インディーズゲームのススメ第9回 ドット絵で描かれた懐かしい雰囲気の探索アクションゲーム「洞窟物語」

コラム
アニメ/ゲーム
2015.10.24
 (C)開発室Pixel 2004

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多くの人に愛されて広がリ続ける「洞窟物語」

 インディーズゲームについて注目していること、もしくはオススメなインディーズゲームを紹介するインディーズゲームのススメ。今回はインディーズゲーム好きの間では人気の高い作品「洞窟物語」を紹介します。

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 「洞窟物語」とは開発室Pixelが制作したフリーゲームで、2004年11月より配信されています。本作は記憶喪失の少年となって、目覚めた洞窟の中を探索する2Dの探索アクションゲームです。全てがドット絵で描かれた世界に探索の中でアイテムや武器を入手することで少しずつアクションが増えていき、イベントをこなすことで少しずつ行ける場所が増えていく点は、任天堂の探索アクションである「メトロイド」やコナミのアクションゲーム「悪魔城ドラキュラ」を思わせます。

(C)開発室Pixel 2004

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 本作は日本よりも海外の製作者さんが多いインディーズゲームの中でも日本人製作者さんが制作しており、根強いファンがいる作品です。その人気の高さから本作はフリーウェアのPCゲームとして以外にもさまざまなところに移植されています。非公式ではあるものの有志の方がMac OS版や英語化パッチを作成したり、Wiiウェアに洞窟物語に新しい主人公のモードなどの追加要素を加えた「Cave story+」が配信されたりしています。ただし、この追加要素を加えたwiiウェア版は残念ながら日本では未発売なため日本のファンはやきもきしていましたが、そんな声に答えたのか、後にwindows&MacOS用に本作「Cave story+」が移植されました。

 また、本作の移植は純粋な移植だけに留まらず、本作の世界観を3DCGで新しくリメイクした3DS版「洞窟物語3D」がパッケージソフトとして日本一ソフトウェアから発売されました。ただし、これにともなってそれ以前に配信されていた3DSダウンロード版が配信停止になってしまったのは少し残念に思っていましたが、先月の終わりに3DSダウンロード版が配信され、再び3DSで純粋な「洞窟物語」が遊べるようになりました。

 このように、インディーズゲームでありながらとても広く展開されている脅威のゲームです。今回はそんなインディーズゲーム好きの間で広く愛される「洞窟物語」について語っていきたいと思います。

80年台のゲームを思わせる懐かしいゲームデザインと重厚なシナリオ

 本作は2004年のゲームではありますが、全編ドット絵で描かれていることと、80年代を思わせる独特な音源、会話パートなどはあるものの自分は喋らず、シナリオも完全には語らず、ある程度プレイヤーの解釈に委ねていることなどから、レトロゲーム的雰囲気があります。

 BGMはオルガーニャという製作者さん自らが制作した独自の音源を使用しており、そのレトロゲーム風の雰囲気にすごくあっていて素敵です。特に、物語中盤から終盤にかけての本作の盛り上がりは半分位はこのBGMによって築かれているといっても過言では無いでしょう。物語中に初めて洞窟内部ではなく、月の見える外部に到達した時に流れるつきのうたは、その物悲しい曲調と、初めて外部に出れた開放感から、言いようのない感動を与えてくれます。そしてそこを乗り越えた先にある最終エリアでタイトル曲が流れる演出に、シナリオと合わせてクライマックスが近いことをプレイヤーに教えてくれる良い演出です。このように、最低限の事しか語らないゲームスタイルでありながら、その演出の絶妙さでプレイヤーの心理を高めてくれるのが本作の大きな魅力です。

