“10代目ピーターパン”吉柳咲良インタビュー「作品と役をさらに深める3年目にしたい」

2019.3.29
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吉柳咲良 撮影:渡部孝弘

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日本中の子どもも大人も夢中にしたブロードウェイミュージカル『ピーターパン』が39年目の夏を迎える。埼玉、神奈川、名古屋、富山、大阪で上演される今年の公演で主人公ピーターパンを演じるのはこれが3度目の出演となる“10代目ピーターパン”吉柳咲良(きりゅうさくら)だ。
2016年に歴代最年少タイ記録の13歳で初主演した吉柳も今年で15歳。一歩ずつ成長してきた吉柳は今、ピーターパンという役をどう受け止めているのだろうか。

ーー3年目のピーターパンとなりますが、今どんな気持ちで夏の公演を待っていますか?

1年目よりも2年目、2年目より3年目だと思っているので、技術面はもちろん今以上に役を深めて座長として周りを引っ張っていける存在、安心感のある存在でいられたら、と思っています。自分自身でも1年目の時は不安も多く、どうしたらいいか全然わからない状態だったので甘えていたように思うんです。でも今は座長としての重みをより実感するようになりました。『ピーターパン』は本当に長い間いろいろな方が演じて続けてきた作品ですから、私でその良さを途切れさせてはいけないと強く感じています。

ーー作品に対する考え方がぐんと大人になりましたね!

ピーターパンに年齢が近いという事で、子供らしい無邪気さを持った、今の私にしかできないピーターパンを、と思っているんですが、一方でやっぱり座長なので、考えることも多く、すごく悩んだ時もありました。主役と言う立場もあり周りに置いていかれてはいけないし、周りを引っ張っていかなければならない。皆さんに力を借りながら、​でもいちばん安心感のある存在になりたいと思うようになったんです。

ーー吉柳さん自身も3年分大人になった訳ですが、そういう意味ではピーターパンという人物に対する見方も最初の頃から変化しましたか?

1年目の時は、本当に無邪気で子ども! って感じの子だと思ってたんです。2年目の時にも確かに子どもだし、考え方もまさに子ども(笑)っていう印象がありましたが、その一方で大人っぽい考え方もするし、すごく複雑な考え方もしている子なのかなって感覚が演じているうちに沸いてきたんです。不思議な子だな、ただの子どもではないなと感じるようになったんです。だから3年目ではピーターという子の考え方の深みをもっと理解できたらいいなと思っています。彼に対する考え方が変わると台詞一つひとつの重さも変わってくると思うんです。

また作品についても1年目は大人になりたくない、というピーターからの視点でしか考えられなかったんですが、ウェンディというピーターとは違う考え方で大人になっていく女の子の姿に、成長しなければ、と思う私自身の気持ちが重なるようになり、いろいろな視点から考えられるようになりました。子どものまま成長するピーターと子どもから大人に成長していくウェンディ、そして大人なのに成長しきれていないフック船長の関係性も気になりますし、ピーターを産んだお母さんやウェンディを育てたお母さんの立場から見たらこの物語のあり方も変わってくるかもしれない。そう思うとこの物語って深いなあって感じますね。

ーー吉柳さんのお話を聞いていると、昨年よりだいぶお姉さん度があがってきたように思うんですが、自覚はありますか(笑)?

精神的に強くなったかなって思います。1年目のときはできない事が多く、嫌になって泣くこともあったんですが、2年目を迎え、自分がどうしたいのかと考えるようになってからは欲が出てきて、自分でこうしたいとか、この台詞はこういった方がより伝わるんじゃないかという考え方が出来るようになってきたので、少しずつ成長しているのかもしれません。​

ーー演出の藤田俊太郎さんから稽古中や本番中に言われた事で特に印象に残っていることは?

私が舞台上に立っている時は一瞬でもピーターから吉柳咲良に戻ってしまうと、お客さんは絶対に離れていってしまうから毎回毎回舞台に立っているときはピーターであることを忘れないでほしい、って言われました。確かに舞台に立っていると、時には冷静にならないといけないこともあるんですが、それが表に出てしまったり緊張が伝わってしまうと、それは『ピーターパン』という物語ではなくなってしまうように思います。その一瞬でも気を抜かずにピーターでい続けてほしいと言われたことが印象に残っています。

ーーとはいえ、ピーターのままでい続けるのが厳しい場面もあったのでは?

ありますあります! フライング中とか危ないからつい素に戻りそうになります。「I’m Flying」を歌いながら飛んでいる時、ステージが見えにくいことがあって心配になり、下ばかり見てしまう事がありました。お客様にはそれを気づかれないようにしていたんですが、そっちばかりに集中してしまい、ピーターパンでいることを忘れてしまいそうになる瞬間がありました。​

ーーそんな緊張の場面もあるんでしょうが、やはりピーターパンとして空を飛ぶときの解放感もありますか?

飛んでる時は凄く楽しいし、下で見上げている子どもたちの憧れの目線が嬉しかったり。戦っている場面で会場から「がんばれーがんばれー」って声が少しでも聞こえてくると力になります。

ーーもし、この作品でピーターパン以外の役ができるとしたらどの役をやってみたいですか?

いちばんやってみたいのはタイガー・リリーです! おもしろくてカッコイイ女性。ピーターとは違うカッコよさがあるんです。強く生きていく女性に憧れがあるんです。私は学校でもピーターっぽいというか、女の子っぽくなくて。制服以外でスカートを1枚も持ってないんですよ! 制服のスカートですら、下にジャージを履きたいくらいなんです(笑)。

ーーちなみに勉強込みで他の舞台を観に行く事はありますか?

観に行きます! 一番最初に観た舞台『ミス・サイゴン』はいちばん印象に残っています。最初に観た時は話が難しくてわからない事も多かったんですが、今観たらまた違う感想になるかもしれません。あと『メリー・ポピンズ』も素敵でした。ピーターを演じているときは自分が飛んでいる方ですが、お客さん側になってみると「うわー本当に飛んでる!」って目がキラキラになりました。メリーが飛んでいったっきり本当に帰って来ないのが切なくて。まるでピーターを見ているウェンディのような気持ちになりました。

吉柳咲良 撮影:渡部孝弘

ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』2019 吉柳咲良コメント

取材・文=こむらさき

公演情報

ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』
 
■日時・会場:
【埼玉公演】2019年7月21日(日)~28日(日)
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

【神奈川公演】
2019年8月2日(金)~5日(月)
カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)ホール
 
※名古屋公演(御園座)、大阪公演(梅田芸術劇場メインホール)、富山公演(オーバードホール)もあり
 
■原作:ジェームズ・M・バリ
■作詞:キャロリン・リー
■作曲:ムース・チャーラップ
■翻訳/訳詞:青井陽治
■演出:藤田俊太郎
■出演:吉柳咲良 EXILE NESMITH 河西智美 宮澤佐江 入絵加奈子 久保田磨希 ほか
 
■公式ホームページ:http://hpot.jp/stage/peterpan