いま注目のギャラリー新宿眼科画廊 ディレクター・たなかちえこさんにインタビュー

2015.11.17
インタビュー
アート

新宿眼科画廊外観 撮影=佐々木暁信

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美術展のチラシを一覧できるアプリ”チラシミュージアム”ではチラシの閲覧数を元に、話題の展覧会をチェックすることができる。上位の展覧会を確認してみると、その多くが新宿眼科画廊で行われていた。SPICE編集部ではそんないま注目のギャラリー新宿眼科画廊の魅力に迫るべく、立ち上げメンバーであり、現在はギャラリーの顔として広報をご担当されているたなかちえこさんにお話を伺った。


どのような経緯で新宿眼科画廊をはじめられたのですか?

「もともと学生の頃は絵を描いていて、制作する側だったんですが、グループ展の時なんかに企画したりまとめたりの役がいつも私で、徐々に企画の方をメインに活動する様になったんです。そうこうしているうちに仲間で集まってイベントができる場所を持とうという話になってこの場所を借りました。だから、はじめはギャラリーを開くという目的ではなかったんですよ。当初は知り合いが展示して、それを更に知り合いが見に来るっていう内輪の場所でした。でも気づいたら徐々に知らない方が出入りするようになって。最初は奥の一部屋だけ借りてひっそりやっていたんですけど、道路に面した広い部屋に入っていた写真屋さんが撤退して、そのタイミングで、じゃあそこも借りてギャラリーやろうか!みたいな感じで。当時は本当どうなるかわからくて続く気もしてなかったんですけど、オープンしてすぐに、すごい幸運なんですが、今敏監督っていう有名なアニメの映画監督が展示で使ってくださって。あんな有名な方に使っていただけるなら頑張ろう!って思いました。その経験が大きな転機でしたね。」

何故新宿という街を選ばれたのでしょうか?

「他のギャラリーとは一線を画したいという思いがありますね。作り手は作ることに専念してもらって、うちは広報だったりとか、お客さんに来てもらったりとか、販売も壁のリテイクとかもしっかりやって、棲み分けというかお互いの仕事をきっちりできるようなギャラリーにしたいなと思って。あとは文化的に新宿ってアートとか文学とか、ゴールデン街なんかもそうですけど、いろんな文化が入り混じっている場所っていうのにすごく興味があって、ジャンルを絞らずにいろんな人たちが表現できる場所にしたいっていう。他とは違うことをこの街でしたいなっていう気持ちがすごくあったからですね。」

新宿眼科画廊 展示の様子

眼科画廊というかなり変わった画廊名ですが、どのような理由があるのでしょうか?

「元の意味としては、1960年代前半に、新橋に内科画廊っていう画廊があったんですよ。そこは本当に内科の病院だったところで。開業されてたお父様が息子さんのインターン期間中に亡くなってしまって、インターンが終わってから継ぐまでの二年間がもったいないという理由でギャラリースペースをやっていた場所だったんです。そこに当時前衛って呼ばれていたアーティストの方たちが出入りするようになって、他のギャラリーではやらないような展示をしたり、宴会したり、っていう様な場所になっていたそうなんですね。そういうエピソードやこの時代の雰囲気だったりとか、状況にもすごく影響をうけていたので、引用させていただきました。新橋は新宿に、内科画廊は…まあここは全然病院でもなんでもないので、目に良い場所っていう意味で眼科にして、新宿眼科画廊になったわけです。変な名前なので会話のきっかけになるし、一度聞いたらみなさん覚えてくださるのでとても気に入っています。」

アヴァンギャルドやサブカルといったテーマを扱う展示が多い様にお見受けしますが、意図的に選ばれているのでしょうか?

「そうなっちゃったんですよね、集まっちゃうんです(笑) 意図的に選んではいませんよ。もちろんそういう前衛とか、サブカルはすごく好きで、寺山修司さんとか赤瀬川原平さんとか​大好きだったんですけど、だからと言って自分のギャラリーでそういう人たちだけ​を選んでやりたいっていうつもりは全然ありませんね。集まってくる人たちがなんとなく嗅ぎ付けて、ちょっと他では展示しにくいようなアーティストの人たちが、ここだったら展示できるかもしれないみたいな感じで集まっちゃってこうなった感じですね。現代アート専門のギャラリーだったり美術館だったり、キュレーターの方からするとここの展示はすごく異色な存在で、展示の内容もその作家も他では見ないようなものが多いと言われます。確かに最近はメジャーなギャラリーや美術館だと人気がある作家を扱う事が多いから、”見たことないものをそこで見つける”という感じではないですよね。でもここでは全然知らないアーティストが結構無茶な展示とかやっていますので……(笑)それに対してポジティブな反響も沢山頂いていて、すごい勉強になるって言ってみんな来てくれるのがすごく嬉しい。だから常に新しいものを提供したいなって思いは強いですね。」

