チェコ、フミヤ、佐野元春……豊洲野音CARNIVAL 日常の延長線上でカジュアルに楽しむ都市型フェス

2015.11.8
レポート
音楽

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豊洲のご近所さんもフェス好きもアラフィフ・レディも横並び

10月31日と11月1日の2日間にわたって、東京ベイエリアを臨む豊洲で開催された「豊洲野音」、その2日目に参加してみた。数日前は雨も心配されたが見事な晴天に恵まれたことが何より嬉しい。渋谷から約30分というアクセスのよさ、ゆりかもめ新豊洲駅からはホントに1分とかからないアクセスの良さもノン・ストレスだ。入場すると家族連れの多さも相まって、さまざまな仕掛けが隠された巨大な公園といった趣きも。正午前の気温は20度に届かないが、さえぎるものがない晴天の元にいると体感としては25度ぐらいに感じられ、日差しも強い。帽子とサングラス、そして日焼け止めもマストだったかも!と少し焦るも、むしろビール日和なのが嬉しかったり…。さっそく期間限定のパンプキンビール(ペールエール)を買って会場をぐるっと回ってみる。と、この日の目玉と謳われている「豚の丸焼き」にすでに少し行列ができている。様々な部位をブラジルやイタリア風にアレンジして販売しているのも楽しい。

二つあるステージのうちの大きい方の「YAON STAGE」の一番手、Czecho No Republicのチアフルな楽曲が、ほとんどの観客が初見という中、じょじょにお祭りムードを高めていく。子供も通好みそうなミドルエイジのおじさまも楽しそうにステップを踏んでいる情景は、他のフェスやイベントではあまり見られない素敵な瞬間だった。

Czecho No Republic

ユニークなのが度々登場するエスコーラ・ヂ・サンバ・サウーヂことサンバ隊の皆さんで、本場顔負けの衣装で肉体美を誇示するダンサーも楽団も神出鬼没。会場内を練り歩き、子供たちもパレードに加わる。そう、子供たちが楽しめる要素がとにかく多いのが「豊洲野音」の最大の特徴だ。ワークショップもジャグリング体験やキャンドル作りなどいろいろあって楽しいのだが、大人数で参加するパーカッションのワークショップは特に大盛況。ま、中には子供以上に盛り上がっているお父さんの姿も少なくなかったのだが…。

Polaris

ライブもこんなに気軽に見れる雰囲気ながら出演者はなかなかエッジが立っている。Polarisにはクラムボンのミト、そしてドラムにはあらきゆうこが参加して、素朴なようなダビーでエクスペリメンタルなような独特の空気感を醸し出していた。また、決して大きなステージではないが、破格のブルース&グルーヴ・ロックンロールを見せつけた小林太郎は飽くまでも自分のステージを見せつけていた。それはどのアーティストにも言えることで、観客のムードがゆるかろうと、巨大な公園のような場所であろうと、各人の個性を全力のパフォーマンスで見せてくれたのもまた、「豊洲野音」を魅力的な場にしていた重要なファクターだったことは間違いない。

藤井フミヤ

再び「YAON STAGE」に視線を移すと、この日最も往年のチェッカーズ・ファンと思しき女性を軸に多くの観客を集めた藤井フミヤのステージがスタート。少しカントリーやブルースの味わいに寄ったアレンジで聴く数々のヒット曲もリラックスできていい。キャリアを積んで、「Another Orion」や「TRUE LOVE」などのラブソングがもっと大きな”あなたたち”へ向けたラブソングに聴こえたのも感慨深かった。

そしてInter-FMのトークブースにも多くのファンを集めていたTOSHI-LOWが在籍するOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのステージが進んで行くにつれ、トラディショナルなパンク感のあるナンバーで酔いどれ集団がモッシュというほど激しくないダンスを始めたり、そこここで手拍子が起こったり、お祭り感が増していく。ライブ・ペインティングを行った大宮エリーはカラフルで力強い筆さばきで富士山を描き上げてみせた。

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND

「MATSURI STAGE」には様々なフェスにも出演するDachamboが登場し、ぶっといグルーヴと世界の民族音楽を自由自在に行き交う演奏をスタートさせると、解放されまくって踊る人もちらほら。さすがフェス番長、この日もまた”ダチャンボ村”拡大に成功したんじゃないだろうか。秋の夜はつるべ落としとはよく言ったもので、この頃になると急に夕暮れが近づき、昼間、薪割りに興じていた人たちがこしらえた薪が集められ櫓に点火。勢いよく上がる炎にどんどん人が集まってくる。キャンプファイヤーというにはちょっと小さいけれど、火を囲んで飲んだりおしゃべりしたりするのはなんで楽しいんだろう?しかもライブを聴きながら火を囲む、その距離感がすごく近いのだ。ついでに言うとキャンプファイヤー越しにゆりかもめも見えるあたりがちょっとシュール。そういえば、夕方前からさらに人が増えてきた印象だ。たぶんご近所さんはそれぐらいカジュアルな気分でこのイベントに参加しているのだろう。

「YAON STAGE」に移ると、こんなカジュアルなムードの中、なかなかにシビアなサウンドチェックが行われた末、佐野元春がThe Hobo King Bandを伴い登場。ゴリゴリのR&Rというより、ルーツライクかつ大人なアレンジで80年代から最近まで、幅広い年代から選曲。リラクシンなムードの中で聴く「月と専制君主」もまたオツというか、リリックがよく聴こえるというか。50分に及ぶステージは見応え充分!

月島方面のタワーマンションの家々に灯りが灯る頃になると、さすがに冷気が…。昼間かいた汗がひいてくるが、冬並みに着込んできて正解だったと思う。

そしてトリを飾ったCaravanの”永遠の旅人”感をキャンプファイヤーがときどきはぜる音とともに楽しむと、ここが東京都であることをしばし忘れてしまう…。

Caravan

見たいアーティストもいて、でもラインアップに頼った感でもなく、初見のアーティストもピクニック気分で楽しめたり、久々に聴く大物アーティストの歌に新しい発見があったり。音楽が軸にありつつ日常の延長線上でそれを楽しめる…実はなかなかない贅沢なんじゃないだろうか。帰宅して砂埃にまみれたスニーカーを洗う余力を残して、まだまだ面白くなりそうな都市型イベントの次回開催をもう楽しみにしている。


文=石角友香 撮影=武藤奈緒美(会場・アクティビティの様子)船橋岳大(Czecho No Republic、Polaris、藤井フミヤ、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND 、佐野元春 and The Hobo King Band、 Caravan)

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