OLDCODEXインタビュー「ロック界の「異端」はいかにして『OZZFEST』へ挑むのか」
OLDCODEX
11月21日・22日に幕張メッセを熱く燃え上がらせる『OZZFEST JAPAN 2015』。このラウド・メタルの祭典への出演者が出揃った中で、最後に発表され驚きをもって迎えられたのが、OLDCODEXだ。声優としての顔も持つTa_2とペインターのYORKE.の2人組という、いわば異色の組み合わせで、ヘヴィかつどこかポップセンスも感じさせるロックサウンドを展開する彼らは、いかにしてバンド≒ロックの道へと進むことになり、来る『OZZFEST』のステージにどのような気持ちで立ち、何を見せようとしているのか。2人のルーツを振り返りながら、聴覚と視覚から迫る未体験のパフォーマンスで『OZZFEST』に挑む、ロックバンド・OLDCODEXの本質に迫る。
それまで“騒音”だった音が、自分を後押ししてくれた。
――まずは『OZZFEST JAPAN 2015』(以下、オズフェス)にご出演が決まったことに対して、率直にどうですか?
Ta_2:嬉しいのと驚いたのとが同時にやってきたっていうのが個人的な感想でした。もちろん、オズフェスっていうイベントが行われていることは知ってましたし、前回の公演(2013年)がどういう風に盛り上がったのかっていうのも色んなところから見聞きしていたので、自分たちがそこに関われるっていうのはすごく嬉しくもあり、驚きもあり。その半々ですね。
YORKE.:やっぱりTa_2とOLDCODEXを始めたときから、Ta_2が「こういう音楽が好きでやりたいんだ」っていうところに俺が参加してやってきて……なんていうんだろうな。(自分たちは)すごく異色なんだろうなって気はしていて。色眼鏡で見られる部分っていうのはあるんだろうなって覚悟してるんだけど、ラインナップを見ると例えばKORN(※Rは反転=Я)なんかは大好きだったし、聴いてきた音楽とか、人生を変えてくれたようなミュージシャンがここにたくさんいるんですよね。トム・モレロとかもヤバすぎるし。彼らと同じステージに上がるっていうことで、彼らとOLDCODEXとお客さんも含めて「どこが共通点なんだろう?」って考えると、流れている血――聴いてきた音楽とか好きなものが一緒なんじゃないかなって。だから変に気合入れてやるっていうよりは、いつもと一緒かなっていう。それをどう観てもらえるかだと思う。ただ正直言うと、まぁ……テンションは上がっちゃいますよね(笑)。
――間違いないです(笑)。
YORKE.:ね、これだけのメンバーを観ると。だから不思議な感じもやっぱりありますけど、こういうステージに上がりたいと思っていたし、OLDCODEXで出れるっていうのは嬉しいなって。だから、俺の知ってるミュージシャン、ロックを続けている人たちの期待にも応えたいし、良い意味で期待を裏切りたいとも思うし。「なんでお前は絵を描いてんだよ」とか言われるかもしれないけど、それを説得するためにどんな絵を描けるかっていうのもあるし。……とはいえ急に決まったし、「え、オズフェス?」「いいの?」みたいなビビってる部分もあるけど(笑)。でも俺はTa_2と一緒にやっていて一人じゃないから、胸を張って出れればいいかな。
――異色・色眼鏡っていう言葉もありましたけど、実際問題、ロック畑一筋を聴いてきたお客さんの層から見ると、OLDCODEXって「何者?」「誰だろう」っていう受け止められ方も正直あると思うんですよ。今いるファンの方もアニメ関係から好きになったという方も多いでしょうし。ただ、OLDCODEXがやっている音楽っていうのは完全にロックサウンドなわけで、今日はお2人がロックバンドで活動するように至る、バックボーンの部分もお訊きしたいなぁと。
Ta_2:俺がロックを好きになったのは、超遅いんですよ。音楽自体を聴き始めたり、それによってコミュニケーションを取り始めたのがそもそも遅かったし、それで最初に好きになったのはR&Bだったりボーイズ・コーラスグループだったりとかしたので。一番最初に好きになったのはバック・ストリート・ボーイズだったし、ロックとか全然聴いてなかったんですよね。ずっと、(ロックは)俺の中で“騒音”でした(笑)。
――そうなんだ(笑)。
YORKE.:今はその“騒音”出しまくってるけどね、楽屋とかでも音楽かけて(一同笑)。
Ta_2 (撮影=小松陽祐)
