麻生久美子×中村倫也×根本宗子クロストーク! 笑いの奥に潜む毒をどう描く!? 舞台『クラッシャー女中』

2019.1.18
インタビュー
舞台

(左から)根本宗子、麻生久美子、中村倫也

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根本宗子×M&Oplays本多劇場公演の第2弾『クラッシャー女中』が、3~4月、東京・本多劇場を皮切りに名古屋、大阪、島根、広島にて順次上演される。本作は麻生久美子中村倫也がW主演/初共演を果たす事でも話題となっている2019年注目の一作だ。

とあるお屋敷を舞台に、女中役の麻生とお屋敷の王子様のような息子役を演じる中村が、いったいどんな世界が描こうとしているのか。麻生、中村そして根本に話を聞いてきた。

ーー早速ですが、『クラッシャー女中』はどのような話になるのですか? その名の通り何かが壊れ、壊されていくのか、と興味深々です。

根本:元々「サークルクラッシャー」な人の話を書きたかったんです。これまで自分の座組みにそういう人はいなかったんですが、小劇場系の劇団にはどうも一人はいるみたいなんです。輪を乱し組織を壊してしまう人って。

根本宗子

中村:具体的にはどんな感じの人なんですか?

根本:劇団の男子or女子全員と付き合っちゃうとか、とにかく揉め事の中心になる人(笑)。そんな人を演劇にしようとする人はあまりいないみたいで……。今回、プロデューサーから話をいただいたんですが、実はこのお屋敷設定も、そして前回のM&Oplays『皆、シンデレラがやりたい。』(以下、『シンデレラ』)がおばちゃん3人の設定で、という事もプロデューサーの一言が出発点でした。

ーーそんな背景があったんですか。今はどのような方向に掘り進めているところですか?

根本:ファンタジーものにはしませんが、いつも自分が書いている「毒」の部分は残したいと思っています。加えて、プロデューサーが別でやっている「鎌塚氏」シリーズとはかぶりたくないし(笑)。そこで麻生さんに「サークルクラッシャー」になっていただき、一方で中村倫也さんとご一緒したいとオファーし、お屋敷の王子様になっていただこうと考えました。「鎌塚氏」には王子様は出てきませんからね(笑)。

中村:僕の役が「鎌塚氏」との差別化のポイントという訳ですか(笑)。キーパーソンですね。

ーーそんなオファーがきた麻生さんと中村さんですが、お話をいただいてどのように思われたんでしょうか。

麻生:根本さんからまさかお話をいただけると思っていなかったので、すごく嬉しかったです。前回の『シンデレラ』もとても面白くて! 観始めてすぐ引っ張られる吸引力があったので、そんな根本さんの作品にお声がけいただけて光栄です。

中村:僕は演じたことがない事をやりたい性分なんです。今いろいろな事をやらせていただいているので、その分やってない事が減っていく訳です。今回も「次は何をしようかな」と考えていた時に今回の話がポンときて「コレや!」と東京生まれなのに関西弁が出るくらい声が出ました(笑)。根本さんは時代も国もはっきりさせない話にしているそうですが、現代の会話劇ってあまりしたことがないなと思って「やります」とあまり間をおかずに返事をした記憶がありますね。

根本:麻生さんは岩松了さんの作品に出演されている印象が強くあって、すごく美しくて何を考えているかわからない女性像を演じる事が多いと感じていました。また、岩松さんも人と人の対立を描く方なので、私が書くならより若い世代にも届きやすいものを書きたいな、と。「ああ、こんな人いるいる」と感じる人を書きたいなと思っているんです。何を考えているかわからない役を書きたいと思いつつもつい緻密に作ってしまう事が多いので、今回の作品のようなものを作るなら麻生さんとご一緒したいなと思っていたんです。驚いた時のリアクションが特に好きで。

麻生:えーっ(笑)!

根本:コミカルな役ってあまりないですよね?

麻生:全然ないんですよ。

麻生久美子

根本:だから誰かが麻生さんにそういう役をお願いする前に私がやらせていただきたい、と思っていました(笑)。
そして中村さんはいつも器用に演じられていてビジュアルも整っていて、変な意味ではなく同じ役者でいるのが嫌だと思うくらい上手いんです。今まで私の劇団公演にはこういう人が出ていないんです。
『シンデレラ』をやった時の3人(高田聖子、猫背椿、新谷真弓)はめちゃくちゃうまくて、稽古中も凄く楽しかったんです。だから次にまたM&Oplaysで舞台をやるときは技術がある方とご一緒したいなと思っていたので……中村さんに声をかけたいと思ったんです。

中村:大丈夫。今回の稽古場で「あ、この人全然器用じゃないんだ」って思うから(笑)。

根本:十分器用じゃないですか!

