初心者からコアファンまで、室内楽を楽しめる約2週間! 「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン2018」

2018.5.24
コラム
クラシック

1997年結成のカザルス弦楽四重奏団。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を演奏する

 
サントリーホール恒例の室内楽イベント「チェンバーミュージック・ガーデン」(以下CMG)が、6月2日~17日、小ホール(ブルーローズ)で開催される。今年は、合計20公演あり、主に弦楽器とピアノの組み合わせで、若手から重鎮まで世代を超えた演奏家が、一期一会のアンサンブルを披露する。

どれを聴こうか迷いそうだが、初めての人は、6日、8日、13日の「プレシャス1 pm」へ。タイトルどおり「午後1時開演」で、原田幸一郎(vn)、練木繁夫(pf)をはじめとするベテランが日替わりで登場。モーツァルトやドボルザークをはじめとする名曲アンサンブルにトークも交えた、中身の濃い1時間を楽しめる。料金も2500円と手頃で、ペア券やサイドビュー(舞台の両サイドの席)はさらにリーズナブル!

ピアニストの練木繁夫。館長でチェリストの堤剛とトリオ活動もしている (c)大窪道治 

この中で、8日の「ドビュッシーと反好事家八分音符氏(ムッシュー・クロッシュ・アンティディレッタント)」は、フランスの作曲家ドビュッシー(1862~1918)没後100年にちなんだ企画で、パリを拠点に活躍の児玉桃(pf)がプロデュース。若手奏者とヴァイオリン・ソナタやチェロ・ソナタを演奏したり、初めて歌曲伴奏もする。ドビュッシーが生きた時代のパリは、芸術家や作家が互いに刺激し合って文化隆盛。彼も、興味深い書簡や評論を残している。児玉はそこに着目。プログラムの曲間に、声優がそれらを朗読し、彼の文学的側面も紹介する。ちなみに、タイトルの「反好事家八分音符氏」は、ドビュッシーが自身をシニカルに表現した言葉だそう。その真意などは、ぜひ当日のコンサートで!

パリを拠点に活躍のピアニスト、児玉桃 (c)Marco Borggreve

なんと1000円で聴ける演奏会もある。3日と16日の「ENJOY! 室内楽アカデミー・フェロー演奏会」がそれで、サイドビューだと500円だ。サントリーホールでは、2010年から若手演奏家のキャリアアップを支援する室内楽アカデミーを開講している。館長でチェリストの堤剛をはじめとする充実の教授陣のもとで2年間研鑽を積み、CMGで成果を発表する。今回は第4期修了生約20人が出演。トリオやカルテットなど、演奏曲を紹介してから披露する。両日とも午前10時半開演。

演奏と次世代指導の両方を大切に、室内楽に取り組む堤剛。オープニングからフィナーレまで複数出演する (c)鍋島徳恭

さて、どっぷりアンサンブルに浸りたい向きには、メイン企画の「ベートーヴェン・サイクル」がお勧めだ。結成20年の節目を迎えたスペイン随一の国際的カルテット、カザルス弦楽四重奏団が、ベートーヴェン(1770~1827)の弦楽四重奏曲全16曲を6回にわたって演奏する。目下CMGを含む世界12都市で、同様の演奏会を展開中で、すでに各地で高評価を得ている。

このカルテットは、メンバーの資質や持ち味を生かして作品の時代性に応じた演奏をするために、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの奏者が曲によってチェンジする。本公演では、18世紀の音楽に通じているアベル・トマスが第1番から第6番までの初期の作品で、19世紀以降の音楽を得意とするヴェラ・マルティナス・メーナーは第7番以降で、第1ヴァイオリンを務める。7日を除く5演奏会で、その様子や奏者による音の違いなどをじっくり味わえる格好になる。

この他、元ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスター、ライナー・キュッヒルを中心とする「キュッヒル・クァルテットのブラームス・ツィクルス」に、気鋭の吉田誠(cl)や福間洸太朗(pf)が加わり、クラリネット五重奏曲(12日)やピアノ五重奏曲(14日)を演奏するのも話題。

また、近年めざましい活躍ぶりで世界から注目されているアジアの若手が、3日の「アジアンサンブル@TOKYO」に登場する。指導者としても名高い原田や堤の推薦で、韓国から3人のハイティーン奏者、イ・スビン(vn)、チョン・ウチャン(vc)、イム・ジュヒ(pf)が来日。メンデルスゾーンの『ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲』やラヴェルの『弦楽四重奏曲』を演奏する。

舞台と客席の距離が近いホールで、お互いの音をよく聴きながら演奏する奏者たち。その息づかいや表情などを身近に感じながら、アンサンブルの妙を堪能していただきたい。

文=原納 暢子

公演情報

チェンバーミュージック・ガーデン 2018
 
■日程:2018年6月2日(土)~6月17日(日)
■会場:サントリー小ホール(ブルーローズ)
■出演:
弦楽四重奏:カザルス弦楽四重奏団
弦楽四重奏:キュッヒル・クァルテット
ピアノ三重奏:トリオ・ヴァンダラー
チェロ:堤 剛
クラリネット:吉田 誠
ピアノ:イム・ジュヒ
ピアノ:児玉 桃
ピアノ:小山実稚恵
ピアノ:練木繁夫
ピアノ:萩原麻未
ピアノ:福間洸太朗
ハープ:吉野直子
ヴァイオリン:イ・スビン
ヴァイオリン:池田菊衛
ヴァイオリン:小川響子
ヴァイオリン:鍵冨弦太郎
ヴァイオリン:竹澤恭子
ヴァイオリン:成田達輝
ヴァイオリン・指揮:原田幸一郎
ヴァイオリン:渡辺玲子
ヴィオラ:磯村和英
ヴィオラ:川本嘉子
ヴィオラ:戸原 直
ヴィオラ:豊嶋泰嗣
ヴィオラ:ファイト・ヘルテンシュタイン
チェロ:チョン・ウチャン
チェロ:新倉 瞳
チェロ:毛利伯郎
チェロ:横坂 源
バリトン:町 英和
朗読:堀江一眞

 
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