早霧せいな「本物の男性はやっぱり力強い!」宝塚退団後、初主演のミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』公開稽古&会見レポート

レポート
舞台
2018.5.14
ウーマン・オブ・ザ・イヤー

ウーマン・オブ・ザ・イヤー

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板垣恭一演出のミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』が、2018年5月19日より梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演される。開幕を目前に、プレス向け公開稽古と囲み会見が行われた。

本公演は、1981年にブロードウェイで初上演され、トニー賞4冠に輝いたミュージカルで、早霧せいな相葉裕樹宮尾俊太郎(Kバレエ カンパニー)らが出演する。楽曲は『シカゴ』『キャバレー』など数々のヒット曲を手がけたジョン・カンダー&フレッド・エッブが手がけている。物語は、人気ニュースキャスターのテス・ハーディングが、自身が築き上げたキャリアと家庭の間で揺れながら、本当の幸せとは何かを見つけ出すラブコメディ・ミュージカルだ。この日の公開稽古では、劇中の楽曲3つを披露した。

『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』稽古場レポート

1曲目は、本作冒頭で流れる「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」。その年、最も輝いた女性に贈られる賞“ウーマン・オブ・ザ・イヤー”の授賞式を控えたテス・ハーディング(早霧せいな)。しかしその表情は明るくない。夫であり、風刺漫画家のサム(相葉裕樹)と喧嘩したばかりのテスは、怒りと恨みを込めて、このナンバーを歌い上げる。

早霧せいなは、黒のロングスカートをひらめかせながら舞台上手側より登場。

早霧せいな

早霧せいな

曲冒頭から、夫サムへの怒りを歌詞に乗せて歌う早霧の表情は険しく、迫力満点だ。その後も勝気な笑みを浮かべたり、ファイティングポーズを取ったりしながら、「夫なんて必要ない!」と力強く歌い上げる様子に、テスのエネルギッシュさがひしひしと伝わってくる。「大きな声で、ガールズ!」と煽り、女性ダンサーをはべらせて歌う姿は、元男役トップスターの気迫を感じた。そして、くるくる変わる表情だけでなく、立ち姿や決めポーズの一瞬一瞬にも目を奪われる。

「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」を歌い上げる早霧せいな

「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」を歌い上げる早霧せいな

これまで男役を演じてきた早霧にとって、女性役を演じる難しさについて会見で問われると、「やりなれていない女性役は、勝手が違うことが多々あって、スカートを履いて歩くとか、右肩にショルダーバッグを抱えて歩くっていうのが、なんかこう、板につかないんですよ」と、回答。しかし、共演者の相葉裕樹宮尾俊太郎は、早霧を「エレガンスのかたまり」と絶賛。本作では、凛々しさだけでなく、女性らしいチャーミングな一面も新たに見られそうだ。

決めポーズもバッチリの早霧せいな

決めポーズもバッチリの早霧せいな

続く2曲目は、すれ違いばかりの結婚生活に、寂しさを感じる夫サム(相葉裕樹)によるしっとりとしたナンバー「戻らない時間」を披露。

テスへの思いを、自身が生んだキャラクター「カッツ」に向けて吐露するサムを、甘い声で歌い上げる相葉。柔らかで優しい声とピアノ伴奏の相性も良く、じっくり聞き入ってしまう一曲になっていた。劇中では、漫画のキャラクターが随所に登場するらしいので、どのような演出になるかも楽しみにしたい。

相葉裕樹

相葉裕樹

明るいナンバーが多い本作の楽曲について、相葉は「“こりゃダメだ”というナンバーが特に好き。歌詞はすごくネガティブなんですけど、アップテンポでやたら明るいみたいなギャップが面白い。」と、お気に入りの曲を紹介。こちらのチェックもお忘れなく。

相葉裕樹

相葉裕樹

3曲目は、紆余曲折を経て、敵対していたサムの漫画家仲間に受け入れられたテスが歌う「女だけど男」を披露。大勢の登場人物が出揃う、華やかなダンスナンバーに仕上がっている。

ウーマン・オブ・ザ・イヤー

ウーマン・オブ・ザ・イヤー

男だらけの漫画家仲間に囲まれたテスは紅一点。けれど、そんなことはお構いなしに、「女だけど男なの!」と歌い、盃を交わし合う。

早霧せいな

早霧せいな

男勝りなテスの魅力が、早霧のダンスや力強い歌声を通して存分に発揮されていた。曲後半には、ロシアから亡命したバレエダンサーのアレクセイ(宮尾俊太郎)が加わり、美しい肉体美と華麗なダンスを披露。「誰よりも踊りながら、誰よりも歌うのは宮尾さん」と話す早霧に対して、「僕もこんなに踊るとは思っていなかった」と素直に驚いていた宮尾。初披露となる歌や台詞も見逃せないが、しなやかなダンスシーンにも注目したい。

美しい肉体美で踊る宮尾俊太郎(Kバレエ カンパニー)

美しい肉体美で踊る宮尾俊太郎(Kバレエ カンパニー)

テスは「猪突猛進」、サムは「庶民代表」、アレクセイは「ハッピーな男」

会見では、早霧せいな相葉裕樹宮尾俊太郎が公演への意気込みを語った。

宮尾俊太郎(Kバレエ カンパニー)、早霧せいな、相葉裕樹

宮尾俊太郎(Kバレエ カンパニー)、早霧せいな、相葉裕樹

早霧:「こういう場を設けて頂くと、いよいよ始まるんだなと実感しています。宝塚退団後初のミュージカル主演ということで、自分が今持っているものをすべて出し切って、果敢に挑戦することがテスの役につながると信じているので、その信念を失わず、初日に向けてお稽古に励みたいと思います」

