森美術館15周年記念展『六本木クロッシング2019展:つないでみる』が開催

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2018.9.21
竹川宣彰 《猫オリンピック:開会式》(部分) 2017年

竹川宣彰 《猫オリンピック:開会式》(部分) 2017年

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森美術館15周年記念展『六本木クロッシング2019展:つないでみる』が、2019年2月9日(土)〜5月26日(日)まで、森美術館(六本木ヒルズタワー53階)で開催される。

『六本木クロッシング』は、森美術館が3年に一度、日本の現代アートシーンを総覧する定点観測的な展覧会として2004年以来開催してきたシリーズ展だ。第6回目の開催となる今回は、シリーズ初の試みとして、森美術館の3人のキュレーターのみで共同キュレーションを行い、1970〜80年代生まれを中心とした日本人アーティスト約25組を紹介する。

『六本木クロッシング2019展:つないでみる』は、現代の表現を通じて見えてくる「つながり」に注目する。情報通信技術など、さまざまなテクノロジーが加速度的に進化し、私たちの生活が便利になってゆく一方で、それに起因する新たな問題も浮かび上がっている。価値観の多様性が認められるようになった一方で、オープンであるはずのインターネットが、特にSNSにおいて、意見や認識の同調や共感を助長し、逆説的に閉鎖的なコミュニティを生み出してしまう問題、偏った政治観によって引き起こされる軋轢や拡がり続ける経済格差など、さまざまな「分断」が顕在化しているようだ。

こうしたなか、対極のものを接続すること、異質なものを融合すること、本来備わっている繋がりを可視化することなど、アーティストたちは作品を通じてさまざまな「つながり」を提示する。それらは現代社会に対する批評的な視点や発想の転換でもあり、「分断」と向き合うためのヒントとなるかもしれない。

1:テクノロジーをつかってみる

平川紀道 《datum》 2018年 DLPプロジェクター、コンピューター、スピーカー サイズ可変

平川紀道 《datum》 2018年 DLPプロジェクター、コンピューター、スピーカー サイズ可変

扱うには専門的な知識や経験が必要とされる最新のテクノロジーだが、アーティスト達は最新の技術や理論を独自の方法で使い、これまでにない実験的な作品や表現を創り出す。森永邦彦が率いるファッションブランドのアンリアレイジは、東京大学の川原研究室とコラボレーションし、人の体温でも形状が変化する低沸点液体を使った新しい「形状変化を伴う服」を提案する。平川紀道の《datum》は、ありふれた風景画像を独自のアルゴリズムで変換することで、数学理論的に考え得る多次元空間を表現している。林千歩の映像作品《人工的な恋人と本当の愛》は、最新のテクノロジーを直接用いているわけではないが、人間の短所や情けない性質を備えるAIロボットのユーモア溢れる愛の物語を描くことで、AIや人工生命の最先端の研究と同じように、私たちの生命や人間性の定義について考えることを促している。

林 千歩 《人工的な恋人と本当の愛-Artificial Lover & True Love-》 2017年 ビデオ・インスタレーション サイズ可変、4分(ビデオ)

林 千歩 《人工的な恋人と本当の愛-Artificial Lover & True Love-》 2017年 ビデオ・インスタレーション サイズ可変、4分(ビデオ)

2:社会を観察してみる

竹川宣彰 《猫オリンピック:開会式》(部分) 2017年

竹川宣彰 《猫オリンピック:開会式》(部分) 2017年

社会学的な視点から世の中や身の回りで起こっていることを観察することで、そこに潜む事実やまったく新しい発見を導き出すアーティストの視線に注目する。竹川宣彰の《猫オリンピック:開会式》は、猫たちが無邪気にスポーツの祭典に興じる愛らしい様子を通じて、東京オリンピックに沸く現代日本を普段とは違う視点から考えるきっかけを与えてくれる。田村友一郎の《MJ》は、マイケル・ジャクソンが来日した時のエピソードに着想を得て、現代のポップカルチャーに潜むカリスマや神聖化されるアイコンに迫っている。榎本耕一の絵画は、神話から史実やポップカルチャーを混合したハイブリッドで軽快な作品で、その激しい表現の中には、生きることや何気なく受け入れている日常に対する真摯な視線を感じることができる。

榎本耕一 《脳の居場所》 2017年 油彩、キャンバス 162×130 cm

榎本耕一 《脳の居場所》 2017年 油彩、キャンバス 162×130 cm

3:ふたつをつないでみる

青野文昭 《なおす・代用・合体・侵入・連置「震災後東松島で収集した車の復元」2013》 2013年 収集物、家具、合板、アクリル系絵具、ほか  500×540×180 cm 所蔵:アラリオミュージアム・イン・スペース(ソウル) 展示風景:「あいちトリエンナーレ2013」 撮影:怡土鉄夫

青野文昭 《なおす・代用・合体・侵入・連置「震災後東松島で収集した車の復元」2013》 2013年 収集物、家具、合板、アクリル系絵具、ほか 500×540×180 cm 所蔵:アラリオミュージアム・イン・スペース(ソウル) 展示風景:「あいちトリエンナーレ2013」 撮影:怡土鉄夫

アーティスト達は、思いもよらないものをつなげてみることで、新しい視点を提示し、これまでにない価値を作り出すことができる。万代洋輔は、不法投棄されたゴミなどを組み合わせて、神々しいオブジェを作る。それを被写体とした写真は、俗と聖が混在する不思議で魅力的な作品となっている。青野文昭は、古く使えなくなった車や家具など様々なものを組み合わせて、新しい生命力を秘めるような彫刻作品を作る。ものを直すという行為が、本来の物そのものとはまったく別の新しい物質、新しい価値を生み出している。

万代洋輔 《無題》 (「蓋の穴」シリーズより) 2016年 Cプリント 84.8×105.5 cm  Courtesy: TARO NASU, Tokyo

万代洋輔 《無題》 (「蓋の穴」シリーズより) 2016年 Cプリント 84.8×105.5 cm Courtesy: TARO NASU, Tokyo

イベント情報

森美術館15周年記念展
六本木クロッシング2019展:つないでみる
会期:2019年2月9日(土)~ 5月26日(日) 会期中無休
開館時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
料金:一般 1,800円、学生(高校・大学生)1,200円、子供(4歳~中学生)600円、シニア(65歳以上)1,500円
森美術館ウェブサイト:www.mori.art.museum
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