家入レオ アップデートし続ける彼女が「気合いが入った」と語る最新作「もし君を許せたら」インタビュー
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家入レオ
昨年の日本武道館公演を新たなスタート地点に、アーティストとしてさらなる進化を見せながら、女優デビューや朗読劇の舞台出演など、他ジャンルにも挑戦。表現の幅を広げている家入レオが、8月1日、ニューシングル「もし君を許せたら」をリリースした。表題曲は現在放映中のフジテレビ系月9ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』の主題歌としてお茶の間に流れているので、すでに耳にしている人も多いだろう。家入の繊細な歌が深い余韻を残すナンバーだ。カップリングには自身作詞作曲による「めがね」、フジテレビ系『ライオンのグータッチ』のテーマソングであり今年5月に配信シングルにもなっている「あおぞら」を収録。「気合いが入った」という今作について、今年下半期に向けて、常に自身をアップデートしている彼女の今の言葉をお届けする。
――まずは7月1日に東京国際フォーラム ホールAでファイナルを迎えたツアー『家入レオ 6th Live Tour 2018 ~TIME~』の感想から聞かせてもらえますか?
あのツアーは“歌”を改めて真ん中に置きたいという思いがあったんです。だから(自分では)楽器も演奏せず。バンドメンバーの演奏に乗せて、自分の歌声を七変化させたツアーだったなと思います。
――まさに七変化でしたよね。レオちゃん自身は衣裳を替えるわけでも、何か特別な動きを見せるわけでもないのに、曲によってレオちゃんが無垢な少女に見えたり、経験豊富な大人の女性に見えたりする。歌だけで景色や見え方がガラッと変わっていく、その感じが驚きで。私はそれを“家入マジック”と勝手に名付けたんですけど(笑)。
あははは! 嬉しい! 頑張り甲斐があります(笑)。でも今回はほんと、学ぶものが多いツアーでしたね。バンドメンバーと“音作りはもっとこうした方がいいんじゃないか”とか、密にコミュニケーションを取りながらやっていけたので、みんなで作ったツアーという実感があるんですけど、その中でメンバーの音楽に対する姿勢を目の当たりにして、すごく刺激を受けたんですよ。
例えばギターの名越由貴夫さんとか、あの方って成功体験にしがみつかないんです。“今日のあのギターソロ、すごい良かった!”なっても、次の公演ではまた新しいギターソロになっている。私は今まで、何かを受け入れられると、それをベースに良くしていく、というふうにやってたんですけど、名越さんは成功しても、それを根っこから入れ替えちゃうんです。しかも毎回それを涼しい顔で実践されているから、“すごいなぁ”と思って。ドラムの玉田豊夢さんにしても、ファイナルの日にいきなりキックを替えたりして。ファイナルは収録も入っているのに、よくそれを替える勇気があったなぁって。いい意味で、みなさん凄まじいものがありましたね。
家入レオ
――レオちゃんの場合、何かを得ると必ずそれを作品やライブに繋げていくので、今回の刺激がどう活かされるのか、早くも次が楽しみです(笑)。さて、そのツアーファイナルでもサプライズ初披露された今回の新曲「もし君を許せたら」。フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』の主題歌にもなっているこの曲は、どんなふうに生まれたんですか?
今年の春、私は初めて長期のお休みをいただいて、一人でロンドンに行ったんですね。そのロンドンで“自分は楽曲制作とジャケットとミュージックビデオとライブ、この4本柱をもっと強くしていくべきだ”と思って。で、日本に帰ってきたらジャストタイミングでこのドラマの主題歌のお話をいただいたので、かなり気合いの入った制作になりました。
――ちなみにロンドンには何日間ぐらい行ってたんですか?
