イタリアのピアノの貴公子が奏でる名画の調べ 『SUNDAY LIVING LIVE』Alex J.Dライブレポート

レポート
音楽
2018.5.7
Alex J.D

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お食事をしながら、ドリンクを飲みながら「より身近に音楽やアートがある生活」を目指し「アーティストが友人を招きもてなすLIVING ROOM」のコンセプトのもと、「ライブ音楽」と「飲食」と「アート」を融合した新たなライブエンターテインメントをお客様に提供し続けている『eplus LIVING ROOM CAFE&DINING』。
日々様々なジャンルのライブが繰り広げられている中、通常の LIVING LIVE とはひと味違った、大人のエンターティンメント・ライブを展開している『SUNDAY  LIVING LIVE』で、4月15日、イタリアから来日して4年、多彩な活動を続けているAlex J.Dのピアノライブが行われた。

Alex J.D

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イタリアのビチェンツァに近いティエネ出身のAlex J.Dが、日本に興味を持ったのは、母国で「Nippon」という雑誌を手に取った時だった。そこで芸術的に描かれていた日本に心惹かれた彼は、ベネチアにあるカフォスカリ大学で日本文学を専攻。日本の歴史や文化を学び、イタリアの建造物と日本の神社仏閣などの違いに衝撃を受ける。また、音楽と演技の学校にも就学し、黒澤明・北野武、両監督の作品に魅了され来日を決意。アーティスト、役者、モデルをこなすマルチな才能の持ち主として活躍する中、フジテレビ系列の『芸能界特技王決定戦TEPPEN第15弾』に出演。宇多田ヒカルのfirst love、久石譲のSummerを披露し、ピアノ種目の第3位に輝き、絶対音感を持つイタリアのピアノの貴公子として、一躍注目を集めた。

様々なスクリーンミュージックを見事なピアノアレンジで

そんなアレックスが『eplus LIVING ROOM CAFE&DINING』のアットホームな会場で、本邦初公開となる自身のオリジナル楽曲を含めたピアノライブを展開するとあって、この日のカフェは満席の大盛況。ディズニー音楽をテーマに、話題となった「Summer」までを含めた楽曲で魅了したfirstステージに続き、Secondステージに再びアレックスが登場すると、カフェは大きな拍手に包まれた。

まず最初に披露されたのは、韓国出身のピアニストでありコンポーザーであるYiruma(イルマ)のオリジナル曲「River Flows In You」。2008年のアメリカ映画『Twilight(邦題・トワイライト~初恋)』の中で使用されたことから、ブレイクした1曲で、優美で美しいメロディーが広く愛され、数多くのカバー、アレンジ曲がリリースされている。アレックスの演奏は、ピアノの音色の優しさ、柔らかさに加えて、豊かな和声感が特徴で、曲の繊細な美しさをひと際丁寧に届けてくれた。

Alex J.D

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続いて、宇多田ヒカルの「光」。この楽曲は2008年に発表された、ゲームソフト『KINGDOM HEARTS』のテーマソングで、2017年には『キングダム ハーツ HD2.8 ファイナル チャプター プロローグ』でこの楽曲のリミックスバージョン「光~Ray Of Hope MIX~」(REMIXED BY PUNPEE)が全米のiTunes総合ページで日本人アーティスト最高位の2位にランクインしたことで、新たな話題をまいた記憶も新しい。アレックスは単旋律の前奏から、重厚感のある和音を加えてゆき、メロディーを活かしつつピアニスティックに楽曲を盛り上げていく。その興奮が最高潮に達したところで、鮮やかに切り替え、高音部で奏でられる再び単旋律となったメロディーが、まるでオルゴールのよう。静かな余韻を残して音楽が消えていくのが深い印象を残した。

ここで、ニッコリとほほ笑んだアレックスがピアノの上に置いたのは、R2-D2のミニチュア。そう、世界的に熱狂的なファンを獲得した大河スペースオペラ、『スター・ウォーズ』に登場するキャラクターである、コロンとしたフォルムが特徴の宇宙用ロボットだ。相棒で金色の長身ロボットC-3POとの凸凹コンビが広く愛され続けている。とくれば、もちろん演奏されるのは『スター・ウォーズメドレー』。繊細な切ないメロディーではじまり、低音部で重いリズムが刻まれるにつれて、演奏は一気にドラマチックに。メロディーにも重さが加わったところで、一瞬囁くような美しい旋律が響き、お馴染みのテーマ曲へと流れ込む。リズムの刻みに個性があり、演奏スタイルがとても自由で伸びやか。ピアノでは難しい面もある、壮大な楽曲が見事なピアノ曲として生れ出た爽快感が抜群だった。

愛がこめられたオリジナル曲

そして、Secondステージの最後に用意されたのは、アレックスの自作曲「出会い」すべての出会いの喜びを奏でた楽曲は、切ない響きのメロディーが低音部、中音部、高音部の、ピアノという楽器が持つ豊かな音色の違いを自在に操って奏でられ、アレックス自身がピアノに持っている愛、そして出会った人々への愛がこぼれ出るよう。リズミックに駆け上がったメロディーが、静かにフィニッシュした時、ため息と共に拍手も次第に大きく広がっていった。

その拍手に応えてもう1度ステージに戻ってきたアレックスは、アンコール曲を弾くと見せて、テレビCMでお馴染みの一節を軽やかに弾く、茶目っ気な一面も見せて笑わせる。そして最後にやはりオリジナル曲で「ありがとう」を。タイトルの通りに、心からの感謝がこもっている演奏は、リズミックでダイナミックでいながら、繊細さもあるアレックスの音楽、心の言葉を十分に表現して、満員の会場からも感謝の拍手と喝采がいつまでも続いた。

Alex J.D

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言語を超えて通じ合える音楽の素晴らしさ

そんな演奏を終えたアレックスにお話を伺った。

--演奏を終えていかがでしたか?

