ぼくのりりっくのぼうよみ、”辞職”前最後のツアーがスタート「このタイミングで完結させることが一番、素晴らしいことなんじゃないかなって」

レポート
音楽
2018.9.26
ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

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先日、「辞職」を発表したばかりのぼくのりりっくのぼうよみが、9月25日、渋谷にて行ったライブのオフィシャルライブレポートが到着した。

2018.09.25
ぼくのりりっくのぼうよみ 「僕はもう……」
東京・渋谷WWW X

「ぼくのりりっくのぼうよみというアーティストを葬ろうと思っております」
9月21日にオンエアされた日本テレビ系報道番組『NEWS ZERO』の特集で衝撃の決意を告げていた、ぼくのりりっくのぼうよみ。《私はぼくのりりっくのぼうよみを辞職します。自分で作り上げたこの偶像を破壊することで、3年間の活動を全うしたいと思います。終幕までぜひお楽しみください》とのコメントとともに、来年=2019年1月をもってその活動に幕を下ろすことを発表した。

それから4日後、9月25日。ぼくのりりっくのぼうよみの全国ワンマンツアー「僕はもう……」の初日公演が、東京・渋谷WWW Xにて開催された。

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

上記の「辞職宣言」以降初のライブの場ということで、ソールドアウト満員のフロアには期待感以上にただならぬ緊迫感が立ち込める中、19時定刻にライブはスタートした。これまでドラム/ベース/パーカッションなども加えて多彩な編成でライブを行ってきたぼくりりだが、今回のツアーではお馴染みのサポートメンバー=DJ HIRORON(DJ)&タケウチカズタケ(Keyboard)に加え、佐々木秀尚(Guitar)を擁した新たなバンド編成でステージに臨んでいる。

フロアの張り詰めた熱気をあえて交わすように、序盤はゆったりとした雰囲気の中で1曲1曲じっくりと披露していくぼくりり。「今日はみなさん、『どんな気持ちで来ればいいんだ?』みたいな感じだと思うんですけど……僕もだいたい似たような感じなので(笑)。よろしくお願いします」というMCの言葉に、会場には安堵感と同時に抑えきれない寂しさがあふれたような、独特の空気感に包まれていく。

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

「結構アコースティックな感じで、いろいろ変えてやっていこうかなと思っておりますので」とぼくりり自身も話していた通り、アコギ/セミアコ/テレキャスとギターを持ち替えつつしなやかなフレーズを繰り出す佐々木のプレイが、精緻に研ぎ澄まされたぼくりりの楽曲群と相俟って、そのアンサンブルに豊潤な包容力と奥行きを与えていたのが印象的だった。
WWW X一面のクラップを巻き起こした「朝焼けと熱帯魚」のボサノヴァ風アレンジなど、サウンド面でも新たな趣向が随所に盛り込まれていたことで、ぼくりりの歌声のやわらかな質感、切れ味鋭いラップの訴求力が、よりいっそうくっきりと浮かび上がってくる。

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

「ダウナーな曲が多かったんで、ここからはアゲぽよな感じで(笑)」という言葉をきっかけに、ライブは一気に熱を帯びていく。「CITI」のビートの躍動感がフロアを震わせ、シリアスな寓話の如き物語性を帯びた「Butterfly came to an end」で観客の手がリズムに合わせて高く揺れる。

先日配信リリースされたばかりの「輪廻転生」「僕はもういない」といった最新楽曲、ぼくりりの起点とも呼ぶべき楽曲「sub/objective」をはじめ、3年間の道程を自ら総括するかのように『hollow world』『Noah’s Ark』『Fruits Decaying』のアルバム3作品から重要曲をセレクトしていたこの日のアクト。
ライブ中盤、「ぼくりりは、来年の1月をもちまして終了いたします。それに伴いまして、今回のツアーで最後に全国各地を回ってこようかなと――」と語りかけるぼくりりに向けて、「ええーっ!?」とオーディエンス一丸の悲しみの声が湧き上がる。

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

「僕がひとりの人間として生きていく上で、ぼくのりりっくのぼうよみっていう存在を、このタイミングで完結させることが一番、僕の人生にとって素晴らしいことなんじゃないかなって」――そんなふうにぼくりりは、改めて自らの言葉で「辞職」の理由を伝えていた。

「『誰よりも自由に自分は生きてますよ』っていうふうに見せてたんですけど。『自由になろう』とすることって、不自由だからそうしてるわけで。自分が何をしたいのかよくわからなくなってきてしまって」
「『ぼくりりってすごいじゃん』みたいなものをあえて捨てることで、逆に『ぼくのりりっくのぼうよみって本来こういうアーティストだぞ』っていうアティテュードを大胆に示せるのかなって思いました」

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

淀みなく語られる内容からも、ぼくりり終幕へ向けての覚悟がリアルに伝わってきて、フロアの寂寞感は刻一刻と濃密さを増していく。そんな中、「輪廻転生」でオクターバーを駆使して低音を重ねた歌声が天使と悪魔のユニゾンの如く不穏に響き、「僕はもういない」のタイトなアンサンブルと《怠惰な 怠惰な 予防線》という辛辣なリリックが強烈なビート感をもって観客の頭と心を震わせていった。
真摯な批評精神とポップの極みを最短距離で結びながら、ひとりひとりの想いと密接にリンクする――そんな唯一無二の表現者・ぼくりりの在り方が、この日のライブにも如実に表れていた。

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

ぼくのりりっくのぼうよみ(撮影:川崎龍弥)

全8公演にわたって行われるツアー「僕はもう……」はこの後、新潟/仙台/札幌/名古屋/大阪/福岡の各都市を巡った後、10月30日の東京・恵比寿LIQUIDROOM公演にてファイナルを迎える。そして、12月12日にはラストオリジナルアルバム『没落』とベストアルバム『人間』が同時リリースされる。

(文:高橋智樹)

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