ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団員による室内楽団「ムジカ・レアーレ」が多彩なプログラムを二日間に渡り披露

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2018.10.29
Musica Reale musicians for Japan Tour November 2018. Photo: Eduardus Lee

Musica Reale musicians for Japan Tour November 2018. Photo: Eduardus Lee


オランダはアムステルダムに本拠を置く世界屈指のオーケストラ、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)。その現役団員でつくる室内楽団、ムジカ・レアーレが、2018年11月に来日、20日(火)・21日(水)には浜離宮朝日ホールで東京公演を開催する。

ムジカ・レアーレとは、イタリア語で「本物の音楽」と「王室の音楽」の両義を持つ。RCOの個々の楽団員のすぐれた腕前を、小編成作品の演奏によって際立たせたいという願いから、ピーター・ソコレ(元RCOヴィオラ奏者)によって2007年に創設された。プログラムに応じてオーケストラの団員を自在に選抜し、幅広い楽器編成に対応できるのが特徴。今回の来日公演ではRCO首席奏者を含む8人(第1日目は7人)が、名曲中の名曲はもちろんのこと、知られざる傑作にいたるまで、多彩なプログラムを世界最高水準の演奏で聴かせる。

Peter Sokole

Peter Sokole

今回の東京での二日間のプログラムについて、現在ムジカ・レアーレのディレクターを務めるソコレは、次のように解説する。


◆【第1日】11月20日(火)午後7時開演の演奏会について

<予定プログラム>
モーツァルト:オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K.370(オーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)
レントゲン:弦楽三重奏曲 第14番 ハ短調(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)
シュルホフ:ディヴェルティメント WV.87 (オーボエ、クラリネット、ファゴット)
*
ブラームス:クラリネット五重奏曲 ロ短調 op.115 (クラリネット、ヴァイオリン×2、ヴィオラ、チェロ)


第1日目のプログラムは、モーツアルト、ブラームスという大作曲家とともに、あまり有名ではないけれど偉大な作曲家を並べた。

ユリウス・レントゲンは膨大な作品群(600作品以上)を残したオランダの作曲家。ブラームスやグリーグ、ヴァイオリンのヨゼフ・ヨアヒムやカール・フレシュ、チェロのパブロ・カザルスと親交があり、交響楽から声楽、室内楽までさまざまに作曲した。今回演奏するのは、1915年~1930年の間に作曲された16の弦楽三重奏曲のうち14番目の作品となる。

シュルホフは、ユダヤ人であったためナチスによって「堕落した作曲家」と見なされ殺害された作曲家だ。もし殺されなければ、おそらく20世紀を代表する作曲家の一人になっていたはず。「オーボエ、クラリネット、バスーンのためのディヴェルティメント」のよろこびに満ちた音楽は、こうした評価が間違っていないことのあかしとなるだろう。

モーツアルトのオーボエ四重奏曲、ブラームスのクラリネット五重奏曲はいずれも広く愛されている作品であると同時に、難度の高い技巧が要求される作品でもある。ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が誇る2人の独奏に注目。

◆【第2日】11月21日(水)午後2時の演奏会について

<予定プログラム>
ベートーベン:弦楽三重奏 ハ短調 作品9(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)
ブリテン:幻想四重奏曲 op.2(オーボエと弦のための)(オーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)
プーランク:クラリネットとバスーンのためのソナタ FP.32(クラリネット、ファゴット)
イベール:木管三重奏のための5つの小品 (オーボエ、クラリネット、ファゴット)
*
メンデルスゾーン:弦楽五重奏曲 イ長調 op.18(ヴァイオリン×2、ヴィオラ×2、チェロ)


第2日目のプログラムのうち4作品は作曲家が比較的若かった時代に書かれた。イベールの「五つの作品」だけは、45歳の時に作曲された。

ベートーヴェン自身、作品番号9となる偉大な弦楽三重奏曲を、初期の傑作の一つと自ら評価していた。情熱的かつ深淵、大いなる力を宿した作品だ。

ブリテンのオーボエ四重奏曲(幻想曲)は18歳の時の作品。情感に満ちた、牧歌的ともいえる音楽はオーボエの音色や表現力をあますところなく使う。

フランスの作曲家であるプーランクとイベールは、木管楽器の扱いが特にすぐれていた。プーランクのソナタは、プーランクらしいのびやかさと思索が感じらる。一方、イベールの作品は機智に富み、軽やか。

メンデルスゾーンの弦楽五重奏曲第1番は17歳の時に書かれた。すでに完成の域に達した成熟度をたたえる傑作だ。対位法や音楽的な構造を自在に操って感情が表現されており、若き作曲家がまごうかたなき天才であったことを示している。


<ムジカ・レアーレ 東京公演の出演者プロフィール>

イヴァン・ポディオモフ(オーボエ)
モスクワのグネーシン音楽大学、ジュネーブ音楽院で学ぶ。同音楽院在学中にソニー・オーボエコンクール(2009年)、ミュンヘンARD国際音楽コンクール(2011年)など数多くのコンクールで優勝。バンベルク交響楽団の首席オーボエ奏者を経て、2016年よりロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席オーボエ奏者。

