ウエンツ瑛士、ソンドハイムの最高傑作ミュージカル『リトル・ナイト・ミュージック』で義母に恋する青年役に
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『リトル・ナイト・ミュージック』会見より(撮影/石橋法子)
バラエティー番組での軽妙なトークでもお馴染みのウエンツ瑛士が、ミュージカル『リトル・ナイト・ミュージック』に出演する。20世紀初頭のスウェーデンを舞台に、男女の愛を巡り、夫婦や親子間で疑心暗鬼が渦巻く大人のラブコメディ。「ウエスト・サイド・ストーリー」「スウィーニー・トッド」を生み出したミュージカル界の巨匠スティーブン・ソンドハイムの最高傑作で、トニー賞7冠、グラミー賞2冠に輝いたブロードウェイ史に残る名作だ。大竹しのぶ、風間杜夫らと愛の狂騒曲を奏でるウエンツ瑛士が大阪で会見し、意気込みを語った。
ウエンツ瑛士
「必ずしも言葉と気持ちが一致しない。“言葉の裏をどう読み取るか”がポイント」
ーー歌稽古が始まったそうですね。ソンドハイムの楽曲の印象は?
難しいですね。ピアノにはないような音階を歌う場面や、三重奏などそれぞれの歌声が重なる曲もあるので。ただ、歌によってお芝居がしやすいと感じる部分もあります。例えば、歌詞は明るいのに音階が暗い感じだと「本質の気持ちはこっちの方なんだろうな」とか。音楽が導いてくれるので、自分としてはすごく助かっています。逆に、台詞のみの場面でも同じように複雑な表現をしなくてはいけないんだと思うと、歌わない場面は難しいだろうなと感じます。
ウエンツ瑛士
ーー必ずしも言葉通りの感情とは、受け止められないのですね。
そうですね。言葉と気持ちの向かっている方向が一致しない場合には、それが不協和音として表れたり。みんなで重ねて歌う場面では、本当に音階も音色も複雑になります。指揮者の方には、なるべく僕の方に多く指揮していただきたいので、「多目に合図を下さるとありがたいです」との思いを込めて、昨日は指揮者の方へ、お茶がなかったのでサッと差し入れさせていただきました(笑)。
ウエンツ瑛士
ーー(笑)。物語は大竹しのぶさん、風間杜夫さんが演じる元カップルを軸に、それぞれの恋人や家族が一堂に会し、思惑ありげな一夜を共に過ごすというもの。
台本上だとわりと淡々と物語が進んでいくような印象ですが、この作品は「言葉の裏をどう読み取るか」が魅力で、その面白さが全編に溢れている。愛情が絡む話なので、みんな自分でも気づかなかった本性やプライドが出ていたり、若者の純真さへの憧れや不必要な嘘が出て来たり…。本当にそれぞれの思惑が複雑に絡み合っているので、30分でも読めるし、3時間でも読める台本だなと思いました。
ウエンツ瑛士
ーー本作でウエンツさんは、風間杜夫さん演じる弁護士の息子ヘンリックを演じます。
稽古はこれからなので変わっていくかも知れませんが、まず20世紀初頭のスウェーデンとはどういう時代か。10代後半までお手伝いさんがいるような家で、彼はどう過ごしてきたのか。ヘンリックは特に神様を意識するような場面も多いので、学生として宗教を学んでいる彼が何を信じ、恋愛ではどういうことに捕らわれるのか。そういった点を、演じる上で大事にしていきたいですね。
「隣の人が笑う場面で自分はゾッとしたり、誰もが同じ場面で爆笑できないのが魅力!」
ーー初共演の風間杜夫さんとは親子役として、絡む場面も多そうです。
舞台が決まってから、風間さんがご出演された落語の舞台を拝見しました。ちゃんと観に来て「偉いでしょ」ということをアピールするために(笑)。やっぱり稽古場でも始まる段階から、悩んだときにすぐに質問できるような関係性になりないなと思ったので。ただ、その時伺った楽屋の印象ではシャイな方だなと。「え、来たの? ありがとう、じゃあね」みたいな感じでした(笑)。
ーー意外にも、風間さんは本作で初めてミュージカルに挑戦されます。
