ヴァイオリニスト土岐祐奈が届ける春待ちの音色 昼下がりの渋谷で飲食を楽しみながらクラシックを
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“サンデー・ブランチ・クラシック” 2018.2.18 ライブレポート
日曜のお昼のひと時を、渋谷のカフェで音楽を聴きながら過ごすサンデー・ブランチ・クラシック。2月18日に登場したのは若手ヴァイオリニストの土岐祐奈だ。クライスラーやブラームス、ポンセなど、30分の公演で様々な曲を披露。まだ寒い2月ではあるが、来るべき春がすぐそこに来ていることを感じさせるような、心温まる音色に包まれた公演だった。
クライスラーでカフェのテラスでお茶気分に
公演開始の午後1時。赤いドレスに身を包んだ土岐が登場し、ぱっと空間が明るくなる。1曲目はクライスラーの『シンコペーション』。ウキウキと弾むような曲に、ときどきうっとりするようなメロディ。まだ寒さも残る小春日和の街をそぞろ歩き、通りがかった街のカフェで温かい飲み物をいただきホッと一息つくような、そんな気分だ。
「今日は私の自宅のリビングに来ていただいた感じで、くつろぎながらのひと時を楽しんで行ってください」と土岐。まさにほっとくつろぐ1曲目だった。
土岐祐奈(ヴァイオリン)、須関裕子(ピアノ)
土岐祐奈
ブラームスのソナタとスケルツォ
続いてブラームス「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第2番」より第1楽章、同じくブラームスの「FAEソナタ」より第3楽章スケルツォが演奏される。伴奏は須関裕子。土岐の学生時代の恩師の一人で、今回2年ぶりの共演となるという。
須関裕子
「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第2番」は、「スイスの避暑地トゥーン湖で、一説によるとその時思いを寄せていた女性へ向けて書かれた」と土岐が解説する。ブラームスらしい、心の琴線をふっと撫でていくような甘く優しい曲だ。透明な湖の風景に、一抹の哀愁が木の葉になって湖面にひらりと落ちるような味わいがある。
「FAEソナタ」はブラームスと交友のあった作曲家・シューマンとディートリヒとともに作曲したもので、第1楽章をディートリヒ、第2楽章と第4楽章をシューマン、第3楽章のスケルツォ(アレグロ)をブラームスが作曲している。今回演奏されたのはその第3楽章のスケルツォ。ピアノのアグレッシブな低音にのせての演奏は、これまでとは一転して力強く、しかし楽し気にも感じられた。
土岐祐奈
土岐祐奈(ヴァイオリン)、須関裕子(ピアノ)
ロマンティックな曲から超絶技巧へ
4曲目はマヌエル・ポンセの「エストレリータ」。ポンセはメキシコの作曲家でこの「エストレリータ」は“小さな星”という意味。1913年、ポンセ自身の作詞・作曲で書かれた歌曲で、現在はヴァイオリンの演奏曲としても広く知られている。
歌詞は恋する女性の熱い想いを綴ったもの。ゆったりとした、夜のしじまで愛おしい人に思いを馳せるようなロマンチックなメロディが、しかし情熱を帯びた響きを伴って奏でられる。
土岐祐奈(ヴァイオリン)、須関裕子(ピアノ)
土岐祐奈
土岐祐奈
そして5曲目はパガニーニ「ヴァイオリン協奏曲 第1番」より3楽章だ。「悪魔に魂を売った」と言われるほどの超絶技巧の演奏家でもあったパガニーニの協奏曲を、「私にとってはチャレンジです」と、今回はヴァイオリン独奏のアレンジ版を演奏する。聴く方は春の小道をスキップしたくなるような、しかし演奏する方はひょっとしたら短距離ダッシュではなかろうかという曲を楽しそうに弾き終え、客席からは「ブラボー!」の声も飛んだ。
アンコールはNHK大河ドラマ『真田丸』のメインテーマ。ヴァイオリンの音色が印象的だった曲で、数年前、日曜の夜に毎週聴いていた人たちも多かっただろう。客席からは大きな拍手が起こり、日曜のひと時は温かな雰囲気と共に幕を閉じた。
土岐祐奈、須関裕子
楽しめた演奏。将来的には留学も
終演後、ミニインタビューを行った。
――素敵な演奏をありがとうございました。今日の曲はどういう趣旨で選ばれたのでしょう。
土岐:30分という短い時間ですので、お客様に楽しんでもらいたいなと思い、いろいろな作曲家、時代に、お馴染の曲を入れました。
(左から)須関裕子、土岐祐奈
――普段のリサイタルと、この会場は雰囲気が違ったと思いますが、いかがでしたか。
土岐:温かくて皆さん真剣に、静かに聴いてくださっているので、私も集中して楽しんで演奏できました。コンサートホールと違いパティオ、リビング、ダイニングの3方向にお客様に囲まれて、距離も近く、雰囲気が良かったです。
――ピアノの須関さんは土岐さんの先生ということですが。
土岐:桐朋学園時代の先輩なんですが、私が先生というイメージを持っていて……(笑)
須関:土岐さんが高校生の時、私のリトミックの授業に出ていたんです(笑)。
土岐:2年前にベートヴェンを演奏する際にご一緒していただいたんですが、今回久しぶりに一緒にやりたいなと思いお声がけさせていただきました。先生の音楽が好きなので、私も安心して弾けるんです。
――パートナーは大事なのですね。
土岐:ソナタなどデュオの編成では特に、ピアノの方との相性は必ずついてくるので、自分のパートナーを見つけながらやっていきたいなと。
――今は日本を拠点に活動されていますが、今後は?
土岐:来年度が大学の2年目になります。今年は演奏会やコンクールに挑戦しながら活動し、その後は留学を考えています。具体的な場所などは決まっていませんが、ドイツ圏の音楽や文化が好きなので、先生を探しながらヨーロッパで勉強をできればと考えています。
(左から)須関裕子、土岐祐奈
取材・文=西原朋未 撮影=鈴木久美子
公演情報
サンデー・ブランチ・クラシック
寺下真理子/ヴァイオリン&SUGURU/(from TSUKEMEN)ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円
松田理奈プロデュース OTOART vol.4『MUSIC × DANCE』
MUSIC CHARGE: 500円
MUSIC CHARGE: 500円
MUSIC CHARGE: 500円
■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html?