新倉瞳が久々に本格的なチェロのリサイタル
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新倉瞳/撮影=平田貴章
スイス在住のチェリスト、新倉瞳が久々に東京で本格的なリサイタルをひらく。現在は、ソリストとして活躍するほか、カメラータ・チューリヒでソロ首席チェリストも務めている。
新倉 「バーゼルは5年目になります。音楽院で今年の6月まで教職課程もとっていたので、学生とプレイヤーとの二足のわらじをはいていた時期もありましたが、今は演奏に専念しています。バーゼルではトーマス・デメンガ先生に師事しました」
新倉瞳/撮影=平田貴章
バーゼルは、バーゼル・スコラ・カントルムがあるなど、古楽が盛んな街。新倉もそこで古楽に触れ、ガット弦やバロック・チェロの演奏にも取り組み始めたという。カメラータ・チューリヒは、25名ほどの室内オーケストラ。ハイドンから現代曲まで幅広いレパートリーに取り組む。
12月11日の浜離宮朝日ホールでのリサイタルでは、シューマンの「アダージョとアレグロ」、ブラームスのチェロ・ソナタ第1番、ラフマニノフのチェロ・ソナタを弾く。
新倉 「もともと好きな曲を選びました。ロマン派は一番私にとって弾きやすいのですが、スイスに行って先生から『感性で弾くのは間違いではない』と言って頂いたことや、バロック音楽の影響もあり楽譜の読み方が変わった今、自信を持って感性の部分を大切に演奏出来るようになりました。感じたままに弾いたところをその後、楽譜で読んで確認すると、和声進行や理論と合っていることがゲームの答え合わせのように楽しくなりました。昔は古典派に苦手意識があったのですが、今はどんなジャンルの音楽でも楽しく弾くことができます。
シューマンの『アダージョとアレグロ』は個人的に好きな曲。本格的なロマン派プログラムにシューマンは欠かせないので入れました。チェロの豊かな歌心と軽快の動きのどちらも聴いていただける比較的短い曲ですので、コンサートの始まりにふさわしいと思いました。
ブラームスのチェロ・ソナタ第1番は、ロマンティックで、第1楽章から第3楽章まで違うタイプの音楽で、聴きやすい作品だと思います。ブラームスが、どんな感情でピアノを使い、フォルテを書いているのか、単なる憶測ではなく考えるようになったので、そういったものを聴いていただきたいと思います。
ラフマニノフのチェロ・ソナタは、自分にすっと入ってくる曲でどちらかというと得意なのですが、そういう自分の感性だけで弾くのが嫌で取って置いた曲なのです。楽譜がしっかりと読めるようになった今、あらためて取り組んで、レベルアップしていきたいと思っています」
新倉瞳/撮影=平田貴章
また、5年ぶりとなるCDアルバムもリリースする。飯森範親指揮山形交響楽団との共演でエルガーのチェロ協奏曲、ブルッフの「コル・ニドライ」、カタロニア民謡の「鳥の歌」などを収める。
新倉 「エルガーは、初めて自分で選んで弾いた協奏曲なのです。子どもの頃、協奏曲を弾くのが憧れで、先輩たちが発表会でエルガーを弾くのを聴いて、『いいな、自分も弾きたいな』と思いました。感性で入った曲ですが、理論とマッチさせて、客観的に楽譜が見られるようになった今だからこそ、あらためて本能で弾いて、録音したいと思いました。私のエルガーを弾くというのは変わっていませんが、エルガーが何を感じていたのかを楽譜から前よりも読み取ることができるようになったので、それを聴いていただきたいと思います。『鳥の歌』は、高校生の頃、進路に迷っていたときに、カザルスの国連での演奏に感動して、音楽で一人の人でも幸せになってもらえたらと、チェリストになることを決めた曲です」
新倉瞳/撮影=平田貴章
将来は「自分にしかできないことをしたい」という。スイスで学んだ教職課程を活かしたマスタークラスや、スイスで出会い、バンド(!)でも弾くようになったクレズマー(東欧系のユダヤ音楽)を、日本でもやりたいと思っている。
[取材・文=山田治生]
[撮影=平田貴章]
[取材協力:ヤマハアーティストサービス東京]
↓新倉瞳さんからのメッセージと演奏がご覧いただけます↓
新倉瞳(チェロ)/佐藤卓史(ピアノ)
■会場:浜離宮朝日ホール (東京都)
■出演:新倉瞳(チェロ)/佐藤卓史(ピアノ)
■曲目:
シューマン:アダージョとアレグロ 変イ長調 Op.70
ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 ホ短調 Op.38
ラフマニノフ:チェロ・ソナタ ト短調 Op.19
■問合せ:アスペン 03-5467-0081
■公式ブログ:http://ameblo.jp/hitomi-kobeya/