの普遍的な葛藤
『10月の奇跡』ホームレスおじいさん&意識不明の奥さんと記念撮影 (C)Maretazo Cine
クレメンテをとりまく登場人物たちにもそれぞれのドラマがあります。ホームレスおじさんことドン・フィコは寝たきりの奥さんを病院に入院させており、物語の終盤にその関係にある区切りをつけるんですね。こうして、主人公以外の人々も、騒動を経て人生の次のステージに向かって行きます。一方で、初めて状況を変えるために行動したクレメンテは、どう変化していくのか。冒頭にクレメンテが登場するシーンと終盤にクレメンテがたたずむシーンがほぼ同じカットで表現されているので、彼の変化が際立ちます。
そして、本作は「新しい一歩をなかなか踏み出せない」という普遍的な葛藤を描いた作品でもあります。不満だけを抱えていても、行動しなければ何も変わらないんですよね…。クレメンテのような状況に陥ることはまずないでしょうが、この苦悩を経験した方は少なくないはず。エンディングを迎えるころには、ひねくれおじさんの気持ちがわかるのではないでしょうか。
ちなみ本作、第63回カンヌ国際映画祭で「ある視点部門」審査員賞に輝いています。DVDなどのソフト化もされていないので、この機会に観ておく事をオススメします。
さて、本作に興味を持った方はさっそくぷれシネで試写会に応募して見てください。応募の方法は簡単!
①itunesまたはApp storeでアプリをダウンロード
②会員登録(メールアドレスと希望するパスワードを入力)
③ログイン
③観たい作品を選んで「受付中」の部分をタップ!
これだけで応募が完了し、その場で当選の結果もわかります。当選決定から24時間の間は、いつでも同じ作品を観ることができるので、通勤や通学、ちょっとした待ち時間をつぶしながら気軽に鑑賞するのもいいですね。
現在公開されている作品の定員は50~100名。ただし、抽選ではなく先着で当選が確定するものも多いので、人気作は早めに応募したほうが良さそうです。
また、鑑賞後は「シェア」ボタンをタップして、TwitterやFacebookに感想を投稿することもできます。感想を投稿すると、次回からの試写会の当選確率が上がるそうです!フジモトもさっそく投稿してみましたよ。
なお、ぷれシネでの『10月の奇跡』配信は10月28日まで。期間中でも、先着100名に達すると申し込めなくなるのでご注意を。
現在配信中の作品と応募期間はこちら。
10月の奇跡
(2010年/ペルー/84分)
監督・脚本:ダニエル・ベガ・ビダル、ディエゴ・ベガ・ビダル
出演:ブルーノ・オダール、ガブリエラ・ベラスケス、カルロス・ガソルス
予告編
メイクルーム
『メイクルーム』 (C)2014 映画『メイクルーム』製作委員会
(2014年/日本/86分)
監督・脚本・編集:森川 圭
出演:森田亜紀、栗林里莉、川上奈々美、伊東 紅、住吉真理子、大迫可菜実、柴田明良 ほか
配信期間:10月14日まで
募集定員:先着100名
○レビューはこちら
尾曲がり猫の時
『尾曲がり猫の時』 (C)Three W Film
(2015年/日本/19分)
監督:荻野欣士郎
出演:粒良安里、小澤綾子、村岡克彦、堀川りょう、長谷川愛紗、小祝麻里亜
試写期間:10月21日まで
募集定員:先着100名
ブッチ・キャシディ - 最後のガンマン -
『ブッチ・キャシディ -最後のガンマン-』 (C) 2010 Eter Pictures AIE, Nix Films AIE, Arcadia Motion Pictures SL, Manto Films AIE
(2010年/ペルー/84分)
監督・脚本:ダニエル・ベガ・ビダル、ディエゴ・ベガ・ビダル
出演:ブルーノ・オダール、ガブリエラ・ベラスケス、カルロス・ガソルス
試写期間:10月28日まで
募集定員:先着50名
Androidアプリへの対応は現在調整中。SPICEは毎週オススメの作品とともに進捗をお伝えしていくので、お待ちください!
価格:無料
カテゴリ: 写真/ビデオ
言語: 日本語、英語
販売元: HIROFUMI SOYAMA
(C) simpleplus / (C) precine
App store: https://appsto.re/jp/d4uL6.i ※iPhoneからアクセス可能
iTunes: https://itunes.apple.com/jp/app/pureshine/id982863363?mt=8
Facebook: https://www.facebook.com/precinema