Ta_2:でも当時はまったく共感できなくて。一番最初に「ロックって良いな」と思ったのが、ELLEGARDENの『ELEVEN FIRE CRACKERS』なんですけど、最初に聴いたときはやっぱり「うるさいアルバムだな」と思って。それが当時の友達とかに「もっと歌詞とかちゃんと聴いてみろよ」って言われて、すげぇ落ち込んでる時期でもあったのでしっかり聴いてみたら、自分の状況を代弁するかのようなっていう――音楽ではよくある話ですけど、自分にしっかりハマったんですよね。それまで“騒音”だったギターの音とかドラムのスネアやシンバルが自分の中に飛び込んできて、凄く心地よく感じたし、自分を後押ししてくれるような感じがしたんですよ。「ということは、今までオススメしてもらってた音楽もそうかもしれない」と思って、半食わず嫌いだったロックのアルバムだったりを片っ端から聴いて。その中で……(周りの)みんな、分かりやすいものを教えてくれるんですよ。俺が分かりやすいように(笑)。
――各ジャンルの代表的なものを。
Ta_2:そう、代表的な。その頃はちょうどリンキン・パークの『ハイブリッド・セオリー』とかが出ていて、「ミクスチャーだったら色んな要素が混じってるし、Ta_2はヒップホップも聴いてたから」って教えてくれて。そこでチェスター・ベニントンの声とかシャウトとかに……自分の「何か」を言ってもらった感じがしたんですよ。そこから改めてちゃんとロックを聴いてみたいなと思って、自分が前々から知ってるバンドって多くなかったから、現在進行形で音を鳴らしてるバンドたちの音源を、金銭が許す限り毎月買っていって(笑)。今考えると、それまでは自分の中に内包してたりとか、「どういう風に表現したらいいんだろう、吐き出したらいいんだろう」っていうものを表現する術と出会ってなかったんです。それがパズルのピースが合った、しっくりきたのがロックっていうジャンルだったんです。聴いて感じていくうちに「俺はこういうのが好きなのかもしれない」とか「こんなことを表現したいのかもしれない」っていうことに少しずつ気づいていった感じなんですよね。だから、すごく……邪道?(一同笑)
――邪道ってことは無いとは思いますけどね(笑)。ちなみに、その中で一番ハマっていったのがラウド系だったわけですか?
Ta_2:そうですね。ステージ上で激しく歌ったり、キレイに歌ったりしていく中で、たまにマイクの有り/無し関係なく叫んじゃってる自分がいたりして。そこに自分のアイデンティティを詰め込みたいというか、あとは……自分の見られ方、イメージみたいなものを外れたいというのか、壊したい。そういう自分の「何か」を込められたんですよね。人が「叫ぶ」のってすごく衝動的だけど、美しく感じることがたくさんあって、そういう曲を聴いていると落ち着く自分もいるんですよね。捻じれてるのか、溜まってるのか分かんないですけど(笑)。
――ロックと出会う前にもそういう部分は持ってたんでしょうね。
Ta_2:いや、ぶっちゃけると持ってたんですよ(笑)。ただ、それを音楽っていう形で吐き出した事は一度もなくて、人のいない、迷惑のかからなそうな所でただ叫んでたりとか。俺、悪口を言うとか、誰かを下に見るのが嫌いなんですよ。ただ、その現状に負けてる自分に対する憤りとか苛立ちはたくさんあって、それを言葉にしちゃったら――言霊っていう言葉もあるくらいで、「力」に変わっちゃうんじゃないかと思うから。叫ぶしかなかったんですよ。
共通して好きなものがあるってことは、同じものを見れる。
――なるほど。YORKE.さんにとっては、音楽の原体験ってどんな風でしたか?
YORKE.:俺はTa_2と違って、人さまに迷惑かかるところで叫んでたりしてたんだけど(笑)。まぁ家庭の環境もあると思うんだよね、決して良い環境じゃなかったから。そういうときにロックって詞もサウンドも凄くストレートに響いたんですよ。まだ「ロックだ」って分かって聴いてなかった頃に、兄弟だったりとか、先輩――悪影響を及ぼす先輩とかっているでしょ?(一同笑) そういう人が聴いててカッコ良かったりしたものを聴いてました。たとえばアンスラックスとかメタリカとか、「なんか好き」みたいな。パンテラの『悩殺』なんかタイトルからしてヤバすぎでしょ!?って(笑)。音じゃなくてファッションみたいな感覚だったかもしれない。でも、本当に好きな音楽は何かな?って考えたら、たまとかも好きだなぁとか思ったんだけど、それを言うとカッコ悪いみたいな環境だったからコソコソ聴いてて。でも当時――中学生頃はバンドって好きじゃなかったんですよ、つるむのも嫌いだったし。
――それが変わっていたのはいつですか?
