KIRINJI“楽しい曲”で踊らせ続けたライブハウスツアーファイナル

レポート
音楽
2018.7.29
KIRINJI(撮影:立脇卓)

KIRINJI(撮影:立脇卓)

KIRINJIが7月26日に東京・渋谷CLUB QUATTROでライブハウスツアー「KIRINJI TOUR 2018」の最終公演を行った。

KIRINJIはニューアルバム「愛をあるだけ、すべて」を携えたこのツアーで、福岡、大阪、愛知、東京の4都市でライブを実施。このうち東京は渋谷CLUB QUATTROでの2DAYS公演となった。ツアーメンバーは堀込高樹(Vo, G)、千ヶ崎学(B, Vo)、楠均(Dr, Perc, Vo)、田村玄一(Pedal Steel, Steel Pan, Vo)、弓木英梨乃(Vo, G)の5人におなじみの矢野博康(Perc)、そして今回初めての参加となったKan Sano(Key)を加えた7人編成。「愛をあるだけ、すべて」リリース時のインタビューなどで高樹が予告していた通り、7人はダンサブルなサウンドを軸に全19曲を届けた。

アルバムのインストナンバー「ペーパープレーン」が流れてミラーボールが回ったオープニングを経て、ステージに垂らされた「愛をあるだけ、すべて」ジャケット柄の幕にメンバーの影が写し出される。幕が落ちるとまばゆい光の中に立つ7人の姿が露わになり、「明日こそは/It's not over yet」でライブがスタートした。夏らしいひまわり柄のシャツを着た高樹が大らかな歌声で会場を包むと、弓木は力強いギターリフで観客を圧倒。田村も躍動感たっぷりにスティールパンを鳴らし、序盤からフロアを揺らしていく。KIRINJIは千ヶ崎と楠が小気味いいビートを刻んだ「非ゼロ和ゲーム」、弓木がキュートな歌声と、ギャップのある巧みなギターソロを披露した「Mr. BOOGIEMAN」を続けて、会場に楽しげな空気を充満させた。

高樹は最初のMCで「楽しい曲を中心に持ってきました」と告げ、「昨年はアルバムは出さなかったんだけど、NegiccoとかRHYMESTERとかと仕事をしてて。なのでRHYMESTERの曲をやります」と次曲を紹介。楠のどっしりとしたビートからRHYMESTERの最新アルバム収録のコラボ曲「Diamonds」を届けたKIRINJIは、そのままの勢いで高樹がアイドル育成ゲーム「アイドルマスター ステラステージ」のアルバム「THE IDOLM@STER MASTER PRIMAL POPPIN' YELLOW」に提供した「LEMONADE」を弓木のボーカルでさわやかに演奏した。このブロックでは「fake it」「雲呑ガール」「悪夢を見るチーズ」と遊び心あふれるナンバーが続くも、その雰囲気をがらりと変えたのはフォーキーな「この部屋に住む人へ」。オレンジ色のライトに照らされる中、高樹と弓木は温かなアンサンブルに伸びやかな歌声を重ねた。

MCで高樹は「アイドルマスター」での楽曲制作について触れようとするも、説明が難しいため共に曲提供をしていた矢野へとバトンパス。矢野は「例えば“アイドルマスター高樹”っていうのがいるとするじゃないですか。『高樹はそういうの歌わないんじゃないかな?』っていう考えがある中でのキャラクターソングのような制作で。勉強になりました」と独特の説明方法でオーディエンスを笑わせた。さらにここではメンバー紹介が行われ、最年長の田村が「“時間がない”田村です!」とブラックジョークで挨拶したり、初めてのライブ参加となったSanoが「そこ(フロア)で観ててこのバンド最高だって思うでしょ? ここ(ステージ)来るとね、もっと最高なんですよ」「次のツアーも呼んでください! 堀込高樹という大天才の曲を一緒にできて本当に幸せでした」とKIRINJI愛を爆発させたりと、和やかな空気が広がる。

メンバー紹介が進むにつれて各メンバーはハイテンションになっていったが、高樹は「これからちょっと集中しなきゃいけないから。ニコ生で中継されてるからって、浮かれすぎじゃないか?」とみんなをしずめ、バンドは「この部屋に住む人へ」と同じく7thアルバム「7-seven-」収録曲の「タンデム・ラナウェイ」で丁寧にアンサンブルを紡いだ。観客が体を揺らしながらじっくりと高樹の歌と言葉に聴き入った「時間がない」から、トロピカルなアレンジの「僕の心のありったけ」へとつないだKIRINJIは、ダイナミクスを付けた息ぴったりの演奏でさらにオーディエンスの心をつかんでいく。田村がハンドマイクでラップした「The Great Journey」では高樹の「満室!」「どこも満室!」の声にフロアから大歓声が上がり、弓木もラップを繰り広げた「AIの逃避行」でその熱気はさらに高まっていった。ここまでオーディエンスを大いに踊らせたKIRINJIが最後の曲として選んだのは、弓木がボーカルを取るメロウな「After the Party」。彼女はステージの端から端まで移動し、ファンと目を見合わせながらエモーショナルに歌声を響かせた。

グッズ宣伝で幕を開けたアンコールでは、なぜかサポートの矢野がサコッシュを宣伝したり、弓木が随分早めの“一生のお願い”を使ってクラッチバッグを薦めたりとここでも和やかなムードでトークが展開された。そして1曲目として披露されたのはキリンジ時代のナンバー「まぶしがりや」。高樹は自身の爪弾くアコースティックギターや、ブラシを使った楠の繊細なドラムサウンドに乗せて柔らかな歌声を広げていく。そのまま最新アルバム収録の「silver girl」へとなだれ込むと、高樹はオートチューンを効かせたボーカルを披露。最後はメンバー同士目を見合わせながら、Sanoのシンセサウンドをフィーチャーしたセッションを繰り広げてオーディエンスを熱狂させた。最後に高樹は「ありがとうございました。これからもよろしくお願いします」と手を振ってステージをあとにした。

なおKIRINJIは11月に東京と大阪でメジャーデビュー20周年記念ライブ「KIRINJI 20th Anniversary Live『19982018』」を行う。このライブには現編成のKIRINJIのほか、元メンバーの堀込泰行、そして堀込高樹と堀込泰行によるオリジナル編成のキリンジが出演。2人編成のキリンジがライブを行うのは約5年ぶりとなる。公式ファンクラブ「ナチュラルファウンデーション友の会」では、会員を対象とした先行予約が8月20日12:00にスタートする。

KIRINJI「KIRINJI TOUR 2018」2018年7月26日 渋谷CLUB QUATTRO セットリスト

SE ペーパープレーン
01. 明日こそは/It's not over yet
02. 非ゼロ和ゲーム
03. Mr. BOOGIEMAN
04. Diamonds
05. LEMONADE
06. fake it
07. 雲呑ガール
08. 悪夢を見るチーズ
09. この部屋に住む人へ
10. タンデム・ラナウェイ
11. 新緑の巨人
12. 時間がない
13. 僕の心のありったけ
14. 嫉妬
15. The Great Journey
16. AIの逃避行
17. After the Party
<アンコール>
18. まぶしがりや
19. silver girl

KIRINJI 20th Anniversary Live「19982018」

2018年11月9日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
2018年11月15日(木)東京都・チームスマイル・豊洲PIT
2018年11月16日(金)東京都・チームスマイル・豊洲PIT

音楽ナタリー
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