中村:全然。器用だと思われているうちは「まだバレてねえな」と思ってます。頑張ってやっていたら器用そうに思われていただけなんです。

ーー中村さんは根本さんとお仕事した経験があるんですよね?

中村:ネット配信の作品で『女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。』という作品でした。根本さんが脚本を担当していて、僕は後半登場する教育実習生の役。その後、劇場の裏とかで飲んだ事もあったかな。……そういえば年下の演出家と仕事するの、これが初めてかもしれない。

麻生:私もです。女性の演出家さんというのも初めてですね。

中村:根本さんはすごく厳しいらしいですよ。稽古も細かくて長いらしいから、そんな雰囲気になってきたら二人で「やめましょう」「少し休もう」って言いましょうね(笑)。

(左から)根本宗子、麻生久美子、中村倫也

ーーこの二人の力を持って、作品の中にどんな毒気を出そうと考えているのでしょうか?

根本:毒っぽい芝居を作る時に、毒をいっぱい持っている役者さんに声をかける事はそうないんです。もちろん役者さんなのでいろいろな役の引き出しを持っていると思いますが。私が大事にしているのは、嫌なお話をやっても嫌悪感を客席に抱かせない事。ある意味キャッチーな部分は失わないようにしたいですし、ちょっと笑える部分も残し、お客さんが「嫌な事があったけど、舞台を観て笑えたからいいか!」と思ってくださるようになったらなあと思っているんです。

ーー麻生さんはコメディーは初めてなんですよね。今回どのように挑んでみたいと考えていますか?

麻生:コメディーが本当に初めてなのに、根本さんの作品紹介文で「麻生さんはコメディエンヌ」という文字を見た時に「……マズイ!」と思いました。思い違いをされているのなら、すごく辛い稽古になりそうで(笑)、プレッシャーを感じています。コメディーってすごく難しいじゃないですか。どういう自分を引き出せばいいのかと……でも根本さんがきっと導いてくださると思うんですけどね。

根本:この作品、コメディーかというとそうでもなくて。これまでもガッツリコメディーを書こうと思った事はないんですよ。結果的にお客さんに笑ってもらえている事が多かったので、稽古場で「笑いを取りに行ってください!」なんて言いませんし、言った事もないですよ(笑)。

麻生:アハハハ。じゃあマジメにお芝居をしていけば笑ってもらえるかもしれませんね。

麻生久美子

ーー中村さんのコメディに対する想いは?

中村:コメディーは若い頃からこれまでそこそこやってきたという感覚があります。今、日本中すべての俳優が憧れる(笑)『muro式』、福田雄一さんとマギーさんが手掛けた『バンデラスと憂鬱な珈琲』などにも出ていました。自分は笑いがすごく好きでそれを作れる俳優が自分の中では最上級。自分もそんな俳優になりたいと10年くらいやってきました。根本さんが書き、ナマイキかもしれませんが麻生さんとやるお芝居はきっと笑えるものになると思うんです。ボケる、ツッコむとかでなく、マジメに演じていけばきっと客席がドッカンドッカン大爆笑になるホンを(声を突然張って)根本さんが書いてくれるはずです。(微笑みながら根本、そして麻生に目線を送る)

根本・麻生:いやー。プレッシャー(笑)。

中村:フフフ。あと、僕はオンビートの芝居が苦手。オフビートだなあとつくづく感じているので、その点をどう料理してくれるのかなと楽しみにしています。舞台でのお客さんの生の反応が僕の指針になっているんです。映像だとお客さんの顔が見えないじゃないですか。そういう意味でも舞台でお客さんの反応が観れるのが凄く楽しくてその反応によって波の満ち引きのように何かが生まれてくるのが好きなんです。……そこも根本さんが作ってくれるんだと思います(笑)。根本さんの作品は普通におもしろいし、若い人の感性を感じます。面白くないっていう人、いないんじゃないですか? そんな(再び声を張って)大脚本家で大演出家の根本さんが今回手掛けるんですから(笑)

ーーまたすごいプレッシャーをかけてますね(笑)

中村:クラッシャーだけに毎回セットを壊すとかお屋敷が跡形もなくなるとか……金がかかりそう(笑)。

根本:そこは自分の劇団じゃないのでお金はいくらかかっても大丈夫(笑)「照明のピンで3人をずっと追い続けてください」とか無茶な事も言えますしね!

中村:(笑)。ちなみに今回はミュージカルではない?

