湖月わたるが舞台生活30周年記念作品「ドキュメンタリー・ミュージカル」「Song&Dance」への想いを語る

2019.4.3
レポート
舞台

湖月わたる

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宝塚歌劇団で男役としてトップスターを務めたのち、退団後女優として幅広く活躍している湖月わたるが、舞台生活30周年を記念して、テーマの異なる2作品を上演する。

まず、7月5日(金)~15日(月・祝)東京・DDD青山クロスシアター、7月19日(金)~21日(日)兵庫・宝塚バウホールで上演されるのが、VOL.1『ドキュメンタリー・ミュージカル わたるのいじらしい婚活』。
放送作家として山田孝之の出演作品を多く手掛ける竹村武司が脚本、若手演出家として頭角を現す永野拓也が作詞と演出を担当。「わたるの婚活」をテーマに、湖月がクリエーターやスタッフと過ごす半年間の記録を描く、ドキュメント=ノンフィクションをベースにした芝居やドキュメンタリー映像と、ミュージカル=音楽とダンスを統合させて虚構的演劇表現をハイブリッドした斬新なエンターテインメント作品となる。共演には宝塚歌劇時代から縁が深く「ワタコムコンビ」(湖月の愛称「わたる」朝海の愛称「コムちゃん」から来た呼び名)としてファンに親しまれる、元宝塚歌劇団トップスターの朝海ひかるが登場する他、廣瀬友祐、迫田孝也といった、スター男優たちも顔を揃える。

そして、10月16日(水)~17日(木)東京・草月ホール、10月22日(火・祝)大阪・グランフロント大阪 北館ナレッジシアターで上演されるのが、VOL.2『Song&Dance』。
得意のダイナミックなダンス、トップスター時代の男役を彷彿とさせるダンディズムに溢れた宝塚歌劇時代の楽曲や、本人が選曲した珠玉の名曲を歌い綴るシーンなど、湖月わたる30年の魅力の全てを余すところなく詰め込み、さらにこれからも前進し続ける姿も見せる、魅力満載のオリジナルショーとなっている。
そんな二作品の公演内容の詳細と、企画意図などを語る合同取材会が3月都内で開かれ、湖月わたる、VOL.1の脚本を担当する竹村武司、演出・作詞を担当する永野拓也が登場。公演への抱負を語った。

【出演者コメント】

湖月:おかげ様で今年舞台生活30周年を迎えます。これも長い間私を応援し、ご支援くださるすべての方々のおかげと感謝しております。今回記念公演としてVOL.1、VOL.2と全く異なるコンセプトの作品に取り組む幸せな機会を得ました。私が作品に向き合う時にいつも目標としているのは挑戦と進化です。今回、VOL.1では人気の放送作家の竹村武司さん脚本、新進気鋭の演出家永野拓也さん演出の、お二人が創り出すドキュメンタリー・ミュージカルという、私にとって未知の分野に飛び込みます。湖月わたるという自分自身を演じるということで、役者として何かをつかみたいと思っています。
そして共演者には宝塚時代からとてもご縁のある朝海ひかるさん、今回初めてご一緒させていただく廣瀬友祐さん、迫田孝也さんなど、素晴らしい方々が参加してくださるので、私にとってとても大きな挑戦になると思っています。そしてVOL.2は私を応援してくださる皆様に心からの感謝の気持ちをこめて、懐かしい曲を歌い踊ります。今年幕開けから2月まで『ベルサイユのばら45』、で14年ぶりにアンドレとフェルゼンを演じ、現在ちょうどお稽古中の『雪まろげ』では2年半ぶりにアンナ役に向き合っております。こうして再びお役に挑戦する時には、今の自分にしかできない表現、初演時よりも進化したパフォーマンスをお届けしたいということを、いつも心に持っています。ですからVOL.2では懐かしい曲と共に今の私をお楽しみいただけたらなと思います。この二つの作品で、私を応援してくださっている方には私の挑戦や進化していく姿を。また、まだ湖月わたるをご存知ないという方には、こんな面白い女優がいるんだなと思ってもらえるように、二作品の初日に真摯に向き合っていきたいです。どうぞよろしくお願いいたします。