相葉:「稽古が残り一週間。普遍的なテーマで、皆様に共感していただける作品になると思います。劇場に足を運んでくださるお客様にお楽しみいただけたらと思いますので、ラスト一週間全力で稽古して、初日に臨みたいと思います」

宮尾:「普段はバレエダンサーとして一切声帯を使っていないんですが、今回は台詞も歌もあるので、そこは一から共演者の皆さんに助けて頂いています。現役のバレエダンサーがミュージカルにバレエダンサー役として出演することは、なかなか他にないと思いますので、その辺りも楽しんでいただけたらと思っています」

役柄に共感できるところは? という質問に、相葉は「サムは庶民代表というか、一般的な感覚を持っている男性なんじゃないかなと思います。テスやテスの周りの人間にとても振り回されるので、(お客様に)わかるわかるという感じで見ていただけたらと思います」と語る。

続いて宮尾は、「キャリアを全部捨て、異性のために祖国へ帰るという決断は、テスに衝撃を与えます。そういう意味でアレクセイは、愛したものに突き進んでいくような、とてもハッピーな男です。僕自身ハッピーな男ではあるけれども……色々人生経験を積んで、ハッピーだけではなくなってしまったところもあるんですが、根っこはハッピーなので、とってもリンクしていると思います」と、会場の笑いを誘った。

早霧は自身の性格を振り返り、「たまに周囲を忘れて、猪突猛進してしまうことがある。そうしないように心がけてはいるんですが……テスはそれがキャラクターですので、私が猪突猛進しているところを、ずっとやり続けたらテスになるのかなと思います」と回答。すると宮尾が、「現場では周りのことを気遣ってくれていますよ」と優しくフォロー。

早霧せいな

早霧せいな

早霧せいな「自然と女子になれています」

早霧との共演については、宮尾が「早霧さんは飾らないでまっすぐに役と向き合っている。良い意味でプライドを捨てていて、清々しい」とコメント。相葉は「めちゃくちゃストイックですよね。アスリートなんじゃないかなというくらい、男らしいなと思います」と感心している様子。「熱が入った時の集中力が凄まじい、そこに共演者の僕らも引っ張られる」と話すと、すかさず宮尾が「なのに劇中の酔っ払うシーンでは、すっごく可愛いんですよ」と付け加えた。共演者2人からの賛辞に「ありがとうございます!」と少し照れたような早霧からも、カンパニーの和やかな空気が伝わってくる。

ウーマン・オブ・ザ・イヤー

ウーマン・オブ・ザ・イヤー

「男性の皆様とお芝居することが初挑戦なので、ドキマギする。手を取られて触れた感覚が女性と手をつなぐ感覚と全然違う」と話す早霧に、相葉と宮尾が「違います? どうですか??」「けがらわしいとか?」と追い討ちをかける。

それを笑顔で否定しながら、早霧は「やっぱり本物の男性は力強い。声の質感や、私をリフトしてくださる時も力強くて……自然に女子になれています」と、宝塚現役時代にはない発見を嬉しそうに話した。

そんな早霧の夫役を演じる相葉は、「見せ方を教えていただくことが多くて、この時はこっちの角度の方がいいよ、とか言ってくださる。エレガンスに関してはプロフェッショナルなんで、心強い。そこは頼ろうかなと思っています」とこぼす。「任せて!」と自信満々の早霧を傍目に、宮尾は「こういったお二人の様子を遠くから眺めていて、テスとサムの関係性にみえるんですよ」と、しみじみ。テンポ良く会話を弾ませる3人に、ますます本番への期待が高まる。

ウーマン・オブ・ザ・イヤー

ウーマン・オブ・ザ・イヤー

男性陣に囲まれた現場は? という報道陣からの質問には、「不思議とリラックスできるんです」と意外な回答が。

「もしかしたら、男役だった時の感覚が抜けないのかな。あとは、お稽古が始まった頃、演出家の板垣さんから、「テスは〜」「サムは〜」というアドバイスを受けている時に、どうしても男側で考えてしまう時がありました。「あっ、いけない今はテス側なんだ」と思った時があって、自分でも無意識の感覚でした。どうしてもまだ、男性側の心情を考えていたんだなって思います」今はもう、テスから見たサムの心情を考えられるようになっています、と話す早霧。本番に向け、キャスト達の演技がより役とシンクロしていくのが楽しみだ。

ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』は、5月19日より梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで、その後は6月1日よりTBS赤坂ACTシアターで上演される予定。家庭と仕事、どちらの役割も担う女性が増えてきた現代だからこそ、多くの女性の共感を誘う作品になりそうだ。

取材・文・撮影=田中未来

公演情報

ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』
 
■脚本:ピーター・ストーン
■作曲:ジョン・カンダ―
■作詞:フレッド・エッブ
■上演台本・演出・訳詞:板垣恭一
■音楽監督:玉麻尚一
■出演:早霧せいな、相葉裕樹、今井朋彦、春風ひとみ、原田優一、樹里咲穂、宮尾俊太郎(Kバレエカンパニー)ほか
 
■日程・会場:
【大阪公演】2018年5月19日(土)~27日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
料金:全席 12,500円 (全席指定・税込)
■お問い合わせ:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 06-6377-3888
 
■日程・会場:
【東京公演】2018年6月1日(金)~10日(日)TBS赤坂ACTシアター
料金:S席12,500円 A席8,500円(全席指定・税込)
■お問い合わせ:梅田芸術劇場 0570-077-039

■公式サイト:http://www.umegei.com/womanoftheyear/
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