カムカムミニキーナ25周年記念第二弾『ダイナリィ>』藤田記子・夕輝壽太・莉奈 座談会

2015.11.10
インタビュー
舞台

夕輝壽太・藤田記子・莉奈 (撮影/大倉英揮)

謎の記号「>」が書かれた祖母の日記、それを見つけた少女が紛れ込むのは帝都東京と旧都京都──。

カムカムミニキーナ旗揚げ25周年を記念する第二弾『ダイナリィ>』は、謎めいた文字をキーワードに、探偵劇団や妖狐、陰陽師などが蠢く松村ワールド。いつも以上にイメージが飛翔するスケール大きな世界で、さらに今回は「サラウンドミニキーナ」というスペシャルな仕掛けもあり、バックステージの役者と劇中の登場人物が混在、虚実あいまみえる舞台空間となる。

そんな舞台に客演する夕輝壽太と莉奈という若手俳優2人、そして劇団の看板女優・藤田記子に、作品のこと、カムカムミニキーナの舞台について語ってもらった。

 

(撮影/大倉英揮)


 
わからないほど何かがわかる感覚になる
 
──今回の作品の内容を聞いて藤田さんは、どんな感想を持ちましたか?
藤田 いつもながら松村さんの発想はどこまで広がるのだろうという感じですが。今回、お稲荷さんや狐というキーワードが出てきますが、以前『燻し銀河』(99年)という公演で狐憑きとか狐の嫁入りとか出てきたことがあって、松村さんの中では何か思い入れのあるモチーフなんだろうなと思っています。
 
──まだ稽古前の段階ですが、それぞれ役柄を教えてください。
夕輝 探偵劇団の劇団員役で出演させていただきます。ですが、狐に憑かれると軍人へと変えられてしまいます。
莉奈 私は物語の発端となる女の子で、祖母の日記を見つけてルーツを知りたくて、劇団に探偵を依頼するんです。
藤田 私はとにかく色々な役だといわれています(笑)。いつもと同じです(笑)。

 
──客演の夕輝さんと莉奈さんは、カムカムミニキーナとはそれぞれ縁があるのですね。
夕輝 僕はちょうど1年前に『G(ギガ)海峡』という作品に出させていただきました。舞台は8年ぶりということもあり、ただでさえ必死なうえに、独特の松村さんワールドですから、わけがわからないうちに終わってしまったのですが、舞台の面白さがわかったような気がします。役者として大きな経験をさせていただきました。
莉奈 私は松村さんの演出された『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(12年)というミュージカルに出演させていただいて、コメディでしたしお芝居が大切な作品でしたので、本当に手取り足取り教えていただいたんです。ミュージカルでもこんなに人間くさくできるんだということが新鮮で、もっと松村さんの世界を知りたいと思って、カムカムの舞台を拝見するようになったんですけど、すごくわからない世界が広がっていて(笑)。でも、わからなければわからないほど何かがわかるような感覚になって、それがとても好きなんです。ですからその舞台に出られるのは嬉しいのですが、ちゃんとついて行けるか、その不安のほうがまだ大きいです。

 
──その出演作品ではそれぞれ好評で、『G海峡』の夕輝さんは、逃亡犯という難しい役でした。
夕輝 偶然なのですが南米移民という背景があって、ブラジル出身の僕と重なる部分もあるので入りやすさもあったし、感じることが沢山ありました。ところどころわかりすぎて苦しいこともあったくらいで。

 
──公演の稽古などで印象的なことは?
夕輝 まず自分で色々動いて、そこから足したり引いたりして決めていくという稽古でしたが、終盤でポルトガル語を入れてみようというアイデアも出てきて、松村さんと相談しながらそういう挑戦もさせていただけたのが楽しかったです。ワークショップみたいなものもあって、そこで自分が考えたことを出したりもしました。

 

(撮影/大倉英揮)


 
アイデアを出し合うなかでイメージが広がる
 
──ワークショップというのはカムカムの芝居の共通言語を持つためですか?
藤田 というより作品のキーワードをもとに、どんなことができるか探っていく作業ですね。『G海峡』では縄文とか縄で、それを使ってどんな表現ができるかというのをやりました。『スワン・ダイブ』は柱が出てくるので、柱を使ってどんな動きができるかとか、いわゆるネタだしですね。
莉奈 うわー!私にできるか心配です。
藤田 大丈夫。遊びながらやって、それが意外と作品につながって、発見もあるし楽しいですよ。無駄みたいに思える時間でも、一気にイメージがつながる瞬間があったり、自分のやったものが作品に採用されると嬉しいし。そういう試行錯誤する時間を一緒に持つことで、役に関してもイメージが狭まらずにすむので。
夕輝 楽しいですよね。でも僕、本当に沢山考えたんですけど、あまり採用してもらえませんでした(笑)。
藤田 いいのよ、考えることが大事なのだから。私たちも100個出して1つしか採用されなかったりするから。