湖月わたる

竹村:普段放送作家という肩書で、バラエティー番組やドラマの脚本など、テレビというフィールドの中で節操なくやらせてもらっているのですが(笑)、正直この話をいただくまで宝塚歌劇を観たこともなく、舞台公演の脚本を書いたこともなく、ましてやミュージカルの経験もないので、初めての打ち合わせの時に「なんで僕なんですか?」という質問を、心の中でも含めると100回くらいしました(笑)。そこで僕に白羽の矢を立ててくれたということは、何か新しいことがやりたいんだろうなと、そんな心意気をヒシヒシと感じました。僕は「ここではないどこか」というものに非常に興味を感じていて、そういう作品を創り続けたいと思っていたので「是非やらせてください」という気持ちで今、ここに座っています。よろしくお願いします。

永野:竹村さんもおっしゃいましたが、僕にこのお話が来た時にも同じことを言いました。「僕でいいんですか?」と(笑)。その中で湖月さんの経歴を拝見したり、人となりを伺うと、人気はもちろん、すでに色々なものをお持ちだったので、30周年の記念公演に、過去を振り返る「レビュー」や「ショー」をやるのであれば、僕より確実に上手い演出家がいるだろうと。なので、このお話をお受けする前に湖月さんと直接お話させて欲しい、とお願いしてお会いしました。そうしたところ僕が持っていた「スター」のイメージとは良い意味で違っていて、非常にチャーミングでした。しかも保守的でもなかった。それで「あぁ、ここから先の10年を見据えての、新しいチャレンジの為に僕なんだな」と思いました。だとするなら「とことんチャレンジしましょうか」ということになりました。よろしくお願いいたします。

【インタビュー】

ーー「ドキュメンタリー・ミュージカル」という構想が生まれた経緯を教えてください。

永野湖月わたるさんが宝塚のトップスターを経て、30年間この世界でやっていらしたのは、とてもすごいことなので、その実人生を作品に落とし込みたい、というオーダーがまずありました。だとしたら、その人生をどうミュージカルにするのか? と思った時に、これは僕の個人的な想いなのですが「ミュージカル」というのは虚構性の高いジャンルだと思うんです。ならば、もっと日本人として共感しやすい「あ、わかる、わかる」と思えるもの。例えば人にフラれたらすごく悲しいし、涙を流して救われたい脚本が仮にあって、それがミュージカルとして成立したらとても面白いものになるんじゃないか? と。「ドキュメンタリー」って「ミュージカル」とはすごく離れたところにあると思うからこそ、そこが上手くいったら今後の道の為に素晴らしい意義があると思って、提案をしたのが「ドキュメンタリー・ミュージカル」になった理由です。

ーーそのテーマに「婚活」を選んだのは?

竹村 :「婚活」にした理由は大きく言えば二つあります。まず僕はテレビ屋なので、テレビ屋の悪い癖として「パンドラの箱」を開けたくなるんです(笑)。湖月わたるさんでドキュメンタリーと言われた時に、ドキュメンタリーってどうしてもその人が出てしまいます。いくらバリアしても出るんです。じゃあどこが出たら面白いか? と言えば、そこにうっすらある「恋愛」に対するタブー感がありますよね。それが見えることによって、今まで見たことがないものが見えるのではないか? という良い意味の下世話な興味がありました。二つ目は先ほど永野さんもおっしゃいましたが、湖月さんのチャーミングさがしとどに溢れる、文句なしにチャーミングが1番大きい人なので!

竹村武司

湖月:背がね! 身体が大きい(笑)。

竹村:いや、だからチャーミングの含有量も大きいんです!(笑)。そのチャーミングをどう引き出したら良いかな? と思った時に、やっぱり恋愛をしている時って人はチャーミングですから、チャーミングさが最も引き出せるテーマとして「婚活」を選びました。

ーーそのテーマをお聞きになっていかがでしたか?

