LACCO TOWERはホールでのライヴも映え、似合うバンドであると確信した圧倒的スケールのホールツアーファイナルをレポート
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LACCO TOWER「ホールツアー2018「五人囃子の新時代」」2018.9.24@昭和女子大学 人見記念講堂
LACCO TOWERはホールでもライヴが映え、実践できるバンドである。それが誇らしく気高く立証された一夜であった。
今年の夏、初のホールライヴツアーを敢行した彼ら。「LACCO TOWER ホールツアー2018「五人囃子の新時代」」と題し、全国4箇所にて行われた同ツアーが、この東京・人見記念講堂で大成功のなか幕を閉じた。
今回のツアー中、最大規模の会場でもあった、この人見記念講堂。にも関わらず彼らの歌や演奏、演出や効果の数々は、客席の後方に座っていた私にまでしっかりと細部まで届いてき、そのステージまでの距離感すら忘れさせるほど身近で親しみ深く、気持ちを同化させてくれるものばかりであった。
この日の会場も通例のスタンディング形式に比べ、幅広い層が集っている。定刻に場内が暗転。普段より長くSEが流れ続け、無人のステージが神秘的な照明で浮かび上がっている。なかなか現れないメンバー。そして再び場内が暗転し、しばしの間の後パッと明転すると、ステージ上には最新のアーティスト写真まんまの衣装と立ち位置やポーズの実際のメンバーたちが。一瞬で会場全体がニューアルバム『若葉ノ頃』の世界観へと惹き込まれる。ちょっとしたヤラれた感だ。しばらくのその態勢を経て各人が配置に就く。ステージの特性を活かし、真一ジェット(Key.)と重田雅俊(Dr.)は他より一段高いポジションだ。
ライヴはニューアルバム同様、1曲目の「若葉」から走り出した。疾走感のあるサウンドに乗り、ボーカルの松川ケイスケの歌う♪淡い緑が 輝いたら それは始まりの季節♪♪甘くて苦い 夢みたいな 今を歩いて行こう♪が瑞々しい生命力を放ち、繰り返される♪せめて今だけ 泣かないでよ もう離さないから♪の刹那感が会場中をグイッとステージへと惹き寄せる。続いての「未来前夜」では、サビで訪れた開放感が会場中を、ここではないどこかへと誘っていく。後半の崇高なコーラス部は会場中の大合唱に預け、共に思い出深い名シーンを創り上げていく。「ヒーローじゃない我々からみんなへ」(松川)と入った「非英雄」では、ツインリード性溢れる細川大介のギターソロも光り出す。うたわれる歌世界の中、会場中が各々自分にとってのヒーローを思い浮かべていく。
「ようやくここまでたどり着けました。短いけど楽しいツアーだった。最後まで楽しくやりたい」と松川が公約。ここからはホールならではの照明たちがその威力を発揮していく。再びライヴを走り出させた「蜜柑」では、レーザーが追いかけても掴めないものを全力で追いかける様を助勢し、彼らの楽曲中、特にめまぐるしい「純情狂騒曲」では、急変して現れる疾走場面にてライト群が同曲の擁するスリリングさを加勢した。
この日は広いステージならではの無尽さも楽しめた。「傷年傷女」では真一ジェットがショルダーキーボードに持ち替えステージのフロントに。曲中はステージ狭しと動いて弾きまくるシーンも。その際は前面を真一ジェットに任せ松川はあえて後方にて歌う場面も印象深かった。
中盤に入るとこれもホールならでは、座って楽しめる曲たちが続いた。それぞれの描く別れのシーンの中に自身を佇ませていった、このゾーン。驚いたのは初日では、みんな座らずに立ったまま楽しんでいたのに、この日は特にメンバーが促さずとも自然と全員が席に座って楽しんでいた様だった。ここに会場もようやくホールでの彼らの音楽の楽しみ方を理解し、LACCO TOWER自身も、より聴かせる曲だと悟らせるメリハリのテクニックが育まれていたことが伺えた。
「切手」が描かれるラストシーンと紙の上で綴られた本音を歌えば、ノスタルジックな真一ジェットのピアノが映えた壮大なバラード「最果」のような曲は、やはりこのようなホールの方が映えることを実感した。また、この曲の特徴の一つだった転調もホールだと、よりダイナミックさがフィットすることに改めて気づいた。
その真一ジェットが次の「薄荷飴」のピアノアレンジによるソロを挟み、巨大な満月の映像をバックに花鳥風月な歌世界観を広げた「薄荷飴」、また「遥」では松川のロングブレスを交えた魅せる歌い出しも特徴的であった。
