ゲームきっかけで女性に大人気!日本刀の奥深き世界を知る

2015.10.19
コラム
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古来、日本男児の腰に携えられていた日本刀。これまでの嗜好者は、歴史や武将が好きな40歳以上の男性が主流だった。しかし今、日本刀にハマっている女性が増えていることをご存知だろうか。とあるゲームが火付け役となり、女性の間で日本刀がブームになっているのだ。女性のみならず、男性にも人気が飛び火つつあるこの流行の実情を解説する。

「1~9月までの入館者を比較すると、2014年は約1万1800人、2015年は1万9700人と約1.7倍増加しています」と語るのは、東京都渋谷区にある刀剣博物館の学芸員、石井彰さん。2014年までの来館者の構成比は年配男性が約4割、外国人観光客が約6割と横ばいだったが、「増えた部分は、これまで見かけなかった20~30代の女性」と石井さん。また、刀剣の売買を行う東京にある銀座 誠友堂でも、ことしは急激に女性の来客や問い合わせが増えたそうだ。

では、なぜ女性がハマっているのか。きっかけは、2015年1月にサービスが開始された「刀剣乱舞(とうけんらんぶ)-ONLINE-」というインターネットゲーム。坂本龍馬や沖田総司らが携えていた名刀を美青年キャラクターとして擬人化した育成シミュレーションで、熱狂的な女性ファンを生み出している。「Gamer」編集部の橋本憲和さんは「名刀から生まれたキャラクターには、歴史やエピソードが詰まっています。その背景をリアルに感じるために、本物の刀剣を知ろうとしているのではないでしょうか」と言う。ゲームへの熱い思いがリアルに転じ、本物にもハマってしまった「刀女子」という存在が生まれているようだ。

また、9月に開催された「東京ゲームショウ2015」では同ゲームのスマートフォン版が発表され、「刀女子」の数はますます増えていく可能性が高い。

「かっこいい」とは思うものの、正直何を楽しめばよいのか分かりにくい日本刀。前出の銀座 誠友堂の代表を務める生野正さんに、その魅力を聞いた。

「私が持っている資料には約1000人の刀匠が紹介されていますが、その方たちが生涯に何本打ったかは分からないのです」。一口に日本刀といっても種類はさまざま。大別すると「刀」「脇差し」「短刀」「薙刀」「槍」の5種類だが、その分類はさらに詳細に分かれるという。種類の豊富さに加え、明確な生産本数が不明瞭なため、数百年もの間、世に出ずに眠っている名刀や、まだ知られていない刀匠の作品も多いそう。いまだ謎に包まれている部分があるのも魅力の一つなのだという。

では、日本刀は何を見て楽しむものなのか。一番分かりやすいのが「刃文」。刃文は刃の硬さと粘りを持たす「焼入れ」という技術から、鉄に浮かび上がる波形などの模様のこと。刀鍛冶の作業の中で最も技術を要するといわれ、江戸時代中期なら数珠刃(じゅずば)、名匠・助広(すけひろ)なら濤瀾乱(とうらんみだれ)というように、造られた時代や刀匠によってその模様は変わる。「時代や刀匠、その歴史に思いをはせて鑑賞するのが楽しいんですよ」と生野さん。

そして、日本刀はその価値が安定しているのも特徴。絵画や陶器といった他の美術品は、時代によって変動するが、保存が良好で錆(さび)などがなければ大きく変わらないのだそう。これは日本刀自体が、国の文化財として認識されており市場での需要変動が穏やかなためだ。また、いわゆる「掘り出しモノ」は、ほとんど存在しないという。安さにはそれなりの理由があり、「日本美術刀剣保存協会」が発行している鑑定書が付帯していないものや、相場の値段から大きく乖離しているものは、偽物の可能性が高いそうだ。

一部で女性人気が高まる中、「買うなら今!」というほど気楽なものではないが、“男のロマン”を感じる逸品には違いない。【東京ウォーカー/記事提供=週刊ジョージア】

※記事の内容は、無料スマホマガジン「週刊ジョージア」から一部抜粋、再構成したものです