湖月:やはり最初はびっくりしました、戸惑いましたし、正直不安もありました。でも竹村さんの作品で山田孝之さんの「山田孝之の東京都北区赤羽」の中に、孝之さんがおじさんに怒られるシーンで、彼自身の葛藤やぶつけたかったものがすべて出た映像があったんです。それを観た時にすごく胸が熱くなって、観ている私も涙があふれて。ああいう作品を創られる竹村さんが、これまでの30年の私を知らずに今の私を見て、私を題材に何かを引き出そうと、興味を持ってくだっさったことがすごく嬉しかったです。
また、不安がっている私を永野さんがとても丁寧に、根気良く色々とお話してくださって。永野さんの作品の「ツクリバナシ」の映像を拝見したのですが、目から見える、起こっている出来事だけではなく、目に見えない心の葛藤や、戦いがダイレクトに伝わってきて。その永野さんが「キャパ200人くらいという、嘘の芝居は必ずバレてしまう、本当に心が動く芝居でなければいけないDDD青山クロスシアターの密な空間で、『湖月わたる』を演じることには凄く勇気がいると思います。でもだからこそ舞台生活30周年を迎える、女優として更に進化したいと思っている湖月さんにとって、必ずやる価値のある作品だと思う」と言ってくださった。その言葉が私に大きな勇気をくれましたし、お客様にもこれからの私を応援し、見守ってもらえる作品になると確信してくださっているのが伝わったので、お二人の才能に身を委ねて、真っ新な気持ちでこの作品に飛び込もうと決心しました。

湖月わたる

ーー「ドキュメンタリー・ミュージカル」のどこまでが虚構で、どこまでが真実なのですか?

竹村:それは「お楽しみに」としか言えないのですが、でも全てが本当です。フェイクの荷重は言ってしまうとね(笑)。ただ、本当に今、絶賛婚活中のドキュメンタリー映像を撮影中ですから!

ーーでは、このドキュメンタリーを通じて実際に「婚活」が成立する可能性も?

竹村:もちろんです!

湖月:私は不器用なので、本当に仕事に夢中でやってきましたから、そんな可能性のある作品に出会えるとは思ってもいなかったです。

竹村:千秋楽がゴールじゃないですからね。その先があるから!

湖月:その先があるんですか?

永野:素敵なゴールですね!

湖月:素敵なゴールが待っているかも知れない?

竹村:待っているかも知れないし、待っていないかも知れない(爆笑)。

湖月:それは私次第なんですね(笑)。

永野:本当に「お楽しみに」ですね。

竹村:内容がどうなるかわからないところが、1番ドキュメンタリーかもしれない。

湖月:たぶん、私が1番ハラハラドキドキですね。

ーー永野さんは湖月さんのどんな魅力を引き出そうと?

永野:たぶん入り方としてはちょっと特殊だったと思いますが、湖月さんにお会いして「なんてチャーミングな人なんだ!」と思って『ベルサイユのばら45』を観たら、ものすごくカッコ良くて! あれだけチャーミングな人が舞台上に立ったら「愛の為なら死ねる」と言い、お客様が涙を流している。それが単純に面白いなと思いました。以前に宝塚の舞台を拝見した時のお客様の熱量にも大きなものがあって、僕にあんなに熱くなれたものがあっただろうか、と思ったこともあります。そして「ドキュメンタリー」と「ミュージカル」って謂わば二次元と三次元ですよね?さっきも言ったように本来相性の良いものではない。でもそれが湖月さんの普段のチャーミングな姿と、舞台上のある種の虚構ではあるけれども、これまで培ってきた技術の上にあるカッコ良さ、その二面性を「ドキュメンタリー・ミュージカル」の中で両方お見せすることができたら、と思っています。

永野拓也

ーー関西公演は宝塚バウホールでの上演ですが、久しぶりのバウホールの舞台になりますね。

湖月:宝塚退団後はじめて、バウホールの舞台に立たせていただきます。大劇場の、あの「宝塚」の街の一角にある劇場ですから、故郷に帰るような気持ちです。湖月わたるとして産声をあげた場所に、30周年記念公演として帰れることに、ただただ感謝の気持ちを込めてお届けしたいです。それがこういうチャレンジの作品であることも良いかな?と思っていて、あの町の皆さんにチャレンジしている姿を見て欲しいです。

ーードキュメンタリー映像のビジュアル撮影はどのように?

湖月:夜の公園や、道端などで撮影したのですが、私が「雨女」ということもあって(笑)、雨の降る夜の公園で撮影するという、初めての経験になり、今回、自分の心をさらけ出す作品としては良い感じに撮影できたのではないかと思います。私は雨に濡れるのが結構好きで、ミュージカルの『雨に唄えば』も大好きですが、大人になると雨に濡れて歩くことがあまりなくなっていたので、濡れながら佇んでいると自然と自分と向き合うことが出来ました。なかなか狙ってもこういう雨の中で撮れることはないと思いますので、自分でも気に入っています。

ーー楽曲はオリジナルですか?

