情景を共有するバンドmol-74・武市 和希×FM802・DJ樋口大喜 “新しい音楽との出会いを"『GLICO LIVE "NEXT"』スペシャル対談

インタビュー
音楽
2018.7.19
DJ樋口大喜(FM802)×武市和希(mol-74)撮影=森好弘

DJ樋口大喜(FM802)×武市和希(mol-74)撮影=森好弘

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新しい音楽との出会いを届けるライブイベントFM802『GLICO LIVE "NEXT"』が、7月24日(火)に、大阪心斎橋・Music Club JANUSにて開催。江崎グリコがサポートする同イベントは、“関西から新たな才能を応援!”することをコンセプトに、関西から音楽シーンを盛り上げていこうと関西のラジオ局FM802が定期的に開催してきた人気イベント。今回は、mol-74、マカロニえんぴつ、ユアネスの三組が出演する。イベントの開催が目前に迫る中、MCを務める『RADIO∞INFINITY』(毎週木曜25:00~28:00)のDJ・樋口大喜が、mol-74の武市和希(Vo/Gt/Key)と対談を実施。イベントに向けての意気込みだけでなく、mol-74の楽曲性、そしてこれからの音楽シーンを担っていく二人の熱い想いが語られた。

武市和希(mol-74)撮影=森好弘

武市和希(mol-74)撮影=森好弘

――先ずは、お二人の接点なんですが、今年の5月に大阪・Shangri-Laで開催されたトーク&ライブイベント『GREENS LIVE MEETING~ぐりみ2~』なんですよね。

樋口:そうなんです。出演者もお客さんもお酒を飲みながら、トークと弾き語りのライブを楽しむイベントで、mol-74(以下、モルカル)の武市さんも出演されていて、僕もMCで参加していたのでその日が最初の出会いです。

武市:トークと弾き語りをするなんてあまりない機会ですから、とても楽しかったですね。

――他にはどんな出演者が?

樋口:渡邊忍さん(ASPARAGUS)、竹内サティフォさん(ONIGAWARA)、飯田瑞規さん(cinema staff)、そしてムツムロアキラさん(ハンブレッダーズ)です。

武市:ムツムロくん以外みんな先輩で、お酒が好きなんですけど緊張して全く酔えませんでした(笑)。

樋口:そりゃ緊張しますよね(笑)。だけど、武市さんのライブを観た時、歌唱方法が独特だと感じたのを凄く覚えています。段階を踏むことなく、ファルセットに移る感じがすごく自然で印象的でした。

武市:バンドに限らず、弾き語りでも歌う時はファルセットが主体ですからね。

樋口:それは、歌を始めた当初からファルセットが主体に?

武市:そうでもないんですよね。元々、ASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)がめちゃくちゃ好きで、アジカンばかり聴いていました。武道館ライブのDVDを観て衝撃を受けてコピーしてたぐらいなので、オリジナルの曲を作っても無意識のうちに影響がもろに出てしまっていたのか、「アジカンぽいね」なんてことをよく言われていたんです。それが気になっていた時に、邦楽だけでなく洋楽も聴くようになりました。シガー・ロスとかを聴くようになると、ファルセットで歌う人が多いなと気づいて、日本の当時のシーンにファルセットが主体のボーカルのバンドがあまりいなかったので自分も挑戦し始めてみたのがキッカケです。元々その方が歌いやすいというのもあったので、むりくりではなく自然に取り入れられたのも大きいかもしれません。

DJ樋口大喜(FM802)撮影=森好弘

DJ樋口大喜(FM802)撮影=森好弘

樋口:憧れのバンドであるアジカンみたいだと言われるのって、嬉しいもんじゃないんですか?

武市:嬉しくはなかったですね。というのも、「アジカンみたい」ならアジカンがいるからいいじゃないですか。そうじゃなくて、自分の中でアイデンティティを見出さないといけないと思うんです。「アジカンみたい」と言われて、真似してもらえるようなバンドに自分たちがならないと意味がない。

樋口:誰もやっていないことをやって……、武市さんの場合はファルセットを取り入れて「モルカルみたい」と言われるような存在になろうと。それって、難しいですよね。

武市:難しいですね……。自分の中の基盤にはアジカンを筆頭に、聴いてきた日本のロックの、ギターロックの影響があるんです。だけどもう一つ、シガー・ロスのようなポストロックであったり、シューゲイザーといった洋楽のルーツも共存しています。普通に考えると、それって混ざらないと思うんですけど、どちらも大事にしたいので、どちらにも偏らないようにするバランスが難しい。「アジカンみたい」と言われるギターロックではダメだし、ただの洋楽かぶれも嫌。だけどどちらも基盤として大事にしつつ、自分たちがシーンの中でどうやって存在を確立させていけるのかはすごく考えます。

――シーンを強く意識されていますが、それは全体であって同世代のバンドを意識することもありますか?