「結成以降、気づけばこんな素晴らしい景色を見るところまでくることが出来ました。今日の一曲目を歌った瞬間にLACCO TOWERの曲は今や自分たちだけのものじゃないことを実感しました。まぎれもなく自分たちの背中を押してくれたのはあなたたちでした。今度は僕たちがみんなの背中を押す番です」と、ここからはますますお互いの心の距離が縮まり、気持ちを同化させるべく曲が連射された。
雄々しいコーラスと共に、必ず雨は止み、後に再び陽が差すことを信じさせてくれた「雨後晴」。躍動感溢れる怒涛の重田の魅せるドラムソロに塩﨑啓示のブリブリの超絶ベースソロを絡ませた2人によるソロ部を経て入った「狂喜乱舞」からはライブが再び走り出す。会場を魑魅魍魎の奇譚のパノラマへと誘った同曲が、サビでのストレートさにて爽快さを呼び込めば、ライト、レーザー、ビームも大活躍。細川のライトハンドも映えた、会場ごとパノラマ奇譚の物語の世界へと引き連れた「怪人一面相」、また、戦いの鐘を鳴らすが如く会場をスパークさせた「火花」に於いてもメンバーが広いステージを所狭しと駆け回った。
「笑ってばかりの楽しいライヴだった」と、この日を振り返る松川。「最後まで笑って帰って欲しい。これが最大限の愛情です」と、本編ラストの「愛情」へ。色々と経たドラマの終着は愛情たっぷりに包まれる場面へと行き着かせた。繰り返される安堵感に満ちた言葉たちもことさら信憑性を帯び、場内を暖かい気持ちが包んでいった。
アンコール。曲に入る前にメンバー各人からこの日の来場の感謝とホールツアーの感想が語られた。中でも印象深かったのが、「毎年毎年挑戦してここまでやってきた。これからも挑戦していくことを誓う!」との塩崎の言葉。続けての「これからもカッコ良いロックバンドであり続けたい。少し先を歩くからついてきて下さい」の松川の言葉も改めてステージと会場の距離がグッと縮めた。
そんなアンコールは感謝とこれからもよろしく感を込め「花束」が贈られた。6/8のロッカバラードが様々な物語の末、全てが報われるかのような大団円感とフィナーレを呼び込んでくる。と、ここでは終わらず。最後は最愛と大丈夫のメッセージを込めて「薄紅」が贈られた。作品以上にまた会おう感が増して響いた同曲。歌内容の「この素晴らしい時間よ、どうかこのまま止まって!!」と願ったのは私だけではなかったはずだ。
何かやり遂げた達成感に溢れた満足気な表情と共にステージを降りた5人。そこには何かいつもの彼らが終演後に残す爽快感とはまた違った、何か観劇後に近い大団円と充足、そして明日への活力が残されていた。
ツアー初日と比べ、お客さんのホールでの楽しみ方や、以後のホールライヴを経てバンド側による改良点や工夫が伺えた、この日。最終的には完璧なショーを見ることが出来た。ライブ中、「楽しい!!」の言葉を何度も口にした松川。初日には出てこなかった、その言葉たちは、このホールでライヴを行う意義や意味、そしてそこでしか得られない充足感や満足感を経ての心音のようにも響いた。彼らにはまた是非このようなホールでのライヴも行って欲しい。とは言え10月からは打って変わり、「LACCO TOWER 「若葉ノ頃」発売記念ライブハウスツアー2018「五人囃子の新時代」」も待っている。オールスタンディングにて近距離での密着戦が予想される次回。新作の曲たちが、その場ではどのような表情を魅せるのか?にも興味が募る。
とにもかくにも最後に、もう一度強く言わせて欲しい。「LACCO TOWERはホールでのライヴも映え、似合うバンドである」と。
取材・文=池田スカオ Photo by Masanori Fujikawa
セットリスト
LACCO TOWER「ホールツアー2018「五人囃子の新時代」」2018.9.24@昭和女子大学 人見記念講堂
ツアー情報
LACCO TOWER 「若葉ノ頃」発売記念ライブハウスツアー2018「五人囃子の新時代」
10/7(日) 広島BACK BEAT
10/20(土) 高崎clubFLEEZ
11/11(日) 盛岡the five morioka
12/1(土) 静岡UMBER
12/8(土) 下北沢SHELTER
開場17:00/開演18:00(全日程共通)
オフィシャルファンクラブ『猟虎塔』
http://lacco-to.club/
「五人囃子の新時代」特設サイト
http://laccotower.com/5ninbayashi/