Ivan Podyomov

Ivan Podyomov

アルノ・ピターズ (クラリネット)
クラウディオ・アバド創設グスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団、欧州連合ユース管弦楽団などのメンバーとして演奏。ソリストとして欧州のオーケストラと多数共演。室内楽ではオランダ内外の音楽祭に出演。2001年‐2003年オランダ放送響を経てロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のクラリネット及びE♭クラリネット奏者。

Arno Piters

Arno Piters

サイモン・ヴァン・ホーレン(ファゴット)
8歳よりファゴットを始める。ハーグ王立音楽学校を卒業、ベルリンフィル、チューリッヒ・トンーハレ菅などでエキストラとして演奏後、デュッセルドルフ交響楽団でソロ・コントラバスーン奏者に就任、2012年よりロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団員。

Simon van Holen

Simon van Holen

内藤 淳子 (ヴァイオリン)
東京芸術大学を経て、オランダのユトレヒト音楽院卒業。1997年、アンサンブル金沢・新人登竜門優秀賞に選ばれた後、京響、広響、札響等と定期公演で協演。ヨーロッパ各地の音楽祭参加、現代曲の日本内外での初演など幅広く活動する。2002年よりロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団第一ヴァイオリン奏者。第8回岩城宏之音楽賞を受賞。

 Junko Naito

Junko Naito

シルヴィア・フアン (ヴァイオリン)
ブリュッセル芸術アカデミーで研鑽を積む。2004年ベルフィウス・クラシック・ナショナル音楽コンクールとライオンズ欧州音楽コンクールで優勝。2012年9月にベルギー国立管弦楽団の第二ヴァイオリンに加わり、2014年より首席奏者。2014年8月よりロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の第一ヴァイオリン奏者。室内楽、ソロでも幅広く出演している。

Sylvia Huang

Sylvia Huang

波木井 賢( ヴィオラ)
東京芸術大学大学院修了、東京フィル首席奏者を経てケルン音楽大学で学ぶ。スカラ座オーケストラとの演奏でイタリア音楽批評家賞を受賞。G.クルターグ作品集のCDが2003年ニューヨーク タイムスのベストCDに選ばれた他、ドイツ批評家賞、オランダ エディソン賞などを受賞。1992年よりロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の第一ヴィオラ首席奏者。

Ken Hakii

Ken Hakii

金丸 葉子(ヴィオラ)※11月21日(水)のみ出演
桐朋学園大学音楽科卒業後、ドイツへ留学。国際コンクールで優勝・入賞を重ねる。室内楽のレパートリーも広く、フライブルグの室内楽フェステイバル、サイトウキネン・フェステイバルなどに参加。2003年よりロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団ヴィオラ奏者、2012~2013年にリンブルグ交響楽団第一ヴィオラ首席奏者を兼任。

 Yoko Kanamaru

Yoko Kanamaru

ジュリア・トム(チェロ)
米ジュリアード音楽学校で研鑽を積む。同時にハーバード大学で英文学を学ぶ。トルネオ国際コンクールで優勝。独奏者としてサンフランシスコ響、オークランド響など多くの楽団と協演。ブレーメン・フィルハーモニー管弦楽団の首席チェリストを務めたのち、2010年1月にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽に入団。

Julia Tom

Julia Tom

公演情報

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団員による室内楽
ムジカ・レアーレ

 
【第1日】
■日時:2018年11月20日(火)19:00
■会場:浜離宮朝日ホール
■出演:
イワン・ポディオモフ(オーボエ)、アルノ・ピターズ(クラリネット)、サイモン・ヴァン・ホーレン(ファゴット)、内藤淳子(ヴァイオリン)、シルヴィア・フアン(ヴァイオリン)、波木井賢(ヴィオラ)、ジュリア・トム(チェロ)
■演奏予定曲:
モーツァルト:オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K.370
レントゲン:弦楽三重奏曲 第14番 ハ短調
シュルホフ:ディヴェルティメント WV.87
ブラームス:クラリネット五重奏曲 ロ短調 op.115

 
【第2日】
■日時:2018年11月21日(水)14:00
■会場:浜離宮朝日ホール
■出演:
イワン・ポディオモフ(オーボエ)、アルノ・ピターズ(クラリネット)、サイモン・ヴァン・ホーレン(ファゴット)、内藤淳子(ヴァイオリン)、シルヴィア・フアン(ヴァイオリン)、波木井賢(ヴィオラ)、金丸葉子(ヴィオラ)、ジュリア・トム(チェロ)
■演奏予定曲:
ベートーベン:弦楽三重奏 ハ短調 作品9
ブリテン:幻想四重奏曲(オーボエと弦のための)
プーランク:クラリネットとバスーンのためのソナタ
イベール:木管三重奏のための5つの小品
メンデルスゾーン:弦楽五重奏曲 イ長調 op.18

 
■主催:朝日新聞社
■後援:オランダ王国大使館
■楽団公式サイト:https://www.musica-reale.com/
■浜離宮朝日ホール公式サイト:https://www.asahi-hall.jp/

※下記地方公演あり

ムジカ・レアーレうきは公演(福岡県)
■日時:2018年11月17日(土)14:00/16:00
■会場:うきは市民センターうきは市立図書館3階小ホール
■問い合わせ:うきはブランド推進課ブランド戦略係 0943-76-9029

ムジカ・レアーレ長崎公演(長崎県)
■日時:2018年11月19日(日)19:00
■会場:長崎ブリックホール
■主催・問い合わせ:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団長崎公演実行委員会 095-895-7732
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