YORKE.:ニルヴァーナ……カート・コバーンかなぁ。彼を見たとき「あ、俺この人になりたい!」とか思った気がしますね。未だに金髪にしてるのもそういう影響があるのかも。あとはミスター・ビッグなんかも曲がやさしい気がして好きだな、とか、好きな女の子を想像できるなとか(笑)……その中でもKORNは飛び抜けて好きだったな。初めて聴いたときに、「苦手かも」とも思ったんだけど、何故か細胞が騒いだって感覚があって。それで本当に泣けたし、許された感じもした……否定されていない、「俺、これで良いんだな」っていう。良い先生に会ったなって夢中になりましたね。他にも色々聴いてきたけど、結果、いま自分がOLDCODEXにいて、Ta_2と一緒にやるってなって……最近はTa_2から新しい曲を教わったりもすることも多いかな。
――そうなんですね。
YORKE.:(Ta_2が)「最近こういうのキてるよ」「YORKE.これ好きそうだよ」とか言って流してて。だから最近はTa_2の方がよっぽどこういう音楽にハマってるんだけど、俺はそこから流れてきて「あ!」って思える音を信じられるようになったというか……でも、ちゃんと否定もする。「これは嫌い」って。昔はそれが曖昧だったけど、今は自覚できるし、OLDCODEXにも生かされていて、Ta_2が作ってきた曲にも「ここは俺は好きじゃない」とか「古いと思う」ってハッキリ言えるし。「なんか好き」っていう感覚、感性を言葉にできるようになったんでしょうね。だから最初は周りの環境で聴きだして、だんだん自分の好みが分かってきた感じ。やっぱ環境って大きいですよね……(オズフェスの出演者リストを見ながら)でも彼らもさ、みんな不良ばっかりでしょ?
Ta_2:あはははは!
――まぁ出てる方はもちろん、来る方にも多いでしょうね(笑)。
YORKE.:ね! 不良ですよね。だから俺はそこを諦めたくないっていうのはありますよ。自分が「不良だ」って言われてたのが凄く違和感があったし。だから、オズフェスでは来てくれる人をまず受け止めて、否定しないっていうところから始めたいと思う。それはアニメのイベントでも一緒なんですよ。中には「いつも部屋で一人でいて友達もいない」みたいなヤツからファンレターが来たりするんだけど、そいつと俺は友達になれそうな気がするわけ。だから共通して好きなものがあるってことは同じものを見れる気はするし、そういう意味でオズフェスはフィーリングが合うと思う。そこでどういう魅せ方をするかは考えてるところですけどね、セットも含めて。
YORKE. (撮影=小松陽祐)
――ワンマンほど大掛かりには作れないでしょうしね。気になる出演者はいますか?
YORKE.:ONE OK ROCKのTakaかな。いまやスターだよね(笑)。OLDCODEXのYORKE.として、久々に会いたいなっていうのはあったんだけど、違う日なんだよね。
――KORNも別日ですしね。
YORKE.:そうなんですよねー。でもジェーンズ・アディクションとか最高だし、Fear, and Loathing in Las VegasはTa_2が教えてくれて一緒にMV観て、良かったですし。
――彼らもOLDCODEX同様、ヘヴィでありながらジャンルレスな魅力がありますよね。
YORKE.:そうですよね。MVもカッコ良かったなぁ。声のオートチューン掛ける感じも新鮮で、「こういうのアリなんだ!」みたいな。で、俺も実際それをやろうとしたんだけど難しくて、音程を外すと痛いことになるっていうのを知ったんですよ(苦笑)。
Ta_2:俺はBABYMETALが気になりますね。
――おお!
Ta_2:色々ジャンルを飛び越えて、制圧してきたっていう部分でいうと、これほどの存在は無いんだろうなって。今回俺らが色物に見られると思うんだけど、数年前の彼女たちもそうだったじゃないですか。
――ねじ伏せてきた感はありますもんね。
YORKE.:でも一番(ジャンルを)飛び越えてるの、ふなっしーじゃない?(一同笑) すごいよね、どこに出てても違和感ないもんな。
Ta_2:ふなっしーも含め、オジーの「フレンズ」も凄いメンバーですよね。どういうステージになるのか、ワクワクしますよね。もちろん他の出演者もそうで、ラインナップされてる方たちのCD、ほとんど持ってますからね。
――生で観るのは初めてっていう方も多いですか?
Ta_2:はい。だからすごく楽しみで。
YORKE.:でも、観ちゃうとヤバいかもね。お客さんになっちゃう可能性が凄く高い(笑)。
Ta_2:それかワクワクしてもっとやってやろうと思えるか、どっちかですね。
――今時点だとワクワクの方が強いですか?
Ta_2:そうだなぁ……多分当日になったら緊張すんのかなって。
YORKE.:うん、そんな感じかもね。出てビビるのはあるかもね!「あれ、ヤバそう……」みたいな(一同笑)。でも戸惑ってる暇なくやるしかないんだろうけど。
――過去にそういう経験ってあるんですか?
2人:ありますよ、全然!