永野:全曲オリジナルで創りたいと思っていて、心情に寄り添ったものになるよう、現在鋭意製作中です。例えばロックにまとめたい、というような気持ちは全くなく、曲に関してもある種の幅を取りたいと思っています。先ほどの二面性の話にも通じるように、クラシカルなものも、でも意外性のあるものもと思っています。

ーー共演者の方達に対してはいかがですか?

湖月:朝海ひかるさんはこの間の『ベルサイユのばら45』でも「ワタコムコンビ」と言ってもらえたくらいですが、今回は新たな作品で、新たな絆が芽生えるのも楽しみにして欲しいです。ドキュメンタリー映像の撮影ももうはじまっているので、とても協力的に接してくれますし、私とコムちゃん(朝海)の素の関係で撮影させてもらったりもしているので、私達のコンビぶりを楽しみにしていただけたら。廣瀬友佑さんは、私の中では『ロミオ&ジュリエット』のティボルト役の印象が強くて、大胆さの中に繊細なものがあるのが素敵な方ですね。迫田孝也さんは三谷幸喜さんの作品でよく拝見していて、俳優さんとしても素晴らしいのですが、インタビュー等からも人間的にとても温かい雰囲気が伝わるので、助けていただこうと思います。

ーーVOL.2の『Song&Dance』はどのような内容に?

湖月:舞台生活30年のうちの18年を宝塚で育てていただきましたので、もちろん宝塚時代の曲でも歌い踊りたいと思っていますし、退団後に出会った様々な作品や、ショーの中で出会った曲も取り上げたいと思っています。また「Dance Legend」という作品で、ジャズ、タンゴ、フラメンコなど、たくさんのダンスにも取り組みましたので、構成は今考えているところですが、色々なダンスの分野にもチャレンジします。でも、今の私がお届けするので、新たなものになるように挑戦したいと思っています。そしてこちらにはスペシャルなゲストの方達も登場してくださる予定なので、是非楽しみにして欲しいと思います。直近に『ベルサイユのばら45』に出演して、宝塚と『ベルサイユのばら』という作品双方に対するお客様の熱量に接し、本当に素晴らしい経験を積んできたんだなと感謝の気持ちでいっぱいだったので、その気持ちをコンサートに込められたらと思います。

(左から)永野拓也、湖月わたる、竹村武司

長身でおおらかな個性が繰り出す、男前のカッコ良さと柔らかなチャーミングさ。舞台生活30周年を記念した湖月わたるの、全くテイストの異なる二つの舞台は、そんな湖月の多面体の魅力を堪能できる、バラエティー豊かな作品になる、そんな予感に満ちた取材会だった。

取材・文=橘 涼香 撮影=池上夢貢

公演情報

湖月わたる舞台生活30周年記念公演
Vol.1 『ドキュメンタリー・ミュージカル わたるのいじらしい婚活』

【東京】2019年7月5日(金)~15日(月) DDD青山クロスシアター
【兵庫】2019年7月19日(金)~21日(日) 宝塚バウホール
 
脚本:竹村武司
作詞・演出:永野拓也(hicopro)
出演:湖月わたる、朝海ひかる、廣瀬友祐、迫田孝也
飯野めぐみ、可知寛子、高橋卓士、宮島朋宏
料金(全席指定・税込):全席11,000円
一般発売:6月2日(日)
 
企画・制作・主催:梅田芸術劇場
お問合せ:梅田芸術劇場(10:00~18:00)
【東京】0570-077-039
【兵庫・大阪】06-6377-3888
 

公演情報

湖月わたる舞台生活30周年記念公演
Vol.2『Song&Dance』

【東京】2019年10月16日(水)~17日(木) 草月ホール
【大阪】2019年10月22日(火・祝) グランフロント大阪北館4階ナレッジシアター
 
料金(全席指定・税込):
【東京】S席11,000円、A席9,000円、B席8,000円
【大阪】全席11,000円
 
企画・制作・主催:梅田芸術劇場
 
お問合せ:梅田芸術劇場(10:00~18:00)
【東京】0570-077-039
【兵庫・大阪】06-6377-3888
 
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