武市:それはないですね。今の夏フェスのメインステージに出てるアーティストはどういう人なのかとかは気にしたりしますが。そういうシーンを見て、自分たちの今の状況を考えて、mol-74というバンドのジャンルを作らないとこの先、生き残っていけないと思うんですよね…。

樋口:それは流行りという大衆が認めたシーンに対して、カウンターで挑んでいくことになりますよね。最近でいうと、例えばギターロックがあり、四つ打ちサウンドがあり、そのリズム感に言葉を乗せた楽曲が人気になったことに対して、カウンターとして僕はSuchmosというバンドが出てきたと思うんです。それが今度は、“シティポップ”とくくられるようになって、今はその勝手にジャンル化する言葉だけが雲散霧消してという感じに。Suchmosがそういったジャンルをシーンに作ったとして、今度は何が生み出していけるのか、今みんなが模索していると思うんです。

武市和希(mol-74)撮影=森好弘

武市和希(mol-74)撮影=森好弘

武市:そうなんですよね。だからこそ、Suchmosのように、今度は僕たちが真似られるバンドにならないといけないと思うんです。代わりが効かない、存在にならないといけない。とはいえ、目指そうと思って目指せるものではないと思うんですよね。自分たちのルーツとか信念を貫くだけでできることでもないと思います。それはタイミングであったり、時代の流れであったり、全ての要因が集まってSuchmosも今の状況がある。だから凄いんですよね。例えば、自分もいつか夏フェスのヘッドライナーを目指したいなって思うんですけど、そう考えた時に自分が影響を受けてきたポストロックのバンドとかってなかなかヘッドライナーとか、今の日本のフェスでは考えられない気がします。だけどイギリスのグラストンベリーとかならありえる。だから、時間がかかるとは思うんですけど、もっとフェスが多様化していけば良いなとか思ったり。もっと色々な音楽が楽しめる環境があっても良いなって。

樋口:それはお客さんを育てる、と言うとおこがましいですけど、作り手と聴き手が同じ目線で成長していくということが大事なのかもしれないですね。ラジオもそうですけど、「リスナーを育てる」という役割がひとつあると思うんです。その傍ら、聴いてもらわないと意味がないから分かりやすさも大事になってくる。音楽に関していえば、僕は日本はカラオケ文化だと思ってるので、歌いやすい音楽も意識しないといけないのかなとか…。そのバランス的なところが大事なのかもしれませんね。なんか、小難しい話になったので、話を一旦変えますね(笑)。歌うことは小さい頃から好きでしたか?

武市:そうですね。小さい頃から、「ずっと歌ってるね」と言われるような子でした。親が音楽が好きで、サザンオールスターズやB’z、スピッツといった邦楽だけでなく、エリック・クラプトンとかポリス、スティングのような洋楽がずっと家族で移動する車の中で流れていて、それを聴いて育ってきたので自然と歌ったりはしていました。

DJ樋口大喜(FM802)撮影=森好弘

DJ樋口大喜(FM802)撮影=森好弘

樋口:なぜその質問をしたかというと『ぐりみ』のライブで即興で曲を作って、歌ってはったじゃないですか。その時に、普段から歌ったり口ずさんだりするバックグラウンドがあるから成しえたのかなと、ふと思って。あの時は、「心理テスト」というテーマがあって即興で曲作りされてましたけど、普段からテーマを設けて作られてるんですか?

武市:「聴いてる人を、いかにその世界に連れて行けるか」は、すごく大切にしています。それと、聴いてくれる人の日常に、寄り添った音楽を作りたいという気持ちがずっとあります。自分が曲を作ってメンバーに聴かせるんですけど、自分の中で思い描いている風景とか季節、時間帯といった情景を、聴いてみんなと共有できたらようやく作るアレンジに進めるんです。それぐらい、大切にしていることは風景が見える曲であるかどうかをテーマにしていますね。

樋口:それは、ライブにおいても同じく?

武市:そうですね。だけど、今度の『GLICO LIVE“NEXT”』のような対バン形式で、30分しか持ち時間がない場合は、そこで自分たちのテーマばかりぶつけるのは良くないなと思ったりもします。僕たちは楽しいけど、果たしてお客さんは楽しくないんじゃないかとか。なので対バンの場合は、対バンするバンドがどんな音楽をやっているのかを意識しつつ、初めて僕たちのライブを観てくれるお客さんも喜んでくれるライブにしようと意識しますね。その上で、観に来てくれた人が、何年後かにこの日のことを思い出してもらえたるようなライブができたらいいなという思いはあります。

――人生に何か残るような曲を作りたい。それが原動力になって、フェスでヘッドライナーを務めたり、自分たちがシーンで生き残り活躍することでより聴いてもらう機会を作る、ということに繋がっているのでしょうか?