楽しかったです!とても楽しかった!

--お客様の反応なども身近に感じられたのでは?

食事をしながらのコンサートで、皆さんリラックスして聞いてくれて、温かい雰囲気なのがとても良かったです。たくさん拍手もしてもらって、嬉しかったです。

--食事をしながら演奏が聴ける場所というのは、なかなかないですものね。

ないですね! わたしも初めての経験だったので、面白かったです。やっぱり音楽はリラックスする為にあるものだと思うし、皆が緊張してじっと聴き入るというよりも、こういう場所で楽しみながら聴いて頂けると、わたしも楽しむことができましたので、良かったです。

--今日はオリジナル曲も含めた、多彩なプログラムを聴かせてくださいましたが、プログラムの選曲はどのように?

まず、映画音楽でというコンセプトを決めました。お客様に食事をしながら映画を観ている感覚を作りたかったんです。その上で、わたしの演奏スタイルはピアノを弾きながら、「Play」遊びの要素も入れていくので、映画音楽は雰囲気も作れるしすごく好きですね。

--メロディーの綺麗なところから、リズムが加わって和声的になる変化がとても面白くて、ドラマチックでしたね。ピアノという楽器がオーケストラの音域を1台でカバーできることの可能性もすごく感じましたが、『スター・ウォーズ』のような壮大な世界観をピアノで表現するにあたっては、どんなことを目指して?

『スター・ウォーズ』を編曲する時は1番大変でしたが、でも1番楽しかったです。わたし自身が『スター・ウォーズ』の大ファンなので、自分の大好きな映画の音楽をピアノで弾けることがまずすごく嬉しくて、何時間連続で弾いていても飽きなかったです。皆さん『スター・ウォーズ』はよくご存じだと思うので、中でも1番有名な曲を選んで、イメージとしては今皆さんと一緒に『スター・ウォーズ』を観ている感じにしたかったんです。

Alex J.D

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--確かに、映画の画面が浮かんでくるようでした!

1番有名なテーマ曲は映画が終わって、エンドロールの時に必ずかかりますから、そこを最後にしたかったので、柔らかい音楽からはじめて、「インペリアル・マーチ」「プリンセスレイアのテーマ」「フォースのテーマ」そして、最後に「スター・ウォーズのテーマ」に至る、という流れを考えました。2ヶ月前にもう1度『スター・ウォーズ』シリーズを全編見直したんです。その時からやっぱり「この音楽が好きだ!ピアノで弾きたいな!」と思っていたので、今日弾けて本当に嬉しかったです。

--私たちも聞かせてもらえて楽しかったです!またご自身のオリジナルもありましたが、今日はこの曲を弾こう!と決められたのは?

わたしにとっての曲は、感情が伝わるものなので、その感情がお客様に伝わったらいいなぁと思って弾いていて、今日選んだのは、テーマとしては「愛」です。愛と言っても意味合いとしては大きくて、「出会い」という曲を弾きましたが、今自分の人生の中で、出会えている人たちすべてに「出会えてよかった」の想いをイメージしています。

--今日ここにいらしたお客様との「出会い」もありますね。

もちろんそれも含まれています! お客様がいらっしゃらなければ、わたしがここにいることもできませんから!

--アレックスさんは、日本がとても好きでいてくださるということも嬉しいのですが、日本での活動の中で実際に暮らしてみていかがですか?

もう大好きです! 住んでみてもその気持ちは全く変わりません。住んでみればもちろん良い面、悪い面があるのはどこの国でも全く変わらないことだと思うけれど、わたしは日本人のものの考え方が本当に好きです。繊細な心が様々なものの中に込められていて。例えば茶道でも、わたしが考えていたのは単純に「お茶を飲むこと」、というものだったんです。でも、実際に日本に来て茶道のお茶会を見に行ったら、関わっている女性たちが醸し出している雰囲気に、格調があるのにびっくりして。どんな小さな動きにも意味があって、綺麗で、考え抜かれているのに感動しました。

--「おもてなしの心」と言われますね。

そういうところが、本当に好きです。

--そんな日本で今多彩な活動をされていますが、今後広げていきたいことや夢などはありますか?

是非やってみたいのは、自作曲だけのコンサートです。もちろん「Summer」や「スター・ウォーズ」などを入れても良いのですが、主体としては自分の曲を聴いていただけるコンサートをやっていきたいなという夢はあります。

--それは待っている方たちもたくさんいらっしゃると思いますよ。

そうだったら嬉しいです。今日弾いた曲も日本で生まれた曲ですが、自分の感情をどんどん曲にして増やしていきたいんです。ハッピーな時にはハッピーな曲が創りたいし、例えば落ち込んでいる時だったら、その落ち込んだ気持ちも曲にしていきたい。色々な感情を曲を通して伝えたいんです。

--音楽には国境がないですものね。

そうなんです。音楽なら言葉がわからなくても通じ合える。それは本当にすごいことだと思うので、どんどん発信していきたいです。

--そんなアレックスさんの音楽をまた聴かせていただけるのを楽しみにしています。

ありがとうございます! 是非また皆さんと同じ時間を過ごしたいと思っています!

取材・文=橘涼香 撮影=山本 れお

公演情報

『SUNDAY  LIVING LIVE』
日程:2018年4月16日(日)
1st 19時~
2st 20時~ 各30分演奏
出演:Alex J.D
 
公式サイト:https://livingroomcafe.jp/
 
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