1週間くらいです。あっちでベビーシッターをしている友達がいて、そこの家庭に私も泊まらせてもらって、ロジャーっていう4歳の男の子をインターナショナルスクールみたいなところに連れて行ったりとか。向こうは一人一人が独立してるから、子供のことも子供扱いしないんですよね。でも私は固定概念で普通に子供扱いしてしまって、お迎えに行った帰り道、「今日は家に帰ってどんなおやつを食べようか?」って話したら、「今は僕と話してるんだから、僕との時間を大切にして。おやつは食べる時に自分でアイスとかチョコレートを選ぶから」って言われて、ハッとして「あぁ……OK!」とか(笑)。
あと、友達の恋人がロンドンにいて、その人と観光したんですけど、「明日はどうするの?」って聞かれて、「私は明日10時に美術館に行こうと思ってる」って言ったら、「僕は明日11時まで寝てるから、その後なら一緒に観光できるよ」みたいな。日本だったら相手に合わせて「じゃあ僕は9時に起きて10時に合流するよ」ってなると思うんですよ。でも向こうでは“自分がどうしたいか”が第一で、YES / NOもハッキリ言う。そういうのは私の性に合ってて、いいなぁと思いましたね。なんか、発見がいっぱいあったなぁ。
――そんな発見の多いロンドンから帰ってきて制作したのが、今回の「もし君を許せたら」。
そうです。ドラマの主題歌ということで、台本を読ませていただいて、自分でも曲を作ったり、同時に他のクリエーターの方達と作ってた曲も何曲かあったんですけど、やっぱりいい作品を残したいっていうところで、自分の作詞作曲にはこだわってなかったし、このタイミングならこの曲が一番ドラマに合うんじゃないかなと思って、これがいい、と。ただ、jazzin’parkのお二人が書いてくださったこの曲は最初、仮歌詞も付いてて、それが結構スタイリッシュだったんです。それはそれで素敵だったんですけど、自分の作品として考えた時に、ここでは人間の儚さとか繊細な部分を歌いたいなと思って。そういうのを描くのがお上手な杉山(勝彦)さんにお声掛けしたら、いいお返事をいただいたので。だから、自分の意志や考えと、jazzin’parkさんの持つスタイリッシュさ、杉山さんのまごころみたいなところが融合した、自分らしい曲になったなと思います。
――この歌詞のテーマっていろんな解釈ができると思うんですが、レオちゃんが意図するところは?
私は虚無を歌いたかったんです。誰でもふと“自分は誰なんだろう?”って思う瞬間があると思うんですよ。自分は空っぽだなぁとか。そういう時に浸れる曲にしたいなと思って。だから、敢えて表現しないことが表現になるような曲にしたいっていうことをお伝えして、歌い方もいつもだったら相手の心に言葉やメロディがずっと残るように、印鑑を押すように歌ってるんですけど、今回はただ通過させるような、こぼれ落ちていくような感じで歌いました。
――歌詞自体繊細ですけど、それを表現するレオちゃんの歌もすごく繊細ですよね。
このレコーディングはちょうどツアー中で、制作の状況もかなり追い詰められていたんですよね。週末は外に向かって開いて、制作になるとまた内に潜っていくっていう。そのギリギリの中で自分自身どんどん追い詰められながら制作してたので、人間の業みたいなのが歌えたのかもしれないなって思います。
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――一転、レオちゃん作詞作曲の「めがね」は、リラックス感のある明るい曲です。
今回、収録曲は「もし君を許せたら」と「あおぞら」が先に決まっていて。この2曲は全く違うテイストながら、どちらも心構えが必要な2曲だったので、もう1曲はポップにラフに聴けるものがあるといいなぁと思ったんです。そう思った時に、ちょうど1年前にピアノで制作したこの曲の原型があったので、それに今回この歌詞を書いて、ツアー中だったからメンバーに演奏してもらい、アレンジもピアノの(宗本)康兵さんにお願いして。すごくいいセッションで録れたなと思います。
――歌の主人公は男性ですけど、レオちゃん自身もプライベートでは分厚い眼鏡をかけているんだとか。
そうなんですよ。乱視と近視がスゴすぎて、薄型レンズにしても目があるんだかないんだかわかんない、みたいになっちゃうんです。だから、その姿はできるだけ人にお見せしたくなくて、どんなに朝早くても夜遅くてもマネージャーさんにも見せたことがないんですけど。でも、そういう自分が嫌だと思ってる姿も受け入れてくれる場所があるっていいなぁと思って。そのエピソードをちょっと爽やかでポップな曲に仕上げました。
――あるがままの自分を受け入れてくれる人がいて、その人と一緒に笑っていられる日常の一コマって、ドラマチックな恋愛よりも実は幸せだったりしますよね。この曲を聴いていて、ふと思ったのは、レオちゃんの理想の恋愛像ってどんなものなのかな?と。
私は、お互い夢中になれるものがあるといいなぁと思っていて。そうすると自分もさらに頑張れる。常に一緒、みたいな感じじゃない方がいいなと思いますね。
――女の子って、常に一緒にいたいとか、LINEはすぐに返して欲しい、みたいな人が結構いますけど。
私はないなぁ。まぁ連絡は取りたいと思いますけど、会いたい会いたい、みたいなのはないです。
――では結婚願望は?