 
──莉奈さんはそういうワークショップは?
莉奈 全然経験ないです。『リトル・ショップ~』では、間の取り方から台詞の言い方まで、松村さんに何から何まで全部教えていただいたんです。それを台本に書き留めていたので、今もそれを読み返して勉強しているんです。
藤田 その公演のとき、松村さんが「莉奈ちゃんがすごくいいんだよ」とすごく嬉しそうだったんです。たぶんそういうふうに真っ直ぐに受けとめてくれているのが嬉しかったんでしょうね。
莉奈 歩き方からわからなかったんです。今回も初演で原作もないオリジナル作品で、それをまっさらから作ることは初めてなので、どうしたらいいのかと。
藤田 入り口は、とにかく楽しもうと思って入ったらいいのよ。
夕輝 そう。恐がる必要は全然ないから。
藤田 『リトル・ショップ~』もそうだったと思うけど、ぶっとんだシーンでも地に足着けてやることが必要で、外枠よりもまずその役の感情とか関係性をたどっていくと、意外と広いところにパッと出たりするものなんです。舞台装置も、普通の地続きのお芝居だとどこに行くんだろうと考えるようなシチュエーションでも、うちの劇団なら「上に抜ける」いう手があったりするんです。そこがうちのよさで。話も点在してるようで、意外と1つの大きなつながったものに見えてきたり、構造が立体的に一気に立ち上がるときがあるんです。今回の「サラウンドミニキーナ」という仕掛けも、きっとそういう効果があると思います。だから俳優は素直に芝居をやればいいだけなんです。

 

(撮影/大倉英揮)

──夕輝さんと莉奈さんは共演は?
夕輝 ないんです。はじめましてです。
莉奈 私はテレビで拝見しています。
夕輝 ミュージカルに出ていらっしゃるのは知っていましたが、すみません、拝見してなくて。

 
──藤田さんについてはいかがですか?
夕輝 最高です!『G海峡』で共演させていただきましたが、そのとき稽古場で見ながら、面白くてずっと笑っていました(笑)。身体の使い方が上手くて勉強になりますし、身体能力がすごいです。ブリッジまでされていましたから(笑)。
莉奈 私もいつも客席から拝見させていただいて、本当にすごい役者さんだなと思っていましたから、今回はそのすごさをそばで見られるので嬉しいです。こんなに綺麗な方なのに、汚い役とかも平気で演じていらっしゃって、私も面白キャラとかやってみたいので憧れます。
藤田 時々やりすぎるんですけどね(笑)。『スワン・ダイブ』ではヒゲが生えてる人というので、はりきりすぎて長くしすぎてました(笑)。私はどんなに話がぶっとんでいても、共感できる役にしたいんですよね。ファンタジーだといっても、そこにいる人間はリアルでないと。『G海峡』の壽太くんがすごく素敵だったのはリアルだったからで、だからラストシーンなど、紙吹雪なのにまるで光が差し込んでるように見えたのね。それは壽太くんがちゃんと役を生きていたからで。
壽太 ありがとうございます。藤田さんにそう言っていただけると、少しは自信がでます(笑)。

 
──莉奈さんへのアドバイスはありますか?
藤田 もうこの可愛さがあるだけで十分ですよ。今の莉奈ちゃんの感性でぶつかっていって、松村さんを刺激してほしいです。松村さんの芝居へのエネルギーが衰えないのは、出会うものに刺激されているからで、人と出会って、土地と出会って、変化し続けているからで、壽太くんや莉奈ちゃんが今回も刺激になると思います。私も「藤田の芝居は飽きた」とか言われないようにしないと。「お、こうきたか!」と思わせたいですね。

 

(撮影/大倉英揮)

このピカピカした人たちに負けないように
 
──まだ舞台キャリアは浅いお二人ですが、舞台の楽しさはどんなところですか?
夕輝 前回は8年ぶりでしたから本当に緊張したんです。でも、その緊張もだんだん心地よくなっていくというか、やっぱり毎日お客様の前に立つことで受ける刺激がたまらないですね。
莉奈 お芝居って千秋楽まで毎日違うんですよね。その心地よさと同時に恐怖もあって。でもそういう毎日があると、舞台に出てない期間って、「私は何をしていたらいいの?」状態になるんです。公演中は舞台上でも舞台裏でも自分の居場所があって、カンパニーの皆さんとの一体感とか、物語の世界を毎日一緒に作り上げる感覚とか、そういうものは何にも代えがたくて、千秋楽が終わると、寂しくてホームシックみたいな感覚になるくらいなんです。

 
──藤田さんには、カムカムというホームがあるわけですが。
藤田 有り難いです。まさか、こんなに長くいさせてもらえると思わなかったし、劇団もよくここまで続いてきたなと、感謝の思いしかないです。