武市:うーん、少し語弊があるかもしれないんですけど、たくさんの人に聴いてほしいという欲求はあまりないんですよね。自分の音楽を聴いてもらうためにメインステージに立ちたいとかではなくて。夏フェスの話で言えば、十代の時にDVDを観て感化された、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』の夕暮れ時のメインステージでアジカンが「君という花」を披露した時の観客の熱狂を、単純に自分も体験したいという想いだけなんですよね。僕自身が、あの景色を見たいという気持ちが強いです。多くの人に聴いてもらうためというよりは、あのステージに立つまでの過程のために、今があるというか。原動力が何かというと、あの時のここに立ちたいと思った気持ちですね。どちらかというと、そのために自分は自分が好きなこういう音楽を作ってるという感じかもしれません。

DJ樋口大喜(FM802)撮影=森好弘

DJ樋口大喜(FM802)撮影=森好弘

樋口:過程を大事にしているという意味では、『GLICO LIVE“NEXT”』もプロセスを大事にしたいんですよね。イベントが打ち上げ花火的に点のまま、その日が楽しかったというだけで終わるのが僕はとても嫌で。好きなバンドが出るから見に行くとかだけでなく、「他のバンドは知らないけど、どんなんやろ」と新しい音楽との出会いのキッカケとなるイベントにして、次に繋がってほしいんですね。それこそラジオ番組がイベントを開催する意義やと思っていて。ラジオが持つ「何だろこの曲」、「なんていうバンドなんだろ」っていうワクワクした気持ちを目の前で感じてほしいなと。個人的には、この日モルカルが出会うユアネス、そしてマカロニえんぴつとどんな化学変化が起こって、次に繋がっていくのかも楽しみなんです。因みに、他の2バンドとは今まで対バンとかは?

武市:マカロニは何度が対バンしたことがありますね。ユアネスはこないだライブを観に来てくれて、その時に初めてご挨拶させていただきました。どちらのバンドも僕らと共通点があると思ってるんです。

樋口:お!例えば?

武市:マカロニのはっとりくんとかはアジカンが好きなんじゃないかなって、曲を聴いてて思ったり。ユアネスは情景描写や心情描写が、僕と一緒で好きなんやろなとか。だから、すごく対バンも合うと思うので、当日すごく楽しみですね。

樋口:これを機にプライベートも仲良くなって、それぞれのバンドがもっと大きくなった時にスプリットツアーをしてシングルを出したりすることに繋がるかも。そういうふうに今回のイベントを機に、点が線になればいいなと思います。

武市和希(mol-74)撮影=森好弘

武市和希(mol-74)撮影=森好弘

武市:お互い、高め合っていきたいんですよね。お客さん目線で観た時に、自分の好きなバンドが仲良い様子を見るの好きなので、そういうのは関係性は憧れますね。

樋口:僕、特撮が好きなんですけど、ウルトラマンと仮面ライダーが共演しているみたいな感覚ですよね! 住む世界が違うのに、ひとつの画面に映ってるのすごく夢があるというか。

武市:あれ、すごく夢ありますよね!僕も幼い時に親父がレンタルビデオで借りてきて、観た興奮を覚えてます(笑)。

樋口:自分の中でのヒーロー達が、ひとつのステージに立ってるのは凄く感動しますよね!ライブはそれを体現できると思うので、このイベントではそういう面白さにも繋がったらいいなと。イベントを担当するDJが、先輩の飯室大吾さんから僕に変わってまだ2回目の開催で……。正直、不安もあるんですけど、この日を楽しい日にするのはもちろんのこと、ひとつひとつ次のステージへと、イベントとバンドとお客さんとで一緒に歩んでいけたら嬉しいですね。

武市:そんなイベントに参加できて僕もうれしいです。過去に開催された「GLICO LIVE“NEXT”」のライブとか、SNSでもよく見かけていて、好きなバンドが出てたりで憧れのイベントだったから今回出れるの凄く嬉しんですよ。

DJ樋口大喜(FM802)×武市和希(mol-74)撮影=森好弘

DJ樋口大喜(FM802)×武市和希(mol-74)撮影=森好弘

樋口:そうだったんですね!今日お話させていただいて、情景を共有するバンドだと分かったのでライブがより楽しみです。モルカルが歌っている情景と、お客さんが思い描く情景が、モルカルを観ていて一致するライブがどんなライブなのか…!あとは、「心理テスト」の即興ソングのイメージが強いから、今回のイベントでも“ラジオ”とかをテーマにした新曲が生まれるんじゃないかな…とか勝手に妄想しています(笑)。このライブで披露されてなくても、今後、マカロニとユアネスと繋がったから生まれる曲もあるんじゃないかなとかも勝手に楽しみにしてます!

武市:それめっちゃおもろいですね…。プレッシャーですけど(笑)。

――モルカルがステージに立って、お客さんと共有した景色が次の新しいモルカルの音楽になるかもしれないですね。

樋口:ほんとに。それってすごく点と点が線になってるじゃないですか。だから、そういう点が線になっていく瞬間をお客さんには目撃してほしいですね!

DJ樋口大喜(FM802)×武市和希(mol-74)撮影=森好弘

DJ樋口大喜(FM802)×武市和希(mol-74)撮影=森好弘

取材・文=大西健斗 撮影=森好弘

イベント情報

GLICO LIVE“NEXT” 
■2018/07/24(火) OPEN=18:30 / START=19:00
■会場:Music Club JANUS[http://www.arm-live.com/janus/]
■出演:マカロニえんぴつ / mol-74 / ユアネス
■MC:樋口大喜(FM802)
■料金:2,000円 (税込・スタンディング)
※16歳未満入場不可
※入場時ドリンク代別途必要
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