製作発表会見の場では、お酒の飲み過ぎにだけは注意していただくようにお伝えしました。今回は三重奏など、同じ楽曲の中でそれぞれがまったく別の音階を歌わなければいけない場面もあるので、難しいと思います。そこで大事なのが「自分の声をいかに聞くか」だと思うのですが、本番で自分の声だけ少し大きくしてもらえると間違いないので、ここは卑怯な手ですが、音響さんに賄賂などを渡しておくのが一番分かりやすい方法だと思います。……と、皆さんから伝えておいてもらえますか(笑)。
ウエンツ瑛士
ーー(笑)。大竹しのぶさんとはお話されましたか。
「大丈夫かな~。できるかな~」と仰っていました。「頼るから~」とも言われましたが、それは大竹さんの手だなと思っています。本番「完璧じゃん!」ってなるパターンですね。
ーー父親の若き後妻、義母を演じる蓮佛美沙子さんとの関係はいかがでしょう。
蓮佛さんとはお会いした最初の段階から連絡先を交換して、連絡を取り合っています。これは僕にとっては本当に珍しいことです。だいたい普段は本番直前に仲良くなることが多いので。蓮佛さんは舞台もミュージカルも初めてですし、なおかつ年齢が近いのが僕ぐらいだったからかもしれませんが。いつも怖いぐらい真剣に「この場合、どうしたらいいんでしょう?」と質問されます。先日も気になったので電話をしたら、ものすごいハスキーボイスが返ってきました。「練習しすぎじゃないの!?」って(笑)。毎回すごく刺激をもらっています。昨日は30分だけ一緒に歌稽古をしたのですが、本当に素敵な歌声でした。お芝居をされている方の歌という感じで、魅力が満載でした。
ウエンツ瑛士
ーーヘンリックは、蓮佛さん演じる義理の母に恋をするという設定ですね。
彼女が義理の母という設定は、まだ受け入れられていません。俺いま蓮佛さんから「先輩!」って呼ばれてますもん。その方が義理の母だと思うと……、時間はかかりそうです(笑)。ただ歌を合わせた時は、ヘンリックの気持ちが反映された歌詞ごとスッと役に入れたので、そこは嬉しかったです。蓮佛さんと一緒にやっていけるのは心強いなと。僕としては、義理の母への想いもそうですが、宗教感的にヘンリックは自分の気持ちをどう受け止めているのか、その辺りはもう少し勉強が必要だなと思います。
ーー面白くほろ苦い、大人が楽しめる作品になりそうです。
コメディと言っても日常を切り取っているので、人によってはすごく面白かったり、ゾッとして笑えないというのが、この作品の魅力。誰もが同じシーンで爆笑することがない。登場人物たちも、それぞれ年齢や状況が違えば、愛に対する考え方も違うので。それが個性であり、みんなが自分にとっての正解、不正解を探してもがいている。同じように、お客様も隣の方が爆笑していても「私は笑えないわ」ということが、当たり前にある作品なので。無茶苦茶なことは起きていますが、「こんなことあるな!」くらいの気持ちで観ていただけたら、楽しめるんじゃないかなと思います。
ウエンツ瑛士
◎衣装=スタイリスト:伊達めぐみ(UM)<ジャケット/¥32,000パンツ/¥16,000>以上2点共に J.FERRY、ネクタイ/FAIRFAX、シャツ、靴/スタイリスト私物
◎ヘアメイク=Aico
取材・文・撮影=石橋法子
公演情報
■作詞・作曲:スティーヴン・ソンドハイム
■脚本:ヒュー・ホィーラー
■演出:マリア・フリードマン
■出演:大竹しのぶ/蓮佛美沙子/安蘭けい/栗原英雄/安崎 求 トミタ栞 瀬戸たかの/木野 花/ウエンツ瑛士/風間杜夫
2018年4月8日(日)~4月30日(月・祝)
■会場:日生劇場
2018年5月4日(金・祝) ~ 5月5日(土・祝)
■会場:梅田芸術劇場メインホール
2018年5月12日(土) ~ 5月13日(日)
■会場:静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
2018年5月19日(土) ~ 5月20日(日)
■会場:富山オーバード・ホール