 
──松村ワールド自体もどんどん進化していますが、劇団員の方たちがそれにちゃんと付いていってますね。
藤田 技術的にもすごく高度になっているので、それに追いつくのは大変ですけど、やっぱり松村さんが新鮮に変化し続けているからみんなも付いていくのだと思います。私は芝居を続ける以上はカムカムにいたいし、うちは日本一の劇団になれると思っているんです。ですから松村さんが先を走っていてくれる限り、がんばって付いていこうと思っています。

 
──カンパニーとしての結束も固いですね。
藤田 私のすぐ下の人でも10何年やっていますし、若手も含めて、ある程度腹くくってやっている人が多いので、そこは心強いですね。それに夕輝くんや莉奈ちゃんのような人たちが、うちの芝居が好きだと言って出てくださることがなにより嬉しいです。でもそれはそれとして、泥くさいところにこんなピカピカした人たちが入ってくるんですから、まさに脅威ですし(笑)、負けていられません(笑)。

 

(撮影/大倉英揮)

──最後に抱負をぜひ。
夕輝 今回二度目で、しかも25周年という節目の公演に出させていただけるのは、僕としても光栄です。まずは自分が楽しんでやろうと思っています。前回よりはちょっと視野を広げて皆さんをちゃんと見て、役も劇団員ということなので、劇団の皆さんを見て研究したいなと(笑)。
藤田 研究材料はいっぱいいます(笑)。
莉奈 私は2年前に松村さんに本当に沢山のことを教えていただいて、本当に尊敬していて、大学も松村さんと同じところに入ったんです。
藤田 それ聞いたら松村さん泣いちゃうと思う(笑)。
莉奈 皆さんのお芝居も好きで、ですから今回本当に嬉しくて、不安もあるんですけど、それを上回る楽しみがいっぱいあります。
藤田 劇団旗揚げ25周年ということで、松村さんと八嶋(智人)さんは、私にとって本当に大きな先輩方で、私や山崎(樹範)さんはその姿を見ながらここまできたんです。前回の『スワン・ダイブ』はその八嶋さんが主役でしたが、今回は山崎さんが主役で、それは私たちの代にがんばれということなのかなと。山崎さんとは1年違いで同期みたいなもので、初めて他の芝居に出た時も一緒で、がんばっていこうと励まし合ったり、一緒に怒られたりした仲で、そんな山崎さんと一緒に、そして素敵な客演の2人にも来ていただいたので、25周年記念公演『ダイナリィ>』を、盛り上げていきたいと思っています。ぜひ楽しみにいらしてください。

 

(撮影/大倉英揮)


藤田記子 (撮影/大倉英揮)

ふじたのりこ○東京都出身。94年からカムカムミニキーナに参加。劇団の看板女優。02年に演劇ユニット「うさこF」を立ち上げ、自らプロデュースをつとめる。劇団以外の最近の出演舞台は、大川興業『The Light of Darkness』碗プロダクション5周年記念公演『碗遊記』など。テレビ『ねまきでアート』(BSプレミアム)にレギュラー出演中。
 

夕輝壽太 (撮影/大倉英揮)

ゆうきじゅった○ブラジル出身。主な出演作品にドラマ『ごくせん』『メイちゃんの執事』『任侠ヘルパー』『鈴木先生』『恋愛ニート~忘れた恋のはじめ方~』『てふてふ荘へようこそ』『モメる門には福きたる』『S-最後の警官-』『花咲舞が黙ってない』など。来年1月公開の映画『さらば あぶない刑事』にも出演。カムカムミニキーナの作品には『G(ギガ)海峡~禍福はあざなえる縄のごとし~』(2013)以来の参加となる。
 

莉奈 (撮影/大倉英揮)

りな○札幌市出身。地元北海道で子役やモデルとして活動。11年ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』のジュリエット役のオーディションに合格し、正式にデビュー。以降はミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』『星めぐりのうた』『ザ・ビューティフル・ゲーム』『オーシャンズ11』『虹のプレリュード』などに出演。TBS系「王様のブランチ」にリポーターとしてレギュラー出演中。
 
【取材・文/榊原和子 撮影/大倉英揮】
 
公演情報
カムカムミニキーナ劇団旗揚げ25周年記念公演第二弾
『ダイナリィ>』~大稲荷・きつね色になるまで入魂~

■期間:2015/11/12(木)~2015/11/22(日)
■会場:座・高円寺1
■作・演出:松村武
■出演:山崎樹範 藤田記子 吉田晋一 松村武/清水宏/夕輝壽太 莉奈 ほか
■問合せ:カムカムミニキーナ 090-6328-1076(平日12時~18時)
■公式サイト:
http://www.3297.jp/dainary/