Ta_2:その中で今回って特にコアな音楽ファンが来るだろうなっていうのは分かるから、逆にそれをステージ上から観たらどんな気持ちになるんだろう?とか、彼らをどう相手するんだろう?とか、自分の中でもいい経験になるし、今までの経験をどう活かすか。色々なやり方があると思うけど、「潰す」気持ちでいきます!って感じですね。
ふなっしーはライバルになりそう。彼のパフォーマンスはどこか音楽的だと思う。
――ちなみに、オジー・オズボーンへの想いってありますか?
YORKE.:いや、もうヤバいよねぇ(笑)。ブラック・サバスとか、もう……さ!!
Ta_2:あと前にドキュメンタリー番組あったじゃないですか。
――『オズボーンズ』。
Ta_2:そうそう! あれ観てたもん。「とんでもねぇ家族だな!」と思って(一同笑)。学生時代だったからよく分かってなかったけど、ゲラゲラ笑いながら観てた思い出がありますね。だけど今になって思うと、あのときもっと知ってから観とけばよかったみたいな。
――オジーの凄さを知ったうえで……
Ta_2:そう!! そのうえでもう一回アレを観たい! それはありますね。
YORKE.:やっぱりアイコンとして凄いですよね。単純にブラック・サバスの音楽も好きだったし……でもね、実際会うとなると現実感がないというか、隣に来て初めて「あ……」ってフリーズするんだろうなっていう。ある意味神様みたいな存在ですよね。
――当日は実際に目にすることになりますよ?
YORKE.:ですよね。夢見てるみたいな感じになるのかなぁって。
――そんな共演を果たすオズフェスで、やりたいこと、成し遂げたいことってありますか?
Ta_2:一番は、自分たちがどんなバンドなのかっていうのを知ってもらいたいですね。もちろん、俺ら特殊なバンド形態だっていうのは、みなさん調べたり聞いたりして知ってると思うんですけど、ウチにはペインター・YORKE.っていう存在が自分の相棒としてステージに一緒に立つので。そのとき「何でコイツいるんだろう?」とか思うこともあるだろうけど、俺はこいつを誘ったときに、ライブペイントとか絵を描くことにすごく音楽性を感じたし、音楽的だと思ったから「一緒にやりたい」と誘ったんですよ。もしそれを観てるみんなにも感じてもらえたら凄く嬉しいし、何故OLDCODEXっていうバンドをやっているのかが、1ミリでもステージから伝わったら嬉しいですね。
YORKE.:なんか思いやりみたいになっちゃうけど(笑)、Ta_2がそうやって思ってくれてるように、Ta_2の声優としての顔を払拭できるのが俺の存在だと思うから、より音楽的に攻めたいなっていうのはあるんだけど。絵を描いてこのオズフェスのステージに上がるのって俺だけだと思って……いたんだけど、ふなっしーはライバルになりそうな気がするんですよね。彼(?)のパフォーマンスはやっぱりどこか音楽的なんだと思うんですよ、ここにラインナップされるということは。だから、ふなっしーに負けないパフォーマンスでロックを伝えたいっていう想いで、やれることは何でもやる、OLDCODEXを体現するっていう気持ちで、ちゃんと届ける――それはライブでやらないと意味がないと思っているので、そのためにちゃんとリハーサルして。みんなで乗り込みたいな。
――元々お2人のファンって、アニメから入った方も多いと思うんですけど、そういう方からすると『オズフェス』って異世界だと思うんですよ。そこに対してメッセージはありますか?
Ta_2:異世界でしょうね。でも、良いんじゃないですか?新しい世界が見れて。俺らも様々なところでプレイしてきて思うんですけど、オズフェスで知って「もっと聴いてみたいな」とか思えるバンドもたくさんいると思うし、それが良いと思うんですよ。音楽性もそれぞれだし、そこを楽しみに来てほしいですね。
YORKE.:実際、フェスで出会って「あのバンド気になる」って追っかけるようになるパターンも多いからね。あんまり……カテゴリってあって無いようなものだから、俺たち自身がそれを感じちゃったら良くないなとも思うし。俺はファンに言いたいことがあって、ワンマンで追っかけてくれたり、ツアーを追っかけてくれるファンって、やっぱり一番の宝だと思うんだけど、そういうヤツからしたらオズフェスのステージに立った俺らを観てドキドキすると思うんですよ。「大丈夫かな……」っていう母親みたいな心で(笑)。それを「大丈夫だよ!」って証明する場所としては最高かなと。「あ、いつもと同じだ」って。それで泣いたり、笑ったりしてくれたら最高に嬉しいし、それがファンに返せる答えかな。
――変にビビったりせず、いつも通り観に来てほしいですね。
YORKE.:とはいえビビるとは思うけどね(一同笑)。でも、大丈夫。怖い人いないと思うし、メタルファンって優しいから……やっぱり、ロックって優しいんだと思うな。
インタビュー=風間大洋