私は結婚より子供が欲しいっていうタイプなので。でも結婚も、いつかはしたいなぁと思います。
――そうなんですね。またちょっと「めがね」に話を戻すと、この曲ってハッピーなリラックス感があるんだけど、1ヶ所、おや?と思うところがあって。それは<先週急に君の親友から/これから会える?と連絡が来た>っていう。
ちょっと修羅場を匂わせてますよね(笑)。なんかこう、リアル感もあるといいなと思って、そういう要素も入れてみました(笑)。
家入レオ
――なるほど(笑)。そして、フジテレビ系『ライオンのグータッチ』のテーマソングになっている「あおぞら」は、いきものがかり水野良樹さんとのコラボ作です。
水野さんの制作の方と、私の制作をやってくださっている方が近しいところにいる関係で、こういう形が実現したんですけど。メロディは結構前からいただいていて、私も最初ラブソングを歌詞にしていたんですよ。でもタイミング的に今お届するのは違うなと思って、ちょっと置いておいたら、『ライオンのグータッチ』のお話が来て“子供達に向けて曲を作りましょう”と。その時に水野さんのメロディはいろんな景色を連れてきてくれるので、これに歌詞を書きたい!と思って、歌詞を書き直してできたのが、この「あおぞら」なんです。水野さんのメロディって聴く人を選ばないし、ライブで歌うとさらにどんどんいいものになっていくので、ほんとにすごい人だなぁって改めて思いました。
――この曲って慈愛に満ちてますよね。
自分より小さい子に向けて曲を書くのって初めてだったんですけど、書いてみて“母性ってたぶんこういうものなのかなぁ”と思って。だから、新しい扉がまたひとつ開いたなっていうのは思いましたね。
――そんな3曲3様の強力な今作。これは今年下半期第一弾になりますけど。
あ、そうか! 8月だともう下半期ですもんね? 私、お盆が来たらお正月!と思ってるんで(笑)。
――あははは。一瞬!みたいな(笑)。今年、ここまでを振り返って、どんな上半期でしたか?
アルバムも出させていただき、ロンドンにも行き、ツアーもやらせていただいて、充実してたなと思います。で、私、出会いの運がありすぎて、新しい情報がポンポン入って来るから、価値観もどんどん変わるんですよね。それをちゃんと作品に残していきたいなと思っていて。だから今、制作意欲がまたさらに高まっています!
――いいですねぇ! では今年下半期、これをやりたい!というのは?
それこそ出会いの運があって……東京に来てから“いいな”と思うアーティストさんにすごく出会うので、そういう方達をお呼びしてライブをできたらなって。
――楽しそう! ぜひ実現させて欲しいです。
ですよね! 今年下半期にやるのは無理でも、それを計画して発表ぐらいまではできたらなと思っています。頑張ります!
取材・文=赤木まみ 撮影=菊池貴裕
リリース情報
初回盤A
初回盤B
通常盤
《通常盤》 CD VICL-37405 ¥1,200(+tax)