新宿眼科画廊 展示の様子

ろくでなし子さんの一件で眼科画廊を知った方も多いと思いますが。

「ろくでなし子さんはもともと、増田ぴろよさんに紹介してもらったんです。ぴろよさんは最初、グループ展で参加していただいて、面白いし、ここでやるべき人だろうなと思って。その後も何度か展示していただいて、そんな中でぴろよさんが私に、「紹介したい人がいて、すごい面白い作家だから!」っていって連れてきてくれたのがろくでなし子さんだったんです。私ははじめは全く存じ上げなかったのですが、実際お会いしたら丁寧な方で。まあ作品は、結構びっくりしましたけど…(笑)ここでやらなきゃいけないだろうなって思ったんです。それでじゃあやりましょうっていうことになって。ただ、なにか起きるだろうなとは思いました。逮捕とは思わなかったですけど。もとからネットで叩かれたりしてたと伺っていたので、展示したらまたそういう叩かれ方とかはあるだろうなって。ただそういうのはしょうがないことだし、受け入れようと覚悟を決めて、展示することにしたんです。でもいざ展示が始まってみたら、むしろみなさんとても好意的で、感動して泣いちゃったりしてる人とかいて。女性のお客様からは「すごい勇気が出た」って言って頂いたりして。そんな好感を持って見ていただけるんだなって逆にびっくりしました。だから、良い展示ができてよかったなって嬉しかったんですよ。そしたら結果逮捕されて。実は、展示中から​警察が捜査しているらしいっていう話はあったんです。でも信じてなくて。警察ってそんな暇な仕事じゃないでしょって思っていたら、本当に来ていたらしいんですよ。結局5月に展示して、7月に逮捕されて。逮捕された日は1日電話がつながらなくて、これはちょっとおかしいぞと思っていました。そしたら翌日の朝には一斉に報道されて、っていう感じでした。正直こういうことになって最初は、この国どうなってんだって思ってちょっと笑いました(笑)でも結果として、すごい反響で。国内外から作品や彼女についての問い合わせが一気に来て。良くも悪くも、時の人になりましたね。」

今後も同じ様な奇抜な作品を持ち込むアーティストがいるかと思いますが

「絶対いますね。なんかもうここだったらなんでも展示していいんだみたいな感じになっている気配は感じています(笑)でも、当たり前ですけど何でも大丈夫なわけはないです。作家本人も、こちらも真剣に向き合って、ギリギリのところを模索しなければいけないと考えています。でもだからといって、自己規制みたいなことをギャラリーやアーティストがするべきではないとも思っていて。私自身が好ましくないと思う作品やテーマは勿論ありますが、可能な限り柔軟な姿勢で表現者を応援し続けたいと思っていますね。」

今後注目しているアーティストはいらっしゃるのでしょうか?

「沢山います​。でも同じ感じのことはやり続けずに、ギャラリーに直接企画を持ち込んでくれる若いアーティストも多いので、いろいろ出会った中であんまり他ではまだ露出していない人の展示をどんどんやりたいなと思っています。来年の展示の企画の話も既にしているんですけど、いま段々サブカル界隈で知名度が上がって来ていて、でもサブカルでは終わりたくないみたいな人​たちが、もっといろんな人に作品を見てもらうためにはどうしたらいいかっていう話をいろいろしてて。幅広い業種の人たちを巻き込んで、展示をしようって考えてます。他業種の方や企業などにも協力してもらったり、クラウドファウンディングしたりとか。なのでサブカルにとどまらず、今後はもっといろんな人により足を向けていただける展示をしたいなと思って動いています。」

—ちなみに今回”チラシミュージアム”で話題の展覧会を多く行われていたということがきっかけでお話を伺いに来たわけですが、集客をする上でチラシという媒体はどの様に機能しているとお考えでしょうか?また、その様な広報活動にギャラリー側からどの様なアプローチが可能であるとお考えですか?

「現状、もっと広報に力を入れていかないとなぁと思っています。アプリのチラシミュージアムとかも存じ上げなかったんですよ。だけどチラシミュージアム見て来ました!っていうお客様が結構いて、ああみんな見ているんだなっていう。現代アートの作り手って来てもらうことメインに考えている人たちが少なくて、その分伝わりにくさもあって、だからこそビジュアルやイベント的なことが重要になってくる。アーティスト自身が自分をセルフプロデュースして発信している部分もあるので、それをいかに広報としてお手伝いできるかっていうのが課題ですね。」

「美しすぎるSE」 展(チラシミュージアムより)


インタビューの最後に「ここ、作家さんからは眼科じゃなくて動物病院って呼ばれてるんですよ」と笑顔で話されたたなかさん。厳しいアートの世界で、表現に迷い、あぶれそうになった動物たちを、優しい笑顔で包み込み、胸の奥にメラメラと燃えたぎるアヴァンギャルドの精神で、既存のアート界に敢然と立ち向かうそのスタイルにとても好感を覚えた。これからのギャラリー、そしてキュレーションのあり方の未来系を見たように感じた。

たなかちえこさん

インタビュー=佐々木暁信

新宿眼科画廊
営業時間:12:00~20:00(展示最終日~17:00) / 木曜定休
所在地:〒160-0022 東京都新宿区新宿5-18-11

 

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