根本:ガッツリミュージカルではないんですけど、気が付いたら歌っていたなあという感じにしたいですね。よく作品の前情報や途中で裏情報をモノローグやテロップなどで見せる手法があると思いますが、私はその手法は「アリ」だなと思っていて、自分の作品でそういった事を使うならモノローグやテロップより歌が合っているように感じているんです。例えばパパっと終わらせたい所は歌って……とか。

中村:ハハハ。力技だ。

中村倫也

根本:力技には見えないようにやりたいですね。以前行った『新世界ロマンスオーケストラ』ではベッドシーンを全部ダンスで表現したんです。生々しく表現するのではなく、ダンスにしたことでそういう事が起きているんだな、と思わせる。そういうルールをお芝居の中で成立させたいです。

ーー麻生さんが先ほどから静かに動揺しているようですが……。

麻生:演劇では歌った事がないんです……。歌うとしたら今回が「初」です。

中村:きっと麻生さんの歌声からインですよ。裏から歌声が聞こえてきて「ああ、帰ってきたわ」みたいな……。で舞台のセンター奥からバーンと麻生さんが登場……(笑)。

根本:冒頭がこれで決まりましたね(笑)。

麻生:えーっ! 二人とも! ちょっと待って(笑)!

ーー麻生さんが今回演じるのはお屋敷の女中さん。どんな人物にしようとしていますか?

根本:逆境に勝つ話が多く、自分もそういう人を描きがちでしたが、それはもう描き切ったなという感覚がこの数年あるんです。だから、今まで正義ではないと思っていた人のほうが正義だったという話を描いてみたいと思い、作品が出来上がりました。
今回麻生さんの役は凄く貧乏で、のし上がろうとするんですが、その過程でついてきた様々な嘘のせいで自分が何をしたかったのかも分からなくなってしまい、何のために対立構造になったのかも、もはや分からないけれど、引くに引けなくなっている……そんな状態を描きたいんです。「ワーッ!」と怒り出したのはいいけど、引っ込みがつかなくなってしまう事がありますが、それが何年も引っ込めなくなってしまうとどうなるんだろうと(笑)。

根本宗子

中村:すごい役になりそうですね。嘘のステージが今どこなのかがつかめないと台詞も全然入ってこないだろうし。(麻生を見て)……頑張ってくださーい(笑)。

麻生:(笑)

ーー中村さんが演じるお屋敷の息子はどんなキャラクターなんですか?

根本:女の人が「ワーッ!」って言うのを「いくらでも言っていいよ」と言ってくれる人です。普通そうは言ってても限界を超えると男の人は引いてしまうんですが、中村さんが演じる役は「もっと、もっとやっていいよ」と言い続けるんです。皆の前では厳しいけれど、一対一になるとすごく優しい人。

中村:なんか、悪そうな人だね(笑)。できるかなあ。

根本:そういう人って誰にも嫌われたくない、という願望を持っているのかもしれないですけどね。

ーー麻生さんは、舞台に立つということをどう感じていらっしゃいますか?

麻生:うーん……試練の場。舞台って苦しいんですよね。自分でいうのも恥ずかしいんですが、舞台1本終わる度に得るものがあるなと思ってて……。

中村:ヒュー!

麻生:恥ずかしい……(笑)。前回の舞台『市ヶ尾の坂』がすごく楽しく、その時のいい想いが残っているので、苦手意識を少しは克服できるかな。

中村:今回根本さんも出演するので、舞台上でうっかり台詞を飛ばした時は根本さんがしっかりフォローしてくれるからきっと大丈夫ですよ!

根本: 私はほんの少ししか登場しないかもしれませんよ。

中村:その一瞬でちゃちゃっと直していってくれるから(笑)!

(左から)根本宗子、麻生久美子、中村倫也

【おまけ】
インタビュー後、3人の撮影を行ったが、ソロカットを撮る段となり、カメラマンが中村さんに「じゃあ自由に動いてください」と声をかけると背中を向けてWピースをして笑わせ「寄りで撮影します」と声をかければ腕で顔を隠し目しか出さないというおふざけを入れる中村さんに思わず笑い声が起きていました。

Wピース!!

写真NGです(?)

麻生久美子
スタイリスト/井阪恵(dynamic)
ヘアメイク/ナライユミ

中村倫也
スタイリスト/戸倉祥仁(holy.)
ヘアメイク/Emiy

根本宗子
ヘアメイク/masayo

取材・文=こむらさき 撮影=山本れお

公演情報

M&Oplaysプロデュース『クラッシャー女中』
■脚本・演出:根本宗子
■出演:麻生久美子、中村倫也、趣里、佐藤真弓、根本宗子、田村健太郎、西田尚美
 
■日時・会場:
【東京公演】3月22日(金)~4月14日(日)本多劇場
【名古屋公演】4月17日(水)日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
【大阪公演】4月19日(金)~21日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【島根公演】4月23日(火)島根県民会館 大ホール
【広島公演】4月25日(木)JMSアステールプラザ 大ホール

■主催・製作:株式会社M&Oplays
■問い合わせ:M&Oplays 03-6427-9486(平日:11:00~18:00)
■公式サイト:http://www.morisk.com/
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