(C)開発室Pixel 2004

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 その他洞窟物語を語るうえで欠かせない要素としては魅力的なキャラクターが挙げられます。本作の探索地の原住民であるミミガーは白い体に大きな耳で、人型のウサギ風の可愛らしい見た目をしています。そんな見た目のくせに何か強面の雰囲気を醸し出しているキング、強気だけど弱い点が微笑ましいスー、優しくてか弱いトロ子、主人公と同じ機械の少女カーリーと個性豊かなキャラクターが多数登場します。特にトロ子は出番こそ少ないですが、言葉足らずな点があって非常に可愛いです。ゲーム序盤で聞ける「このやんろ~」は本作の癒やしポイントの一つです。また、本作は全体画面に対してキャラクターがかなり小さく描かれています。これによって探索する舞台の広さを表現されており、洞窟という閉塞的な環境でありながら窮屈さを感じず、広い世界を冒険している感覚を楽しむことができます。

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 このように、比較的ゆるキャラ的なかわいいキャラクターたちがその小さな体でテクテク動いているさまが見ていて微笑ましいのが「洞窟物語」の魅力ですが、本作のシナリオはそんなキャラクターに反してかなりシリアスです。その白い体に大きな耳が犬的で可愛いミミガーたちは強制的に凶暴化させられ無慈悲な死を迎えさせられたり、主要キャラクターも主人公の選択次第では死んでしまったりするなど、全く容赦がありません。本作はマルチシナリオで、主人公の行動次第である程度生存させられますが、その条件が非常に見つけづらいもので、初見では気付かずスルーしてしまうことも多いでしょう。一度ゲームをクリオすると真のエンディングを見るためのヒントが見られるので、ある意味2週プレイするのが前提みたいなところがあります。あの条件はヒント無しではかなりきつい気がします。もし本作がヒント無しで難解な分岐条件を要求してきたとしても、それもある意味レトロゲームらしいといった感じではありますが、製作者さんはそこまで鬼ではなかったようで一安心です。

(C)開発室Pixel 2004

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成長しそして退化する武器を使いこなす

 最初はジャンプしかできない非力の存在である主人公ですが、新しい武器を入手することで、段々と強力な存在になっていきます。射程は短いものの威力が高めのブレードや、地面をバウンドする為、地面にいる敵に攻撃しやすいファイアーボール、弾数制限はあるものの、威力がとても高いミサイルなどたくさんの武器があり、これらの武器には敵が落とす経験値ポイントを入手することでレベルアップさせられます。なので、ボスに備えて有効そうな武器を使うために各武器のレベルを上げるか、一つの武器を使い込むか、人によってプレイスタイルを変えられます。ただ、武器はダメージを受けると経験値が減りレベルがダウンしていくので、一つの武器を使い込む場合はボス戦での被弾に注意しましょう。

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 本作はアクションゲームとして難しすぎずもなく簡単すぎずもなく、非常にバランスよくなっています。まあ初見殺しポイントなんかは若干多めですが、ボスは適当にごり押ししているだけでは厳しいですが、何度か挑戦してパターンを構築すれば勝てるので、倒す達成感を誰でも味わえる作りになっているため、万人にオススメしやすいゲームに仕上がっています。

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 なのですが、誰にもオススメできる手ごたえがありながらも優しい作りのアクションゲームをしているのは、真のエンディングを目指さない場合のお話です。真のエンディングを迎えるための最終エリアである聖域は、ここまでの冒険を過去にする悪夢のような難易度をしています。強制的に武器レベルを1にされ、次々にわき続ける敵と降り続けるブロック、回復施設やセーブポイントなしに中ボスと3形態あるラスボスとの連戦と、ここで投げ出したプレイヤーも多かったと思われます。私もこのステージをクリアするまでぶっ続けでプレイし続けていたら、指と手首を軽く痛めてしまいました。このように、万人が真の意味でクリアするには少しハードルが高いですが、このステージ自体が挑戦し甲斐があることと、この先にこのゲームの真のエンディングが待っているため、洞窟物語をプレイする全ての人に、できれば投げずにプレイしてほしいなと思います。その苦労に見合うだけの作品だと私は思います。

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